北東アジア地域ツル類重要生息地ネットワーク・ニュースレター

Crane Net News
創刊号-ツル類重要生息地ネットワークとは
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北東アジア地域ツル類ネットワークの発足(97年3月、中国ベイダイヘにて)
1998年
Vol.1

目次

I 巻頭言/環境庁野生生物課長 森康二郎

II ご挨拶/フライウェイオフィサー シンバ・チャン

III 北東アジア地域ツル類重要生息地ネットワークとは?

IV 各地の便り

V 北東アジア地域ツル類重要生息地ネットワークをサポートするには?

VI 今後の活動予定

資料 (1)ネットワーク参加生息地一覧

   (2)ワーキンググループ構成員連絡先

   (3)ツル類の保全に関する機関誌、ホームページ等一覧





I 巻頭言

ニュースレターの発行にあたり、心からお慶び申し上げます。

 1997年3月、中国の北戴河で開催されました「北東アジア湿地・水鳥ワークショップ」において、「北東アジア地域ツル類重要生息地ネットワーク」の活動がスタートしてから、早くも一年が経過しました。ネットワーク運営にご尽力いただいた皆様に感謝いたします。

 ネットワークは、日本及び豪州の環境庁がアジア太平洋地域における水鳥保護の国際協力の強化を目指して支援している、「アジア・太平洋地域渡り性水鳥保全戦略」の一環として構築されました。

 ネットワークは国際湿地保全連合アジア太平洋支部及び同日本委員会によって運営され、その活動の要となるフライウェイオフィサーは、(財)日本野鳥の会のシンバ・チャン氏が担当しています。環境庁も他の参加国政府や各国NGOと共に支援を行ってきたところです。

 渡り鳥及びその生息地の保護には、渡りのルート上にある各国の協力が不可欠であり、法的な担保を伴う多国間条約の締結が望まれています。しかし、アジア地域における各国では、経済的な背景の違いなどから、早急に条約締結を実現するのは難しい状況です。また、同地域の多くの国では、渡り鳥保全のための法制度の整備についても、未だ十分な体制がとられていません。

 そういう現状でツル類の生息地を保全していくために今すぐ着手できることは、市民に対する普及啓発活動を通じて、生息地の重要性の認識を高めていくことです。

 ネットワークの構築は、国際的なつながりの中で、身近な湿地の重要性を見直すきっかけとして、参加湿地の地元の人々にとって大変有意義なことです。ネットワークを通じて、生息地に関する情報の共有化を図り、専門家をはじめとするツル類の生息地の保全が進展することが期待されます。

 ネットワークには、現在6カ国18湿地が参加しております。日本政府としては、今後ともネットワークの拡大と活動の推進について、引き続き積極的に取り組んでいくと共に、参加湿地がさらに増え、ツル類及びその生息地の保全を目指す北東アジアの国々の協力関係がより強まることを心から期待しております。

環境庁自然保護局 野生生物課長

      森 康二郎 

 

II ご挨拶

 1997年3月、ちょうどツルたちが北方の繁殖地へと帰っていく頃、中国の北載河において北東アジア湿地水鳥保護国際ワークショップが開催され、ここに「北東アジア地域ツル類重要生息地ネットワーク」が誕生いたしました。

 このネットワークは、1994年に採択された釧路イニシアチブにより発足を目指すべきものと宣言された水鳥の重要生息地ネットワークの一つです。釧路イニシアチブを受けて、国際湿地保全連合アジア太平洋支部及び同日本委員会が日豪の両環境庁の支援を受けて進めていた準備作業が、ここに実を結んだと言えます。

 本ネットワーク活動の一環としてのニュースレターの創刊にあたり、私は、このニュースレターがツル類の保護に携わる多くの方々の情報交換を促し、経験の共有化に寄与することを願ってやみません。そのためにも、皆様からのたくさんのお便りをお待ちしています。次号以降では、読者の広場のような、読者の皆様の情報交換の場も作って参りたいと思います。

