プレスリリース 2012.06.08

2012年6月8日

日本野鳥の会が知床地域で広葉樹2,000本の植樹を実施
~シマフクロウがすめる森を目指し、知床地域で3年間に広葉樹6,000本の植樹を完了~

 公益財団法人 日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博 会員・サポーター数:約5万人)は、知床地域のシマフクロウ生息地を保全するため、本年6月5日から6月7日の期間に、当会が設置した「持田野鳥保護区シマフクロウ知床(2009年設置)」内の森林伐採跡の裸地約1haに、ミズナラ・ハルニレ・イタヤカエデ・カツラの4種類の広葉樹2,000本を植樹しました。
 この植樹活動は、当会が進める「シマフクロウの森を育てよう!プロジェクト(以下、同プロジェクト)」の一環として、全国の企業や個人から1区画25万円の協賛金を募集して実施している植樹プログラムです。同プロジェクトは、2009年に根室地域の野鳥保護区で始動し、2010年からは知床地域で進めてきました。今回、残る裸地に広葉樹2,000本の植樹を実施したことで、知床地区で広葉樹6,000本の植樹が完了しました。今後、植樹した苗木はシマフクロウがすめる未来の「森」に育つよう、継続して管理を行っていきます。
 当会では、シマフクロウをはじめとする希少な野鳥の生息地の保全を進めるとともに、植樹などの森づくりを通して、森林内の生物多様性を向上させる活動を推進しています。百年先にシマフクロウがすめる森を目指して、継続して適正な管理を行なうことにより、豊かな森林環境を復元していきます。

シマフクロウの森を育てよう!プロジェクトについて

 百年先、シマフクロウが住める森を目指して伐採跡地や放牧跡地へ植樹を行ない、生物多様性に富んだ森をつくります。また、同時に森林を育てることで二酸化炭素を吸収させるという、当会独自のプロジェクトです。
当プロジェクトは、
①森林内の生物多様性の向上
②森林の育成による二酸化炭素吸収の促進
③希少種のシマフクロウの保護
の3つの効果を同時に進めることを目標に、2009年からスタートしたものです。
(詳しくはホームページ http://www.wbsj.org/nature/hogoku/fishowl/index.html
日本野鳥の会TOP→当会の活動→自然保護→野鳥保護区→シマフクロウの森を育てよう!プロジェクト

Tシャツを買ってシマフクロウの森を育てよう!2012 ~キャンペーン「千人の森」2012~

 「シマフクロウの森を育てよう!」プロジェクトでは、Tシャツ1枚(2,980円)の 売上のうち250円が、同プロジェクトに寄付されるという”キャンペーン「千人の森」2012″を実施しています。千人の方がこのTシャツを購入されることで、知床地域のシマフクロウ保護区にある植樹地(20区画)のうちの1区画で、植樹とその後の管理を行うことができるというものです。「プロジェクトには共感しているけれど、一人で1区画分を寄付するのは難しい」という方々の想いを1,000人分集めて1区画分にしよう!という企画で、昨年に実施した同キャンペーンでは、1,000人の方から暖かいご支援をいただきました。今年も、5月31日時点で、すでに428名の方がTシャツを購入されており、引き続き1,000人を目指して賛同をお願いしたいと考えています。Tシャツを通じて集まった「千人」の想いが、シマフクロウが生息する未来の知床の「森」を育てていきます。
 Tシャツには村上康成氏デザインのプロジェクトロゴマークがプリントされています。また、右裾のタグには、シマフクロウの森づくりに協力した1,000人のうちの1人である証として、0001~1000までのひとりひとり異なるシリアルナンバーがついています。

●「千人の森キャンペーンTシャツ」
寄付つきTシャツ「千人の森」 販売価格:2,980円(税込)
左)男女兼用(パープル)、右)婦人用ブラウン
Tシャツのイラストは、日本野鳥の会のシマフクロウ保護事業のシンボルマーク。子どもから大人まで人気の絵本作家の村上康成氏の作品です。

●Tシャツに付いている
シリアルナンバータグ


●「千人の森キャンペーン」と「Tシャツ」についてのお問い合わせは
公益財団法人 日本野鳥の会 普及室 販売出版グループ
TEL:03-5436-2626  FAX:03-5436-2636  メール:[email protected]

