No.162 2017年9月号


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目次 ◆支部の動き
支部報 保護・調査記事関連トピックス
◆ブロックからのお知らせ
平成29年度近畿ブロック会議 報告
◆事務局からのお知らせなど
9月号『フィールドガイド日本の野鳥』
 増補改訂新版の取り組み

連携団体(支部等)向け卸販売をご利用ください
会員数

支部の動き

■支部報 保護・調査記事関連トピックス

 本記事は日本野鳥の会へ送付されてきている各地の支部報/会報から抽出して作成し、調査・保護に関心がある野鳥の会の会員へ配信しております。本記事の一部又は全部を不特定多数が見る可能性があるところへ公開される場合は、各支部/各会の了承を事前に得て下さい。記事は筆者の意向に反しないように、取り扱いをお願いします。

○支部報/会報 保護・調査記事関連トピックスNO.856

●2017/4 道北
・シマアオジ保護に向けて
・オオワシ・オジロワシ一斉調査(道北ワシ調査隊)
●2017/3 旭川
・風力発電計画中止
●2017/4 道南桧山
・明治の函館毎日新聞記事より
●2017/4 福島
・ガン・カモ・ハクチョウ生息調査
●2017/7 いわき
・ギンムクドリ
●2017/3 富山
・2016ガンカモ類・ハクチョウ類調査(調査部)
・2015年富山県のコアジサシ(調査部)
●2017/3 富士山麓
・山中湖、河口湖 カモ類減少続く
●2017/5 静岡
・標識リング付きのサギ
●2017/5 高知
・ブッポウソウ足環、カラーリング情報
●2017/7 宮崎県
・ヒメコンドル

●2017/4 道北
・シマアオジ保護に向けて
 日本ではサロベツ原野が現在、残されている唯一のシマアオジの繁殖地である。2016/11の「北海道の希少種を考える集い」で遠藤公男氏は中国の店頭で串刺しされたシマアオジの写真を示した。サロベツエコネットワークの報告ではこの30年間で9割も急減した。渡りの中継地では大きな群れとなるため、大量に捕獲されている。中国では1999年より捕獲禁止になっても、「滋養強壮」「縁起が良い鳥」として食べられている。越冬地のカンボジア、タイでは宗教行事で捕獲し、放鳥する習慣があり、その7割が死亡している。
(道北「オロロン」Vol.40 NO.3,P5〜6)

・オオワシ・オジロワシ一斉調査(道北ワシ調査隊)
 2/19、道北の15箇所で調査した。オオワシ98(成62、幼・亜36)、オジロワシ78(成38、幼・亜40)、不明種4、計180羽であった。
(道北「オロロン」Vol.40 NO.3,P7)

●2017/3 旭川
・風力発電計画中止
 H25年、滝川市は道内初の内陸型風力発電所を計画した。調査で風力発電に必要とされる年平均6m/S以上の風がなく、計画は断念された。丸加高原は「日本一の美しい村連合」に加盟する地区で、アセスメントに備えて支部の調査ではエゾフクロウの営巣、クマタカの飛翔があり、丘陵の斜面約500haの牧草地に風車は似合わない。
(旭川「あかもず」NO.50,P2)

●2017/4 道南桧山
・明治の函館毎日新聞記事より
 1876年、政府は小笠原諸島を内務省の所管とし、米国へアホウドリの羽毛が輸出されたが、1885年頃までにはそこのアホウドリは殆ど消滅した。1888年から鳥島に移り、その後15年間で約600万羽が撲殺された。1891年頃からは尖閣諸島周辺でも開始され、全て獲り尽くした。アホウドリ捕獲は棍棒と袋ででき、おまけに羽毛は軽く扱い易く、莫大な利益をあげた。その後アホウドリの代替資源を求めて、北海道渡島大島で大量のオオミズナギドリ捕獲が明治末にかけて行われた。オオミズナギドリは夜間に浮上してきた深海性生物を食べ、その脂肪は、人は吸収できず食べると中毒を引き起こした。
(道南桧山「はちゃむ」NO.118,P8〜10)

●2017/4 福島
・ガン・カモ・ハクチョウ生息調査
 1/11、阿武隈川で7箇所、水原川で1箇所調査した。阿武隈川で総計3,734、内訳はオオハクチョウ394、コハクチョウ50、オナガガモ1,832、コガモ385、マガモ345、カルガモ321、ヒドリガモ176、キンクロハジロ101等。水原川ではオオハクチョウ320、コハクチョウ25、アメリカコハクチョウ5、オナガガモ700等。
(福島「きびたき」NO.222,P3)

●2017/7 いわき
・ギンムクドリ
 日本鳥類目録にはムクドリ科はギンムクドリ、ムクドリ、シベリアムクドリ、コムクドリ、カラムクドリ、バライロムクドリ、ホシムクドリの7種である。その内、いわき支部内ではムクドリ、コムクドリ、カラムクドリ、ホシムクドリの記録があり、4月、ギンムクドリが支部内で初撮影された、1997/1の郡山市に次ぐ福島県内2例目である。
(いわき「かもめ」NO.135,P1)

●2017/3 富山
・2016ガンカモ類・ハクチョウ類調査(調査部)
 2016/1/4〜12、富山県内44箇所を調査した。ガン類0、オオハクチョウ150、コハクチョウ85、カモ類15種、20,369羽で内訳はマガモ6,549、カルガモ4,393、コガモ4,382、オナガガモ1,760、ヒドリガモ1,405、ホシハジロ513、キンクロハジロ448等。
(富山「愛鳥」NO.73,P2〜5)

・2015年富山県のコアジサシ(調査部)
 黒部川河口:5月中旬から抱卵開始、成鳥最大数250羽、6/1より孵化、雛最大53羽(6/13)、10羽以上巣立った。7/14以降、観察されず。常願寺川:成鳥最大数50羽(6/1)、6/21雛1確認するが、巣立ち無し。神通川:成鳥最大数40羽(7/6)、7/19雛1確認するが、巣立ち無し。8/1以降観察されず。
(富山「愛鳥」NO.73,P3)

●2017/3 富士山麓
・山中湖、河口湖カモ類減少続く
 1/16、カモ類は山中湖で412羽、河口湖で266羽であった。共にカワアイサが6割、マガモ2割であるが、この10年間、漸減傾向にある。
(富士山麓「野鳥の声」NO.144,P7〜8)

