No.168 2018年3月号


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目次 ◆支部の動き
支部報 保護・調査記事関連トピックス
◆ブロックからのお知らせ
2017年度日本野鳥の会九州・沖縄ブロック
 運営協議会報告

◆事務局からのお知らせなど
3月号『フィールドガイド日本の野鳥』増補改訂
 新版の取り組み(最終回)

連携団体(支部等)向け卸販売をご利用ください
評議員会傍聴申込要領について
会員数

支部の動き

■支部報保護・調査記事関連トピックス■

 本記事は日本野鳥の会へ送付されてきている各地の支部報/会報から抽出して作成し、調査・保護に関心がある野鳥の会の会員へ配信しております。本記事の一部又は全部を不特定多数が見る可能性があるところへ公開される場合は、各支部/各会の了承を事前に得て下さい。記事は筆者の意向に反しないように、取り扱いをお願いします。

○支部報/会報 保護・調査記事関連トピックスNO.879

●2018/1 苫小牧
・農地や耕作放棄地は鳥類の生息地として機能するのか
●2018/1 茨城県
・防鳥ネット
・水戸市で詳細分布調査
・ハス田におけるカモ類の採食方法とその頻度の解明
●2018/1 奥多摩
・奥多摩新記録コシジロウミツバメ
●2017/11 佐渡
・佐渡の石名県有林の夏鳥に異変
●2018/1 奈良
・松喰鶴、福良雀
●2018/1 岡山県
・交差点上のコサギのねぐら
●2018/1 徳島県
・ちょっと気になる野鳥の和名セッカ
●2018/1 北九州
・響灘一般海域のゾーニング検討開始
●2018/1 筑豊
・ツグミ類の分類
●2018/1 宮崎県
・2017年金御岳サシバ
・延岡市愛宕山展望台サシバ定点観察

●2018/1 苫小牧
・農地や耕作放棄地は鳥類の生息地として機能するのか
 世界で最も自然破壊された環境は熱帯雨林と思うかもしれないが、実は湿地である。日本国内でもこの100年で6割の湿地が失われた。湿地性生物は農耕地に僅かながら生き延びている。農地や耕作放棄地をうまく活用する必要がある。個体数が多くても「エコロジカルトラップ」と言って繁殖時に人的な破壊がある。そのため、その地で繁殖に関わる鳥は飛来時期が早い傾向にある。国内農地の約1割、約40万haが使われていない。これらを復元、再開は急務であるが、耕作放棄地はそのままでも生物の生息地として、有効活用できるかもしれない。
(苫小牧「あおさぎ」NO.216,P4〜5,9)

●2018/1 茨城県
・防鳥ネット
 ハス田から野鳥の羅網死一掃を願って14年。その間、嘘で塗り固めた防鳥ネット使用継続はJAのプライドのためか。支部の本調査はバードリサーチの支援プロジェクトにノミネートした。
(茨城県「ひばり」NO.341,P2)

・水戸市で詳細分布調査
 2017/5〜6、「全国鳥類繁殖分布調査」の中で調査した。63種の野鳥が確認され、内8種が冬鳥、旅鳥であった。この地区で繁殖の可能性のある鳥は55種(含、外来種5種)。ハシボソガラスとハシブトガラスは森林率の大小ですみわけされている。茨城県は農業県で樹林率は低く、樹林性の鳥の移入定着は遅く、都市化されていても、東京都とは事情が異なっている。
(茨城県「ひばり」NO.341,P3〜5)

・ハス田におけるカモ類の採食方法とその頻度の解明
 昨年度はハス田の防鳥ネットで羅網死した野鳥は2千羽を越えていると推定される。12月〜2月、3年間調査した結果、野鳥の羅網死はレンコン未収穫田より収穫済田で2倍以上高かった。カモの糞分析では未収穫田ではウキクサが多く混じっており、レンコンは食べていない。収穫済みハス田では廃棄されたレンコンを食べている可能性はある。夜間の採食行動を自動撮影する予定である。
(茨城県「ひばり」NO.341,P6〜7)

●2018/1 奥多摩
・奥多摩新記録コシジロウミツバメ
 10/24、狭山湖で水面を飛ぶコシジロウミツバメが撮影された。奥多摩支部フィールド内、初記録である。
(奥多摩「多摩の鳥」NO.240,P12)

●2017/11 佐渡
・佐渡の石名県有林の夏鳥に異変
 この5年間、5月下旬から7月中旬まで同県有林で調査した。マミジロ、アカハラは高い出現率で繁殖シーズンを通して、縄張りを作っていたが、今期はこの2種は全く渡来していない。今季に限った例外なのか。
(佐渡「いそひよ」NO.26,P3〜4)

●2018/1 奈良
・松喰鶴、福良雀
 鳥が植物を銜える構図にノアの方舟でオリーブの枝を銜える鳩がある。この構図が正倉院に「花喰鳥」としてあり、平安時代に和様化で花が松に、鳥が鶴に変わり、鶴が松の枝を銜える「松喰鶴」として現在に伝わっている。また、冬の寒さで全身の羽毛を膨らませた雀のデザインが「福良雀」として使われている。太ったスズメは豊かさの象徴であった。
(奈良「いかる」NO.160,P2〜3)

●2018/1 岡山県
・交差点上のコサギのねぐら
 近年、コサギが都市の街路樹や人工物を塒にするのが観察されている。倉敷市街地の交差点の電柱、電線に多数のコサギが塒入りするのを見る。2010/11に30羽程度が徐々に数が増え、2017/11には100羽を超えた。吹きさらしの環境で、厳冬期の12〜2月は殆ど利用しない。周囲には電線より高い建物はない。樹木は伐採されるが、電線、電柱は撤去される心配がない。
(岡山県「野鳥おかやま」NO.224,P8)

●2018/1 徳島県
・ちょっと気になる野鳥の和名セッカ
 セッカは漢字で雪加と表記し、江戸時代中期からセッカで知られるがその名前の由来は定かではない。安部直哉(2008)「山渓名前図鑑・野鳥の名前」には「巣材のチガヤの白い穂を銜えて飛ぶ姿を雪に見立て雪加となった」と推測している。私はその鳴声に由来していると考える。チャッ、チャッの声は火打石を打ち合わせる音を連想させ、ヒッ、ヒッ、の火で合わせて石火、後に雅語化して雪加を当てたと考える。
(徳島県「野鳥徳島」NO.472,P9)