 このニュースレターを読んで下さる方の中には、何年もの豊富な経験を有する研究者や保護活動家もいらっしゃると思います。それと同時に、私はまた、ツル類と自然に関心のある方でしたら、農家の方、学校の先生、生徒・児童のみなさん、あらゆる方にこのニュースレターを読んでいただきたいと思っています。そこで、できるだけ多くの人にお読みいただけるように、このニュースレターのコピーを取って自由に配って下さい。

 このニュースレターがみなさまにとって役立つものであり、かつみなさまがこれを楽しんで読んで下さることを心から願っています。

フライウェイオフィサー  シンバ・チャン
((財)日本野鳥の会 国際協力室長)

フライウェイオフィサー連絡先

(財)日本野鳥の会 国際協力室
住所:〒191-0041 東京都日野市南平2-35-2
電話:042-593-6871 Fax :042-593-6873
E-mail:simba.chan@earthling.net



III 北東アジア地域ツル類重要生息地ネットワークとは?

ネットワークの意義

 「北東アジア地域ツル類重要生息地ネットワーク」とは何か。この問いに答える前に、なぜそもそもツルの保護のためにネットワークが必要なのかを考えてみたい。答えは至って簡単で、ツルが渡り鳥であり、渡り鳥は渡りルート上のすべての生息地が協力し合わなければ守れないからである。

 では、最初の問いに戻って、「北東アジア地域ツル類重要生息地ネットワーク」とは何であろうか。それは、ツル類の渡りに関係する重要な生息地同士を結びつけ、各生息地で個別に活動していた人々の情報や経験の共有化を進めるためのネットワークである。

  



 ネットワークの意義は、単に生息地同士(及びそこで活動する研究者、管理者)を結びつけることに留まらない。地域住民をはじめ、ツルとその生息地の未来を守ろうとする全ての人々の力を結集することにある。これは、ツルの保護に携わる人々にとってたいへん心強いことである。ツルを保護するための一つ一つの活動が周囲に認められ、やがて広まっていくのである。

キーワードは協力

 このように、ネットワークの重要なポイントは「協力」であるといえる。国同士が渡り鳥の保護において協力し合うためのまず最初の一歩は、経験と情報を分かち合うことである。たとえば、ある国でツルの数が減っており、別の国では増えているとする。これは、保護のやり方が異なるからかもしれない。成功例から学ぶことによって、保護活動をより効果的にできるのではないだろうか。

 また、関係各国で協力し合って共同研究や共同の保全活動を実施することも大切である。北東アジアでは、既にいくつかの国のあいだで二国間条約が結ばれているが、渡り鳥の保護のためには、これが多国間条約に発展していくことが望まれる。

ネットワーク発足までの経緯

 ある渡り鳥の保護を進めるためにどこの国と協力関係を持つべきかという問題は、実は難しい問題である。渡りの研究は、人の予想以上に困難なものである。たとえばシベリアで繁殖する一群の鳥が、中国、インドネシア、インド、中東のどこか越冬すると、どうしたら確信を持って言えるだろうか。東アジア地域に限ってみても、渡りのルートが解明されていない鳥は沢山いる。

 そんな鳥の渡りルートの研究に飛躍的な進歩をもたらしたのは、1990年代初めに開発された人工衛星による追跡方法である。この画期的な方法によって、渡り鳥に関する正確な渡りルート、そして重要な生息地がわかるようにになった。ネットワーク作りが可能になったのは、こうした衛星追跡のもたらした結果あってこそである。ツル類に関しては、1990年代の前半に日本野鳥の会と読売新聞社が衛星追跡を実施し(協力:山階鳥類研究所、NEC、NTT)、いくつもの渡りルートや重要生息地を明らかにした。

 この結果を受け、1993年6月には「ツルと湿地の未来」と題するシンポジウムが日本野鳥の会と読売新聞社の主催によって開催され、日本野鳥の会の市田 則孝氏よりツルの保護区の国際ネットワーク化が提案されたのである。

 さらに、1994年12月には、日豪政府と国際湿地保全連合が「東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥ワークショップ」を釧路市にて開催した。16カ国の政府、専門家が参加したこのワークショップでは、以下の提案を盛り込んだ「釧路イニシアチブ」が採択された。

