野鳥保護資料集 第30集「これからの風力発電と環境影響評価 ~再生可能エネルギーの導入と、生物多様性保全の両立を目指して~」

野鳥保護資料集 第30集「これからの風力発電と環境影響評価 ~再生可能エネルギーの導入と、生物多様性保全の両立を目指して~」

 気候変動対策のためには、二酸化炭素(CO2)の排出源となる化石燃料由来のエネルギーの使用をおさえ、風力や太陽光などによって生み出される「再生可能エネルギー」の利用を拡大する必要があります。中でも風力発電は、発電効率の良い有力な自然エネルギー源として世界各国で導入が進められていますが、立地条件によっては希少な野鳥の衝突事故といった環境影響を引き起こしており、生物多様性の保全との両立が課題となっています。
 当会では、早急に地球温暖化対策を施さなければ、将来的には広範に生物多様性が失われてしまうことになると考えています。また、2011年の東京電力福島第一原子力発電所による放射性物質の漏出事故以降、それまでは化石燃料に代わるエネルギーとして注目されてきた原子力発電が、長い将来にわたって自然界に甚大な影響を与えることが明らかになり、これらをふまえて、代替エネルギーとして実用的な技術レベルに達している風力発電を積極的に導入していくことに賛成しています。しかし、風力発電の導入にあたり、野鳥をはじめ野生生物の生息に影響を及ぼすといった、既存の生物多様性に大きな損失を与えることは避けなければなりません。
 スペイン、英国、デンマーク、ドイツなどの風力発電の先進国では、建設の前後に環境影響評価を行い、風車が野鳥に対してどのような影響を与えるか、情報収集を行っています。
 そこで、このたび、海外での風力発電による鳥類への影響評価手法の先進事例を紹介し、今後の日本での風力発電導入に関わる影響調査・評価手法の確立に役立てていきたいと、本書を作成しました。本書では、スペインでの風力発電の影響評価方法や実例に加え、最近業界内で話題に上る「累積的影響評価」の概念について解説しております。
 本書で紹介する調査・評価方法が普及され、科学的知見が蓄積されること、その知見をもとに風力発電と野鳥との共存がはかられ、風力発電が真にクリーンなエネルギー源となることを期待しております。

本書の構成
第一章:風力発電が野鳥やコウモリに与える影響を評価する
Guidelines for Assessing the Impact of Wind Farms on Birds and Bats (Version 4)
 SEO/BirdLife(スペイン野鳥の会)による、風力発電が鳥類およびコウモリ類に与える影響の評価手法に関するガイドライン。スペインにおける風力発電導入時の、不十分な環境影響評価が、いかに希少な鳥類やコウモリ類に影響を与えているか、従来の調査方法にどのような問題点があるか、そして今後、これらの課題を解決していくための望ましい影響評価のあり方が、SEO/BirdLife自らによる野外調査の結果に基づいて示されている。スペイン国内での様々な事例が盛り込まれ、スペイン国内の環境影響評価文書、また、国内外の既存文献等、風力発電が鳥類等に与える影響の評価手法や結果の集大成としてまとめられている。

第二章:累積的影響評価のガイドライン
洋上風力発電施設における、累積的影響評価のための指針となる諸原則

Cumulative Impact Assessment Guidelines -Guiding Principles For Cumulative Impacts Assessment In Offshore Wind Farms
 近年、英国を中心に導入されるようになっている洋上風力発電施設建設に係る環境影響評価のうち、特に複数の風力発電施設が同一地域に建設されることにより起きる累積的影響の評価について、リニュアブルUKなどがその概念を整理し、実際的な指針として考え方をまとめたものである。日本でも、北海道北部や北上高地などに風力発電施設の建設が集中しており、環境省が累積的影響評価の実施を事業者に求めるようになるなど、注目されているが、日本ではその手法以前に概念や指針がまだ整理されていない状況にある。本書で示される概念や指針は、陸上の風力発電施設建設に係る影響評価にも適用でき、今後の風力発電施設の導入と環境影響評価に、広く役
?つガイドラインとなることが期待される。

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