●2018/1 北九州
・響灘一般海域のゾーニング検討開始
 北九州市港湾区域で大規模洋上風力発電計画が進んでいる。北九州市はこの区域で2年かけて、風力発電が自然環境や漁業に与える影響を検討する。この検討会には、学識経験者、漁業関係者、海上保安庁、福岡県、本部の自然保護室の浦氏が出席し、支部もオブザーバーとして同席でき、後日意見が提出できる。
(北九州「北九州野鳥}NO.379,P13〜14)

●2018/1 筑豊
・ツグミ類の分類
 古い分類ではツグミ科にルリビタキ、ジョウビタキ、ノビタキ等のヒタキが付く種があり、ヒタキ科と紛らわしかった。日本鳥類目録改訂第7版ではヒタキ科51種に統合され、ツグミ科の名称は無くなり、下位分類の11属に細分された。「フィールドガイド日本の野鳥」では、日本のツグミ類38種は、便宜上小型ツグミ類20種、イソヒヨドリ類2種、大型ツグミ類16種に分類している。
(筑豊「野鳥だより・筑豊」No.479,P43)

●2018/1 宮崎県
・2017年金御岳サシバ
 9/6〜10/24の観察でサシバは総計15,512羽で1984年以降のデータでは6番目に少なった。カウントするする人は殆どが野鳥の会会員ではないボランティアであった。「タカの渡り全国ネットワーク」で2017年秋の金御岳につながる日本海側、太平洋側コースの合計は22,000(前年は21,000)で、全体として個体数が減ったのではなくカウント漏れがかなりあった。
(宮崎県「野鳥だよりみやざき」NO.265,P3〜4)

・延岡市愛宕山展望台サシバ定点観察
 9/25〜10/14、標高192mの展望台で観察した。愛宕山(宮崎県の入口)では金御岳(九州の出口)の20%程度のサシバしか視認できなかった。
(宮崎県「野鳥だよりみやざき」NO.265,P5〜6)

○支部報/会報 保護・調査記事関連トピックスNO.880

●2018/1-2 札幌
・北海道のタカ類
・津軽海峡海鳥探鳥会
●2018/1-2 宮城県
・日本野鳥の会ビジョン2030
・探鳥会記録を用いた鳥類群集の長期変化傾向の分析
●2018/1-2 栃木
・調査研究はなぜするの
・サシバが縁で交流都市締結
・ドローンを使ってカモを数える
●2018/1-2 諏訪
・諏訪湖に飛来したオニアジサシ
・足環付きフクロウ
●2018/1-2 鳥取県
・ササゴイ観察記
●2018/1-2 愛媛
・由良半島のサシバの秋の渡り
●2018/1 長崎県
・県民鳥オシドリ長崎県下一斉カウント

●2018/1-2 札幌
・北海道のタカ類
 北海道で記録があるタカ類は22種、極東の一部に生息する北方系のオオワシ、南方系のクマタカ、近年はイヌワシの生息、サシバの渡りも確認されている。北海道にはチュウヒの貴重な繁殖地がある。ハイタカ属3種の内、ツミは北海道では夏鳥である。
(札幌「カッコウ」NO.400,P5〜7)

・津軽海峡海鳥探鳥会
 この例会は2004年より始まり、毎回、海鳥研究の権威者、北海道大学小城春雄名誉教授に参加頂いている。船上から莫大な数のハシボソミズナギドリが見られる。ハシボソミズナギドリは4月上旬、タスマニア島周辺海域で繁殖を終え、親鳥は北半球を目指して北上し、三陸沖で一休みする。雛は換羽した後、親鳥のあとを追う。6月上旬までにベーリング海や北極海に達し、その一部が津軽海峡に入る。9月中旬にタスマニア島周辺に戻るが、帰りは津軽海峡を通らない。
(札幌「カッコウ」NO.400,P11)

●2018/1-2 宮城県
・日本野鳥の会ビジョン2030
 11/11のH29年度連携団体全国総会から。2034年は日本野鳥の会の100周年になる。これに合わせて40代の職員と執行役員でビジョン2030を策定し、2018年に公表予定。5つの重点項目を設定している。・絶滅危惧種の保護と野鳥の生息地保全・地域の自然が地域の手で守る社会・生き物や自然に配慮したエネルギーシフト・自然とのふれあいで自然への理解者を増やす・探鳥会、芸術家等の次世代の充実。
(宮城県「雁」NO.287,P13〜14)

・探鳥会記録を用いた鳥類群集の長期変化傾向の分析
 11/11のH29年度連携団体全国総会から。土地利用と長期の鳥の変化傾向分析のため、日本学術振興会科学研究費助成事業として、H29年度〜H32年度実施予定で、各支部の探鳥会記録データを照会させて頂く。
(宮城県「雁」NO.287,P14)

●2018/1-2 栃木
・調査研究はなぜするの
 ある地域の自然環境を保護するため、その地域の環境やそこに生息する生物の生態知識が必要である。漠然とした知識で実施した保全活動がその種の生息に負の影響を及ぼすことがある。例えば、渡良瀬遊水地でのヨシ焼きは、湿地環境維持になくてはならない行為であるが、ヨシ原に生息するオオセッカやチュウヒに悪い影響がある。しかし、ヒバリ、チョウゲンボウなど草丈が低い草原を利用する種には恩恵がある。ヨシ原の多様性を損なわないヨシ焼きの検討に調査研究は不可欠である。身近な鳥をモニタリングする(例えば、バードリサーチが実施しているベランダバードウォッチング)調査では、ハシボソガラスは減少していることが分かる。
(栃木「おおるり」Vol.250,P4〜6)

・サシバが縁で交流都市締結
 10/3、栃木県市貝町と沖縄県宮古島市が交流都市提携協定書を取り交わした。相互訪問が検討されている。市貝町は国内有数のサシバの繁殖地、宮古島市は国内最大のサシバ渡り中継地である。豪州ブリスベーン市と千葉県習志野市は共にラムサール条約湿地を有しており、渡り鳥が縁で友好都市になっている。
(栃木「おおるり」Vol.250,P7)