・対象地域の渡り性水鳥の保全戦略を立てる。
・「ツル類」「シギ・チドリ類」「ガン・カモ類」の三つの種グループ
 ごとに行動計画を策定する。
・種グループごとに国際的に重要な生息地を選び、
 ネットワーク化する。

 以上の経緯を経て、1997年3月、ツル類重要生息地ネットワーク構想がついに実を結んだのである。

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(衛星追跡の結果 MAP)

ネットワークの今

 1998年3月現在、6カ国から18生息地がネットワークに参加している。ツル類ワーキンググループは、ネットワーク活動の方向性を決定し、助言を与えるべく1997年9月に発足した。ワーキンググループは、北東アジア地域の各国の代表者1名ずつに加え、ツル類の繁殖地及び越冬地、IUCNの専門家グループからの代表者各1名で構成されている(資料2)。フライウェイオフィサーは、ネットワーク活動の実施を支援する役割を担う。



北東アジア地域ツル類重要生息地ネットワークが包含する種、地域

 本ネットワークが対象とするツル類は、この地域に固有で、かつ絶滅の危機にあるソデグロヅル(特に東方の個体群)、マナヅル、ナベヅル、タンチョウの四種である。

 また北東アジア地域とは、ここでは東経110度以東、北回帰線以北の地域を指す。ここには、中国西部のオグロヅル、東南アジアのオオヅルの生息地は含まれていない。北東アジアにおける本ネットワークの試みが成功した暁には、ネットワークの対象を全アジア地域へ広げていくことも考えられる。



IV各地の便り

1. ナベヅルの近年の動向

 1997年3月、中国で開催された水鳥保護国際ワークショップ(ここで本ネットワークが発足した)において、山階鳥類研究所の百瀬邦和氏は、出水・高尾野で越冬するナベヅルの個体数が減少傾向にあることを報告した。1990年代初頭に約8000個体であったものが、1995/96年には6706個体、1996/97年には5747個体に減少したという(注)。「出水・高尾野で減ったのなら、他の地域/他の国ではどうだったのだろうか」という疑問が当然起こるが、その場でその問いに答えられる人はいなかった。

 このように、ある土地でツルの生息数が変動した時、「では他の土地ではどうだったのか」ということが問題となるが、ツル類ネットワークはこの点で重要な役割を果たす。フライウェイオフィサーの元には、以下の各地からナベヅルの動向に関する情報が寄せられている。

 (注) なお、その後1997/98年に行われた調査では、出水・高尾野で越冬するナベヅルの個体数は7231個体に回復したと報告されている。

a. 順天湾(北緯34度50分・東経127度30分)にて日韓共同調査

 釜山(プサン)から南西へ約150 km、韓国の南岸に位置する順天(スンチョン)湾で越冬するナベヅルの一群が発見されたのは、1996年の終わりのことである。1997/98年にも約80個体の越冬が確認された。一方、大邱(テグ)郊外の農地では、温室の数が増加したことにより例年そこで越冬していたナベヅルが姿を見せなくなっており、このことから順天湾の越冬群は大邱のものが移動したと考えられる。なお、順天湾はズグロカモメの越冬地としても知られる場所である。韓国山林庁林業研究院の報告によると、約900個体のズグロカモメがここで越冬する。

 1998年1月、韓国山林庁林業研究院と日本野鳥の会研究センターは、順天湾の共同調査を行い、湾の北端に位置する約300ヘクタールの土地で75個体のナベヅルを観察した。このとき、ナベヅルが干潟や水田で餌を採る様子が観察され、主な餌場は干潟であることが明らかになった。

b. 和歌山県(北緯34度・東経135度)ではじめて越冬

 日本国内では、ナベヅルが定常的に越冬する場所として出水・高尾野と八代の二地点が知られる(両方とも、ツル類ネットワーク参加生息地)。

 1996年の終わりに、日本野鳥の会が会員から渡り途上のナベヅルの観察記録を募集したところ、図のような結果が得られた。報告件数は19件で、ナベヅルの春の渡りに関する貴重な情報が得られた。千葉、石川、三重の各県で得られた記録は、すべて10個体未満の小さな群であった。

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日本野鳥の会に寄せられた1995/96年のナベヅルの記録(括弧内は個体数)
(「野鳥」1997年2月号 No.598 より)


日本野鳥の会では、ナベヅルに関する日本国内の記録を募集しています!

