下山(しもやま)・額田(ぬかた)の里山の保全(愛知県豊田市・岡崎市)

豊田・岡崎地区研究開発施設用地造成事業(トヨタ自動車テストコース等建設事業)への対応

概要

三番瀬の地図
豊田・岡崎地区研究開発施設用地造成事業は、愛知県企業庁の事業で、岡崎市及び豊田市にまたがる地域(下山・額田)に研究開発用地を造成し、この造成地をトヨタ自動車株式会社1社が買い上げて、テストコース及び研究施設を建設し、施設を供用する計画としています。
この事業計画区域「下山・額田の里山」は、愛知県北東部の美濃三河高原の一郭にあり、標高350mから550m位のゆるやかな起伏の丘陵地です。周辺に郡界川(ぐんかいがわ)、保久川(ほっきゅうがわ)及びそれらの支川が流れています。尾根と斜面は森林で、川沿いには水田が開かれており、森林と谷津田がおりなす美しい里山景観が広がっています。ここではサシバ、ハチクマ、ミゾゴイなどの絶滅危惧種の繁殖が確認され、野鳥にとっても貴重な里山環境であることが分かってきました。
2007年7月、愛知県が条例による環境影響評価(環境アセス)の手続きの中で方法書を作成、公表した時点では、660haの計画予定地のうち約410haを改変する予定でした。これに対し、地元の野鳥保護団体である愛知県野鳥保護連絡協議会や日本野鳥の会愛知県支部、当会などが要望書提出などの活動を行う中で、2011年2月に公表された環境影響評価準備書に載せられた計画では、計画地約652haのうち、改変面積を約270haまで小さくすることができました。
しかし、現計画でもなお、サシバやミゾゴイなどへの生息環境への影響が懸念されています。このため、当会は、引き続き絶滅のおそれのある野鳥をはじめとする里山生態系の保全を求めていきます。

これまでの経緯

2007年2月
トヨタ自動車、豊田市、岡崎市が愛知県へ現計画地の開発を要請
2007年7月
愛知県企業庁が環境影響評価方法書の公告・縦覧
2007年9月
愛知県企業庁が現地調査に着手
2008年12月
愛知県野鳥保護連絡協議会が、環境保全に関して愛知県企業庁及びトヨタ自動車と協議の場を持つ
2008年1月
愛知県野鳥保護連絡協議会が愛知県知事及び県企業庁に見解及び要望書を提出
2008年9月
愛知県企業庁が土地利用構想の見直しを公表
2009年8月
当会、21世紀の巨大開発を考える会、愛知県野鳥保護連絡協議会、日本湿地ネットワークの4団体が連名で、愛知県企業庁及びトヨタ自動車に対して計画の見直しを求める要望書を提出。事業の計画地におけるミゾゴイ等の絶滅危惧種の保護施策と同事業の見直しを求めた
2009年12月
愛知県企業庁が豊田市内で説明会を開催
2010年2月
シンポジウム「COP10とトヨタの里山破壊を考える」(主催:愛知県野鳥保護連絡協議会、後援:当会他)を名古屋市において開催。開発事業の問題点を指摘
2010年5月
愛知県企業庁が名古屋市内で説明会を開催
2010年9月
トヨタ自動車が「里山環境との共生に向けて」を公表
2011年2月
愛知県企業庁が環境影響評価準備書を公告・縦覧
2011年3月
愛知県企業庁が環境影響評価準備書に関する説明会を開催(豊田市・岡崎市)
2011年4月
当会は日本野鳥の会愛知県支部と連名で環境影響評価準備書に対し意見書を提出。サシバ、ミゾゴイ等の絶滅危惧種の保全を定量的な評価に基づいて行うべき等の意見を提出した
2011年7月
愛知県が開催した環境影響評価に関する公聴会で当会は上記意見書に基く意見を公述
2011年8月
愛知県知事が愛知県企業庁に対し環境影響評価準備書に対する意見を通知。森林・谷津田の保全・維持管理、動植物への配慮、適切な環境監視の実施等、28項目を指摘
2012年1月
愛知県企業庁は環境影響評価書を公告、縦覧
2012年2月
当会は愛知県野鳥保護連絡協議会(メンバーとして日本野鳥の会愛知県支部を含む)と連名で上記評価書に対し意見書を提出