・ドローンを使ってカモを数える
 遠方のカモの群の数を数えるとき、望遠鏡では個体が重なり、視野が揺れてカウントが難しい。ドローンで上空より写真を撮ると、思ったよりカモは離れているが、目標物の無い水面では複数の写真をつないで見るのは難しい。1枚に入れると、各カモは小さくなり種の同定が難しくなるので、ドローンでカモカウントも必ずしもうまくいかない。ハクチョウのように水面とはっきり色が違う種では画像処理で自動カウントできるソフトはある。
(栃木「おおるり」Vol.250,P9)

●2018/1-2 諏訪
・諏訪湖に飛来したオニアジサシ
 11/6〜13、諏訪湖でオニアジサシ1(幼羽〜第1回冬羽に換羽中)が飛来した。長野県下では初記録と思われる。内陸部の湖への渡来は極めて稀である。日本産アジサシ類では最大である。石川県かほく市の海岸で11/14〜11/24、オニアジサシ1が滞在したが、同一個体か不明。
(諏訪「いわずずめ」NO.178,P9)

・足環付きフクロウ
 10/7、霧ケ峰車山(標高1550m)で死んだフクロウを発見する。足環があり、山階鳥類研究所に照会した結果、5/7に山梨県清里で巣立ち前のフクロウの雛(体重515g)に装着したものであった。移動距離は直線で約50km、百数十日の命であった。
(諏訪「いわずずめ」NO.178,P10)

●2018/1-2 鳥取県
・ササゴイ観察記
 河川の中州の柳林の6巣で巣立ちがあった。巣作り開始5/5〜7/8、抱卵確認5/10〜7/13、孵化確認6/5〜8/10、抱卵日数23〜29日、巣立ち日6/17〜8/18、全巣立ち6/26〜8/21となった。雛数4羽が多い。巣立ち20日前後で巣立ち雛は巣に戻らなくなる。雌雄で抱卵するが、雌が抱卵中、番外交尾が見られた。
(鳥取県「銀杏羽」NO.155,P11〜14)

●2018/1-2 愛媛
・由良半島のサシバの秋の渡り
 9/21〜10/8、由良半島で定点調査した。由良ではサシバ総計4,229、高茂では4,664(9/29〜10/12)であった。四国南西部から幅広く渡っているが、この2箇所以外データが不足している。ピークは両地とも9/30にあった。
(愛媛「コマドリ」NO.242,P5〜6)

●2018/1 長崎県
・県民鳥オシドリ長崎県下一斉カウント
 2017/1/15(1年前)の結果。島部も含め、オシドリ総計1,718羽(♂915、♀534、他は不明)。前回1,000羽以上観察された雪ノ浦ダムでは今回、確認できず、総計は前年(約3,800)の半数程度まで減った。
(長崎県「つばさ」NO.361,P6〜9)

○支部報/会報 保護・調査記事関連トピックスNO.881

●2018/2 十勝
・NPO登記解除、解散手続き完了
●2018/1 福島
・ガン・カモ科生息調査
●2018/2 神奈川
・オオタカ希少種解除のその後(オオタカ調査グループ)
・ハイタカはどこへ行くのか
●2018/2 甲府
・羽の話
・生息データの羽数
・セキレイ
●2018/2 石川
・2017年石川県内特筆すべき鳥記録
・野鳥という言葉
●2018/2 兵庫
・福島の子どもたちへの支援探鳥会
・ウタツグミ
●2018/2 山口県
・死んだ野鳥を見つけたら
●2018/2 福岡
・2017年度ハチクマ

●2018/2 十勝
・NPO登記解除、解散手続き完了
 十勝支部は2011/10、NPO法人化したが、昨年2月の支部の臨時総会でNPO法人解散議決され、今年1月、解散事務手続き完了した。
(十勝「十勝野鳥だより」NO.197,P11)

●2018/1 福島
・ガン・カモ科生息調査
 1/14、阿武隈川水系で調査した。総計6,095羽で、内訳はオオハクチョウ366、コハクチョウ202、オナガガモ2,543、マガモ933、コガモ898、カルガモ866、キンクロハジロ100、ヒドリガモ82、ホシハジロ46、ホオジロガモ38等。
(福島「きびたき」NO.225,P6)

●2018/2 神奈川
・オオタカ希少種解除のその後(オオタカ調査グループ)
 オオタカ個体数が回復したとして、希少種解除の一根拠になるのであれば、今までの保護対策に一定の成果があったとも考えられ、一面で誇るべきことである。しかし、繁殖数は2000年代をピークに減少傾向あるとの専門家意見もあり、神奈川県東部では、オオタカ営巣地に渡来しなくなる例を多数見ている。環境省は「オオタカは里山を象徴する生態系上位であることに変わらず、「猛禽類保護の進め方」の考え方を各自治体に図るとしている。これを受け、神奈川県では「神奈川オオタカ保護指導指針」を継続して施行すると発表している。これは各地の先駆的な事例となる。この仕組みを継続させているものは行政担当部門の強い責務感とそれを支える市民の情報である。支部のオオタカ調査グループはこの中でオオタカ営巣状況を調査し、県と情報共有し、問題あれば協働で対応している。
(神奈川「はばたき」NO.549,P3)

・ハイタカはどこへ行くのか
 横須賀市武山での秋の調査で、ハイタカがサシバとは逆に西から東へ移動する個体がいるのが確認された。11月上旬にピークがあり、シーズン中150羽程になるが、その9割が西から東へ移動し、南房総方面へ渡っている。西へ行くほど朝鮮半島から渡って来て東進するハイタカが多く、神奈川県にも10日程遅く到着していると思われる。
(神奈川「はばたき」NO.549,P7)

●2018/2 甲府
・羽の話
 翼にある小さな小翼羽は低速飛行時、失速しないためにあると言われる。雨覆は飛ぶとき、空気の流れを整える役割があるとされる。カモ類の次列風切にある翼鏡はエクリプスのとき、種の識別に役立つ。オシドリの銀杏羽は三列風切である。カワウは水中に潜って泳ぐのに都合が良いとして、尾脂腺が未発達で、羽の防水、手入れができない。風切羽は地上に静かに落とすと螺旋を描いて落ちるのは、気流が一定方向に流れる仕組みによる。
(甲府「カワセミ」NO.141,P2〜3)

・生息データの羽数
 野鳥カウント記録数は4〜8月は実生息数よりかなり少ない。繁殖期に生まれた幼鳥は樹木内の目立たない場所にいることが多く、成鳥も繁殖期には分散して目立たない行動のためと思われる。秋冬期は群れで活動するものが多く、カウント数と実生息数の差は狭まる。
(甲府「カワセミ」NO.141,P5)