ナベヅルに関する日本国内の記録については、日本野鳥の会保護・調査センターでまとめておりますので、お持ちの情報をフライウェイオフィサーまたは同センターへお寄せ下さい。

(財)日本野鳥の会 保護・調査センター (担当:坪本なおみ)
     〒150-0036 渋谷区南平台町15-8
     電話: 03-5358-3518  ファクス: 03-5358-3608  e-mail:JDN05312@niftyserve.or.jp


 また、1997年12月には、これまで越冬例のなかった和歌山県での越冬が報告された。12月に34羽が観察され、1998年2月まで滞在したことが確認されている。

 一方、八代における越冬個体数が例年より若干増加し、1997/98年は27羽であった。これらの個体は1998年3月の上旬まで八代に滞在した。八代では、1980年代には約60羽が越冬していたことが知られており、70羽くらいまでは越冬可能と考えられている。



c. 宜蘭県(北緯24度40分・東経 121度45分)で、20年ぶりにナベヅルが観察される

 台湾は、通常ツルの分布域に含まれないが、1930年代にはタンチョウの記録がある。近年になってからは、1978年に北東部の宜蘭(イーラン)県でナベヅルが6羽観察された記録があるのみであった。

 その後20年間、台湾ではツル類の記録が一切なかったが、1997年の中秋(9月中旬)の直後に宜蘭県の畑で3羽のナベヅルが発見された。それらの個体は、そのまま宜蘭県で越冬した。近隣の農家では、ツルは幸運のシンボルと考えられており、ツルの採食場所やねぐらを乱す者はなかった。2羽が1998年1月に宜蘭県を飛び立ち、内1羽と見られる個体が台北市でバードウォッチャーに発見されている。大勢の写真家が押し掛けるという混乱があったが、2月にはこの個体も台北市を飛び去った。ツル目当てに観光客が押し寄せるという問題点は、台湾におけるツル類の保護を考える上で重要なポイントである。

 宜蘭県については、中華民国野鳥学会が近隣の農家と話し合い、野鳥学会側が新台幣 68,741(約272,700円相当)を支払う代わりに、ツル保護のため翌春は化学肥料を使用しないという約束を取り付けた。

(※ 以上、宜蘭県に関する情報は、宜蘭県の呂学麟氏、中華民国野鳥学会の登子菁氏、台北市野鳥学会の江昆達氏よりいただきました。)

2. 韓国におけるマナヅルの農薬死

 1998年3月2日、韓国慶尚北(キョンサンブク、北緯36度10分・東経128度30分)道・亀尾(クミ)市の洛東(ナクトン)江流域において、北方への渡り途上のマナヅル37羽が、農薬死する事件が起きた。問題の農薬は、商品名Dimecronという有機燐系殺虫剤で、密猟者がカモ類の捕獲のために違法に米の中に仕掛けていたものである。

 韓国政府は、ただちに職員を派遣し現場の調査に当たるとともに、農薬の仕掛けられた地域でツルが採食するのを追い払う活動を行った。死亡したマナヅルの中には出水で標識された個体もおり、このことからも今回被害にあったマナヅルが出水からやってきたことが確信された。韓国政府の要請を受けた日本野鳥の会では、出水・高尾野のツル保護管理員である又野末春氏から毎日何羽のマナヅルが出水から北へ向けて出発したかという情報を得、これを韓国側へ提供した。

 さらに1998年4月6日、ソウルの北方、京畿(キョンギ)道金浦(キムポ)の水田において餌を採っていた100羽のナベヅルの内11羽が死亡したことが伝えられた。これも、洛東江における事件と同様、密猟者の仕掛けた毒によるものと思われる。

