プレスリリース 2008.04.22

福井県あわら市における風力発電施設建設計画に対し設置場所の変更を要望しました

2008.4.22

 (財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博、会員・サポーター数約5万1千人)は、電源開発が福井県あわら市で計画している風力発電計画に対し、国の天然記念物であるマガンとヒシクイが風車に衝突するなどの悪影響を懸念し、設置場所の変更を求める要望書を提出しました。

 本件について、平成18年5月26日付けで環境省、文化庁、経済産業省、資源エネルギー庁、福井県、あわら市、石川県、北陸電力、電源開発へ、当会と福井県支部、石川支部との連名で要望書を提出しました。事業者の契約条件が整わずに計画はいったん延期になりましたが、今年になって条件が整ってきたために、事業者と電力会社で交渉が行われています。事業者は当会などに対し、追加調査に基づき改訂された環境影響評価について簡単な資料と口頭による説明を行ったのみで、具体的な保全措置に関する文書を未だ示していません。当会としては、新しい環境影響評価によっても鳥類へ悪影響のおそれがあるという意見に変更はないため、再度の要望書を提出いたしました。

 建設予定地は2つのIBA(野鳥重要生息地)サイト(片野鴨池:石川県加賀市、ラムサール条約湿地・県の天然記念物にも指定されている、九頭竜川下流域:福井県坂井市周辺)に挟まれ、この2つのサイトの間を往復する天然記念物マガンとヒシクイの毎回の飛行経路にあたっています。当会は2005年と2006年に、この建設予定地を通過するマガンとヒシクイの飛行経路に関して、調査を行いました。その結果、以下の4つのことが分かりました。

  1. 建設予定地を通る頻度は少ないものの、ひとたび通る場合は多数の個体が通過する。
  2. 当会による調査結果を使って事業者が行ったシミュレーションによると、風車を避けると仮定すれば年間で10.3羽が、避けないと仮定すれば年間で87.1羽が衝突する。ガン類は機敏な飛行が苦手であり、海外では実際にガン類が風車に衝突している事例が見つかっているため、風車を避けない可能性を十分に考慮する必要がある。
  3. 悪天候で視界の悪い日には鳥が風車に衝突する危険がさらに高まりますが、当会の調査結果では、採食地へ移動する際、雨や雪の日に建設予定地を多数の個体が通過していた。
  4. 積雪の多い年では積雪の少ない年と比べ、建設予定地を通る回数が増える。

これらのことから、予定地に風車を設置した場合、マガンやヒシクイが風車に衝突するなどの悪影響を与えることが懸念されます。

 地球温暖化防止対策は人にとっても野鳥にとっても大変重要なため、当会は風力をはじめとした再生可能エネルギーの導入には賛成ですが、貴重な動植物や自然を大きく破壊することには同意できません。そのため、片野鴨池に生息するマガンやヒシクイに悪影響を与えない場所に風車の建設位置を変更するよう、立地選択をやり直すことを事業者とその売電先の北陸電力株式会社に求めました。

要望書提出先

北陸電力株式会社 電源開発株式会社

本件に関する問い合わせ先

(財)日本野鳥の会サンクチュアリ室加賀市鴨池観察館:(TEL 0761-72-2200)
(財)日本野鳥の会自然保護室:(TEL 03-5436-2635)

日野鳥発第9号
福井野鳥2号
平成20年4月18日

電源開発株式会社 取締役社長
中垣 喜彦殿

東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
財団法人 日本野鳥の会
会  長 柳生 博

日本野鳥の会 石川支部
支部長 矢田 新平

日本野鳥の会 福井県支部
支部長 柳町 邦光

ラムサール条約湿地片野鴨池および国指定天然記念物
マガン、ヒシクイの保護に関する再度の要望

 平素より本会の環境保全活動に対し、ご理解ご協力をいただいておりますことを深く感謝申し上げます。
さて、福井県あわら市における風力発電施設建設計画に対しまして、平成18年5月26日付けで要望書を提出させていただきましたが、それ以降も私どもは鳥類への影響について、ガン類にしぼって調査を行ってきました。そして、自然環境への影響について検討を加え、御社や関係する自治体、学識経験者の方々とも議論してきました。
現在、御社と北陸電力株式会社との間で協定締結に向けた交渉が行なわれていることを伺っております。先日、私どもは御社より、鳥類に対する環境影響の予測と保全措置に関する説明を受けました。御社の説明は、2ページの簡単な資料と口頭によるものだったため、最終的な環境影響評価書により具体的な環境保全措置の計画を公表していただくことが必要と考えております。環境保全措置の考え方については、以前よりは様々な条件が考慮されていることをうかがえましたが、その根本となる環境影響予測については、マガンやヒシクイの生息環境を悪化させ、ラムサール条約湿地片野鴨池にも影響を与える恐れがあるという意見に変わりはありません。
こうした状況を踏まえ、再度、下記のとおり要望いたします。