・セキレイ
 セキレイ類は奈良時代には「つつ」と呼ばれていた。「つつ」は鳴き声からつけられたと考えられる。室町時代に漢名「鶺鴒」を音読みして「せきれい」と呼ばれ、今日に至る。
(甲府「カワセミ」NO.141,P8)

●2018/2 石川
・2017年石川県内特筆すべき鳥記録
 4/30〜5/3、白石市でフッケンアオビタキが観察された。国内初確認種。8/26〜9/12、羽昨市でハシブトアジサシが観察された。石川県初記録。9/8〜11、羽昨市でヘラシギが観察された。世界的に希少種で、世界に推定1000羽以下。
(石川「石川の野鳥」NO.198,P2)

・野鳥という言葉
 「野鳥」という言葉は中西悟堂氏が名付けたと「野鳥」誌に掲載されていたが、然に非ずで、諸橋轍次著「大漢和辞典」では中国の古い詩に既に野鳥は使われており、日本にも伝わっていた。中西悟堂氏が「野鳥」を提唱し広めたのは紛れもない事実である。
(石川「石川の野鳥」NO.198,P6)

●2018/2 兵庫
・福島の子どもたちへの支援探鳥会
 12/10、兵庫県内4箇所で参加86名、カンパ39,108円集まった。福島県日本野鳥の会連携団体連合会へ寄付され、12/16、同連合会会長より礼状が届いた。
(兵庫「コウノトリ」Vol.222,P7)

・ウタツグミ
 11/27〜12/2、大阪城公園に欧州にいるとされるウタツグミが観察された。1987/11、横浜市の例が国内初で、その後、国内で複数回、確認されている。本種は鳥類目録改訂第7版では検討中の種・亜種になっている。自然分布には疑問とされていたが、その後、自然分布であることが示唆される報告が無いため、現在、検討種になっている。
(兵庫「コウノトリ」Vol.222,P9)

●2018/2 山口県
・死んだ野鳥を見つけたら
 高病原性鳥インフルエンザ対応で環境省は都道府県に通達を出している。発生した場所は野鳥監視重点区域に指定。10〜4月の糞便検査で検査優先種1(マガン、コクチョウ、コハクチョウ、オオハクチョウオシドリ」、ヒドリガモ、キンクロハジロ、カイツブリ、マナヅル、オオタカ、ハヤブサ)、優先種2(オナガガモ、トモエガモ、ホシハジロ、スズガモ、ノスリ、クマタカ、フクロウ)、優先種3(カルガモ、コガモ、ハジロカイツブリ、カワウ、アオサギ、ウミネコ、セグロカモメ、トビ、コミミズク、チョウゲンボウ)の順で監視強化される。
(山口県「やまぐち野鳥だより」NO.255,P5)

●2018/2 福岡
・2017年度ハチクマ
 9/9〜10/9、片江展望台で観察した。過去最大の7,286羽(過去19年間の平均5,211羽)のハチクマが通過した。9/24〜26の3日間で全体の65%に当たる4,748羽が通過した。東京大学の研究では秋のハチクマの渡りルートは背振山系南北約50km幅で、片江展望台では確認できる範囲は4〜5qで、ルート幅の約1割となるが、この数になるのは同地はハチクマの渡りの特別な場所である。
(福岡「野鳥だよりふくおか」NO.460,P15〜18)

○支部報/会報 保護・調査記事関連トピックスNO.882

●2018/2 埼玉
・カラスの塒入り
・カラスの大量死(1/6読売新聞)
●2018/2 千葉県
・2017年カモ類調査(調査・研究委員会)
・飼育ライチョウには毒素分解細菌いない(12/9毎日新聞)
●2018/2 南富士
・フィービ・スネツィンジャー
●2018/2 徳島県
・徳島県三好市のタカの渡り(阿波学会)
・ちょっと気になる野鳥の和名コウノトリ
●2018/2 北九州
・オオバンが全国で増加中
・オオミズナギドリ繁殖地にイノシシ上陸(モニタリング1000ニュース)
●2018/2 筑豊
・「日本野鳥の会ビジョン2030」についての提言
・国鳥キジ
●2018/2 筑後
・矢部村ブッポウソウ営巣記録

●2018/2 埼玉
・カラスの塒入り
 埼玉県緑自然課の2003/2004年冬の調査では、八高線以東で28箇所、3万5千羽のカラスの塒があった。その時、大宮市大宮公園内氷川神社では約2,500羽で、2017/12/16の調査では約2倍の4,827羽に達した。ハシブトガラスとハシボソガラスの比は8:2位で、ミヤマガラス、コクマルガラスの塒入りも確認できた。
(埼玉「しらこばと」BO.407,P2〜3)

・カラスの大量死(1/6読売新聞)
 所沢市、入間市で90羽以上のカラスの死骸が見つかった。鳥インフルエンザ検査は陰性で、2014年12月に入間市等で100羽以上のカラスが大量死したときは細菌性腸炎による衰弱死と推定されていた。
(埼玉「しらこばと」BO.407,P12)
 
●2018/2 千葉県
・2017年カモ類調査(調査・研究委員会)
 2017/1、千葉県内156地点を調査した。総計27種、149,777羽で、スズガモが過去最高の8.1万で総数も約15万に達した。マガモは5年前の約1.5倍、オナガガモは同2倍に増加し、それ以外はほぼ横ばいであった。ヒシクイは少数であるが定期飛来し、ハクチョウ類は1000羽前後が定期飛来し、シジュウカラガン、ハクガンが記録された。
(千葉県「ほおじろ」NO.442,P3〜6)

・飼育ライチョウには毒素分解細菌いない(12/9毎日新聞)
 ニホンライチョウの腸内に高山植物の毒素を分解する細菌が存在することを中部大等のグループが見つけ、12/8、環境省の検討会で報告した。2015年から環境省はライチョウを人工飼育しているが、野生種が食べる高山植物を与えると下痢をする。野生のライチョウは母鳥の糞を雛が食べ、母鳥の腸内細菌を受け継いでいるが、人工飼育ライチョウにはその細菌がいないので野生に戻すときに支障になる可能性がある。
(千葉県「ほおじろ」NO.442,P12)