●2017/5 静岡
・標識リング付きのサギ
 山階鳥類研究所によると、全国でサギ類6種に年間数十のカラーリングをつけている。2015年はゴイサギ15、アマサギ1、アオサギ8、ダイサギ6、チュウサギ19、コサギ93で、それを見る確率は低い。
(静岡「野鳥だより」NO.445,P5)

●2017/5 高知
・ブッポウソウ足環、カラーリング情報
 岡山県吉備中央町、同高梁市、広島県東部でブッポウソウの巣立ち雛に足環をつけている。雛は2年で繁殖年齢に達するので、2年後には日本に帰ってくる。2011年には73羽(白色)、2012年は180羽(白+赤細線)、2013年は158羽(白+青細線)、2014年は159羽(白+緑細線)、2015年は298羽(白+オレンジ細い線)、2016年は186羽(シルバー)が放鳥されている。この色が付いたブッポウソウを見たときは連絡下さい。
(高知「しろぺん」NO>364.P2〜3)

●2017/7 宮崎県
・ヒメコンドル
 3/18.宮崎市一ツ瀬川河口近くの養魚場に巨大な、頭が赤、体は黒の猛禽を見る。ヒメコンドルで籠抜けした可能性がある。昨年9月、三重県松坂市でも観察されている。ヒメコンドルは南米大陸やフォークランド諸島に生息し、体長70cmと大きい。
(宮崎県「野鳥だよりみやざき」NO.254.P3)

○支部報/会報 保護・調査記事関連トピックスNO.857

●2017/7 千葉県
・飛翔時に縮めた頸の形からサギ類を識別
・クロアシアホウドリ、小八丈島で繁殖成功初確認 (5/3日本経済新聞)
・大噴火で大量絶滅(5/11日本経済新聞)
・ニホンライチョウ産卵(5/25日本経済新聞)
●2017/7 奥多摩
・コシアカツバメ
●2017/7 南富士
・未だ止まぬ野鳥への迫害(保護部)
・オオジシギ
●2017/7 静岡
・ライチョウの長距離移動
●2017/7 香川県
・H28年度ガンカモ類一斉調査(研究部)
・カワガラスの食性
●2017/7 徳島県
・ちょっと気になる野鳥の和名シノリガモ
●2017/7 熊本県
・クロツラヘラサギ・ズグロカモメ一斉調査

●2017/7 千葉県
・飛翔時に縮めた頸の形からサギ類を識別
 「フィールドガイド日本の野鳥」ではサギ類の飛翔図には違いが描かれていない。世界の識別トップレベルのCollins Bird Guide(2009、Harper Collins)にはサギの飛翔型を正確に描いている。縮めた頸のボリュームに差がある。コサギは縮めた頸が団子状にならず、胸から腹へ連続的に連なる。飛翔姿を写真に撮って観察の課題としたい。
(千葉県「ほおじろ」NO.435,P3〜6、11)

・クロアシアホウドリ、小八丈島で繁殖成功初確認(5/3日本経済新聞)
 5/2、クロアシアホウドリが東京、小八丈島で繁殖に成功したと樋口広芳東大名誉教授のグループが確認したと発表した。小八丈島ではクロアシアホウドリの渡来、産卵は確認されていたが、今回、8組の産卵があり、2羽の雛が成長している。小八丈島が世界最北のクロアシアホウドリの繁殖地になった。
(千葉県「ほおじろ」NO.435,P12)

・大噴火で大量絶滅(5/11日本経済新聞)
 5/10、東北大学大学院の海保邦夫教授(生命環境史学)のチームが4億4千万年前頃の火山の大噴火で、生物の大量絶滅があったと発表した。同時代の地層から高濃度の水銀が検出され、地下のマントルの水銀が放出されたと推定している。地球では生物大絶滅が5回発生しており、初回は原因不明で三葉虫がいた頃、海の約8割が絶滅し、その後は火山の大噴火が原因で、最後の5回目は大隕石の衝突である。
(千葉県「ほおじろ」NO.435,P12)

・ニホンライチョウ産卵(5/25日本経済新聞)
 5/24、環境省はニホンライチョウの人工繁殖事業をしている上野動物園で1個の産卵があったと発表した。5/20には富山市ファミリーパークでも産卵があった。
(千葉県「ほおじろ」NO.435,P13)

●2017/7 奥多摩
・コシアカツバメ
 コシアカツバメは支部フィールドを秋、春、通過するが、その記録は少ない。秋の渡りで1〜5羽の少数を見る。浅川で5F建ての団地の最上階の階段で毎年、繁殖している例があった。西日本に多く、松江市の廃墟になった観光ホテルの軒先に10巣程のコロニーを見ている。
(奥多摩「多摩の鳥」NO.237,P31)

●2017/7 南富士
・未だ止まぬ野鳥への迫害(保護部)
 支部は全国野鳥密猟対策連絡会(密対連)に所属している。密猟110番に長野県でツバメの巣の受け板に接着剤を塗っている例があった。鳥獣保護管理法違反で、始末書で済ませている。5/11、大阪で12人が違法飼養で検挙された。昨年12月にメジロ鳴き合わせ会で密対連が取り締まりを要望し、大阪府警は80人体制で、170羽のメジロ、ウグイスが押収された。
(南富士「さえずり」NO.416,P5)

・オオジシギ
 オオジシギはエリマキシギと同じような繁殖生態を持ち、レックという舞台で複数の雄が舞い上がり、地上で自慢の襟巻を見せびらかす代りに、空中でディスプレイフライトし、雌は低空で侵入し、地上で気に入った雄と交尾する。オオジシギの雌はバードウォッチャーとは異なる思いで誇示飛翔を見ている。
(南富士「さえずり」NO.416,P8)

●2017/7 静岡
・ライチョウの長距離移動
 南アルプスのイザルガ岳はライチョウの世界の南限で、2010年以来、雄の縄張りが確認されていなかったが、7年ぶりに2017/6、雄が確認された。足環から昨年10月、この北の上河内岳で標識された個体で、この間約7.2km移動した。若鳥の分散距離は10km程度とされていたが、昨年、南アルプスでライチョウの雛が30km、38km移動した2例がある。
(静岡「野鳥だより」NO.447,P2)