風力発電施設の設置がラムサール条約湿地片野鴨池の生態系とそこに飛来する国指定天然記念物マガン、ヒシクイに悪影響を及ぼさないためには、立地選択の変更が必要です。今後、事業を進めるにあたってこのことを十分にご考慮ください。

理由は以下の通りです。

  1. マガンが建設予定地を通過する頻度は少なくても、大きな群が通過することにより多大な影響が生じる恐れがあります。
    私どもの調査では、あわら市北部を通過したガン類は、建設予定地ではなく北潟湖上空を多く通過していました。しかし、通過した群の平均個体数は、建設予定地上空を通過した場合が最も多くなっていました。(別紙図1、2)
    ヘトカー他によれば(文献1の①)、ヨ-ロッパにおいてはヒシクイ、マガンを含むガン類の衝突死の事例が見つかっているため、風力発電施設の設置場所をガン類が通過すれば、衝突死が生じる危険性があります。通過頻度は低くても群の個体数が多ければ、ひとたびマガンが通過した際に大きな影響が出る可能性があります。
  2. その年の積雪量によりマガンが建設予定地上空を通過する頻度が変化する可能性があります。
    ガン類の採食場所とあわら市における飛行経路には、関連性のある可能性があります。過去の観察事例から、積雪の多い冬には、積雪の影響が小さい海側の水田を採食地とすることが分かっており、平成17、18年度の私どもの調査結果はこのことを裏付けています。また、積雪の多い冬にはあわら市を通過する群は北潟湖上ではなく、より海岸側を通過しているという観察例があります。私どもの調査でも、積雪の多い平成17年度には、より多く海岸側(建設予定地上空)を通過していました。
    御社は、雪の多かった平成17年度には十分な回数の調査を実施しておらず、また、平成18年度に行った追加調査の結果を加えて環境影響を予測していますが、積雪が多い年の予測はできていないと考えられます。しかし上記のことから、積雪が多い年はより高頻度に建設予定地上空を飛行する可能性があり、このことを予測に盛り込む必要があります(別紙図3)。
    また、マガンがこれまで採食地としてよく利用していた福井県坂井市川崎周辺の水田は、採食範囲の中では西側の海岸よりに位置しますが、平成15年度から20年度にかけて基盤整備事業が実施されており、この間にマガンはこの区域で採食せず、より内陸側の区域で採食していました。この基盤整備事業が終了し、再び採食地とするようになった場合も同様に、調査実施時よりも高頻度に建設予定地上空を通過する可能性があります。
  3. 当会の調査結果を使用した場合のシミュレーションによる死亡数は、ガン類の保護上において無視できない規模です。
    御社は、環境影響予測において専門家の協力を得て死亡事故の年間発生数のシミュレーションを行っており、事業者のデータに加えて私どもの調査結果を盛り込んだ場合の予測も実施されています。
    マガンは風車を避ける行動をとる場合ととらない場合で、予測死亡数が変化します。私どもの調査結果も含めて推定を行った場合、避けると仮定すれば年間で10.3羽が、避けないと仮定すれば年間で87.1羽が衝突すると予測されました(2007年7月7日 あわら市主催の「風と生き物のシンポジウム」での講演資料より)。御社による説明によれば、マガンが風車を避けないことは考えられないとのご見解でしたが、1.でも述べたように、海外ではガン・ハクチョウ類が風車に衝突している事例が見つかっています(文献1の①)。そのため、影響予測においてはマガンが風車を避けない可能性を十分に考慮する必要があります。推定どおりであれば、マガンの個体群に対するマイナスの影響は多大であると考えます。
  4. 衝突死が少ない場合でも、障壁効果によるマガンの越冬個体数の減少を考慮する必要があります。
    ヨーロッパでは、ガン類が移動時に風力発電を避けるために飛行経路を変更させる「障壁効果」の事例も報告されています。この場合、衝突死は生じませんが、片野鴨池で越冬しているガン類に長期的に与える影響を考慮する必要があります。
    風力発電が鳥類に与える影響について総合的に考察したドレウィット他によれば(文献2)、障壁効果について、「発電所を避けるために渡り鳥が渡り経路を、そして留鳥は飛行経路を変えざるを得ないことも一種の生息地放棄である。これは重要な問題である。立ち並ぶ風車を迂回するために、飛行に費やすエネルギーが増加する可能性だけでなく、採食場所、ねぐら、換羽場所、繁殖場所のつながりが発電所によってとぎれる可能性もあるからである。種、行動様式、飛行高度、風車からの距離、風車の配置、風車の稼動状況、時間、風の強さや向きなどの要因によって、飛行方向、高度、速度のわずかな「手直し」から大きな迂回まで、影響の出方は大幅に変わる。迂回する距離が大きいと、発電所の反対側の地域を利用する鳥の数が減るかも知れない。」としています。採食地との往復に支障をきたした場合に、片野鴨池におけるガン類の越冬数の減少を招く恐れも考えられ、そうなればラムサール条約湿地である片野鴨池の生物学的な機能を間接的に低下させることになります。これはラムサール条約湿地の管理上も由々しき事態であると考えられます。