●2018/2 南富士
・フィービ・スネツィンジャー
 34歳の時、アメリカムシクイの写真を見せてもらい、バードウォッチングを始めた女性が世界中で8,398種の野鳥を観察し、観察種数世界一とされる。1999年、マダガスカルでのツアーで交通事故死している。
(南富士「さえずり」NO.423,P10)

●2018/2 徳島県
・徳島県三好市のタカの渡り(阿波学会)
 9/10〜11/15の内11日間の吉野川上流、讃岐山脈沿いの観察でサシバ784、ハチクマ46、ノスリ432が通過した。ハイタカは33で内28は東行(所謂逆行)、2016/9/30には池田町で1581羽のタカの移動があった、2017年/9/25には池田町で1159羽のタカの移動があった。
(徳島県「野鳥徳島」NO.476,P4)

・ちょっと気になる野鳥の和名コウノトリ
 日本のコウノトリは1971年、事実上絶滅し、兵庫県豊岡市は1985年、ロシアより6羽の雛を譲り受け、繁殖をはかっている。コウノトリの語源は「図説日本鳥名由来辞典」には漢字の鸛(カン)が鎌倉時代にカウになり、江戸時代に「かうのとり」になったとある。私は和語の「こほにほ」にあると考える。古語「こほにほ」は擬音語で船ばたを叩く音、屏風を畳む音を言う。コウノトリのカタカタという音を古人は「こほにほ」と聞き、こほのとりと呼び、現在のコウノトリになった。鸛の左半分はコウノトリの音擬声を表すとされる。
(徳島県「野鳥徳島」NO.476,P10)

●2018/2 北九州
・オオバンが全国で増加中
 オオバンはカモのような水かきは無いが、指の両側に平たく広がった膜構造がある。琵琶湖では2004年冬13,743羽が2014年冬には82,928羽に増えている。国内の特定地域で増えている傾向はない。
(北九州「北九州野鳥」NO.380,P10)

・オオミズナギドリ繁殖地にイノシシ上陸(モニタリング1000ニュース)
 2016年、京都府舞鶴市のオオミズナギドリ繁殖地の冠島でイノシシが自動撮影された。本州から泳ぎ着いたと思われる。その後、幸いなことに、山階鳥類研究所と冠島調査研究会の共同調査ではイノシシの痕跡、オオミズナギドリへの影響は無かった。同島にはアオダイショウや移入種ドブネズミが生息し、オオミズナギドリの巣穴は減少傾向にある。
(北九州「北九州野鳥」NO.380,P10)

●2018/2 筑豊
・「日本野鳥の会ビジョン2030」についての提言
 1980/9の野鳥誌に「日本野鳥の会活動とその理念」が発表されて以来の画期的な発表である。前回の提言が上手く進んだのか否かの検証は大事である。未来像を描くには組織の現状分析、更に活動状態を把握することから始まる。今回の本部のビジョンは大上段からの社会分析を基に外に向かってアピールことを主眼に置いているように理解され、各支部連携団体との共通認識の上、ビジョン提起されているか疑問である。
(筑豊「野鳥たより筑豊」NO.450,P25〜27)

・国鳥キジ
 1947年、日本鳥学会はキジを日本の国鳥に選定した。理由は「♀は母性が強く、雛を連れて歩く姿が家族の和を象徴している」としている。しかし、国鳥が狩猟鳥になっているのは日本だけで不幸な鳥である。漢字の瑰雉の読みからキジになったとの説がある。古語では雉子(ききず)と言われていた。夜間は樹の上で寝るとされ、瞼は下から上ではなく左右に開閉する。足も裏の感覚が敏感で地震感知は人より数秒以上早い。
((筑豊「野鳥たより筑豊」NO.450,P42〜43)

●2018/2 筑後
・矢部村ブッポウソウ営巣記録
 2017年度は八女市市民との協働事業の助成を受け、巣箱架けを行った。ブッポウソウは昨年4羽飛来が、2017年は2羽飛来となり、設置した巣箱4個からではなく、道路の鉄橋から2羽が巣立った。オシドリも同鉄橋で巣立った。
(筑後「まめわり」NO.201,P8〜9)

(自然保護室・野鳥の会・神奈川/森 要)

ブロックからのお知らせなど

■2017年度日本野鳥の会九州・沖縄ブロック運営協議会報告

【日時】:2018年2月3日(土)13:00〜17:00
【場所】:くるめりあ みんくるセミナー室(福岡県久留米市)
【参加者】:北九州支部、福岡支部、筑豊支部、筑後支部、佐賀県支部、長崎県支部、熊本県支部、大分県支部、宮崎県支部、鹿児島、西表支部、財団事務局より、計17名
【議事】:
 開会にあたり、九州・沖縄ブロック代表の小野福岡支部長の挨拶を永松副支部長が代読した。福岡支部で観察される水鳥が減少していることなどが紹介され、環境が変化するにつれ、日本野鳥の会の役割も大切になっているのではないかと挨拶された。続いて、(公財)日本野鳥の会上原常務理事より挨拶があり、ビジョン2030策定の現況報告や近年企業はSDGsに力を入れており、財団としても注目していることを伝えた。連携団体と財団が一体となって自然保護、生物多様性の保全のために協力し合える体制を整えていきたいと述べた。

◆財団の連絡事項
・会員でない探鳥会参加者へのDM発送サービスについて(財団・井上普及室員)
 会員でない探鳥会参加者に対して入会や探鳥会への参加を継続的に働きかけるため、探鳥会の受付時に所定のカード式名簿を使い、財団と名簿を共有すると、財団から探鳥会の案内パンフレットが定期的に届く仕組みを紹介した。関心のある支部は問い合わせてほしいと述べた。

・自然保護室からの情報共有と依頼(財団・葉山自然保護室長)
 五島列島の福江島での風力発電の問題について情報共有をした。また、今年度は鹿児島県出水のツルが12月頃から減少しており、中四国は例年より飛来数が少ないことから、九州内でツルが分散している可能性があり、ツルの越冬状況のアンケート調査で情報を寄せていただくよう依頼があった。最後に、都道府県のガンカモ調査の見直しで、猟友会、鳥獣保護員の結果に信ぴょう性が低いデータが見つかったと伝えられた。各支部でのガンカモ調査の実施状況について教えていただきたいと述べ、各支部でのガンカモ調査の実施状況が共有された。

