財団法人 日本野鳥の会
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当会の活動

レンジャーの養成

レンジャー、仕事を語る。 〜自然を調査する〜

 
松本 潤慶
2004年にインターンレンジャーとしてウトナイ湖サンクチュアリに勤務。
2006年より2008年3月まで加賀市鴨池観察館担当レンジャーとして勤務。

*調査データをもとに、みんなで「人と自然が共に生きる鴨池」を目指す*
加賀市鴨池観察館 レンジャー 松本 潤慶

■加賀市鴨池観察館■
 加賀市鴨池観察館は石川県加賀市の天然記念物「片野鴨池」のほとりにあります。片野鴨池は、日本有数のガン・カモ類の越冬地で、水鳥の重要な渡来地を守る国際条約であるラムサール条約の登録湿地にもなっています。当会は鴨池観察館の指定管理者としてレンジャーを2名配置しており、様々な活動を行っています。

 

――鴨池観察館での仕事を教えてください。

 鴨池観察館(以下鴨池)のレンジャーは、チーフレンジャーと僕の2名という最小のチーム構成です。基本的な仕事の分担はしていますが、どちらかが休暇をとったときには、当然ひとりでオールマイティに仕事をこなさないといけません。“専門職で何でも屋”という、ちょっと変わった仕事内容だと思っています(笑)。もちろん調査や解説の仕事もふたりでやっています。

――鴨池のレンジャーはどんな調査をするのですか?

鴨池で調査の準備をする松本

 鴨池に渡ってきたガンやカモを毎年数えて変化を知るためのモニタリング調査や、カモたちが周辺の水田環境をどのように利用しているかを知るための行動調査など、いろんな調査をしています。
現在、僕が力を入れておこなっているのは、環境省から委託を受けている「オオクチバス等防除モデル事業」の調査です。鴨池に生息しているオオクチバスなど外来種の生態を調べ、駆除の方法とその効果を調べる調査です。


――なぜ、鴨池でオオクチバス防除のための調査を?

鴨池のオオクチバスとブルーギル

 鴨池は、水鳥にとってはまさに聖地のような場所です。と同時に、鴨池は昔から地域に暮らす方にとって、なくてはならない場所でもあったのです。農家の農業用水として、カモの伝統猟の猟場として、300年以上の間大切にされてきました。鴨池に赴任した当会のレンジャーは、鴨池に関わる多くの地域の方々と、鴨池の今後について話し合いつづけてきました。その結果、みんなで協力しながらこれまでのように「人と自然が共に生きられる片野鴨池」を続けていこう、という大きな目標を掲げることになりました。
まずは、水鳥の楽園を支えている水域の生態系を健全にしないといけない。そのための調査を考えているところに、ちょうど環境省から生態系を乱している要因であるオオクチバスの調査と防除の話があり、これだ、ということになったのです。

――具体的にはどんなことをやるのですか?

オオクチバス防除用の
仕掛けを設置する

 最終的な目的はオオクチバスの防除ですが、まずは生態を詳しく調べるところからはじまります。オオクチバスが鴨池のどこに、どのくらいの量で生息しているのかを調べるために、毎月、同じ場所、同じ方法で魚を捕まえて、変化を調べたりします。
 データを取って、そこから相手の生態が明らかになってくると、今度はその生態にあわせて防除の方法を考え、実際に試してみます。たとえば、生態調査でわかってきたオオクチバスが障害物に寄ってくる習性を利用して、障害物と網を組み合わせた捕獲用の仕掛けをつくってみました。実際に試した結果、障害物の少ない開けた水域では有効だということがわかりました。
このように、考案した方法がどの程度有効なのかも、ちゃんと調査を積み立ててゆき、次につながる重要なデータとします。

――なるほど。調査をしていておもしろいと思うところは?

 調査は、ある程度「たぶん、こうじゃないか」という仮説を立てながらおこないます。実際のデータが集まってくると、当初の仮説のとおりだったり、予想外のことがわかったりします。この辺はわくわくしますね。
また、防除の方法や捕獲用の仕掛けを考えるときは、鴨池で活動しているボランティアさんと一緒に頭をひねります。調査データを基に、共にアイデアを搾り出して作った仕掛けが成功したときは、喜びも倍になります。大きな達成感を得られる瞬間ですね。
 この調査は環境省のモデル事業なので、全国の同じような悩みを抱えている湿地生態系のお手本となる必要があります。鴨池の試みから、全国で参考とされるデータを作っていくことへの手ごたえも感じています。

――では、調査をしていて苦労することや大変なことは?

