東北地方太平洋岸 非繁殖期調査 2011-2012年

伊豆諸島のカンムリウミスズメは、繁殖の終わった6月以降、繁殖地の周辺海域から確認されなくなります。他の海域へ移動していると考えられていますが、どこで非繁殖期を過ごしているかはまだ解明されていません。2009年より当会が実施している目撃情報収集で、茨城県大洗港―北海道苫小牧港を結ぶ航路上や北海道東部沿岸で夏から秋の目撃情報が寄せられたことから、可能性の一つとして繁殖が終わると東北地方太平洋沿岸を北上していることが考えられます。
当会では2010年より本種の非繁殖期の分布を調査していますが、2011年からは東日本大震災の被災地支援の一環として実施しました。被災地の遊漁船を借り上げることで、被災地の支援をしつつ、カンムリウミスズメの非繁殖期分布を探るのがねらいです。
このページでは2011-2012年、東北地方太平洋岸の調査の様子をお伝えします。

2011年調査

5月下旬、カンムリウミスズメは伊豆諸島の繁殖海域では観察できなくなり、7~9月に北海道東部沿岸で目撃されるようになります。このことから6月には東北太平洋岸を北上しているのではと思われ、この時期の調査を計画しましたが、港湾も船舶も東日本大震災による大きな被害を受け、現地への交通網も混乱していました。6月の調査は断念し、7月と8月に北上する個体、10月に南下する個体の発見を目指して調査時期を設定しました。
調査範囲は岩手県から福島県にかけての海域を想定しましたが、福島県内は原発事故による操業自粛が続いており出船が難しいことから断念。岩手県から宮城県の範囲で適当な間隔がとれるようにチャーター可能な遊漁船を探したところ、概ね100Kmの間隔で、岩手県普代村太田名部港、大船渡市大船渡港、宮城県塩竃市塩釜港の3港から調査船を出せることになりました。
調査は、各港とも午前7時から午後2時までの間に5~7時間行いました。方法も各港共通で、ダブルカウントを避けるコースで航行し、目視した個体をカウント、GPSで位置を記録しました。
調査の結果、7月と10月に非繁殖羽の個体を1羽ずつ確認。8月には全く確認できませんでした。各調査の詳細は次のとおりです。

第1期 7月12日 宮城県塩釜港

まだ被災した建物の目立つ塩釜港。天気は晴れ。途中、霧を抜けながらの航行でした。多数のオオミズナギドリや、カマイルカやシイラは見られましたが目的の鳥は見つかりませんでした。

海 域:
松島沖から仙台湾、金華山南沖から南東沖にかけて
調査船:
塩釜港 かもめⅤ(えびす屋)
調査員:
当会職員4名/日本野鳥の会宮城県支部3名
結 果:
観察できず

カマイルカ
シイラ

第1期 7月13日 岩手県大船渡港

大船渡も大津波の傷跡がまだまだ残っていました。風弱く穏やかな海を出港です。カンムリウミスズメを1羽発見。ミズナギドリ類に加えてアホウドリ類も多く出現しました。

海 域:
大船渡沖から首崎沖
調査船:
大船渡港 幸徳丸
調査員:
当会職員 4名/日本野鳥の会北上支部 3名
結 果:
1羽(航路図上の赤い点が観察位置)

コアホウドリ
カンムリウミスズメ

第1期 7月14日 岩手県太田名部港

この日も天気に恵まれ穏やかでした。ミズナギドリ類多数、クロアシアホウドリ多数、カンムリウミスズメは出現せず、でした。

海 域:
普代村黒崎沖から野田村三崎沖
調査船:
太田名部港 翔光丸
調査員:
当会職員 4名/
日本野鳥の会宮古支部 3名
結 果:
観察できず

フルマカモメ
カマイルカとミズナギドリ類

第2期 8月23日 宮城県塩釜港

どんより曇り空のもと航行。ミズナギドリ類、ヒレアシシギ類がぽつぽつ見られ、海面から飛び出るサメの背びれをよく見かけました

海 域:
松島沖から金華山沖、足島東沖
調査船:
塩釜港 かもめⅤ(えびす屋)
調査員:
当会職員 3名/
日本野鳥の会宮城県支部 5名
結 果:
観察できず

サメ類

第2期  8月24日 岩手県大船渡港

昨日に続き曇り空。オオミズナギドリ、ヒレアシシギ類、カモメ類がときおり姿を現しますが、昨日同様、海鳥は少なかったです。

海 域:
大船渡湾から首崎北東沖、碁石岬南東沖
調査船:
大船渡港 幸徳丸
調査員:
当会職員 4名/日本野鳥の会北上支部 6名
結 果:
観察できず

オオミズナギドリ

第2期 8月25日 岩手県太田名部港

濃い霧のためコース変更をしながらの航行でした。30羽ほどのヒレアシシギ類の群れやアジサシのほか、昆虫のタテハチョウ類が見られました。めあての鳥は見つかりませんでした。