以上の4点を考え合わせると、より安全な環境保全措置は、片野鴨池に生息する水鳥に影響を与えない場所に風車の建設位置を変更するため、立地選択をやり直すことであると私どもは判断いたします。今回の協議の結果が、ラムサール条約湿地への悪影響といった将来への禍根とならぬよう、くれぐれも慎重なご判断をお願い申し上げます。

以上

日野鳥発第7号
福井野鳥1号
平成20年4月17日

北陸電力株式会社 取締役社長
永原 功殿

東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
財団法人 日本野鳥の会
会  長 柳生 博

日本野鳥の会 石川支部
支部長 矢田 新平

日本野鳥の会 福井県支部
支部長 柳町 邦光

ラムサール条約湿地片野鴨池および国指定天然記念物
マガン、ヒシクイの保護に関する再度の要望

 平素より本会の環境保全活動に対し、ご理解ご協力をいただいておりますことを深く感謝申し上げます。
さて、福井県あわら市における風力発電施設建設計画に対しまして、平成18年5月26日付けで要望書を提出させていただきましたが、それ以降も私どもは鳥類への影響について、ガン類にしぼって調査を行ってきました。そして、自然環境への影響について検討を加え、事業者である電源開発株式会社や関係する自治体、学識経験者の方々とも議論してきました。
現在、御社と電源開発株式会社との間で協定締結に向けた交渉が行なわれていることを伺っております。先日、私どもは事業者より、鳥類に対する環境影響の予測と保全措置に関する説明を受けました。事業者の説明は、2ページの簡単な資料と口頭によるものだったため、最終的な環境影響評価書により具体的な環境保全措置の計画を公表していただくことが必要と考えております。環境保全措置の考え方については、以前よりは様々な条件が考慮されていることをうかがえましたが、その根本となる環境影響予測については、マガンやヒシクイの生息環境を悪化させ、ラムサール条約湿地片野鴨池にも影響を与える恐れがあるという意見に変わりはありません。
こうした状況を踏まえ、再度、下記のとおり要望いたします。

風力発電施設の設置がラムサール条約湿地片野鴨池の生態系とそこに飛来する国指定天然記念物マガン、ヒシクイに悪影響を及ぼさないためには、立地選択の変更が必要です。今後、事業を進めるにあたってこのことを十分にご考慮ください。

