「(仮称)勇知風力発電事業 環境影響評価方法書」に係る意見書を提出しました

日 野 鳥 発 第 90 号

「(仮称)勇知風力発電事業 環境影響評価方法書」に係る意見書

平成27年1月8日提出

項 目 記入欄
氏 名 ①日本野鳥の会道北支部 支部長 小杉 和樹
②公益財団法人日本野鳥の会 理事長 佐藤 仁志
住 所 ①〒097-0401 利尻郡利尻町沓形字富士見町
②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
方法書についての環境の保全の見地からの意見 (1)6-41(251)~6-53(263)頁の鳥類調査方法について
①ルートセンサス法について
1.計画地における鳥類の繁殖状況を把握するためには、現存する環境要素をできるだけセンサスルートに含める必要があるが、方法書に記されている13ルートで対象事業実施区域(以下、計画地と言う)にあるすべての環境要素を網羅できているか示すこと。
2.1つのコースにつき、出現種数が飽和する4~6回のセンサスを行うことで1回の調査とし、2年間実施すること。
②ポイントセンサス法について
1.調査は毎月実施し、特に繁殖期など計画地で鳥類の種数または個体数が増える時期には、月に2回以上の調査を実施すること。なぜなら、Douglasら(2012)によると、調査回数を重ねる方が重ねないのに比べて、風車に対する鳥類の衝突確率の計算結果において低い数字が算出される、つまり真の値に近づくためである。
③鳥類(渡り鳥)の調査について
1.調査対象はコハクチョウ等のガン・カモ類だけでなく、猛禽類や小鳥類など対象を広く観察すること。
2.調査は11月も行うこと。なぜなら、計画地では11月も一般鳥類が渡っている可能性があるためである。
3.1週間連続した観察を1回の調査として月2回、または3日間連続した観察を1回の調査として月4回、2年間実施すること。なぜなら、渡り鳥の種類、個体数、時期等は年による変動があり、記載されている調査頻度ではこの年による変動および計画地における渡り鳥のピーク状況を把握することが難しいためである。
4.調査地点数は2地点にこだわらず、無駄のない範囲でできるだけ多くの地点数を設けること。
5.垂直回しを含めたレーダー調査を活用し、計画地における夜間の小鳥の渡り状況を把握すること。鳥の種類は分からなくても、おおよその個体数と飛行高度を把握することで、計画地が小鳥の渡り経路になっていないか、飛行高度等からみてバードストライクが発生する危険性がないか確認すること。
④鳥類(希少猛禽類)の調査について
1.繁殖が確認された場合には、繁殖期から幼鳥の分散開始までにおいて月に2回以上の調査を実施すること。なぜなら、Douglasら(2012)によると、調査回数を重ねる方が重ねないのに比べて、風車に対する鳥類の衝突確率の計算結果において低い数字が算出される、つまり真の値に近づくためである。
2.調査地点数は6地点にこだわらず、無駄のない範囲でできるだけ多くの地点数を設けること。
3.計画地を含む道北地域は絶滅危惧IBの鳥類チュウヒが複数繁殖している可能性があるため、オジロワシやオオワシのみならず、チュウヒの繁殖の有無の確認にも最大限努めること。
⑤鳥類(希少猛禽類・渡り)の調査について
1.渡り等で希少猛禽類が計画地を利用する頻度が高い時期には、月に2回以上の調査を実施すること。なぜなら、Douglasら2012)によると、調査回数を重ねる方が重ねないのに比べて、風車に対する鳥類の衝突確率の計算結果において低い数字が算出される、つまり真の値に近づくためである。
2.調査地点数は2地点にこだわらず、無駄のない範囲でできるだけ多くの地点数を設けること。
3.調査は12月も行うこと。なぜなら、計画地では12月もまだ希少猛禽類が渡っている可能性があるためである。

(2)その他
 1.本件のような大規模な計画においては、調査方法および調査結果の評価等に関する有識者検討会を開催、協議すべきである。
2.計画地周辺には準絶滅危惧種の鳥類オオジシギが多数繁殖している可能性がある。オオジシギはでディスプレイフライトを含む繁殖行動からバードストライクに遭う可能性が高いと考えられ、
実際に国内でもこれまでに複数のオオジシギが犠牲になっている。そのため、オオジシギの繁殖の有無、繁殖確認位置や行動、飛行高度の確認に最大限努めること。
3.本計画地は他事業者が計画を進めている計画地に近接していることから、鳥類および景観に対しての複合的な影響について他事業者とも打ち合わせをするなどして十分な調査を行うこと。
4.北海道北部には将来的に相当数の風車が設置される状況にあることから、調査にあたっては、風車設置地数を減じることを基本に調査を行うこと。
5.風車設置による景観への影響について、北海道北部の景観がきわめて人工物の少ない自然度が高いものであることを十分に認識し、単に数値化した評価にならぬよう調査を行うこと。