海 域:
普代村黒崎沖、野田村三崎南東沖、野田畑村弁天崎南東沖
調査船:
太田名部港 翔光丸
調査員:
当会職員 4名/日本野鳥の会宮古支部 1名
結 果:
観察できず

アジサシ

第3期 10月3日 宮城県塩釜港

天気は快晴でしたが、肌寒い季節です。途中で波が高くなり船室からの調査になりました。カンムリウミスズメは見つからず。フルマカモメやオオミズナギドリ、ウミウが少数出現しました。

海 域:
松島沖から網地島北
金華山瀬戸、金華山南東沖から南沖
調査船:
塩釜港 かもめⅤ(えびす屋)
調査員:
当会職員 4名/日本野鳥の会宮城県支部 3名
結 果:
観察できず

オオミズナギドリ

第3期 10月 4日 岩手県大船渡港

天気がよく波も穏やかでしたが、全体を通しほとんど鳥がいませんでした。ユリカモメ、オオミズナギドリ、クロガモが少数見つかりました。

海 域:
大船渡湾から首崎沖、吉浜湾沖
碁石岬東北沖
調査船:
大船渡港 幸徳丸
調査員:
当会職員 4名/日本野鳥の会北上支部 4名
結 果:
観察できず

ウミネコ

第3期  10月5日 岩手県太田名部港

ウミスズメ類を発見し、調査後の写真判定でカンムリウミスズメ1羽確認となりました。ゴンドウクジラの仲間が群れでよく現れました。

海 域:
普代村黒崎沖から野田村三崎
調査船:
太田名部港 翔光丸
調査員:
当会職員 4名
結 果:
1羽(航路図上の赤い点が観察位置)

ゴンドウクジラの仲間

2012年調査

6月からの調査が可能となった2012年度は、前年度の結果や新たな目撃情報をもとに、繁殖期終了まもなくの時期を重点的に調査しました。また調査範囲を拡大するため青森県八戸港を追加しました。福島県沖でも原発事故による操業自粛が解除されたため、小名浜港から調査を行うことができました。2011年度の調査海域は約100㎞ごとに港を選択していますが、今回拡大した範囲は適当な港と遊漁船がないため、八戸港―太田名部港は約80Km、塩釜港―小名浜港約150㎞の間隔になっています。調査ごとの航行と記録の仕方は前年度と同様に実施しています。
6月の宮城県塩釜港からの調査で2羽、7月の青森県八戸港・岩手県太田名部港・大船渡港の3海域では計16羽と過去最多を記録しました。大船渡沖の観察個体9羽のうち6羽は沿岸数Km付近で発見され、これまでの目撃情報(沖合約20Kmの定期航路上)と比べると、より陸地に近い海域も利用していることもわかりました。単独でいるものがほとんどでしたが、2羽で鳴き交わす姿や4羽の群れで行動している姿も観察されました。

第1期 6月12日 岩手県大船渡港

大船渡での調査2年目。天気は曇りです。ウミスズメとウトウは多数出現。カマイルカやマンボウも見つかりましたが、カンムリウミスズメは姿を現しませんでした。

海 域:
大船渡湾から首崎沖、碁石岬沖
調査船:
大船渡港 幸徳丸
調査員:
当会職員 5名/撮影担当 1名/日本野鳥の会北上支部 3名
結 果:
観察できず


オオミズナギドリ
ウトウ

第1期 6月13日 宮城県塩釜港

金華山を過ぎ、足島沖へ出たところで2羽のカンムリウミスズメを発見。霧雨の中での確認です。1羽は非繁殖羽。もう1羽は換羽が始まったばかりのようでした。

海 域:
松島沖から金華山南沖、足島東沖
調査船:
塩釜港 かもめⅤ(えびす屋)
調査員:
当会職員4名/撮影担当1名/日本野鳥の会宮城県支部3名
結 果:
2羽(航路図上の赤い点が観察位置)