●2017/7 香川県
・H28年度ガンカモ類一斉調査(研究部)
 1/8〜22、香川県下の189箇所を調査した。17種、19,471羽を確認、内訳はヒドリガモ4,577、マガモ、3,382、コガモ2,673、ホシハジロ2,647、ハシビロガモ1,507、カルガモ1,301、オナガガモ1,186、キンクロハジロ901、オカヨシガモ356、ミコアイサ330、ヨシガモ232、オシドリ159、スズガモ121等。地域別では海域2,813haで1,012、人造湖1,200haで12,007、河口789haで2,407、河川237haで3,154、ダム湖251haで341等であった。
(香川県「かいつぶり」NO.402,P3〜4)

・カワガラスの食性
 3/15〜4/3、カワガラスの巣に運び込んだ餌は昆虫類266(カワゲラ類の幼虫156、トビゲラ類の幼虫78、トンボのヤゴ31等)、魚類38(ヨシノボリ33、カワムツ5)、サワガニ1であった。給餌回数は雛孵化後の初期は15.2回/h、後半は25.7回/hで、1時間当たり20回給餌、30匹の虫、1日5時間、22日間給餌とすると、親の餌を除いても6万6千匹の川魚、水生昆虫が消費される。
(香川県「かいつぶり」NO.402,P5〜6)

●2017/7 徳島県
・ちょっと気になる野鳥の和名シノリガモ
 シノリガモの名前の由来は「図説日本鳥名由来図鑑」(柏書房)によると、江戸時代中期から「おきのけんてう」の名で知られ、後期には「しのりがも」とも呼ばれたが、名の由来の記載がない。漢字で晨鴨と表記し、この鳥の羽色を晨(しん)=夜明けと見立てた命名の説が多い。晨を「しのり」と読むのは無理がある。しのりは血のりが由来と考える。♂の側頭部と脇腹の赤色班が血のりに見える。血のりガモが、シノリガモに転訛したと考える。
(徳島県「野鳥徳島」NO.466,P9)

●2017/7 熊本県
・クロツラヘラサギ・ズグロカモメ一斉調査
 1/15、熊本県内15箇所で調査した。クロツラヘラサギ195(成35、若22、不明138)、ヘラサギ5、ズグロカモメ548を記録した。香港観鳥会の集計では2017年、クロツラヘラサギはアジア全体で3,941羽、台湾での越冬個体増加で前年より17%も増加した。日本でも2014年:350、2015年:371、2016年:383、2017年:433と増加している。
(熊本県「野鳥くまもと」NO.436,P9〜12)

○支部報/会報 保護・調査記事関連トピックスNO.858

●2017/7 道南桧山
・アホウドリのアイヌ名
・ニワトリの話
・はちゃむ
●2017/7-8 宮城県
・2017年春シギ・チドリ類生息調査(調査・保護グループ)
●2017/7 神奈川
・定線センサス(幹事)
・何のためのソーラーか
●2017/7-8 諏訪
・1枚飛び上がったオオタカの尾羽
・八ヶ岳のライチョウ
●2017/7 筑豊
・オオコノハズクの声
・無人録音調査
・オオタカ
・カワセミ類(編集部)

●2017/7 道南桧山
・アホウドリのアイヌ名
 知里真志保著作集別巻1、分類アイヌ語辞典(1976平凡社)にアホウドリ=シカベとあり、地域ごとに名前が違うのは季節的に渡ってくるアホウドリの多様性による。内陸部にはアホウドリのアイヌ語は無い。ニシンの群来時に飛来していたアホウドリが見なくなると、シカベは死語になった。陸鳥類は結構アイヌ名が伝えられているが、アホウドリ3種に対し、シカベのみで、恐らく食材に適していなかったためかも知れない。
(道南桧山「はちゃむ」NO.119,P8〜10)

・ニワトリの話
 ニワトリの祖先は東南アジアのキジ類の仲間で、赤色野鶏が人里と森を行き来し、東南アジア→中国(7千年前)→弥生時代に日本へ、インド、エジプト、トルコ経由で南欧州に入った。日本では主に神社で飼われ、神輿に飾られている。
(道南桧山「はちゃむ」NO.119,P12〜14)

・はちゃむ
 支部報名称の「はちゃむ」は桜鳥、ムクドリのアイヌ語である。
(道南桧山「はちゃむ」NO.119,P15)

●2017/7-8 宮城県
・2017年春シギ・チドリ類生息調査(調査・保護グループ)
 4/30、県内の湖沼、干潟11箇所を調査した。29種が記録され、最大羽数はコチドリ9(牛橋)、シロチドリ11(鳥の海)、メダイチドリ77(鳥の海)、トウネン47(蒲生海岸5/16)、ハマシギ119(鳥の海)、ツルシギ27(蕪栗沼4/23)、アオアシシギ9(伊豆沼・内沼5/6)、キアシシギ44(伊豆沼・内沼5/14)、オオソリハシシギ14(鳥の海)、チュウシャクシギ213(鳥の海)、タシギ16(蕪栗沼4/23)、ケリ10(伊豆沼・内沼5/6)。
(宮城県「雁」NO.284,P25〜26)

●2017/7 神奈川
・定線センサス(幹事)
 支部では1999年に67箇所でデータ集積が始まり、現在は、約43の個人・団体で74箇所の調査が行われている。2007年までは毎年、研究報告書BINOSに報告されていたが、1999〜2008年の10年分はCD付きで「神奈川県定線センサスT」(かながわ野鳥ライブラリー7)を販売している。2018年末に「20年間のまとめ」を発行する予定。
(神奈川「はばたき」NO.542,P2〜3)

・何のためのソーラーか
 5/31、東京新聞へ投稿、記載された。千葉県の絶滅危惧種のオオセッカ、コジュリンが繁殖する草原が、ソーラーパネルの巨大な畑になってしまった。環境アセスが義務付けられていないと言え、自然環境を破壊してまでやるのは本末転倒である。県のレッドデータブックには「この種の繁殖地の維持、保全が望ましい」と書いてあるが、何のためのレッドデータブックか。市民、行政ともソーラーパネル設置の代償の大きさが理解できていない。
(神奈川「はばたき」NO.542,P6)

