プレスリリース 2011.08.29

2011年8月29日

藤原岳周辺のセメント採掘に関する環境影響評価準備書に対し
日本野鳥の会三重、日本野鳥の会滋賀、日本野鳥の会愛知県支部、
(公財)日本野鳥の会は、主にイヌワシ保全の観点から意見書を提出しました

日本野鳥の会 三重
日本野鳥の会 滋賀
日本野鳥の会 愛知県支部
公益財団法人 日本野鳥の会

 日本野鳥の会三重(事務局:三重県玉城町、代表:平井正志)、日本野鳥の会滋賀(事務局:滋賀県守山市、代表:石井秀憲)、と日本野鳥の会愛知県支部(事務局:名古屋市、支部長:新實豊)、公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京、理事長:佐藤正志、会員・サポーター数約5万1千人)は、8月26日までに、太平洋セメント株式会社に対して、三重県いなべ市における藤原鉱山およびその周辺次期原料山開発事業環境影響評価準備書に対する意見書をそれぞれ提出しました。

 藤原鉱山およびその周辺の新鉱区におけるセメント採掘の事業については、同社により環境影響評価のため各種調査などが進められ、7月19日に準備書が縦覧され、9月1日までの日程で意見の募集が行われています。
この採掘計画については、事業計画地周辺で絶滅の恐れのある猛禽類であるイヌワシ1つがいの生息が確認されていることから、日本野鳥の会三重と(公財)日本野鳥の会はその営巣や採餌への影響を懸念し、営巣地に近い治田(はった)鉱区の事業中止と、重要な採餌地を含むと思われる山頂鉱区における十分な調査・解析と影響回避を求めていました。

 今回は当該のイヌワシの行動圏が広がっていると考えられる滋賀県を活動範囲とする日本野鳥の会滋賀、及び隣接県である日本野鳥の会愛知県支部も加わり、4者で準備書について検討した結果、事業者である太平洋セメントが治田鉱区の事業を当面延期したこと、及び山頂鉱区において失われると考えられる採餌地を代償する環境保全措置を実施することを踏まえ、主に次のような点を述べています。

  1. イヌワシの営巣地保護のための治田鉱区の採掘延期を評価する。
  2. 山頂鉱区に関しては、現時点ではその影響を過小評価している可能性がある。評価あるいは工法の見直しが必要である。
  3. 環境保全措置においては、上記を踏まえ、最新の知見を踏まえたデータ収集を行い、専門家を交えた詳細な検討体制を設置して、モニタリング結果を踏まえながら実施する必要がある。

 三重県と滋賀県の県境の鈴鹿山脈においては、かつて6つがいのイヌワシが生息していましたが、現在は3つがいしか生息していません。そのうち、計画中の鉱区の直ぐそばで営巣するつがいは、もっとも繁殖成績の良いつがいであり、他の2つがいは、近年ヒナを巣立ちさせることができていません。また当該つがいは、三重県内で繁殖する唯一のつがいです。その意味で、このつがいの現在の生息環境を維持できなければ、鈴鹿山脈に生息するイヌワシ全体が危機にさらされると判断されます。
この指摘に対し、イヌワシの保全について前向きな姿勢を示した事業者を評価すると共に、生息・繁殖状況について影響を与える藤原岳山頂付近の平坦な草原環境の消失について、最新の知見を生かした保全措置を求めました。

藤原鉱山およびその周辺次期原料山開発事業環境影響評価準備書に対する意見書

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