 ツル類の農薬死については、これ以外にも、いくつか最近の報告がある。1995年3月には、23羽のタンチョウが中国河北省ロワン河下流(北緯39度30分・東経119度10分)において毒入りの餌を食べて死亡しているのが発見されている。知名度のある繁殖地なり越冬地なりであれば、こうした毒物に対する監視が比較的行き届きやすいが、ツルが渡りの途中で利用する中継地では目の届かない場合も多い。毒物による被害を防ぐためにも、渡りルート上の生息地間の緊密な情報交換が望まれる。

 ツルの動向を知らせ合う手段としては、電子メールが有効と考えられる。

(※ 以上、韓国におけるツルの農薬死に関する情報は、山林庁林業研究     院の金鎮漢博士、慶北国立大学の朴喜千教授、環境部自然保全局     の韓尚勲博士よりいただきました。)

ツル類の渡りルート上にある重要生息地のことに詳しい方の連絡先(電子メールやファックス番号など)をご存知の方は、フライウェイオフィサーまでお知らせ下さい。



3. 今冬、各地で過去最多の観察数を記録

a. 塩城で越冬するタンチョウが増加

 塩城(イェンチャン)国設自然保護区(本ネットワーク参加生息地の一つ、資料1参照)は中国の東岸に位置し、中国における最も重要なタンチョウの越冬地として知られている。例年、越冬数は600羽から700羽程度であったが、1996/97年の調査では1020羽を数えた。一方で、塩城における湿地の開発が深刻化しているとして、研究者から問題視されている(「中国鶴類通信No.1」より)。

b. 出水・高尾野における越冬数が史上最多記録を更新

 出水・高尾野におけるナベヅルの越冬個体数は、昨年の5747羽から、97/98年は7231羽に増加した。マナヅルの個体数も同様に2201羽から3232羽に増加し、他にも観察された2羽のクロヅル、1羽のカナダヅル、3羽のクロヅル/ナベヅルの雑種を合計すると、1997/98年に出水・高尾野で越冬したツル類の総個体数は10469羽であり、これは史上最多記録である。過去の最多記録は、1992/93年の10372羽である。

 なお、1997/98年に出水・高尾野で見られた上記のツル類は、1978年以来出水・高尾野で毎年のようにみられる種類であるが、これ以外にも以下の種類が出水・高尾野での観察記録を持つ。

ソデグロヅル:近年の記録としては、1994/95年に1羽、1996/97年に1羽

アネハヅル:最も新しい記録は、1989/90年の1羽

タンチョウ:最も新しい記録は、1967/68年の1羽



4. モンゴルがラムサール条約を批准

 モンゴルは、1997年12月8日、ラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)を批准した。モンゴル初の同条約登録湿地となったのは、本ネットワークにも参加しているダグール特別保護区である。

 なお、ダグール特別保護区は、ロシアと中国とモンゴルで構成されるダウーリア国際保護区のモンゴル部分に当たる。ロシア・中国では、それぞれ下記がダウーリア国際保護区を構成している。

ロシア:ダウルスキー自然保護区(ラムサール条約登録湿地、本ネットワーク参加湿地)

担当 Mr. Valery A. Brinikh
Director of the Reserve, Box 50, Nizhniy Tsasuchey, Chita 674480, Russia
e-mail: root@daur.chita.su

中国:達来(ダライ)湖国設自然保護区

担当 Mr. Bai Fuchun 白福春
Director of the Reserve, Dalai Lake National Nature Reserve Adminstration Bureau,
Renmin Street, Zhalainor, Manzhouli, Inner Mongolia 021400, China
Fax: (86)-470-6524788



V 北東アジア地域ツル類重要生息地ネットワークに参加するには?



経験と思いを分かち合いませんか?