●2017/7-8 諏訪
・1枚飛び上がったオオタカの尾羽
 岡谷市で保護、死亡したオオタカの尾羽、右から5枚目が水平ではなく、直角に垂直尾翼のように立っていた。事故等で折れ曲がったものではない。
(諏訪「いわすずめ」NO.175,P4)

・八ヶ岳のライチョウ
 八ヶ岳のライチョウは、既に絶滅したとされる。江戸時代の文献に立科山や天狗岳にライチョウの生息記録がある。昭和20年代に八ヶ岳で何件か観察例がある。その後、S43/5、天狗岳付近で撮影され、大町市立山岳博物館でライチョウと確認された。その後の調査では発見できず「南アルプス等であぶれた個体が飛来し、数年間滞在し、何らかの原因で消滅または飛び去ったと予想」の記述がある。
(諏訪「いわすずめ」NO.175,P6〜7)

●2017/7 筑豊
・オオコノハズクの声
 5/21、23、英彦山で20〜23時、数秒間、尻下がりに人の笑い声のような鳴声があった。松田道生氏の音源に、鳥取県で同じようなオオコノハズクの録音があった。オオコノハズク♀の声とされ、筑豊野鳥リストに加えられた。亜種リュウキュウオオコノハズクも同様な笑い鳴きをするのが知られており、両種の識別は困難である。
(筑豊「野鳥だより・筑豊」NO.473,P39)

・無人録音調査
 本部からICレコーダー(パナソニックRR-XS455)を5台借用し、英彦山の夜の鳥の鳴き声を、各2時間、3日連続調査した。コノハズク、オオコノハズク、ヨタカ、アカショウビン、アオバズク、ヤイロチョウ、トラツグミ、ジュウイチ、ツツドリ、コルリ等の声が確認された。
(筑豊「野鳥だより・筑豊」NO.473,P40)

・オオタカ
 オオタカは現在10亜種が確認され、北半球のおよそ北緯70度から24度に開けた森林とその林縁に分布する。日本のオオタカはその中で最も小さく、最も暗色で黒味が強い亜種である。(オオタカ識別マニュアル改訂版 環境省自然環境局野生生物課 2015)学名はAccipiter gentilis fujiyamaeで富士山の名が入っている。
(筑豊「野鳥だより・筑豊」NO.473,P41〜43)

・カワセミ類(編集部)
 英語ではkingfisherと呼ばれ、熱帯地方に多く、世界で93種、日本では8種(アカショウビン、アオショウビン、ヤマショウビン、ナンヨウショウビン、ミヤマショウビン、カワセミ、ミツユビカワセミ、ヤマセミ)で、その内3種が国内で繁殖する。奈良時代にはカワセミは「そにとり」「そび」と言われ、鎌倉時代に「しょび」、江戸時代に「しょうびん」と変化した。「そび」は室町時代に「かわせび」「かわせみ」となった。
(筑豊「野鳥だより・筑豊」NO.473,P58〜59)

○支部報/会報 保護・調査記事関連トピックスNO.859

●2017/5-6 宮城県
・2016年度コクガン生息調査(調査保護グループ)
●2017/5-6 諏訪
・霧ケ峰のオオモズ
・カシラダカが絶滅危惧種に
●2017/8 石川
・ウグイスと芸妓
●2017/6-7 京都
・野鳥と音楽
・007シリーズ ジェームズ・ボンド
●2017/5-6 鳥取県
・ビデオカメラで見たブッポウソウの子育て
●2017/7-8 鳥取県
・メガソーラー(太陽光発電)を考える
●2017/7-8 広島県
・巣箱争奪戦ブッポウソウとオシドリ
・カワウ生息状況モニタリング調査
・春のシギ・チドリ渡り調査
・鳥通信

●2017/5-6 宮城県
・2016年度コクガン生息調査(調査保護グループ)
 宮城県はコクガンの太平洋側集団越冬地南限と知られる。コクガンは南三陸沿岸と蒲生海岸に200〜300羽が渡来していたが、東日本大震災で養殖施設が壊滅的な被害を受け、海藻類を食用とするコクガンの渡来が心配された。2012/1から生息状況調査をしている。2017/2/12の調査では、25地点で計673羽を記録した。養殖施設回復以外に破壊された堤防、船着場など多様な場所を利用し、生息数が増加している。
(宮城県「雁」NO.283,P14〜15)

●2017/5-6 諏訪
・霧ケ峰のオオモズ
 3/15、諏訪市の霧ケ峰踊場湿原でオオモズ1を見る。モズのように尾を回す動きはしなかった。日本には数少ない冬鳥、旅鳥として本州中部以北に渡来し、夏季の記録もある。長野県には野辺山高原に1〜数羽が定期的に渡来し、越冬している。
(諏訪「いわすずめ」NO.174,P2)

・カシラダカが絶滅危惧種に
 国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト改訂で、カシラダカは絶滅危惧U類に選定された。過去30年間で75〜87%も数が減ったとされる。嘗ては里山のスズメと言われる位、普通に見られていた。
(諏訪「いわすずめ」NO.174,P4)

●2017/8 石川
・ウグイスと芸妓
 80年以上前の話、当時はウグイスの糞は高級化粧品として芸妓に人気があった。きな粉のような緑色の粉末で、水に溶いて洗顔すると美肌効果抜群とされた。ウグイスの糞としてメジロ、ホオジロ、ムクドリ、ヒヨドリ等糞をごちゃまぜにしたものもあった。鳥を捕る、買うのも自由な時代であった。
(石川「石川の野鳥」NO.195,P6)

●2017/6-7 京都
・野鳥と音楽
 他の音楽家は鳥の声を叙情的に表現するだけで、ベートーベンとメシアンは鳥の鳴き声そのものを楽譜に書きつける程のバーダーである。「運命」の「タタタ・ター」はキアオジの鳴き声とベートーベンは言った由。メシアンは野外で書き留めた鳥の声をピアノ曲にしている。ポップスの「コンドルは飛んで行く」にはコンドルは登場せず、出てくるのはスズメとハクチョウで、サイモンが詩をつけたため、歌詞と題名が別の種類になっている。
(京都「そんぐぽすと」NO.206,P10〜14)