◆各ブロック連携団体の活動報告
・長崎県支部(執行事務局長)
 会員が高齢化しており、役員を引き受ける会員が少ないことが課題であることが報告された。そのため、初心者向けの探鳥会を企画して、役員を引き受ける会員を探したいと述べられた。

・福岡支部(永松副支部長)
 支部が開催している探鳥会や調査を紹介した。お試し入会制度を2016年4月から導入し、定例の探鳥会の参加者にお試し入会を案内した結果、現在のところ45名がお試し入会して、そのうち約2割の人が支部に入会したことが報告された。

・北九州支部(前田支部長代行・事務局長)
 筑豊支部との合同の探鳥会、高齢者施設での出前講座、探鳥ツアーなどの開催状況や、風力発電設備、太陽光発電設備の計画の対応について報告があった。また、地元のテレビに15分くらい出演したところ、反響が大きく、放映後の探鳥会には多くの方が参加し、新入会員も増えたことが報告された。

・宮崎県支部(岩切支部長)
 会員の減少に加えて、実際に動けるスタッフが少ないことが課題となっていると報告された。配布資料より、探鳥会や調査の実施状況が説明された。2017年に支部の創立50周年を迎えたことから、記念誌を発行する準備をしていることなどが報告された。

・大分県支部(谷上支部長・事務局長)
 支部で実施している探鳥会や調査の内容が紹介された。ブッポウソウの生息状況が共有された。野鳥の渡りのルートにあたる佐賀関半島でのウインドファーム建設計画の対応が報告された。探鳥会の開催時に設置できるような探鳥会ののぼり旗を作ったことが報告された。

・佐賀県支部(宮原支部長)
 会員を増やすために、自動引き落としの手続きをすることを条件で、会費1年分のキャッシュバックをしていることが紹介された。若い会員には探鳥会リーダーズフォーラムや役員会に参加してもらい、モチベーションを挙げてもらうようにしていることが紹介された。また、カササギの減少が激しく、財団から調査方法について情報提供してほしいと述べられた。その他、傷病鳥対応の課題、モニタリング1000の講習会の開催、風力発電施設及び太陽光発電施設の対応について報告された。

・筑豊支部(真鍋副支部長、三浦副支部長)
 定例の探鳥会に加えて自然観察会を開催していることが紹介された。自然観察会は植物部会が担当しており、女性が入りやすい雰囲気となっていることが共有された。その他、ビジョン2030に対する支部での意見交換の結果、お試し入会制度での入会実績、調査「バードコール」による新しい知見、後継者の不足、支部報での珍鳥の扱いの問題点が報告された。

・鹿児島(手塚代表)
 初心者向けの探鳥会を鹿児島市のかごしま環境未来館とタイアップして開催したことが報告された。また、会員の減少に関して、新しい会員を増やすことも重要だが、現在の会員を大切にする視点も重要であり、支部では、この視点を重視して活動していると報告された。イギリスの団体は会員数が100万人と多いが、日本野鳥の会とは何が違うのかという考察が必要ではないかという意見があった。

・西表支部(衣斐代表・事務局)
 地元の会員は5名で活動しており、探鳥会だけでなく自然観察会も開催されていることが報告された。西表島で活動する「西表の海亀を守る会」と支部の会員が重複しているため、「西表の海亀を守る会」を支部の部会として合併することが検討されていると報告された。

・熊本県支部(原口事務局長)
 天草で大規模な風力発電施設の建設が計画されており、この地域には既に火力発電施設が建設されているので、地元からの反対があまりない状況であることが報告された。また、この地域はアカハラダカやツルの渡りのルートとなっているため、支部として対応することが検討されていると報告された。その他、ラムサール登録湿地である荒尾干潟での市民探鳥会の開催、創立50周年の企画の検討について共有された。

・筑後支部(松富士事務局長、池長副支部長)
 市街地に一万羽ほどのカラスのねぐらが形成されている地域があり、一般の人からの相談の対応に苦慮していることが報告され、よい対応方法があれば情報提供してほしいと述べられた。また、クロツラヘラサギ、ベニアジサシ及びブッポウソウの生息状況について報告された。

 各支部の報告に続いて全体を通しての議論が行われ、ブッポウソウに関する部会の立ち上げや、財団と連携団体での会員名簿のやり取り、管理方法について意見交換された。また、協議会欠席のやんばる支部、石垣島支部の近況について情報が共有された。その他、会計報告と、来年度の会計の収支を合わせるための意見交換や2019年度のブロック代表・事務局の支部について意見交換を行われた。
 最後に、風力発電施設の建設が問題に関して、支部と財団が連携して対応していくことが確認された。葉山自然保護室長から、問題となりそうな開発計画が見つかった場合は、建設により懸念される悪影響と併せて、なるべく早い段階で財団に情報を寄せていただきたい。また、建設計画に対して地域の鳥類の専門家として意見を求められた際に、少しでも悪影響が懸念される場合は発言をしてほしいとの要請があった。

※協議会の終了後は、懇親会で親睦を深めた。


▲会議の様子

(普及室/井上 奈津美)


事務局からのお知らせなど

■普及室より

■3月号『フィールドガイド日本の野鳥』増補改訂新版の取り組み(最終回)


 1982年に発行された『フィールドガイド日本の野鳥』は、2007年に増補改訂版、2015年に増補改訂新版(以後新版と記す)が発行されました。お陰様で新版も2刷に至ることになり、2刷での修正の検討を続けていましたが、この度、修正の目処がつきました。2014年から続けてきたこの連載は、これにて最終回とさせていただきます。新版も売れ続けたこと、さらなる修正箇所の検討のために貴重なご指摘、ご意見をいただきましたことを、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