データに基づいた仕掛けを
作るのも大事な仕事だ

 相手は水の中に棲んでいるので、いろいろ悩んで結局、池に潜ってみることになりました。ウェットスーツを着込んで池の中にもぐり、泥まみれになりながら調査や防除の作業をおこなうんです。でも、調査に伴う作業は、どれも大変ですが刺激的で楽しくもあり、つらさを感じることはほとんどないですね。
 反面、調査の作業に入るまでの準備期間には苦労することが多いです。鴨池で水中を調査できるのは夏の短い期間に限られます。いろんな調査や実験をやることになるので、委託主である環境省への説明や許可申請、鴨池の水利権をもつ地元の農家の方々への配慮や調整などもおこなわなければなりません。いろんな方の協力が必要なのですが、自分の力不足もあって理解をいただくために奔走しています。フィールドで調査の作業をするだけではなく、これも大切なレンジャーの仕事なんです。

――あなたにとって、レンジャーの仕事の魅力と難しさは?

ボランティアさんと共に活動は
深まってゆく

 レンジャーの仕事はほんとうに多岐に渡ります。僕は大学時代に魚の調査をやっていた経験が、偶然ですが今に生きています。なんでも役立てられる可能性があって、同じように様々な特技を持つ仲間のレンジャーから、現場を越えて刺激をもらえるところは魅力的です。
鴨池は歴史が古く、鴨池を巡って多くの方が関わっています。そこに20数年前にヨソモノのレンジャーがやってきたときは、あんまり歓迎されていなかったようです。僕はいませんでしたが(笑)。でも、少しずつ活動を理解していただき、これからの鴨池をどう利用してゆくか、どう守るかいっしょに考えたり作業したりできるようになってきました。地域の方とレンジャーが協力しながら、一緒になって鴨池を中心とした自然を守ってゆく・・・僕はここにレンジャーとして働くことの魅力を感じます。同時に、もっともデリケートで難しい部分だとも思っています。まだまだ精進しなければ(笑)。
 レンジャーとは、実は自然より、人や地域を見ている時間が長いんだと実感しています。それが楽しいとも感じています。

――ありがとうございました。(2008.3.28)

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レンジャーに聞きました 「私がレンジャーになったきっかけは・・・」

レンジャー 松本潤慶の場合

 僕は小さい頃から生き物が好きでした。小学生のときに、当会の大畑孝二レンジャーの著した「ぼくは野鳥のレンジャーだ(ひくまの出版)」を読んで、強く憧れました。「僕も将来はレンジャーになりたい!」という気持ちは、その後もくすぶり続けながらも、中高生になるに従って薄れていきました。

大学生になって、やっぱり生き物好きな自分に気づき、野鳥の研究をしたいと思ったのですが、残念ながら学ぶ機会がなく、魚について学ぶことになりました。やがて自分の将来像を真剣に考えるようになり、「生き物を調べる研究者じゃなくって、生き物を守るレンジャーになりたい」という気持ちが強くよみがえってきたんです。

 「レンジャー」を職業としようと考えたとき、国立公園のレンジャーと小学生の頃本で読んだ当会のレンジャーを思い浮かべ、どちらを目指そうかとずいぶん迷いました。あるとき日本野鳥の会が「レンジャー養成講座」を実施していることを知り、どんな仕事なのか知りたかったのでとにかく受講してみることにしました。

 受講してみて、初めてレンジャーとはこういうものだったのか、とわかった事も多かったです。レンジャーを目指す決意を固め、これを機に当会のインターンレンジャーに応募しました。運良く書類選考をパスすることができ、ウトナイ湖サンクチュアリで2年間のインターン生活を送りました。
 このインターンレンジャーを修了後、当会レンジャーの採用試験に合格して、現在の仕事をしています。

これからレンジャーを目指す方へ 

 当会のレンジャーの仕事は、土木作業から来園される方への解説や対応、地域の方々との連携や調査研究にいたるまで、本当に多岐に渡ります。専門的で大変な職業だな〜と思われるかもしれませんが、「野鳥」と直接は関係なくても、それまで培ってきた経験や特技などを十分生かすことができる、ある意味面白い職業でもあります。
 レンジャーに必要なのは、夢と情熱、そしてチャレンジ精神です。こんなパワーを持った人が仲間になるのを待ってます!