・007シリーズ ジェームズ・ボンド
 007シリーズの原作者イアン・フレミングはバードウォッチャーであり、主人公の名前を何にしようかと迷っていた。机の上にあった図鑑「西インド諸島の鳥」を見て、その著者James Bond博士の名前を借用した。後日、対面時、「本物のジェームズ・ボンドへ」と添え書きして、最新作をプレゼントしている。
(京都「そんぐぽすと」NO.206,P22)

●2017/5-6 鳥取県
・ビデオカメラで見たブッポウソウの子育て
 2015/4/26、支部は鳥取県日南町(標高480m)でブッポウソウの巣箱にビデオカメラを設置した。当初、シジュウカラが巣材を運び込み、5/5から苔が獣毛になり、5/17までに13個産卵した。5/15、ブッポウソウが入り、シジュウカラの卵捕食が続いたが、抱卵中のシジュウカラは怯えて自分の頭を巣材で隠す行動があった。ブッポウソウはシジュウカラの親に給餌する格好を見せる不可解な行動もあった。6月に入るとブッポウソウは巣を奪って、4個産卵し、抱卵に入った。6/30、3羽同時に孵化し、4卵目の孵化は7/2であった。7/5、アオダイショウが巣内に侵入し、雛が全て食べられた。ブッポウソウの巣箱を利用するスズメが多数いたが、今回のシジュウカラのように卵捕食をスズメが学習したためか、最近はスズメの利用は極端に減った。
(鳥取県「銀杏羽」NO.151,P14〜18)

●2017/7-8 鳥取県
・メガソーラー(太陽光発電)を考える
 中海の浅瀬を埋め立て、住宅、工業用地があったが、地震での液状化もあり、放置され、2014年に53haの国内有数のメガソーラーが稼働した。大山山麓、約20haが農地にされたが、結局、遊休化し、最終的に太陽光パネルで覆われている。隣接した場所でゴルフ場開発中止地に「オオタカの森」がある。弓浜半島には条件が悪い農地は放棄され、小規模ソーラー発電が建設されている。遊休化した土地を山林、原野に戻す選択肢はないのか。
(鳥取県「銀杏羽」NO.152,P11〜13)

●2017/7-8 広島県
・巣箱争奪戦ブッポウソウとオシドリ
 三次市の北北東16〜18qに神之瀬峡県立公園があり、そこではブッポウソウとオシドリが巣箱争奪戦をしている。10年ほど前からブッポウソウの巣箱を架けているが、2016年、ブッポウソウ用巣箱を大きくしたオシドリ用の巣箱も架けた。その内1巣箱で、オシドリが抱卵用に敷いた羽毛が外に出され、ブッポウソウが顔を出していた。逆に、ブッポウソウ用巣箱の中に、オシドリ♀がいた例もある。両種は食性が違うため共存できると考えていたが、巣箱設置で巣箱争奪戦が繰り広げられている。
(広島県「森の新聞」NO.211,P1〜2)

・カワウ生息状況モニタリング調査
 広島県ではカワウの繁殖時期は地区で異なっている。東部の沿岸部では最も早く12月に、続いて県西部の沿岸部、県北部の山地では3月でも繁殖を始めるものは少ない。全国的には3月にカワウの繁殖期調査をしているが、5月(上旬)になれば、調査ができる。
(広島県「森の新聞」NO.211,P3)

・春のシギ・チドリ渡り調査
 4/29前後、県内10箇所で調査した。21種、698羽で内訳はハマシギ241、ダイシャクシギ165、ケリ74、イソシギ56、キアシシギ50、ソリハシシギ25、コチドリ24等。
(広島県「森の新聞」NO.211,P4)

・鳥通信
 5/2、広島市の公園でシロハラホオジロ♀が撮影された。5/5まで滞在。広島県内初記録である。5/2、尾道市で数羽のカルガモの中に、黒化変異した個体が撮影された。
(広島県「森の新聞」NO.211,P17)

(自然保護室・野鳥の会・神奈川/森 要)

ブロックからのお知らせなど

■平成29年度近畿ブロック会議 報告

●日程:2016年6月24日(土)〜25日(日)
●場所:光明院(和歌山県伊都郡高野町)
●担当:日本野鳥の会和歌山県支部
●参加者:日本野鳥の会滋賀、日本野鳥の会京都支部、日本野鳥の会大阪支部、日本野鳥の会ひょうご、日本野鳥の会奈良支部、日本野鳥の会和歌山県支部、(公財)日本野鳥の会から計30名が出席した。(公財)日本野鳥の会からは、上原(常務理事兼事務局長)、箱田(普及室長代理)、井上(普及室員)、浅野(普及室員)、野口(自然保護室員)が出席した。


▲会議の様子

●議事:6月24日(土)14:00〜17:00
【開催支部挨拶】
 中川和歌山県支部長より挨拶があった。遠方からの参加に対するお礼と、会議の場を有意義な議論の場としたい旨が述べられた。

【財団事務局挨拶】
 上原常務理事兼事務局長より挨拶があった。報告事項として、財団の評議員、理事、理事長の交代などが伝えられた。

【財団事務局】
◆普及室より「会員を増やすための探鳥会」について(箱田普及室長代理)
 「会員を増やすための探鳥会」について、2016年度は18支部28回の開催だったが、DVD資料、探鳥会の手引きを制作配布し広報したため、参加支部は24支部に増える見込みであると報告された。また、今後は、探鳥会参加者の入会率を上げる工夫をすると伝えられた。
 探鳥会運営ノウハウ共有のため、ぜひ探鳥会リーダーズフォーラムに参加してほしい、また、非会員への探鳥会広報ツールとして、これまでの小冊子に加えて今年度リリースした小冊子「バードウォッチングBOOK」も活用してほしいと述べられた。

【滋賀】
◆Young探鳥会の取り組みについて報告(大橋スタッフ)
 「Young探鳥会」を1月、2月、6月に開催したと報告された。6月の探鳥会では、通常の探鳥会との差別化を図るため年齢制限を50歳以下としたこと、ガイドを学生が担当、20名ほどが参加したことが報告された。県外の参加者が多いため、支部同士の連携が重要ではないかと意見が述べられた。

◆SNSの利用について報告(大橋スタッフ)
 会員でない方に情報発信をするため、2016年11月末からフェイスブックとツイッターの公式アカウントを作り、支部の担当者4人が運営していることが報告された。