 ニュース、コメント、提案、質問・・・なんでも結構です。情報をフライウェイオフィサーまでお送り下さい。



個体数調査の結果をお待ちしています。

 フライウェイオフィサーは、現在各地で実施されたツルの個体数調査の結果をデータベース化する作業を進めています。集められた情報は、研究者の方々に有効に使っていただけるように提供していく予定です。また、これに関連してツル類に関する研究論文の収集も行っています。個体数調査の結果、または研究論文等をお持ちの方は、フライウェイオフィサーまでお寄せ下さい。

VI 今後の活動予定

 今後の活動予定としてこれまでに決定している最も大きな計画は、1998年9月8日から14日まで、ロシアのムラビヨフカ自然公園で開催されるツル類保護のための国際ワークショップです。ネットワーク参加生息地における調査研究のあり方や、そこから得られた結果をどのように保護に役立てていくかを話し合う予定です。ツル類ワーキング・グループの第1回会合も、同時に開催されます。また、このとき、関係各地の子どもたちが参加する芸術祭のような楽しい企画も同時開催したいと考えています。



資料1 ネットワーク参加生息地一覧

(1)キタリック禁猟区 (Kytalyk Resource Reserve)
所在地:ロシア、サハ(ヤクート)地方インジギルカ川下流
        (北緯70度46分-72度20分・東経143度35分-152度30分)
面積:1,608,000ヘクタール
特記:1980年代後半の調査では480個体のソデグロヅルが繁殖。現在ではもっと多くの個体がいると言われているが、調査が必要。

(2)ヒンガンスキー自然保護区とガヌカン休猟区(Khingansky Nature Reserve and Ganukan Game Reserve)

所在地:ロシア、アムール州(北緯49度30分・東経130度15分)
面積:142,534ヘクタール
特記:約100個体のタンチョウ、約60個体のマナヅルが繁殖し、約300個体のナベヅルが中継地として飛来する。ヒンガンスキー自然保護区の一部、ヒンガン-アルカラ低地はラムサール条約登録湿地である。

(3)ハンカ湖自然保護区(Lake Khanka Nature Reserve)

所在地:ロシア、ハンカ湖(北緯44度53分・東経132度26分)
面積:136,000ヘクタール
特記:約55個体のタンチョウ、約10個体のマナヅルが繁殖し、約100個体のナベヅルが中継地として飛来する。ラムサール条約登録湿地(登録面積は310,000ヘクタール)の一部。

(4)ダウルスキー自然保護区(Daursky Nature Reserve)

所在地:ロシア、チタ州(北緯50度05分・東経115度45分)
面積:136,800ヘクタール
特記: 約120個体のマナヅル、約85個体のアネハヅル、約35個体のクロヅルが繁殖。また、約500個体のナベヅル、約50個体のソデグロヅルが中継地として飛来する。ラムサール条約に登録されているトリー湖の一部(登録面積は172,500ヘクタール)である。ロシアと中国とモンゴルで構成されるダウーリア国際保護区のロシア部分を成す。

(5)ダグール特別保護区(Mongol Dagur Strictly Protected Areas)

所在地:モンゴル、ドルノド州(北緯49度42分・東経115度6分)
面積:210,000ヘクタール
特記:約30個体のマナヅルが繁殖し、約10個体のソデグロヅル、約400個体のナベヅルが中継地として飛来する。ロシアと中国とモンゴルで構成されるダウーリア国際保護区のモンゴル部分を成すとともに、モンゴルのラムサール条約登録湿地である。

(6)シンカイ湖国家級自然保護区(Xingkai Lake National Nature Reserve)

所在地:中国、黒竜江省(北緯45度10分・東経132度21分)
面積:222,482ヘクタール
特記:タンチョウとマナヅルの繁殖地である。

(7)黄河三角州国家級自然保護区(Yellow River Delta National Nature Reserve)

所在地:中国、山東省(北緯37度50分・東経118度10分)
面積:153,000ヘクタール
特記:クロヅル、タンチョウ、マナヅル、ナベヅル、アネハヅルの重要な中継地である。タンチョウ、クロヅルの中には越冬するものもある。また、シギ・チドリ類ネットワークにも参加している。

(8)塩城国家級自然保護区(Yancheng National Nature Reserve)

所在地:中国、江蘇省(北緯33度40分・東経120度30分)
面積:453,000ヘクタール
特記:約1000個体のタンチョウが越冬する。

(9)ポーヤン湖国家級自然保護区(Yancheng National Nature Reserve)