レンジャー養成講座はこちら>>>

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レンジャー、仕事を語る。 〜環境を管理する〜

 
萩原 洋平
2002年に横浜自然観察の森でアシスタントレンジャー、2003年より姫路市自然観察の森レンジャーとして勤務。
2004年より東京港野鳥公園レンジャー。

* 野鳥にも来園者にも喜んでもらえる環境をつくりだす *
東京港野鳥公園 レンジャー 萩原 洋平

■東京港野鳥公園■
 東京港野鳥公園は、東京湾の埋立地に自然発生した池や草原環境を整備して、1989年に開園しました。24.8ヘクタールの園内の西側は里山的環境、東側は干潟を中心とした環境が復元されており、年間約120種類の野鳥が観察されています。
 当会は指定管理者としてレンジャー6名を配置し、様々な活動をおこなっています。

 

――東京港野鳥公園での仕事を教えてください。

 東京港野鳥公園(以下野鳥公園)は、総勢6名のレンジャーが仕事をしています。レンジャーは、来園する方や団体さんへの解説などの対応、野鳥をはじめとした生物の調査、公園の自然環境を計画的に管理する環境管理作業などを役割分担しておこなっています。私は解説などの環境学習と、環境管理を担当しています。

――野鳥公園の環境管理の仕事とは、どのようなものなのですか?

管理している野鳥公園の池と萩原

 野鳥公園のある場所は、昔は遠浅の海でした。1960年代から始まった東京湾の埋め立てによってできた土地なのです。でも、放置された埋立地に雨水が溜まって池ができ、やがて周辺には草が茂って草原になりました。東京湾の干潟を追われたシギやチドリ、草原で暮らす鳥たちが、この埋立地にたくさん訪れるようになったのです。その後、市民運動によって野鳥公園として整備され、現在に至ります。
 このようにしてできた公園なので、人工的に作られた環境の上に偶然にできあがった二次的な自然です。環境管理の仕事は、この「偶然」にできた環境を、野鳥にとって生息しやすい環境として維持したり、また必要であれば計画的に作ってゆく仕事ですね。

――具体的には、どんなことをしているのですか?

耕運機で泥湿地を維持するための
作業をする

 環境管理を大きく分けると2つあります。ひとつは野鳥公園を利用する生き物のための管理作業です。生き物の生活に配慮して、池や水路の水量を管理したり、場所を選んで草原を残したり、湿地を維持するための作業をします。たとえば、池の周りは放置しておくとヨシや背丈の高い草が繁茂してしまい、シギやチドリ、カモの餌場や休息場となる泥湿地がなくなってしまいます。そこで計画的に区画を決め、耕運機を使って泥を耕しつつ、大きな草の根を砕く作業をおこないます。こうすることで泥湿地が草原にならないようにしています。
 もうひとつは、来園者のための管理作業です。観察路の安全確保のため、倒れる危険がある木などを除去したり、野鳥を観察しやすいポイントをつくるために草刈りや剪定の作業をします。ただ利用に便宜を図る作業ではなく、生き物の暮らしに邪魔にならないようにしながら、来園者が生き物と出会いやすいように配慮します。

――ようするに「生き物のために野外で環境に手を入れる作業」なのですね。

管理された泥湿地を
利用するカモ類

 そうですね。「野外で汗水流す土木作業」が近いかもしれません(笑)。ただ、環境管理では、事前に調査をしてきちんと目標とする環境を設定し、管理作業をした後は当初の目標に届いているのか事後調査して効果を測ることが大切です。
さきほどの耕運機を使った泥湿地の管理でいうと、作業後にシギやチドリ、カモたちに餌場や休息場として利用されているかを調査して、予定通り利用されていれば成功といえます。逆に、利用が少ない、またはないようなら失敗です。でも事後調査によってその原因がわかったら、次の管理計画に生かすことができるんです。


――なるほど。環境を管理していて、やりがいに感じることは?

 野鳥公園の環境管理は、野鳥と来園する人、両方にとって利用しやすい環境を目指しています。野鳥たちが利用しやすいように配慮した環境を作ってみて、実際に利用してくれた時は、「やった!」という気持ちになります。また、そうやって利用している野鳥たちを、来園した子どもたちが観察して喜んでくれると、野鳥と子どもたちの出会いを作ることができたと実感します。これまでの苦労が報われる瞬間ですね。

――では、反対に環境管理で難しいと感じることは?