オフセット・クレジット(J-VER)制度を活用した復興支援に係る事業者支援に採択されました

 「シマフクロウの森を育てよう!プロジェクト」では、将来のシマフクロウの生息地作りや生物多様性の向上、CO2の削減(吸収)のために、北海道東部で苗木を植え、森を育てています。しかしその際にも、植樹地の整備、苗木の運搬、下草刈りなどさまざまな場面で機械や車両を使用し、CO2が発生します。
 そこで、このプロジェクトで発生するCO2をオフセットするために、環境省が公募する「被災地産J-VER 等を活用したカーボン・オフセット認証取得に係る事業者支援事業」に応募しました。これは、自分たちが出したCO2を東日本大震災の被災地から生まれた排出権(オフセット・クレジット)で相殺するというしくみで、シマフクロウ生息地の失われた自然を回復するためのプロジェクトが、被災地の復興支援にもつながります。この”人と、環境にやさしい植樹”というユニークな取り組みが評価され、今回、支援事業の一つとして採択されました。

第三者評価のある協賛型植樹プログラム

 当プロジェクトでは、植え付けや植樹後5年間の管理経費を「協賛金」の形で企業や個人から募集し、森づくりを実施しています。この協賛は、区画単位(広葉樹100本/1区画)でお願いし、ご協賛いただいた企業や個人には、植樹証明書を発行しています。現在、現地に駐在するレンジャーが、定期的な巡回による細やかな観察のもと、適切な管理を継続して行っています。
 これら一連のプロジェクト活動は、(社)環境プランニング学会(会長:山本良一、東京大学名誉教授)から第三者評価を受けています。苗木は、生物多様性を乱さないものが選択されているか、植樹作業に伴う廃棄物の処理などは適切か等を、同学会から現地調査を含む監査を受けています。2011年に実施した根室地域、及び、知床地域での本プロジェクトは、監査の結果、同学会からの「優良」との評価を得ています。
国内でもさまざまな植樹プログラムが行なわれていますが、このような第三者評価を受けているものは多くありません。

2012年の植樹について

 知床地域のプロジェクト実施地において、2012年6月5日から6月7日に植樹を実施しました。植樹を行ったのは、当会が2009年に設置した「持田野鳥保護区シマフクロウ知床」(面積15ha)の一部に残された森林伐採跡の裸地です。今回の植樹では、この保護区内の裸地1haに、地域内で採種・育苗されたミズナラ・ハルニレ・イタヤカエデ・カツラの4種類の広葉樹を各500本ずつ植樹しています。なお、シマフクロウの保護上、保護区の位置や植樹場所については公表していません。

野鳥保護区事業について

 野鳥の生息地の保全を目的として、当会では「野鳥保護区」を設置しています。これまでに北海道東部を中心に33か所、2938.9haを買い取りや協定により確保してきました。これは東京ディズニーランドが59個入る大きさで、国内の自然保護団体が設置した保護区としては最大級の面積になります。この土地の買い取りの財源は、会員をはじめとする方々からの寄付で成り立っています。当会の最初の野鳥保護区は、1987年に根室に設置したタンチョウ営巣地の営巣地7.6haでした。それ以降、タンチョウ営巣地を中心に順次拡大を続け、タンチョウ保護では一定の成果が得られたため、2004年からシマフクロウの生息地の買い取りも開始しました。野鳥保護区が集中する北海道東部では釧路地区と根室地区に事務所を置き、当会の専従職員を常駐させ、保護区の巡回監視にあたっています。

持田野鳥保護区シマフクロウ知床について

 2009年2月に購入した知床地域の山林、面積15ha(151,476㎡)で、この周辺ではシマフクロウ1つがいの繁殖が確認されています。知床半島は、国内で最も多くのシマフクロウが生息する重要な地域です。半島の先端側の約半分が国立公園や世界自然遺産として保護されているものの、それ以外のほとんどは法的な保護がされていません。当野鳥保護区も、半島内ではありますが法的保護がされてない地域であり、今後もこの地域を対象に野鳥保護区設置を進める計画です。

