Q&A

衛星追跡について

Q.何のために送信機を付けたのですか
A.渡りのルート上にある繁殖地、越冬地、中継地の位置など、渡りを行う種が一年を過ごす上で重要な場所が明らかにできます。今回は、中継地である勇払原野から越冬地であるオーストラリアまでの秋の渡りルート、翌年のオーストラリアから繁殖地までの春の渡りルートと、途中で休息する場所を把握し、保全するための基礎資料を得ることを最終的な目的としています。
Q.なぜオオジシギの位置がわかるのですか
A.アルゴスというシステムを利用しています。オオジシギに付けられた送信機から発する電波を気象衛星など複数の衛星に積まれた受信装置が受信します。受け取られたデータは再度地上に送られ、データ処理センターでの位置の計算を行った後、利用者の元に送信機の緯度経度などのデータとして送られます。高速で移動する衛星が受け取る電波のドップラー効果を利用してその位置を計算するシステムで、多くの環境に関するデータを収集するのに使われています。
Q.追跡結果を見たいのですが
A.追跡結果はブログhttp://blog.livedoor.jp/wbsj_oojishigi/で報告しています。アルゴスシステムによる推定位置はデータ処理センターから毎日送られてきますが、位置の推定は衛星の位置や送信機からの電波の発信状況により不定期に得られ、またその情報はリアルタイムではありません。
Q.地図の位置にいけばそのオオジシギが見られますか
A.地図に示したポイントは、同じ1日(日本時間)に得られた複数の位置情報を合わせ、その重心を取ったもので、必ずしもその場所にいたことを示しているものではありません。同じエリアに数日間滞在した場合、複数のポイントからそのオオジシギが利用しているおおよその範囲がわかります。ただし、一番精度のよいデータでも150mの誤差がありますので、実際に送信機を付けた個体を探すのは大変難しいと思われます。
Q.いつまで追跡するのですか
A.電波を発信し続ける限り追跡を継続します。通常、送信機の寿命は3~4年程度といわれますが、1年未満で送信できなくなる場合も少なくありません。また、オオジシギの負担を減らすため、装着に使用するヒモやひもの固定に使うアルミチューブの劣化で2~3年以内には脱落するようにしているため、機器に支障がなく、個体が元気でも追跡できなくなることもあります。
Q.送信機はオオジシギにとって負担にならないのですか
A.軽いとはいえ、物を背負わせる以上負担がないとはいえません。私たちは以下の基準で送信機を付けています。
 野鳥に調査用の機器を装着する場合、体重の4%までは問題ないとされています。今回装着する送信機は1台約5gで、装着のためのヒモ等を含めた総重量は約6gになります。さらに少し余裕をみた体重155g以上の個体に限り装着しています。また、往復1回は渡りを経験したことのある成鳥のみを選んでいます。
Q.送信機はどういう方法で装着するのですか
A.摩擦の少ないテフロン加工されたヒモを使ってランドセルのように背面に背負わせるバックパックハーネス法を用います。この方法はジシギ類を含む様々な種で実績のある方法です。
Q.送信機のせいで渡れなくなったり死んでしまったりしないのですか
A.可能性は0ではありませんが、前述のような配慮をしています。さらに、偶然アンテナが何かに絡まる、嘴や脚がヒモに引っかかる、うまく飛べない、というような想定されるトラブルの発生をできる限り未然に防ぐため、リボンの緩みのチェックや装着後しばらく行動のようすを見るなど放鳥前の確認を厳重に行っています。
Q.電波が途絶えることはありますか。それはどういう理由ですか
A.ひとつは送信機やアンテナの故障が考えられます。また、太陽光電池に羽毛が被さったり、天候が悪く充電がされず電波が出ないことが考えられます。また送信機を付けた個体が水中に沈んだり、ヤブの中で倒れていたりなどオオジシギのトラブルによる可能性もあります。
Q.いつまでも同じ場所で動かなくなるのはどういう理由ですか
A.送信機が外れた、また、オオジシギが死亡して送信機を付けたまま動かなくなったなどが考えられます。ただし、種によっては中継地に数ヶ月滞在した後、突然渡りを再開することもあります。オオジシギは渡りルートや渡りのスケジュールが分かっていないため、しばらく移動しなくなってもそれがトラブルかどうかの判断はすぐにはわかりません。

フラッグ調査について

Q.カラーフラッグを装着して何を調べているのですか
A.オオジシギの移動(渡り)を調べ、彼らの周年の生活に必要な環境や湿地を明らかにします。情報が蓄積されれば、保全すべき生息地を把握することができます。
Q.なぜカラーフラッグを選んだのですか
A.鳥の移動(渡り)を調べる方法には、個別の番号が刻まれた金属製リングを装着する方法、カラーリングやカラーフラッグ、首環や鼻サドル、ウィングタグなどを装着する方法、衛星追跡用送信機のような電波発信機を装着する方法、ジオロケーターやGPSタグを装着する方法など複数があり、それぞれに一長一短があります。どの方法を使うかは、調査の目的、鳥の体サイズや生態、調査の予算、その他を総合的に検討して選択します。
 カラーフラッグは標識地ごとに色や装着する位置が各国で調整されており、観察された情報からいつ、どこで放鳥された鳥かを知ることができます。装着する標識が比較的小さく軽いので鳥に与える影響が小さいこと、望遠鏡などで読み取れるので再捕獲が不要なこと、安価なので多数の個体に装着し広く目撃情報を収集できること、などの利点があり、オオジシギを含むシギチドリ類の渡りを調べる際によく使われている方法です。
 一方、衛星追跡調査のように1個体の移動経路を連続して把握することはできないこと、放鳥地と観察地の間の移動経路や移動にかかる時間等は知ることができないことなどの欠点があります。
Q.カラーフラッグの色や位置はどうやって決めたのですか
A.カラーフラッグの色や付ける位置については、山階鳥類研究所を通じて他の地域での装着パターンと重複しないように調整を行っています。
Q.カラーフラッグはオオジシギにとって負担になりませんか
A.可能な限り小さく軽いものとすることで影響を最小限に抑えるよう配慮しています。カラーフラッグ2枚で0.2gです。
また、過去に今回の調査地である勇払原野で標識したオオジシギが、別の繁殖地で確認されている例があることから、繁殖に支障をきたすほどの影響ではないと考えられます。
Q.標識個体の観察報告は山階鳥類研究所にするのではないですか、両方に報告しなければならないのですか?
A.迅速な情報収集や、観察者の方に直接連絡をさせていただけるように、勇払原野放鳥のオオジシギについては、山階鳥類研究所への報告とともに、ぜひ日本野鳥の会にもご連絡ください。
(参考)山階鳥類研究所の標識調査・連絡先
http://www.yamashina.or.jp/hp/ashiwa/ashiwa_index.html#10

その他

Q.どういう方法でオオジシギを捕まえるのですか
A.かすみ網を用います。かすみ網は、一般には使用することはもちろん、販売することも所持することも、法律で固く禁止されています。一方、鳥を傷つけずに捕獲できるため、許可を得た上で生態調査に用いられています。
Q.どういう許可を取っておこなっているのですか
A.鳥獣保護管理法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)の手続きに従い、環境省の許可を得ています。捕獲を行う調査地への立ち入りに関しては、地権者の了解を得ています。

渡りルートの調査はこちら

オオジシギ保護調査プロジェクトはこちら