試行錯誤をしながらも
管理に汗を流す

 たくさんあります(笑)。環境管理は試行錯誤の連続で、いつもどんな環境を作ってゆけばよいのか悩んでいます。埋立地の人工環境ゆえの弱点でもあるのですが、水の管理はとても難しいです。野鳥公園の池の水源は雨のみで、その年の気象状況によっては水量が激減します。こうなると冬場にカモたちの利用が減ってしまいます。もちろん、カモの利用が減る要因は他にも考えられますから、レンジャーは様々な自然要素を相手に管理計画を立てないといけません。
また、レンジャーが生き物のために観察路の側に草地を残しておいても、来園された方によっては「見苦しい、管理の手抜きだ」と言われる場合もあります。一方で、広場の草刈を行うと、「虫の声が聞こえなくなった、市街地の公園とは違うのだから」と言う声も聞きます。
人の感覚はそれぞれなので難しい問題ですが、こんな時はレンジャーが管理した意図を伝え、利用される方の意見もきちんと伺い、調整するよう心掛けています。このとき、レンジャーは物言わぬ生き物たちの代弁者であるべきだと思っています。

――あなたにとって、レンジャーの仕事の魅力と難しさは?

野鳥公園の干潟で来園者に
解説する萩原

 私は、どんな仕事を担当していても、人と関わる部分が最も魅力的だと感じています。レンジャーの仕事では、人と関わらない部分はありません。企画を議論しているときに同僚のレンジャーから、時にはイベントに参加された来園者から、関わることで互いに気づき学びあうことができる。これは大きな魅力だと思っています。
 一方で、いろんな能力が求められるレンジャーの仕事は、逆にいえば「これができればいい」という正解がないと感じています。プロのレンジャーとして、担当している仕事ひとつの成功で満足するわけにはいきません。私は、社会に自然を守る必要性を認めてもらえる仕事を目指すべきじゃないかなと思っています。
自分はレンジャーという仕事の中で、何をどこまでやるのか。これを決めてゆくバランス感覚は、難しいですがとても大切な部分だと感じています。

――ありがとうございました。(2008.4.8)

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レンジャーに聞きました 「私がレンジャーになったきっかけは・・・」

レンジャー 萩原洋平の場合

 私は子どもの頃から自然の中で遊ぶのが大好きでした。釣りも大好きで、日々近所の川や林であそんでいました。小学校5年生のとき、いつもの「遊び場」であるはずの川や林が、だんだん荒れてきていることに気づき、「このままじゃだめだ」と思いました。ちょうどそのころ、自分の「遊び場」のひとつである相模川にやってきた、自然を守ろうとする大人たちと出会いました。彼らとの交流の中で、漠然とですが、自分の中に自然を守ることのやりがいや楽しみを見つけていきました。

 こんなことが原体験としてあったせいか、自然を守ることは自分のライフワークとしてやっていくもの、と思っていて、“プロ”のレンジャーになりたいとはまったく考えていませんでした。やがて大人になり、休日を使って横浜自然観察の森でボランティア活動をしながら、「子どもたちの生活の中で、自然のことをもっと伝えたい」と考えて保育士の仕事を選びました。きっと子ども時代の経験が影響していたんだと思います。

 保育士として仕事をこなす毎日の中で、いつしかこの仕事では子どもたちに自然を伝えることには限界があると感じ、もう一度自分のやりたいことを考え直すために退職しました。ちょうどそのころ、横浜自然観察の森でパートタイムのレンジャーをしてみないかと声をかけられ、迷いながらも“プロ”としてやってみることを決意しました。
 変な話ですが、プロとしてレンジャーをやってみると、考えていたよりもずっとおもしろい!と感じました。レンジャーになってからの方が、この仕事をやっていきたい、と強く思うようになりました。

これからレンジャーを目指す方へ 

 レンジャーは、自分が今まで培ってきた経験を全て生かして働ける職種です。今の私がまさにそうです。
また、この仕事をはじめると、様々な場面で自分の考えや人の意見をまとめ上げる作業が求められます。難しいことではありますが、互いの考えが磨きあがり形になる、とてもやりがいのある作業ですよ。
自然に目を向けることはもちろんですが、人や社会にも目を向けることの大切さを忘れないでください。人を動かさないと、自然を守ることはできないのです。
前向きに取り組む姿勢も大切です。あきらめないで、夢を実現させましょう。

