電源開発(株)の「今ノ山風力発電事業(仮称)」について、計画段階環境配慮書へ意見書を提出しました

日野鳥発第 89 号
平成26年4月2日

高知野鳥の会
会 長 有田修大

日本野鳥の会高知支部
支部長 西村公志

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 佐藤仁志
(公印省略)

電源開発株式会社 御中

「今ノ山風力発電事業(仮称)計画段階環境配慮書」に関する意見書

 平素より、高知野鳥の会、日本野鳥の会高知支部ならびに(公財)日本野鳥の会の環境保全活動に関し、ご理解とご協力を賜り、深く感謝申し上げます。
ところで、この度、公表されました高知県土佐清水市~三原村にまたがる地域に計画中の「今ノ山風力発電事業(仮称)」の計画段階環境配慮書について、当該地域の自然環境の保全と鳥類の渡りのルート保全のため、下記のとおり意見を述べます。

1. 意見内容
(1)小型鳥類の飛翔高度がブレードの高さに満たないと断定できないこと。
事業計画地域を含む四国西南部は、いわゆる夏鳥の渡りの主要ルートになっています。配慮書5.1-19(162)には「渡りの多くは小型の鳥類であり、それらの種の飛翔高度は天敵となる猛禽類を避けるために、ブレードの回転域より低い樹林上及び樹林内を飛翔することから、重大な影響はない」との記述がありますが、小型の鳥類は主に夜間に移動し、しかもかなりの高度を飛翔していることはよく知られており、「猛禽類を避けるためブレードより低い高度を飛翔する」という記載は、現実と相違した断定的表現と言わざるを得ず、記載内容の変更および評価結果の見直しなどの配慮が必要です。

(2)サシバの渡りに大きな影響が予想されること。
秋には、四国以北の国内で繁殖したサシバの大半(毎年約10,000羽前後)がこの地域を通過して南下します。サシバの四国から九州へ向かう主な出口は、一般的に愛媛県高茂岬周辺と言われていますが、天候や風向きの影響を受け、一旦、今ノ山から柏島周辺まで南下したサシバが、そこから北上、して高茂岬を目指したという調査記録もあります。また、最近、発行された「日本のタカ学」にあるサシバの渡りの衛星追跡調査の記述を見ると、彼らが今ノ山周辺を飛んでいる可能性は否定できません。このように、サシバの秋の渡りについては、判明している事象も多いのですが、特にサシバの春の渡りについては、実態がほとんど判っておらず、四国での春の渡りについては、次の2点のみが知られているに過ぎません。

①高知県中央部では、毎年4000羽程度の渡りが観察されていること。
②この春の渡りは、愛媛県内では確認されていないこと。

これらのことから、春のサシバは高知県西南部から四国に入っている可能性が高く、そのルート上に風力発電所が計画されることは、春秋のサシバの渡りに重大な影響がある可能性があると言わざるを得ません。

さらに、サシバは、特に近年、急激に生息分布が減少していることから、平成18年に改訂された環境省レッドリストで「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されており、当該事業により、渡りのルートに何らかの支障が生じた場合、その影響はこの地域のみならず、全国に波及することが強く懸念されます。

 以上のことから、事業計画の撤回も含めた大幅な見直しが必要であると考えます。

本件に関する問い合わせ先
・高知野鳥の会
会長 有田修大(TEL: 0880-64-0140)
・日本野鳥の会高知支部
支部長 西村公志(TEL: 088-871-2532)
・(公財)日本野鳥の会
自然保護室(TEL: 03-5436-2633、担当:浦 達也)

以上