諫早干潟再生に向けて

諫早(いさはや)湾は有明海の一部をなす面積6,500ヘクタールの湾で、かつては日本で最大のシギ・チドリ類の渡来数を誇る、豊かで広大な干潟と浅海を抱えていました。多様性に富む生物相を有し、漁民から「宝の海」と呼ばれる有明海の豊かな漁場の一部をなし、有明海の「子宮」と称され魚貝類の生まれ育つ場でもありました。

しかし、1986年に着手された「諫早湾干拓事業」により、有明海と切り離す工事が進み、1997年4月14日には潮受堤防によって、3,550ヘクタールの浅海域が閉め切られました。その結果、日本最大の諫早干潟とそこに住んでいた底生動物、渡り鳥等多くの野生生物が姿を消し、また有明海の潮流・潮汐が弱まったことにより、赤潮や貧酸素水塊の発生等といった環境悪化を招き、有明海の漁業にも重大な悪影響を与えています。

当会は、潮受堤防の水門を開放し、有明海から湾内に海水を再び導入することで、調整池の水質を改善し、潮の干満と潮流を回復されることを求めています。このことにより、諫早湾と有明海の生物多様性を、渡り鳥が群れ飛ぶ干潟や魚湧く豊かな海をとり戻すことを目指しています。

12月15日、菅直人総理は諫早湾干拓事業についての開門訴訟の福岡高裁判決の受け入れを表明。12月21日期限の上告を見送ったため、5年間の開門を命じた判決が確定しました。

1997年4月14日に全長7kmの潮受け堤防により、諫早湾が有明海と切り離されて13年と8ヶ月。ついに、当会等が求めていた、諫早湾と有明海の生態系の回復をめざして潮受け堤防の排水門を開け、諫早湾に潮を通すことが確定しました。これは同時に、環境を破壊する公共事業を見直し、生物多様性を取り戻すための決定が、政府の手によりなされたことも意味します。

当会は政府のこの大英断を歓迎するとともに、関係者のすでに干拓地で行われている農業活動等にできるだけ影響の出ないよう留意しながら、速やかに開門調査が実行されることを期待します。

2010年12月14日
諫早湾干拓の「開門」による有明海の生物多様性の回復を求める緊急共同声明を内閣総理大臣宛に提出しました(PDFファイル、110KB)

2010年5月24日
諫早湾干拓事業潮受堤防排水門の早期開門を求める共同声明を公表しました(PDFファイル、122kB)

2007年11月20日
土地改良事業完工式典に際して有明海および諫早湾の自然と漁場の再生を求める声明を公表しました

2005年1月13日
諫早湾干拓工事差し止め仮処分命令に関する国の異議申立て却下へのコメントを表明しました。(PDFファイル、123kB)

海を分断する7㎞の潮受け堤防
海を分断する7㎞の潮受け堤防。潮の干満と潮流、生き物の往来を断ち切り、淡水湖となった諫早湾(右)と有明海(左)の自然に大きな影響を出し続けている。左奥の山は雲仙普賢岳。(写真:菅波完)

シギ・チドリ
潮受け堤防閉切り前の広大な諫早干潟に飛来したハマシギ等の大群。諫早湾はかつて、シギ・チドリ類の飛来数日本一を誇る豊かな干潟を擁していた(写真提供 日本野鳥の会長崎)

潮受け堤防と排水門
潮受け堤防と排水門。手前の有明海には赤潮が発生し甚大な漁業被害が発生した(2007年9月3日)

野鳥誌掲載記事

要望書など

関連ホームページ