理由は以下の通りです。

  1. マガンが建設予定地を通過する頻度は少なくても、大きな群が通過することにより多大な影響が生じる恐れがあります。
    私どもの調査では、あわら市北部を通過したガン類は、建設予定地ではなく北潟湖上空を多く通過していました。しかし、通過した群の平均個体数は、建設予定地上空を通過した場合が最も多くなっていました。(別紙図1、2)
    ヘトカー他によれば(文献1の①)、ヨ-ロッパにおいてはヒシクイ、マガンを含むガン類の衝突死の事例が見つかっているため、風力発電施設の設置場所をガン類が通過すれば、衝突死が生じる危険性があります。通過頻度は低くても群の個体数が多ければ、ひとたびマガンが通過した際に大きな影響が出る可能性があります。
  2. その年の積雪量によりマガンが建設予定地上空を通過する頻度が変化する可能性があります。
    ガン類の採食場所とあわら市における飛行経路には、関連性のある可能性があります。過去の観察事例から、積雪の多い冬には、積雪の影響が小さい海側の水田を採食地とすることが分かっており、平成17、18年度の私どもの調査結果はこのことを裏付けています。また、積雪の多い冬にはあわら市を通過する群は北潟湖上ではなく、より海岸側を通過しているという観察例があります。私どもの調査でも、積雪の多い平成17年度には、より多く海岸側(建設予定地上空)を通過していました。
    御社は、雪の多かった平成17年度には十分な回数の調査を実施しておらず、また、平成18年度に行った追加調査の結果を加えて環境影響を予測していますが、積雪が多い年の予測はできていないと考えられます。しかし上記のことから、積雪が多い年はより高頻度に建設予定地上空を飛行する可能性があり、このことを予測に盛り込む必要があります(別紙図3)。
    また、マガンがこれまで採食地としてよく利用していた福井県坂井市川崎周辺の水田は、採食範囲の中では西側の海岸よりに位置しますが、平成15年度から20年度にかけて基盤整備事業が実施されており、この間にマガンはこの区域で採食せず、より内陸側の区域で採食していました。この基盤整備事業が終了し、再び採食地とするようになった場合も同様に、調査実施時よりも高頻度に建設予定地上空を通過する可能性があります。
  3. 当会の調査結果を使用した場合のシミュレーションによる死亡数は、ガン類の保護上において無視できない規模です。
    御社は、環境影響予測において専門家の協力を得て死亡事故の年間発生数のシミュレーションを行っており、事業者のデータに加えて私どもの調査結果を盛り込んだ場合の予測も実施されています。
    マガンは風車を避ける行動をとる場合ととらない場合で、予測死亡数が変化します。私どもの調査結果も含めて推定を行った場合、避けると仮定すれば年間で10.3羽が、避けないと仮定すれば年間で87.1羽が衝突すると予測されました(2007年7月7日 あわら市主催の「風と生き物のシンポジウム」での講演資料より)。御社による説明によれば、マガンが風車を避けないことは考えられないとのご見解でしたが、1.でも述べたように、海外ではガン・ハクチョウ類が風車に衝突している事例が見つかっています(文献1の①)。そのため、影響予測においてはマガンが風車を避けない可能性を十分に考慮する必要があります。推定どおりであれば、マガンの個体群に対するマイナスの影響は多大であると考えます。
  4. 衝突死が少ない場合でも、障壁効果によるマガンの越冬個体数の減少を考慮する必要があります。
    ヨーロッパでは、ガン類が移動時に風力発電を避けるために飛行経路を変更させる「障壁効果」の事例も報告されています。この場合、衝突死は生じませんが、片野鴨池で越冬しているガン類に長期的に与える影響を考慮する必要があります。
    風力発電が鳥類に与える影響について総合的に考察したドレウィット他によれば(文献2)、障壁効果について、「発電所を避けるために渡り鳥が渡り経路を、そして留鳥は飛行経路を変えざるを得ないことも一種の生息地放棄である。これは重要な問題である。立ち並ぶ風車を迂回するために、飛行に費やすエネルギーが増加する可能性だけでなく、採食場所、ねぐら、換羽場所、繁殖場所のつながりが発電所によってとぎれる可能性もあるからである。種、行動様式、飛行高度、風車からの距離、風車の配置、風車の稼動状況、時間、風の強さや向きなどの要因によって、飛行方向、高度、速度のわずかな「手直し」から大きな迂回まで、影響の出方は大幅に変わる。迂回する距離が大きいと、発電所の反対側の地域を利用する鳥の数が減るかも知れない。」としています。採食地との往復に支障をきたした場合に、片野鴨池におけるガン類の越冬数の減少を招く恐れも考えられ、そうなればラムサール条約湿地である片野鴨池の生物学的な機能を間接的に低下させることになります。これはラムサール条約湿地の管理上も由々しき事態であると考えられます。

以上の4点を考え合わせると、より安全な環境保全措置は、片野鴨池に生息する水鳥に影響を与えない場所に風車の建設位置を変更するため、立地選択をやり直すことであると私どもは判断いたします。今回の協議の結果が、ラムサール条約湿地への悪影響といった将来への禍根とならぬよう、くれぐれも慎重なご判断をお願い申し上げます。

