浜中町風力発電所の視察結果

平成21年1月22日
(財)日本野鳥の会 自然保護室
浦 達也

浜中町風力発電所の視察結果について

施設について
浜中観光ホテル跡地の有効利用を目的とし、浜中町とCEFクリーンエナジーファクトリー社の中間法人により設置。2006年2月に営業運転開始。General Electric社製1.5MW風車。
施設の場所
〒088-1401 北海道厚岸郡浜中町榊原高台
視察時間
平成21年1月16日13:00~13:50
視察参加者
浦達也(自然保護室)・有田茂生(サンクチュアリ室)・高田令子(根室支部)・CEF社員2名・浜中町職員2名
視察実施の背景
北海道で風力発電が建設されるようになってから、絶滅危惧種で天然記念物のオジロワシが風車に衝突死する事故が起き続けている。当会としては、オジロワシの風車への事故死を少しでも減らせればと考えており、そのためにはまず、事故の状況をしっかり把握することが大切である。そんな中、残念ながら平成20年10月19日に国内12例目となるオジロワシの衝突死が、浜中町風力発電所で起きた。
今回は、タンチョウとチュウヒに関連する仕事で北海道へ出張した足で、事故のあった浜中町の風車を視察した。野鳥の会関係者だけで風車を自由にみせていただく旨で1月8日頃に浜中町に連絡したが、CEFに問い合わせるように指示された。CEFからは前日となる15日に回答があり、CEF社員の立会いの下で視察することとなった。そしてその連絡の直後、浜中町職員からも立ち会う旨の連絡があった。
視察結果
  • 発見者は、以前に浜中町の隣の厚岸町に住んでいたヨン・アルバート氏。久々に来日したヨン氏を根室支部の金澤裕司氏が観光案内しており、平成20年10月19日11時40分頃に風車に面した道路を通った時にヨン氏がオジロワシの死体を発見した。この日は日曜日であり役所は休みだったため、取り急ぎ根室支部の高田令子氏に連絡し、すぐに高田氏が駆けつけた。死体はすぐに、ヨン氏らで回収した。
  • 死体は風車から約30m離れた所に、3ヶ所(頭+片翼+片足+胴・片足・片翼)に散らばっていた。
  • CEFは毎週水曜日に、施設の保守点検の際に死体捜索のための巡回をしている。巡回は施設の外縁を一周するのみ。敷地はホテル跡地のため裸地であり、ほんの少し草の株があるものの見通しは良い。なお、この草は夏には50cm程度となるが、8月には草刈を行う。外縁だけでなく、敷地を十字に歩き、草株のところは注意して捜索するなど、もっと丁寧に捜索することを浦が提案した。
  • 浜中町としては、風車敷地への不法投棄の監視を不定期で週1回行なっており、その際に敷地の外縁を1週して、鳥の死体捜索もしているとのこと。
  • CEFは10月15日の午後早くに死体捜索をしている。浜中町は15日以降には死体捜索していない。そのため、オジロワシは15日夕方~19日午前に衝突死したと思われる。高田氏の話では、血もまだ新しかったため、19日の朝ではないか推定していた。
  • 浜中町風力発電所の建設前の環境調査について、施設規模の面からNEDOの風力発電導入マニュアルでは対象とならないため、文献からその場所にオジロワシの存在が記載されているかの調査しか行っていない。そして、文献調査ではオジロワシのことは出てこなかったとのこと。また、浜中町としては今までに鳥類調査を行ったことはなく、この地域の鳥の状況をよく把握していなかった。なお、この視察時、オジロワシ2羽、オオワシ4羽が風車の真上空を飛行していることを浦、有田、高田氏で確認している。
  • 浜中町風力発電所でのオジロワシの衝突死の後も、行動や個体数などの調査、オジロワシを風車から忌避させるような物を設置するなどの対策は特に行っていなく、引き続き週1回の巡回のみ行なっている。