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レンジャー、仕事を語る。 〜自然を解説する〜

渡辺 初恵
2003年にアシスタントレンジャーとして横浜自然観察の森に勤務。
2005年より同自然観察の森で環境教育担当レンジャーとして勤務。
 

* 自然の大切さを伝えたい。 来園者の反応がエネルギーになる *
横浜自然観察の森 レンジャー 渡辺 初恵

■横浜自然観察の森■
 横浜自然観察の森は、市民が自然にふれあう公園として1986年に開園した横浜市の施設です。ここには多くの野鳥や動物が暮らす豊かな森と、森を巡る4つの自然観察路と拠点施設である自然観察センターがあり、年間約15万人の来園者が訪れています。横浜市の委託により当会のレンジャーが6名常駐し、「人も生き物もにぎわいのある森づくり」をテーマに、人と自然のふれあいの場づくり、生物多様性に富んだ森づくりをおこなっています。


――横浜自然観察の森での仕事を教えてください。

 横浜自然観察の森(以下自然観察の森)で働くレンジャーは私を含めて6名います。それぞれ主に担当する仕事があり、私は環境教育分野の仕事を担当しています。ただし、すべて私一人でやっているわけではありません。他のレンジャーの協力を得ながら進めています。
6名のレンジャーはそれぞれ専門分野を担当していますが、常にミーティング等で仕事の情報を共有するようにしています。

――自然観察の森での解説の仕事とは、どのようなものなのですか?

観察センターで解説するレンジャー

 自然観察の森では、訪れる方の年齢や関心にあわせた解説を提供できるようにデザインしています。
実際の解説活動は、大きく分けて2つの方法でおこなわれています。ひとつは来園された方にレンジャーが直接語りかけるスタイルのもの。訪れた方に最新の自然情報をお話ししたり、野外を案内する観察会を開くなどがこれにあたります。
 もうひとつは屋内の展示物や野外解説板、セルフガイドのパンフレットなど、「物」を通じて間接的に来園者に働きかけるものです。自然観察センターのなかには様々な展示物があり、レンジャーが直接語らなくても楽しみながら学ぶことができます。ネイチャートレイル(自然観察路)には野外解説板を設けて、自然のおもしろさや不思議さに気づいてもらえるよう促しています。これらの解説活動を、レンジャーは企画から実施まで、展示や解説板の場合は、その作製や設置までを一貫して担当します。

――解説をするために、具体的にはどんなことをしているのですか?

観察会には多くの来園者が
参加する

 ひとつの観察会の実施を例に、簡単に紹介しましょう。最初におこなうのは企画を立てることです。いつ、どこで、どんな人を対象にして、どんな自然素材を使った観察会をやるか計画するのです。これは、他のレンジャーにも企画を見せて意見をもらいながら煮詰めてゆく、すごくエネルギーのいる作業です。
無事に企画ができあがったら、今度は準備に入ります。参加者を集めるために観察会の広報をしたり、当日訪れる場所を下見して、詳細なシナリオを作ります。観察会中に使う道具や資材をそろえたり、天候や安全面への配慮もしなければなりません。当日までにこれらの準備をこなし、やっと観察会の実施となります。でも、実施で終了ではありません。観察会の後は「ふりかえり」という作業をおこない、改善点を洗い出して次回のためのデータを集めます。
このように、観察会は、企画から実施、ふりかえりまで、基本的にはひとつのセットになっているのです。

――解説を実施するために、水面下でたくさんの作業があるのですね。

子どもたちに笑顔が絶えない渡辺

 そのとおりです。解説を実施するよりも、実は準備にかかる時間やエネルギーの方がはるかに多いのです。いわゆる“産みの苦しみ”ですね。
ですが、これは魅力的な部分でもあるんです。解説を企画から考えるということは、素材選びから実施まで、すべて自分の責任でできるということです。自分のこだわりをもって選んだ素材やメッセージを、自分の手によって相手に届けることができる。もちろんその結果も自分に返ってくるので、すごく気合も入ります。プレッシャーも大きいですが(笑)。
私は素材を選ぶことも、メッセージを考えるのも、伝える方法を工夫するのも、苦しみながらもけっこう楽しんで考えています。“産みの楽しみ、実施する楽しみ”ですね。その上、結果をふりかえって自分が成長する楽しみまでありますから、苦しみよりも楽しみの方が多いかもしれません 。

――なるほど。解説活動をしていて、やりがいに感じることは?

 やっぱり、解説をする相手からの反応が一番です。解説をしていると、時にこちらのメッセージが伝わった瞬間に立ち会えることがあります。そのときは心から「やった!」という気持ちになって、すごくうれしい。大きなエネルギーになりますね。
また、観察会に参加した子どもたちが、後日自然観察の森に遊びにきてくれることがあります。「はっちゃん(渡辺の愛称)、こんなの見つけたよ!」と私に見せにきてくれたりすると、もううれしくって(笑)。どうも私は小さな子どもが好きみたいです。私の発信したメッセージに対して、良いも悪いもストレートに反応してくれるからだと思います。そんな子どもたちが、自然や生き物に興味を持つきっかけを作れたと実感するとき、やっぱりうれしくなるんです 。

――では、反対に解説活動で苦労したり、難しいと感じることは?