【京都支部】
◆ガンカモ調査とオオバンについて(石川支部長)
 ガンカモ調査の対象に、オオバンを含めてはどうかと提案された。京都ではオオバンは珍しい鳥であったが、2007年から増えはじめ、ここ数年で激増している。京都支部が受託しているガンカモ調査では、次回からオオバンを調査対象とする予定であると報告された。
 報告を受けて、各支部のオオバンの記録が共有された。
 山岸滋賀代表から、オオバンを正式な調査対象にするよう、財団から環境省に申し入れてほしいと述べられた。野口自然保護室員から、持ち帰って話し合うとの回答があった。

◆支部の業務を行う者への金銭的補償について(石川支部長)
 支部活動において、業務をになう幹事や会員への、日当、交通費、宿泊費などの金銭的補償をどこまで行うのか情報交換をしたいと述べられた。
 各支部から、金銭的補償の範囲が共有された。日当、交通費、宿泊費の補償の対象や金額は支部ごとに異なっていた。

【大阪支部】
◆「大阪鳥類目録2016」を発行(松岡支部長)
 掲載した種数が増えたこと、全種について季節ごとの生息分布図を掲載したことによりページ数が大幅に増えたと報告された。

◆大阪支部創立80周年記念行事について(松岡支部長)
 探鳥会、フリーマーケット、記念講演、懇親会の流れで企画しており、時期が近くなったら周知すると伝えられた。

◆機関紙「むくどり通信」のオールカラー化の報告(松岡支部長)
 機関紙「むくどり通信」をオールカラー化し、今後も継続の予定であると報告された。

◆スマートフォン対応の支部ホームページ作成の報告(松岡支部長)
 インターネットをスマートフォンで利用する人が多いことから、スマートフォンに対応した支部のホームページを作成した。

【ひょうご】
◆探鳥会の非会員参加費を値上げした結果の報告(長江副代表)
 従来の探鳥会の参加費は会員100円、非会員200円であったが、非会員を300円に値上げしたと報告された。値上げ前後で、同時期、同場所の定例探鳥会50回を全70回から抽出して比較したところ、会員の割合が少し増えたが、全体の収入は変わらなかったと報告された。

◆雨天などで探鳥会を中止するときの規定について(長江副代表)
 支部の規定にはないが、探鳥会が雨天中止の場合でも、担当者は集合場所に行き、「雨でも参加したい」という希望があれば行うと報告され、他支部の規定について情報交換したいと述べられた。
 各支部から、探鳥会を中止する場合の基準と、中止する場合にリーダーが集合場所に行くかどうかが共有された。
 寺田京都支部事務局長から、事故が起きた場合の管理責任を問われるので「非公式」と参加者に断ったとしても、探鳥会を開催すべきではないと述べられた。
 箱田普及室長代理から、リーダーが開催場所へ出向いた場合は、探鳥会が中止であっても申請すれば探鳥会保険の対象となり、申請してほしいと伝えられ、保険上、開催するのならば「正式に行う」のがよいと述べられた。

【奈良支部】
◆奈良支部創立50周年記念「奈良県縦断探鳥会」報告(元吉支部長)
 奈良支部創立50周年記念「奈良県縦断探鳥会」が今年5月に行われたと報告された。20周年と40周年時の縦断探鳥会の各コースから2qを抜き出して観察のコースとした。キジバトとアオバトがそれぞれ平野部と山間部にすみわけていることなどが確認され、解析後、支部報に報告する予定であると伝えられた。

【和歌山県支部】
◆府県版鳥類レッドリストについて(沼野事務局長)
 10年毎に改訂しており、次は4年後に発行予定と報告された。また、今年度末に鳥類目録も作る予定であることも報告された。
 奈良支部、大阪支部、ひょうご、和歌山県支部が、レッドリスト作成に関わっていると報告がされた。
 丸谷ひょうご副代表からは、明石市で、支部のリーダーと市民が一緒に観察したデータと、地域の自然に詳しい方の情報や過去の文献を用いて、今年度中にレッドリストを作る予定であると報告された。実現には、支部幹事で企画力のある明石市職員がいたことが大きな要因であると伝えられた。塚田大阪支部幹事から、これは、支部のリーダーが地域のファシリテーターの役割を果たしている事例であると発言があった。

◆メガソーラー施設について(津村副支部長)
 メガソーラー施設の建設に関する規制がなく、和歌山県では、特にため池への建設が問題となっていると報告された。また、今後の建設計画浮上を危惧していると述べられた。
 丸谷ひょうご副代表からは、企業が所有する姫路市自然観察の森前の貯水池の事例が報告された。この貯水池はさまざまな水鳥が飛来する場所で、支部や財団の施設運営支援室がその対応にあたっていた。建設計画休止に最も効果があったのは、地元自治体からの反対であったと報告された。他の地域でも、問題が起こる前に「うちの地域では、このような開発はしない」と地元自治体や議員と話をしていくことが有効ではないかと意見が述べられた。また、再生可能エネルギーは、自然を犠牲にしたものであってはならないと述べられた。
 橋本大阪支部副支部長から、産業廃棄物を埋め立ててできたチュウヒの繁殖地に、メガソーラーが建設された事例が報告された。大阪支部は反対運動に消極的であったが、実際に建設されてチュウヒが繁殖しなくなり、とても後悔していることが伝えられた。保全上重要な生物が生息する場所は、よく調査をして反対の声を上げるべきだと述べられた。
 東出和歌山県支部副支部長から、再生可能エネルギーの発電機設置の勧誘がされた際に「もしも、見込み通りの収入とならなかった場合、企業が補てんするのか」と聞くと、もう勧誘されなかったという話を聞いたと報告された。
 以上の発言を受け、上原常務理事兼事務局長からは大規模な会社は、環境に対する配慮をしないと認められない時代となったため、働きかけやすい一方、小さな企業、ブローカーは対策しにくいことが述べられた。財団でも、野鳥の重要な生息地が開発されてしまうことを避けるため、対応を考えていくことや、金融や証券、不動産などの企業の間には、社会的に責任のある形で投資を行うべきだという動きが出てきているため、財団からこの分野の企業に、一般的には環境に優しいと思われているプロジェクトにも問題のある場合があることをアピールしていることが報告された。

