ジャパン・リニューアブル・エナジー(株)の中九州風力発電所設置事業に対 し要望書を提出いたしました

日野鳥発第 34 号
平成26年7月3日

ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社
代表取締役社長 安 茂 様

日本野鳥の会宮崎県支部
支部長 前田幹雄

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 佐藤仁志
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

中九州風力発電所設置事業に関する要望書

 平素より、日本野鳥の会宮崎県支部ならびに(公財)日本野鳥の会の環境保全活動について、ご理解とご協力を賜り、深く感謝申し上げます。
 ところで、現在、貴社が計画されている中九州風力発電所設置事業に関して環境影響評価書が縦覧されていますが、対象事業実施区域(以下、「計画地」という。)に風力発電施設を建設した場合、環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠB類で宮崎県レッドリストにも掲載されているクマタカについて、バードストライクが発生する危険性が高くなり、また、サシバなど希少猛禽類の渡りルートに対しても影響を与えることが懸念されます。しかし、計画地とその周辺で貴社が行った環境影響調査は質、量ともに不十分であり、現地における鳥類の生息状況が適切に把握されていないと考えられることから、今後はさらに詳しい調査を実施すべきです。
 そこで、貴社におかれましては、人と自然とが共生する豊かな環境の実現を図り、また地域の優れた自然環境と生物多様性を保全し、後世に豊かな郷土を残すため、計画地とその周辺の鳥類および自然環境を正確に把握できる調査をあらためて実施されることを強く要望します。

1.要望するに至った根拠
(1)貴社が縦覧している環境影響評価書(以下、「評価書」という。)によると、「建設現場付近にクマタカが3エリア(北東ペア、南東ペア、西ペア)で存在していることが示唆され、対象事業実施区域周辺が2ペア(南東ペア・諸塚村、西ペア・五ヶ瀬町)の行動圏境界となっている。また、対象事業実施区域内を通過した行動を16回確認、境界付近での飛翔も多いと考えられ、ブレードなどへの接近、接触の可能性がある」と記されており、事業者が行った調査結果からも、クマタカでバードストライクの起こる可能性が高いことが示唆されている。
 また、評価書の第8.1.4-46図にあるクマタカの飛翔経路をみると、建設地の西側部分において、繁殖に伴うディスプレイ飛翔も観察されており、さらに、大仁田山の南西と桑の木谷付近で西ペアの飛翔記録が密集していることから、この付近でも繁殖している可能性が高いため、営巣木の特定など、さらに詳しい調査を行うべきである。
 特に、計画地と飛翔記録が密集する場所は0.5kmから1.6kmしか離れておらず、クマタカの行動圏と重複するため、風力発電施設の建設はクマタカにとって大きな脅威となるものと考えられる。

(2)評価書によると、計画地そのものではクマタカ以外の猛禽類の観察例数が少ないが、評価書の第8.1.4-40図(平成24年秋季)(459ページ)によると、計画地周辺でハチクマ、ツミ、オオタカ、サシバ、ハイタカ、ノスリの飛翔行動が記録されていることから、計画地の周辺は猛禽類の渡りルートになっていることがそうていされる。
 また、これまでも、五ヶ瀬町でサシバの南下が数多く記録されていることから、サシバは計画地付近を渡りルートとして利用していると考えられるが、評価書に係る秋の渡り鳥調査はH24年に2回(9・10月)にしか行っていないにも関わらず、それだけのデータをもって、計画地やその周辺が渡りコースではないと事業者が結論付けていることは、適切な評価とは到底言えない。

(3)日本野鳥の会宮崎県支部で2012年12月27日に計画地で調査を行った結果、クマタカをはじめアカヤマドリ(宮崎県レッドリスト準絶滅危惧種)など15種の鳥類を記録した。評価書でも計画地内でクマタカをはじめルリビタキ(宮崎県レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類)、カッコウ(同準絶滅危惧種)、オオルリ(同準絶滅危惧種)など10種、計画地周辺でもハチクマやコノハズク(同)、ヤイロチョウ(同絶滅危惧ⅠB類)、サシバ(同準絶滅危惧種)など、希少種を含む24種の鳥類を記録している。計画地の諸塚村側は県指定鳥獣保護区であり、計画地の一部がその保護区に含まれるため、ここでの風力発電施設建設はこれら希少な鳥類の生息に対しても少なからず影響を及ぼすものと考えられる。

 以上の理由から、計画地及び周辺でのさらに詳しい調査を求めるところです。貴社におかれましても、風力発電施設の建設にあたっては、野鳥の生息状況などを的確に把握され、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとっていただけますよう、強く求めます。