繁殖期にみられるチュウヒの行動やその他についての詳しい説明

巣材運び

巣材運びは3月中~下旬頃より活発になり、営巣地のあたりに頻繁に降りるようになる。巣は地上に枯れたヨシやススキの茎を積み重ね、産座にはやわらかいイネ科植物の枯葉を敷く。

巣材を運んでいるチュウヒ
巣材を運んでいるチュウヒ
写真提供:名古屋鳥類調査会 森井豊久氏

餌探しおよびハンティング

餌を探すチュウヒは、羽ばたきや翼を浅いV字にした滑翔を繰り返し、顔を下に向けながら、地上数mのところを飛んでいる。風の強い日には、空中で停止したような停空飛翔(ホバリング)もみせる。ハンティングは、水路のある場所や植生が急に変化するような場所でよく行なうようであり、地上に飛び込んで足で獲物を捕らえたり、地上を歩き回って獲物を追い出して捕らえたりする。捕らえた獲物をその場で食べず、草丈の高いところに運んで解体し食べることが多い。

地上の餌を捕らえようとするチュウヒ
地上の餌を捕らえようとするチュウヒ
写真提供:名古屋鳥類調査会 森井豊久氏

下を向いて餌を探しているチュウヒ
下を向いて餌を探しているチュウヒ
写真提供:名古屋鳥類調査会 前田崇氏

餌渡し

抱卵はほとんど雌が行ない、ときおり雌のために雄が餌を運ぶ。雄が餌を運んでくると、雌は巣を離れ、空中で餌渡しを受ける。
雄は餌を運んでくると、巣の上空を‘キュイー’と鳴きながら旋回する。この声を聞いた雌は巣を飛び立ち、‘キャ・キャ・キャ’と鳴きながら雄を追いかける。雄は急上昇して雌の上空へ舞い上がり、両足を前に出しながら、雌に向かって急降下する。衝突寸前で雌は雄をかわし、向き合ったときに餌を渡す。

餌渡しを行っているチュウヒ(上が雄)
餌渡しを行っているチュウヒ(上が雄)
写真提供:名古屋鳥類調査会 森井豊久氏

求愛ディスプレイ

ディスプレイ飛翔は 3月下旬に活発になる。螺旋を描くようにして高空まで2羽で昇ったり、つがいで一緒にヨシ原の上を低く飛ぶ。また、高空からほぼ垂直に急降下し、地面近くのところで反転急上昇し、もとの高さに達すると再び急降下を繰り返すというもの、横にした螺旋状の軌跡で飛ぶというもの、宙返りなど多彩なディスプレイ飛翔もみせる。雄が雌に擬似的な攻撃を仕掛けることもある。

八郎潟干拓地の 3例では、巣の外径(長径×短径)70~ 100×60~95cm(平均85×79cm)、厚さ25~32cm(平均27.5cm)、産座の直径19~31cm(平均23.3cm)、深さ2.3~2.8cm(平均2.5cm)である。巣は1シーズン限り使用し、毎年新たに造巣する。なお、写真の巣は勇払原野で2002年にみつけたものであるが、作りかけで中止したもののようだった。

作りかけの巣(北海道苫小牧市 2002年)
作りかけの巣(北海道苫小牧市 2002年)

参考文献

彦坂富志.1984.チュウヒ観察記.野鳥園だより 22: 1-4.
森岡照明・叶内拓哉・川田隆・山形則男.1995.図鑑 日本のワシタカ類.文一総合出版,東京.
中川富男.1991.チュウヒの移動.日本鳥学会誌 39(4): 139.
西出 隆.1979.八郎潟干拓地におけるチュウヒの繁殖記録.山階鳥類研究所報告 11(2): 109-120.
若杉 稔.1982.鍋田でチュウヒが繁殖.野鳥園だより 17: 3-4.