以上

別紙

マガンの飛行経路および坂井平野における採食地調査

調査の概略

 飛行経路に関する調査は、平成17年度3月7日から23日にかけて22回(朝5回夕方17回)、平成18年度11月5日から3月8日にかけて19回(朝14回夕方5回)実施した。調査の際には、建設予定地周辺と鴨池観察館内に調査員を配置し、相互に連絡を取りながら調査を実施した。
調査では8倍の双眼鏡、20倍から60倍の望遠鏡を用いて飛行しているガン類を探索し、発見した場合には地図上に飛行経路、群の個体数と時刻を記録した。調査結果の取りまとめにあたっては、建設予定地周辺を北潟湖上空、北潟湖と建設予定地の間の上空、建設予定地の東側上空、建設予定地の西側上空の4つに分け(図1)、それぞれの区域を通過した群数、個体数を比較した。なお、比較の際には平成17年度、18年度の結果を合わせた。のべ調査時間は約40.5時間、調査員数はのべ73人であった。
福井県の坂井平野におけるマガン採食地の調査は日本野鳥の会福井県支部によって実施され、平成17年度11月3日から3月13日にかけて計51回、平成18年度11月12日から2月11日にかけて計32回実施された。調査の際には採食していたガン類の群の位置、種、個体数を記録した。調査員はのべ108人であった。
調査の際には自動車で水田地帯を走り、採食しているマガンの群が発見された場合にはメッシュコード、個体数、行動、採食場所の環境を記録した。採食場所の図示の際には、年度ごとにそれぞれのメッシュにおいて記録されたのべ個体数を求め、1羽から1000羽、1001羽から5000羽、5001羽から10,000羽の3段階に分けて示した。

結果1.ガン類の飛行経路について

北潟湖上空を通過したマガンは平成17年度(2006年3月に5回)、平成18年度(2006年11月~2007年3月に19回)の調査中、53群を確認し、総通過群数の77.9%を占めた。一方、湖と建設予定地の間、山側の建設予定地、海側の建設予定地はそれぞれ9群(13.2%)、5群(7.4%)、1群(1.5%)であった(図2左)。
建設予定地上空を通過した群れの平均個体数は、湖上から海側の建設予定地の順に434.0羽、436.7羽、1306.8羽、130羽であった(図2右)。
すなわち、調査中にガン類があわら市北部を通過した回数では建設予定地ではない北潟湖上空を多く通過していたが、通過した群の平均個体数では、建設予定地上空を通過した場合が最も大きくなっていた。

結果2.ガン類の採食地と積雪の関係(日本野鳥の会福井県支部の調査結果)

積雪の少なかった年(平成18年度、図3左)と比較して、積雪の多かった年(平成17年度、図3右)では採食地はより西側に分布していた。そして、積雪の多い年においては建設予定地上空を通過する群が、積雪の少ない年より多く観察された。このことから、積雪の多い年にはより高い頻度で建設予定地上空を通過する可能性がある。
また、基盤整備中であったため坂井市川崎周辺の水田では採食群が見られなかったが、工事終了後に採餌が再開された場合、より高い頻度で建設予定地上空を通過する可能性がある。

文献1

Hoetker, H., Thomsen, K.-M. & H. Jeromin 2006. Impacts on biodiversity
of exploitation of renewable energy sources: the example of birds
and bats. Michael-Otto-Institut im NABU, Bergenhusen.
①衝突
ドイツではガン、ハクチョウ類に関して、1989~2004年に以下の衝突事例が見つかっている。
ヒシクイ 1
マガン 1
マガンまたはヒシクイ 1
ハイイロガン 1
カオジロガン 6
オオハクチョウ 1
コブハクチョウ 8
②障壁効果
障壁効果についてはガン類の総計で、影響があるとする研究事例が7、ないとする事例はなく、障壁効果があることが統計的に有意と認められる。
ヒシクイ 1
マガン 3
ハイイロガン 2
カオジロガン 1

文献2

Drewitt,L. & R. H. W. Langston. 2006. Assessing the impacts
of wind farms on birds. Ibis 148: 29-42
(邦訳 野鳥保護資料集第21集「野鳥と風車」9~24ページ)
風力発電所を避けるために、渡り鳥が渡り経路を、留鳥が飛行経路を変えざるを得ないことも一種の生息地放棄である。これは重要な問題である。立ち並ぶ風車を迂回するために、飛行に費やすエネルギーが増加する可能性だけでなく、採食場所、ねぐら、換羽場所、繁殖場所のつながりが発電所によって、とぎれる可能性もあるからである。種、行動様式、飛行高度、風車からの距離、風車の配置、風車の稼動状況、時間、風の強さや向きなどの要因によって、飛行方向、高度、速度のわずかな「手直し」から大きな迂回まで、影響の出方は大幅に変わる。迂回する距離が大きいと、発電所の反対側の地域を利用する鳥の数が減るかも知れない。(14ページ)

 障壁効果が個体群に重大な影響を与えることを示唆する調査報告はないが、間接的に個体群にまで影響の及ぶ可能性は考えられる。例えば、営巣場所と採食場所の往復に利用している飛行経路を発電所が事実上遮断した場合や複数の発電所が相乗的に作用して大きな障壁を作り出し、迂回路が数十kmになり、エネルギー消費の増加を招く場合などがそれに該当する。(15ページ)


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