カンムリウミスズメ

第1期 6月14日 福島県小名浜港

初めての福島県沿岸の調査です。3日間で一番の快晴。残念ながら海鳥は全体的に少なく、カンムリウミスズメも観察できませんでした。

海 域:
小名浜港から三崎沖、塩屋崎北東沖
調査船:
小名浜港 昇辰丸
調査員:
当会職員 4名/ 撮影担当 1名/
日本野鳥の会いわき支部 3名
結 果:
観察できず

第2期 6月26日 岩手県太田名部港

2mほどのうねりのある快晴の海。沖合20Kmまで来てやっとハイイロミズナギドリが出現。アホウドリ類も姿を見せるようになりました。ウミスズメ類を1羽目にしましたが、残念ながら種を識別するに至りませんでした。

海 域:
野田村三崎南東沖から野田畑村弁天崎南東沖
弁天崎にかけての海域
調査船:
太田名部港 翔光丸
調査員:
当会職員 3名
結 果:
観察できず

オオミズナギドリ
ハイイロミズナギドリ

第2期 6月27日 岩手県大船渡港

穏やかな快晴の海。出港まもなくはハイイロミズナギドリやカマイルカが続けざまに姿を現しました。数時間をすぎるとぱたりと生き物の姿がなくなり、そのまま調査が終了してしまいました。

海 域:
大船渡湾から碁石岬沖、陸前高田市
黒崎沖、首崎沖
調査船:
大船渡港 幸徳丸
調査員:
当会職員3名/日本野鳥の会北上支部 3名
結 果:
観察できず

クロアシアホウドリ
カマイルカ

第2期  6月28日 宮城県塩釜港

前回に続くこの海域での発見を期待しましたが、全体的に海鳥の姿がありませんでした。穏やかな波模様でしたが、確認なしで終了です。

海 域:
松島沖から金華山南沖から東沖、足島東沖
調査船:
塩釜港 かもめⅤ(えびす屋)
調査員:
当会職員 3名/日本野鳥の会宮城県支部 3名
結 果:
観察できず

第2期  6月29日 福島県小名浜港

海上で晴れたり、雨が降ったり忙しいお天気でした。凪のおかげで、予定より広い海域を調査できましたが、カンムリウミスズメは発見できませんでした。

海 域:
小名浜港から塩屋崎北東沖、
北茨城市五浦岬南東沖
調査船:
小名浜港 昇辰丸
調査員:
当会職員 3名/日本野鳥の会いわき支部 2名
結 果:
観察できず

オオミズナギドリ

第3期 7月24日 青森県八戸港

霧のため狭い視界のなかを調査。お昼すぎから帰港までに3羽を発見。2羽で行動していたものは盛んに鳴き交わしをしていました。他にもウミスズメ、ウトウ、トウゾクカモメ、アカエリヒレアシシギなどを観察しました。

海 域:
八戸港沖から三沢市沖
調査船:
八戸港(鮫漁港)三平丸
調査員:
当会職員 4名/日本野鳥の会あおもり 2名
結 果:
3羽(航路図上の赤い点が観察位置)

オオミズナギドリ
ウミスズメ

第3期 7月25日 岩手県太田名部港

ときどき雨の落ちる曇り空。霧はなく波も穏やかです。出港まもなくから次々とカンムリウミスズメを発見。単独で行動する個体4羽を確認しました。

海 域:
普代沖から野田村三崎北東沖
調査船:
太田名部港 翔光丸
調査員:
当会職員 4名/日本野鳥の会宮古支部 2名
結 果:
4羽(航路図上の赤い点が観察位置)

カンムリウミスズメ
ウミネコ

第3期 7月26日 岩手県大船渡港

出港後、濃い霧にまかれ、視界の良い海域を探しながら不規則なコースで調査。霧の中カンムリウミスズメを次々発見し過去の調査で最多の9羽を記録しました。コビレゴンドウやウミガメも姿を現しました。

海 域:
大船渡湾から吉浜湾沖、碁石岬東沖
調査船:
大船渡港 幸徳丸
調査員:
当会職員 4名/日本野鳥の会北上支部 3名
結 果:
9羽(航路図上の赤い点が観察位置)

コビレゴンドウ
カンムリウミスズメ

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