<南の島のシロチドリは留鳥か?>

 新版発行後、この連載を契機にいただいたご指摘と、その対応例を一つあげておきます。増補改訂版まで、シロチドリの分布図では南西諸島はすべて茶色(ほぼ周年見られる地域を示す)に着色されていました。それまで準拠してきた日本鳥類目録でシロチドリの分布は、奄美諸島・琉球諸島はResident Breederと記されているので、間違いではありません。新版が準拠した日本鳥類目録改訂第7版(以後、目録7版と記す)でも、その点は同じでした。
 しかし、増補改訂版以後は、参考文献に「日本野鳥の会の全国の支部が発行する支部報なども、分布や生息状況を確認する上で参考にさせていただきました」と書き加えたように、連携団体の発行物やホームページなども考慮するように努めています。シロチドリについては、西表支部のホームページに掲載されている西表鳥類目録では冬鳥や旅鳥のように記されていて、私はその他の情報や自身の見解を合わせて、八重山諸島では普通に繁殖しているとは言えないと考え、新版の分布図では一部を緑(秋冬に見られる地域を示す)にしました。
 虫眼鏡で見ないとわからないくらいの修正ですが、この連載の読者から、「一部が茶色から緑に変わっているが、よいのか?」という指摘がありました。そこで、改めて西表支部に問い合わせて確認したところ、石垣島の状況はよくわかりませんが、西表島では、シロチドリはごく少数は繁殖しているとご教示いただきました。ただし、「毎年確認されるわけではない」「海岸浸食で繁殖する浜が狭くなっているかもしれない」、「ホームページの目録制作時には繁殖が確認されていなかった」そうです。
 八重山諸島におけるシロチドリは、春夏も普通に見られるとまでは言えそうにないので、微妙なところです。分布図では茶色にしないほうが親切な情報になるかも知れませんが、日本鳥類目録では八重山諸島も沖縄諸島も含めて琉球諸島としていることもあり、目録7版が間違っているわけではありません。最終的に、2刷では茶色に戻すことにしました。

<アメリカコアジサシの追記>

 2刷で追記することになった例もあげておきましょう。アメリカコアジサシは、目録7版には一切触れられていません。それを2刷以後に扱うのなら、目録7版以後の他の情報には触れなくてもよいのか?という意見もありましたが、アメリカコアジサシは新聞記事になり、当会フォトギャラリーにも投稿があり、さらに話題になったことから識別上の混乱も見受けられるようになりました。そこで、安西が解説文案を作り、奴賀俊光さん(現在、横浜自然観察の森レンジャー)や小田谷嘉弥さん(我孫子市鳥の博物館学芸員で、新版ではカモメ科の解説を中心に協力いただいた)に見てもらいながら修文を続けて、以下のような解説文を追記することになりました。「・・・アメリカコアジサシはかつてコアジサシの亜種とされていたが、形態と鳴き声が異なることから別種Sternula antillarumとされることが多い。日本では2014年に茨城県においてコアジサシの標識調査中に捕獲されたのが初記録。アメリカコアジサシは外側を除く尾羽と上尾筒が灰色(コアジサシでは白)で、外側初列風切数枚の羽軸の色が黒色(亜種コアジサシでは灰白色)。2017年にはコアジサシとのつがい形成とひなの巣立ちが報告されている。・・・」
 なお、「外側初列風切数枚の羽軸の色が黒色(亜種コアジサシでは灰白色)」でコアジサシ(Sterna albifrons)ではなく亜種コアジサシとしたのは、小田谷さんの指摘によるものです。羽軸の色については亜種コアジサシ Sterna albifrons sinensisの特徴であり、ヨーロッパの基亜種ではアメリカコアジサシとの識別に有効ではないそうです。

<ミズカキチドリの追記>

 ミズカキチドリについては、過去の連載でも修正を検討していることに触れてきました。新版では、ハジロコチドリの類似種で、目録7版で新たに掲載されたミズカキチドリを解説しましたが、橋本宣弘さん(新版ではシギ科の解説を中心に協力いただいた)から、ミズカキチドリとハジロコチドリとの識別点として、みずかきの位置に触れるべきというご指摘をいただいていました。そこで、「・・・内趾と中趾の間にも小さなみずかきがあるミズカキチドリの記録もある。野外で確認するのは難しいが、ハジロコチドリのみずかきは外趾と中趾の間にしかない・・」と追記することにして、谷口高司さんに足の図版も描き足してもらいました。
 なお、連載で続けてきた図版の紹介の最後は、谷口さんが高野の原画を損なわずに見事な微修正を施した例を掲載しようと思っていましたが、中途半端になってしまうと考えなおし、別の機会を模索することにします。増補改訂版以前の版をお持ちの方は、例えばシロエリオオハムの図版を見比べて下さい。1982年までは知られていなかったオオハムとの違いが、増補改訂版後はきちんと描かれています。シマクイナ、ギンムクドリなども図版を見比べてみるととても原画に手を加えたとは思えないはずで、高野と同じ絵の具を使い、師匠高野を敬いながら、筆を加えた谷口さんの功績が理解いただけることでしょう。新版で直した図版は、野鳥誌(2015年11月号)でも一部紹介しましたが、新版2刷用に、すでにスズメの幼鳥の白帯などを直してもらっています。

© 谷口高司
▲図版 バリケン
 増補改訂版以後、谷口高司さんに追加してもらった図版の紹介、最後はバリケンにします。『新・水辺の鳥』でも改訂版から「野生化した飼い鳥」として掲載していますが、前回のガチョウやアヒルともども、一般から問い合わせが多い「名前がわからない野鳥」の一つです。

(普及室・主席研究員/安西 英明)


■連携団体(支部等)向け卸販売をご利用ください

 通販カタログ「バードショップ」2018春夏号が発行となりました。会員のみなさまには、会誌「野鳥」4月号に同封、販売事業ご担当者の皆さまには連携団体(支部等)向け卸販売のご案内と合わせてお届けします。
 仕入れた商品を連携団体で販売することで、探鳥会の参加者が図鑑や双眼鏡などバードウォッチングに必要な道具をその場で買えるようになり、サービスの向上につながります。さらに、売上は連携団体の収入になります。販売を通じてバードウォッチングの輪が広まるとともに、その販売収益が連携団体の活動の一助となれば幸いです。


▲グッズ販売の様子(日本野鳥の会遠江の探鳥会にて)

●2018年春夏号の特集・おすすめ商品
(1)ツバメ・スズメグッズが多数登場!
 便せん、ワッペン、タオルハンカチなど、ツバメやスズメをモチーフにした商品が新発売します。「ツバメのねぐら入り観察会」での販売を想定し、掛け率や送料が通常よりもお得な商品もございます。ぜひ、探鳥会での販売にお役立てください。

(2)野鳥の鳴き声手ぬぐい
 「なきごえ手習帖」と題し、鳴き声をモチーフにした手ぬぐいを制作しました。鳴き声を楽しむきっかけや、探鳥会での話題にいかがでしょうか?