 最後に、来年のブロック会議の主催が京都支部となることが確認された。

※会議終了後は、懇親会があり懇談と情報交換を行った。翌日の午前中には奥の院周辺にて探鳥会が行われた。

(普及室/井上 奈津美)

事務局からのお知らせなど

■普及室より

■9月号『フィールドガイド日本の野鳥』増補改訂新版の取り組み

<ホオジロ類の新たな識別点とは?>

 換羽期が終わり、秋の渡りは最盛期を迎えます。『フィールドガイド日本の野鳥』の初版が発行された1982年は、「秋の渡りで見られるシギ類は幼鳥が多い」ことが、ようやく知られはじめた頃でした。それまで冬羽と思われてきた幼羽のシギたちを、初めて正確に描いたのが『フィールドガイド日本の野鳥』だったとも言えましょう。
 一方、サギ類の婚姻色についてはまだあまり知られていませんでした。著者の高野伸二は、眼先が一時的に赤くなるアマサギをどう扱うべきか?などは、悩んでいたようです。婚姻色として一時期だけ眼先や足の色が変わることは、2007年発行の増補改訂版で、私が高野の解説文に書き足しました。
 近年、標識調査などで手にとって調べた知見も反映されるようにもなって、野外識別では非常に細かいところまでチェックされるようになってきました。例えば、文一総合出版発行の雑誌『BIRDER』では、9月号の「鳥見学への誘い」で、ホオジロ類の類似種の識別に役立つ、三列風切の軸斑模様の僅かな違いについて書かれていました。『フィールドガイド日本の野鳥』でも、増補改訂新版でイワバホオジロを追記した際には、ズアオホオジロとの識別点として解説しています。
 当時、最高峰とされた『フィールドガイド日本の野鳥』ですが、今後も使えるものとして世に残すためには、修正を施さなくてはなりません。高野による図版も、谷口高司さんにお願いして微修正をしてきました。

<アオバトの足に羽毛が増えた?>
 
 お陰様で2015年には新版(増補改訂新版)を発行できましたが、その編纂に取り組み始めた2013年、郡山支部報「カッコウ」(12月発行、No.84)に私が寄稿した文(前々号ではカワラヒワの修正を紹介)から抜粋しておきます。
「・・・高野先生が図版も解説も担当された「フィールドガイド日本の野鳥」は世界でも高い評価を得、今もバイブルとして使っている方が少なくありません。2006年にその増補改訂を担当せざるを得なくなった私は、死ぬほど悩みました。御奥様にはご了解いただいたものの、歴史的な高野作品として手を加えるべきでないと主張される方もいました。新たな知見は原文を損なわないよう追記しましたが、間違いとして直すべきか否かは微妙な点が多々ありました。
 例えばアオバトの足です。高野図版より足に羽毛が見えるものが普通ですが、私は高野図版のような羽毛がほとんどない個体も見たことがあるので、間違いとはせず、直しませんでした。が、御批判もいただきましたので、今度は直そうかと考えています。野鳥には個体差もあるので100%の図鑑はあり得ませんが、いかに典型的な個体を示すかに腐心しなくてはなりません。・・・」
 新版で、アオバトの図版(P201)を見ていただけませんか?増補改訂版までの図版では見えていたかかとの部分が、羽毛に覆われているでしょう。高野から鳥の絵を教わった谷口さんだからこそ、同じ絵の具を使い、原画を損なわないような修正が可能になります。ただ、愛され、親しまれてきた師匠の画に筆を入れるのは、精神的にもきついと言っておられました。

<V字か?逆への字か?>

 増補改訂版を担当した際、増補版までのセイタカシギの若鳥の図版は、背の色が濃すぎることに気づきました。悩みましたが、セイタカシギは個体差が多いので、濃い若鳥がいる可能性も否定できないとして、そのままにしておきました。しかし、雌成鳥と思われる個体でも、もっと淡いものがいます。このままでは間違いになると考え直し、新版で、谷口さんに背の色を淡くしてもらいました。幼鳥ともども虹彩にも筆を入れてもらっており、僅かに暗色になっているはずです。
 レンカクの図版は、新版で冬羽を若鳥に変えました。レンカクの冬羽と若鳥はよく似ていますが、近年、若鳥は頭に茶色味があると言われるようになりました。冬羽として掲載されていた高野の図版は頭部に茶色味が見えるので、その他の細部に筆を入れてもらった上で、キャプションを冬羽から若鳥にしました。
 敢えて、変えていない例もあげておきましょう。解説文の話になりますが、チュウヒなどの滑翔時に両翼の端が上向きになっているのをよく「V字形」と表現します。しかし、私には適切と思えません。印象に残る言い方という意味ではよいかも知れませんが、実際の両翼の形を思い浮かべて下さい。Vと呼べるほど翼端が上がることはあるでしょうか?まったく知らない方にとっては「への字を逆にしたような形」と示すほうが妥当ではないかと考え、『新・山野の鳥』では「逆への字」を使って解説させてもらいました。が、『フィールドガイド日本の野鳥』の高野の解説は「V字形」を多用しており、増補改訂版では飛翔図で特徴を示すマークとしても活用したので、すべてそのままにしてあります。

© 谷口高司

▲図版 P351 しま模様の羽の比較
増補改訂版以後、谷口高司さんに追加してもらった図版の例。前回紹介した「ものさしサイズの基本の形」に続き、羽の見分け方の解説に対応したもの(@が初列風切 Aが次列風切 Bが尾羽)。

(普及室・主席研究員/安西 英明)

■連携団体(支部等)向け卸販売をご利用ください

 通販カタログ「バードショップ」2017秋冬号が発行となりました。会員の皆さまには、会誌「野鳥」9・10月号に同封してお届けしております。販売事業ご担当の皆さまには、連携団体(支部等)向け卸販売のご案内と合わせてお届けします。販売を通じて、バードウォッチングや自然保護の輪が広まるとともに、販売収益が支部活動の一助となるよう、期待しております。ご協力をお願いします。

●秋冬号のオススメ新商品

(1)2018年オリジナルカレンダー販売開始!
 今年も「ワイルドバード・カレンダー」、「バーズ・イン・シーズンズ卓上カレンダー」、「しあわせことりカレンダー」の3種を販売します。それぞれ、自然や野鳥の魅力にあふれる写真を厳選しました。