野外解説板を作るのも
レンジャーの仕事

 解説の企画を立てるとき、自分の想いを言葉にする作業でつまずくことがあります。そんなときは、想いを表わす一言を見つけ出すことが、いかに難しいか思い知ります。
観察会の後のふりかえりのときにも、難しさを実感します。特にカンペキに仕上げた、と思っていたプログラムがうまくいかなかったときなどは、ふりかえりのときに“次こそは”と密かな闘志が燃えています(笑)。
また、野外解説板を作るときにも気を使います。野外解説板は、内容がうまく伝わらなかった場合、補足説明することができません。かといって説明的すぎると読みづらくなります。単純明快でおもしろい解説板をつくるのは、実はけっこう難しいことなのです 。

――あなたにとって、レンジャーの仕事の魅力と難しさは?

カウンターで来園者を迎える渡辺

 私にとってレンジャーの魅力は、“なんでも屋”である、というところです。レンジャーは、生き物の代弁者だったり、人と自然の架け橋だったり、生き物のために環境を作る作業をしたり、いろんな役をやることができます。大好きな自然や生き物のためにこんなにいろんな役ができる仕事を、私は他に知りません。
 でも、レンジャーとしての経験を重ねてきて、3年目くらいから自分の力不足を感じています。いろんな役をこなすためにも、もっと自分の能力の引き出しを増やさないとだめですね。忙しさにかまけず、外に出て勉強しなくっちゃ。
 レンジャーとしての自分を成長させて、サンクチュアリから身近な自然を大切にすることを、もっともっと広めてゆきたいと思っています。

――ありがとうございました。(2008.4.15)

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レンジャーに聞きました 「私がレンジャーになったきっかけは・・・」

レンジャー 渡辺初恵の場合

 私はもともと自然が好きだったこともあり、学生時代には植物の勉強をしていました。将来を考えていたとき、興味のあった“自然を守る仕事”をしている人が「横浜自然観察の森」にいると聞き、様子を見に訪れてみました。そのとき対応してくれたレンジャーから、とても丁寧で具体的な仕事の話を伺う事ができ、この時の印象から、レンジャーという仕事にとても強い興味を持ったのです。
 当時私が通っていた学校には、1ヶ月間のインターンシップ制度がありました。これを利用してレンジャーの仕事を体験させてほしいと、レンジャーを通じて(財)日本野鳥の会に直談判して、受け入れを許可していただきました。

 レンジャーの仕事は、外から見ただけではわからないほど多岐に渡っていて、小さい頃から引っ込み思案だった私は、自分にできるのだろうかと不安になりました。でも、仕事を体験する中で、来園者に自分が見つけた自然の不思議さを伝えることができたとき、「引っ込み思案な自分にも自然のことを伝えられるんだ!」と感激し、自信にもなったのです。この体験が、「私はレンジャーになりたい!」という強い想いの源泉になったんだと思います。

 その後、(財)日本野鳥の会の職員採用試験を受けたんですが、残念ながら落ちてしまいました。それから2年間は花屋で働きながらも、レンジャーになりたいという気持ちはずっとくすぶり続けていました。考え抜いた末、「花は趣味でもできる。私は、プロのレンジャーになりたいんだ!」と改めてレンジャーを目指すことを心に決めました。
花屋を退職し、お世話になった横浜自然観察の森に決意表明のために訪れると、偶然にもそこでパートタイムのレンジャーの欠員募集があると声をかけられ、ここから私のレンジャーとしての生活が始まりました。

これからレンジャーを目指す方へ 

 自分自身の体験から、アドバイスできることが2つあります。
ひとつは、「自分がほんとうは何がやりたいのか、何ができるのか」を考えることです。自分の中にある想いと、現時点での自分の能力を客観的にみることは大切だと思います。
もうひとつは、私の場合がそうであったように、この世界で出会った人とのつながりを大切にして、自分の想いを語り続けることです。私にとってレンジャーになるのは「夢」でした。あきらめたらそこで終りです。夢をあきらめないでください。
いつかサンクチュアリで、夢をあきらめなかったあなたと語り合えるのを楽しみにしています!

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