所在地:中国、江西省(北緯29度15分・東経116度00分)
面積:22,400ヘクタール
特記:2600-2900個体のソデグロヅルが越冬するほか、マナヅル、ナベヅル、クロヅルにとっても重要な越冬地である。中国のラムサール条約登録湿地。

(10)金野湿地保護区(Kumya Wetland Reserve)

所在地:北朝鮮、ハムギョンナム道(北緯39度25分・東経127度20分)
面積:2,000ヘクタール
特記:約100個体のタンチョウ、約600個体のマナヅルが中継地として飛来する。数羽のナベヅルも中継地として利用する。

(11)文徳湿地保護区(Mundok Wetland Reserve)

所在地:北朝鮮、ピョンヤンナム道(北緯39度30分、東経125度20分)
面積:3,000ヘクタール
特記:約150個体のタンチョウ、約1500個体のナベヅル、約230個体のマナヅルが中継地として飛来する。クロヅル、ノガン、サカツラガンの中継地としても重要である。

(12)漢江河口(Han River Estuary)

所在地:韓国、キョンギ道(北緯37度45分・東経126度40分)
面積:381ヘクタール
特記:約150個体のマナヅルの越冬地であるとともに、さらに600個体以上のマナヅルが中継地として利用する。

(13)鐵原(Cholwon Basin)

所在地:韓国、カンウォン道(北緯38度15分・東経127度13分)
面積:40ヘクタール
特記:約250個体のタンチョウ、約350個体のマナヅルの越冬地である。

(14)霧多布湿原国設鳥獣保護区

所在地:日本、北海道(北緯43度05分・東経145度05分)
面積:2,504ヘクタール
特記:タンチョウの繁殖地(1994年には14ペアが繁殖した)。日本のラムサール条約登録湿地。

(15)厚岸湖・別寒辺牛湿原国設鳥獣保護区

所在地:日本、北海道(北緯43度03分・東経144度54分)
面積:4,896ヘクタール
特記:タンチョウの繁殖地(1994年には24ペアが繁殖した)。日本のラムサール条約登録湿地。

(16)釧路湿原国設鳥獣保護区

所在地:日本、北海道(北緯43度09分・東経144度26分)
面積:7,726ヘクタール
特記:タンチョウの繁殖地(1994年には49ペアが繁殖した)。日本のラムサール条約登録湿地。

(17)八代鳥獣保護区・特別天然記念物指定地域

所在地:日本、山口県(北緯34度01分・東経131度54分)
面積:1,904 ヘクタール
特記:20-30個体のナベヅルの越冬地。

(18)出水・高尾野国設鳥獣保護区

所在地:日本、鹿児島県(北緯32度05分・東経130度20分)
面積:842ヘクタール
特記:7000-8000個体のナベヅル、2000-3000個体のマナヅルが越冬する。



資料2 ワーキング・グループ構成員連絡先

ロシア

Vladmir A. Andronov
Khingansky Nature Reserve, 6 Dorozhny pereulok, Arkhara, Amur Province, 676740 Russia
e-mail: darman@glas.apr.org

モンゴル

Natsagdorjiyn Tseveenmyadag
Eastern nature reserves “Dornod” Conservation Center, P O Box 401, Choibalsan 070000, Mongolia
Fax: (976)-061-13-93, (976)-061-22-06
e-mail: mondaur@magicnet.mn

中国

Wang Wei  王偉
Department of Conservation, Ministry of Forestry, 18 Hepingli East Street, Beijing, 100714 China
中国 100714 北京市 和平里東街 18号 林業部 保護司
Tel: (86)-10-64229944 Fax: (86)-10-64271643
e-mail: wildlife@east.cn.net.