(2)バードウォッチング長靴を寒い冬も快適に!
 人気の中敷き「ソールラック」に、暖かいタイプが仲間入りしました。また、メリノウールの靴下がツグミとゴイサギの柄になって新登場しました。

(3)鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ30周年特集!
 30周年を記念して、タンチョウをイメージして作ったバッグと、鶴居村でつくられた食品を掲載しています。

 そのほか『年賀はがき』や『アウトドアグローブの新色』など、多数掲載しております。皆さまのご利用・お問い合わせをお待ちしております。

【支部卸販売のご注文・お問い合わせ先】
普及室 販売出版グループ:
TEL:03-5436-2623 FAX:03-5436-2636
Email:r-hanbai @wbsj.org

(普及室/嶋村 早樹)

会員室より

■会員数

 9月1日会員数35,311人で、先月に比べ11人減少しました。8月の入会・退会者数の表をみますと、入会者数は退会者数より22人少なくなっています。
 会員の増減は入会者数と退会者数のほかに、会費切れ退会となった後に会費が支払われ会員として復活した人数によって決まります。8月の入会者数は164人で、前年同月の入会者106人に比べ58人増加しました。また、8月の退会者は141人で、前年同月の退会者181人に比べ40人減少しました。

表1. 8月の入会・退会者数

入会者数退会者数
個人特別会員 11人 8人
総合会員(おおぞら会員) 45人 41人
本部型会員(青い鳥会員) 31人 20人
支部型会員(赤い鳥会員) 53人 44人
家族会員 24人 28人
合計 164人 141人
年度累計 870人

※会費切れ退会となった後に会費が支払われ会員として復活する方がいらっしゃるため、退会者数の年度累計は、実際の退会者数とずれた数字となります。このため、退会者数合計については年度末の集計後にお知らせいたします。

■都道府県および支部別会員数■
 野鳥誌贈呈者数を除いた数を掲載します。

表2 都道府県別の会員数(9月1日現在)

都道府県会員数対前月差
北海道1739人-4人
青森県253人-2人
岩手県361人-2人
宮城県484人-2人
秋田県247人0人
山形県211人2人
福島県624人-4人
茨城県916人-5人
栃木県618人-1人
群馬県630人1人
埼玉県2220人-2人
千葉県1637人-4人
東京都4940人2人
神奈川県3379人1人
新潟県372人1人
富山県209人0人
石川県288人-1人
福井県220人-3人
山梨県285人-2人
長野県863人0人
岐阜県476人-2人
静岡県1348人0人
愛知県1529人7人
三重県423人-2人
滋賀県299人1人
京都府809人4人
大阪府1988人11人
兵庫県1288人5人
奈良県485人1人
和歌山県195人-1人
鳥取県187人-1人
島根県165人-1人
岡山県562人0人
広島県556人-2人
山口県372人-2人
徳島県311人2人
香川県201人0人
愛媛県368人-1人
高知県133人-1人
福岡県1330人-3人
佐賀県200人4人
長崎県209人0人
熊本県412人-1人
大分県218人-2人
宮崎県248人2人
鹿児島県337人0人
沖縄県114人0人
海外12人0人
不明40人-4人
全国35311人-11人

備考:不明は転居先が不明の会員を示します。

表3 支部別の会員数(9月1日現在)

都道府県会員数対前月差
小清水13人0人
オホーツク支部244人2人
根室支部83人2人
釧路支部161人1人
十勝支部193人0人
旭川支部82人0人
滝川支部45人-1人
道北支部34人0人
江別支部20人0人
札幌支部310人2人
小樽支部74人-1人
苫小牧支部170人1人
室蘭支部164人6人
函館支部26人1人
道南檜山72人0人
青森県支部140人1人
弘前支部117人-2人
秋田県支部237人0人
山形県支部193人1人
宮古支部88人0人
もりおか155人0人
北上支部106人0人
宮城県支部442人1人
ふくしま160人-1人
郡山170人-2人
二本松14人-1人
白河支部40人0人
会津支部51人0人
奥会津連合10人0人
いわき支部111人0人
福島県相双支部16人0人
南相馬15人1人
茨城県821人-2人
栃木601人-2人
群馬565人0人
吾妻41人0人
埼玉1674人-5人
千葉県1067人-1人
東京2893人1人
奥多摩支部837人-3人
神奈川支部2375人-12人
新潟県287人1人
佐渡支部29人0人
富山187人1人
石川267人0人
福井県213人-2人
長野支部466人-2人
軽井沢支部174人-1人
諏訪233人0人
木曽支部22人0人
伊那谷支部80人-1人
甲府支部196人0人
富士山麓支部56人0人
東富士67人0人
沼津支部168人0人
南富士支部249人1人
南伊豆41人0人
静岡支部356人1人
遠江412人-2人
愛知県支部1120人3人
岐阜481人1人
三重359人1人
奈良支部453人-2人
和歌山県支部196人-1人
滋賀298人0人
京都支部774人5人
大阪支部1875人5人
ひょうご982人2人
鳥取県支部207人2人
島根県支部156人-2人
岡山県支部528人-1人
広島県支部480人-2人
山口県支部351人-1人
香川県支部162人-1人
徳島県支部323人3人
高知支部120人-1人
愛媛342人-2人
北九州313人2人
福岡支部 597人-4人
筑豊支部232人-1人
筑後支部166人0人
佐賀県支部220人4人
長崎県支部200人-1人
熊本県支部403人-1人
大分県支部217人-1人
宮崎県支部241人3人
鹿児島308人2人
やんばる支部78人0人
石垣島支部24人-1人
西表支部42人0人
 30381人-6人

備考:支部別の会員数の合計は、都道府県別の会員数の合計と異なります。これは、本部型(青い鳥)会員や支部に所属されていない個人特別会員が支部別の会員数に含まれないためです。


(会員室/沖山展子)


★支部ネット担当より

 厳しい残暑が続いておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。いつも支部ネット通信をご愛読いただき、ありがとうございます。  通販カタログ「バードショップ」2017秋冬号が発行となり、オススメ新商品等のご紹介をさせていただいております。詳しくは「連携団体(支部等)向卸販売をご利用ください」の記事をご覧ください。

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支部ネット通信 第162号
◆発行
公益財団法人日本野鳥の会 2017年9月25日
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総務室 総務グループ
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