シマフクロウ Ketupa blakistoni blakistoni について

シマフクロウの生息分布
この他、大陸に亜種マンシュウシマフクロウが生息している

 シマフクロウは極東地域に狭い分布域をもち、我が国では、北海道および北方領土に生息しています。全長70㎝、翼を広げると約180cmの世界最大級のフクロウです。河川および湖沼で魚類やカエルなどを捕食し、広葉樹の大木の樹洞に営巣します。20世紀初頭までは、北海道全域に分布していましたが、森林伐採による営巣木の減少と河川改修によるエサの魚類の減少等により、現在、北海道東部を中心に約140羽50つがいほどが生息しているに過ぎません。
 また、現生息数の約半数が知床に生息し、残りが日高地域、根室、十勝地域に散在して生息しています。知床地域以外では人による、なんらかの手助けにより生息が維持されている状態がほとんどです。釣り人や心ない撮影者などにより、採食や営巣が妨害されている生息地もあります。人間の生活圏に近い場所では交通事故や感電事故に遭って死んだり、生息地が分断・孤立化していることにより、繁殖地から巣立った若い個体がうまく分散できず、近親交配が起こりやすい状態にあります。

<シマフクロウの保護指定状況>
・絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法) 「国内希少野生動植物種」
・文化財保護法 「天然記念物」
・改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物‐レッドデータブック‐ 2 鳥類 「絶滅危惧IA類(CR)」
・IUCN(国際自然保護連合)レッドリスト 「EN C2a(i)」


公益財団法人 日本野鳥の会について (詳しくはホームページ http://www.wbsj.org

 自然と人間が共存する豊かな社会の実現を目指し、野鳥や自然のすばらしさを伝えながら、自然保護を進めている民間団体です。全国5万人の会員・サポーターが、自然を楽しみつつ、自然を守る活動を支えています。

・創設:1934年  ・創設者:中西悟堂  ・連携団体:全国90団体
・2011年4月、「財団法人日本野鳥の会」は「公益財団法人日本野鳥の会」へ改称しました。

<野鳥や自然を大切に思う心を伝えます>

  • 全国10か所のサンクチュアリやバードプラザを訪れる、年間約30万人に野鳥や自然のすばらしさを伝えています。
  • 東京バードフェスティバルなどの大規模イベントへの参加や野鳥図鑑などの発行を通して、バードウォッチングの楽しさを伝えています。
  • バードウォッチングの指導・案内のできる人材の育成を進めています。
  • <野鳥や自然を守ります>

  • 北海道東部のタンチョウの営巣地を中心に、土地の買い取りや協定により野鳥保護区として保全しています。現在、保護区の面積は33か所、2938.9haで、自然保護団体としては国内最大級です。
  • 鳥類の生息地として保全が急がれる場所を明確にするため、国際的に重要な鳥類等を指標にした重要度の基準(IBA基準)を満たした野鳥の重要な生息地の選定、リストの公表を行ない、保全の推進、ネットワーク化を行なっています。
  • <公益財団法人です>

  • 日本野鳥の会は、内閣総理大臣より「公益財団法人」に認定されており、個人や法人が支出した寄付金に対し「特定公益増進法人」として所得控除や損金算入等の税制上の優遇措置が設定されています。

  • 本リリースの配布先

    ・環境省記者クラブ
    ・環境記者会
    ・根室市役所記者クラブ

    公益財団法人日本野鳥の会
    (本件に関するお問い合わせ)
    野鳥保護区事業所
    担当:松本 潤慶(まつもと じゅんけい) 小畑 拓也(おばた たくや)
    〒086-0074 北海道根室市東梅115-1 TEL/FAX:0153-25-8911  携帯電話:080-1179-2786
    メール:[email protected]
    (協賛申し込み先)
    保全プロジェクト推進室
    担当:田尻 浩伸(たじり ひろのぶ) 竹前 朝子(たけまえ あさこ)
    〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル TEL:03-5436-2634 FAX:03-5436-2635
    メール:[email protected]


    図.森林内における生物多様性向上のイメージ


    図. 千人の森キャンペーン区画に設置したTシャツ型看板
    ※プレス用に以下のサイトに掲載されている写真をお使いいただけます。
    >>画像ダウンロード先 URL: http://yacho-hogoku.seesaa.net/


    図.森林伐採跡の裸地(植樹実施地)


    図.持田野鳥保護区シマフクロウ知床
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