北朝鮮

Pak U-il
Center for Natural Protection, Pyongyang, DPR of Korea

韓国

Kim Jin-han 金鎮漢
Forestry Research Institute, 207 Chungnyangni-dong, Tongdaemun-gu, Seoul, Korea韓国 ソウル 東大門区 清涼里二洞 207 山林庁 林業研究院
Tel: (82)-2-961-2592 Fax:  (86)-2-961-2595
e-mail: frirok@hitel.kol.co.kr

日本

市田 則孝
日本野鳥の会国際センター所長
〒191-0041東京都日野市南平2-35-2
Tel: 042-593-6871 Fax: 042-593-6873
e-mail: int.center@wing-wbsj.or.jp

繁殖地の専門家

Nikolai Germogenov
Yakutsk Institute of Biology, Lenin Str. 41, Yakutsk, Sakha Republic, Russian Federation.
Fax: (7)-095-230-29-19
e-mail: wwf.sakha@rex.iasnet.ru

越冬地の専門家

Qian Fawen 銭法文
National Bird Banding Center, Wan Shou Shan, Beijing 100091, China.
中国 100091 北京市 万寿山 全国鳥類環志中心
Tel: (86)-10-62582211-628 Fax: (86)-10-62584972

IUCNの専門家グループ代表

Jim Harris
International Crane Foundation, E-11376 Shady Lane Road, Baraboo, WI 53913, USA
Fax: (1)-608-356-9465
e-mail: harris.icf@baraboo.com



資料3 ツル類に関する情報の得られる機関誌、ホームページ等

これ以外にもご存知の方は、フライウェイオフィサーまで情報をお寄せ下さい。

機関誌等

The ICF Bugle、季刊、英文
Editor: Kate Fitzwilliams
International Crane Foundation, E 11376 Shady Lane Road, P.O. Box 447, Baraboo, Wisconsin 53913-0447, USA
e-mail: cranes@baraboo.com

China Crane News(中国鶴類通信)、年二回発行、英文/中文
Editor: Prof. Wang Qishan 王岐山
Department of Biology, Ahnui University, No. 3 Feixi Road, Hefei City, Anhui Province 230039, China

ホームページ

http://www.kt.rim.or.jp/〜birdinfo/BL_news/cranenet.html
北東アジア地域ツル類重要生息地ネットワークに関するホームページ
(現在、英文のみ。今後各国語へ広げていく予定。手伝っていただける方は、シンバ・チャンまでご連絡を。)

http://www.baraboo.com/bus/icf/whowhat.htm
国際ツル財団のホームページ
(英文。世界中の鳥類に関する情報が集まっている。)

http://www2a.biglobe.ne.jp/~uchi_a/
ふるさと出水
(日本文。鹿児島県出水・高尾野のツルの渡来状況を掲載している。)

http://www.town.kumage.yamaguchi.jp/tur000.htm
八代のナベヅル
(日本文。山口県八代のツルの渡来状況の最新情報を掲載している。)

http://ngo.asiapac.net/wetlands
国際湿地保全連合・アジア太平洋支部のホームページ(英文)

http://www2.iucn.org/themes/ramsar/
ラムサール条約に関するホームページ(英文)

http://www2.iucn.org/themes/ssc/
IUCN種の保存に関する委員会のホームページ(英文)

http://www.kt.rim.or.jp/〜birdinfo/japan/index.html
日本野鳥の会のホームページ(日本文/英文)

http://www.kt.rim.or.jp/〜birdinfo/
バードライフ・アジア地区委員会のホームページ(英文)

http://www.anca.gov.au/environm/wetlands/apstrat.htm
「アジア・太平洋地域渡り性水鳥保全戦略」全文(英文)

http://www.anca.gov.au/environm/wetlands/infosrn1.htm
シギ・チドリ類湿地ネットワークに関するホームページ(英文)



発行人

国際湿地保全連合日本委員会 会長 松井 繁
〒150 東京都渋谷区渋谷1-4-6 ニュー青山ビル503

編集人(連絡先)

ツル類フライウェイオフィサー シンバ・チャン(日本野鳥の会国際センター)
〒191-0041 東京都日野市南平2-35-2
電話:042-593-6871 Fax :042-593-6873
E-mail:simba.chan@earthling.net
Homepage:http://www.kt.rim.or.jp/〜birdinfo/BL_news/cranenet.html



このニュースレターは、公益信託地球環境日本基金平成9年度助成金を受けて作成しました。

※ニュースレターは、年2回発行の予定です。次回は、1998年12月頃となる見込みです。