(3)今年は新作Tシャツが3種!
@風力発電が野鳥にもたらす影響を伝えるためのTシャツ
Aマニアにはたまらない、ジシギ図鑑Tシャツ
B千人の森Tシャツに線画のシマフクロウが仲間入り

 ほかにも、様々な双眼鏡やウェアなどのバードウォッチング用品、野鳥や自然にちなんだ商品を多数掲載しております。みなさまのご利用、お問い合わせをお待ちしております。

●支部卸販売のご注文、お問い合わせ
普及室販売出版グループまでお願いします。
TEL:03-5436-2623 FAX:03-5436-2636
E-mail:[email protected]

(普及室/嶋村 早樹)


総務室より

■評議員会傍聴申込要領について

 平成30年度第1回定時評議員会の傍聴申込要領をお知らせします。

1 開催日時:平成30年6月13日(水)15:00〜16:30

2 開催場所:公益財団法人日本野鳥の会会議室
(〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23)
・東急目黒線「不動前」駅より徒歩5分
・JR「五反田」駅より徒歩約10分
・JR「目黒」駅より徒歩約10分

3 目的事項
(1)議決事項
 なし
(2)報告事項
 1 平成29年度事業報告及び決算の件
 2 平成30年度事業計画及び予算の件
 3 ビジョン2030制定の件
 4 野鳥保護区購入の件
 5 平成29年度第4・5回及び平成30年度第1回理事会の結果の件

4 申込要領
 会場の都合上、傍聴は連携団体(支部等)1人を限度とします。
 参加希望者は、連携団体(支部等)の代表を通じ、メール又はFAXで下記あてにお申込み下さい。
【申込先】:日本野鳥の会総務室総務G 林山宛て
【メールアドレス】:[email protected]
【FAX】:03-5436-2635

5 申込期限:平成30年4月20日(金)必着

(総務室/林山 雅子)

会員室より

■会員数■

 3月1日の会員数は34,863人で、先月に比べ77人減少しました。2月の入会・退会者数の表をみますと、入会者数は退会者数より30人少なくなっています。
 会員の増減は入会者数と退会者数のほかに、会費切れ退会となった後に会費が支払われ会員として復活した人数によって決まります。2月の入会者数は132人で、前年同月の入会者168人に比べ36人減少しました。
また、2月の退会者は162人で、前年同月の退会者196人に比べ34人減少しました。

表1. 2月の入会・退会者数

入会者数退会者数
個人特別会員 9人 13人
総合会員(おおぞら会員) 20人 49人
本部型会員(青い鳥会員) 22人 36人
支部型会員(赤い鳥会員) 56人 37人
家族会員 25人 27人
合計 132人 162人
年度累計 1642人

※会費切れ退会となった後に会費が支払われ会員として復活する方がいらっしゃるため、退会者数の年度累計は、実際の退会者数とずれた数字となります。このため、退会者数合計については年度末の集計後にお知らせいたします。

■都道府県および支部別会員数■
 野鳥誌贈呈者数を除いた数を掲載します。

表2 都道府県別の会員数(3月1日現在)

都道府県会員数対前月差
北海道1692人-9人
青森県245人-4人
岩手県363人0人
宮城県477人1人
秋田県242人-3人
山形県206人0人
福島県610人-5人
茨城県898人1人
栃木県638人10人
群馬県623人-4人
埼玉県2144人-13人
千葉県1623人-8人
東京都4865人-8人
神奈川県3335人-1人
新潟県370人1人
富山県205人-3人
石川県281人-2人
福井県224人3人
山梨県271人-6人
長野県858人-1人
岐阜県463人0人
静岡県1322人-8人
愛知県1535人1人
三重県419人3人
滋賀県295人-2人
京都府807人0人
大阪府2006人3人
兵庫県1291人-6人
奈良県485人-1人
和歌山県189人0人
鳥取県183人0人
島根県169人1人
岡山県558人1人
広島県544人-3人
山口県374人-2人
徳島県310人-4人
香川県195人2人
愛媛県355人-6人
高知県128人-1人
福岡県1315人0人
佐賀県193人-2人
長崎県201人0人
熊本県416人0人
大分県214人2人
宮崎県247人0人
鹿児島県330人-2人
沖縄県109人-2人
海外11人0人
不明29人0人
全国34863人-77人

備考:不明は転居先が不明の会員を示します。

表3 支部別の会員数(3月1日現在)

都道府県会員数対前月差
オホーツク支部241人0人
根室支部80人-1人
釧路支部157人0人
十勝支部182人0人
旭川支部79人-2人
滝川支部48人0人
道北支部30人0人
江別支部18人0人
札幌支部309人-2人
小樽支部67人-2人
苫小牧支部160人-1人
室蘭支部157人-1人
函館支部24人0人
道南檜山65人-4人
青森県支部137人-1人
弘前支部112人-1人
秋田県支部230人-3人
山形県支部189人0人
宮古支部90人1人
もりおか157人1人
北上支部106人0人
宮城県支部439人1人
ふくしま159人1人
郡山161人-2人
二本松12人-2人
白河支部40人0人
会津支部51人0人
奥会津連合10人0人
いわき支部109人-1人
福島県相双支部14人-2人
南相馬14人0人
茨城県807人2人
栃木614人10人
群馬547人-5人
吾妻41人0人
埼玉1634人-12人
千葉県1049人-4人
東京2833人-6人
奥多摩支部835人-1人
神奈川支部2341人-1人
新潟県283人1人
佐渡支部30人0人
富山186人-3人
石川262人-3人
福井県218人3人
長野支部458人1人
軽井沢支部166人1人
諏訪235人-1人
木曽支部21人0人
伊那谷支部81人0人
甲府支部186人-3人
富士山麓支部55人-1人
東富士63人1人
沼津支部161人-1人
南富士支部249人0人
南伊豆39人-1人
静岡支部351人-2人
遠江398人-2人
愛知県支部1117人-1人
岐阜464人-3人
三重360人3人
奈良支部447人-2人
和歌山県支部191人1人
滋賀293人0人
京都支部766人-1人
大阪支部1909人4人
ひょうご973人-7人
鳥取県支部206人0人
島根県支部155人0人
岡山県支部525人1人
広島県支部475人0人
山口県支部350人-3人
香川県支部158人3人
徳島県支部323人-4人
高知支部117人-1人
愛媛334人-2人
北九州304人-2人
福岡支部 590人2人
筑豊支部232人1人
筑後支部166人0人
佐賀県支部217人-1人
長崎県支部191人0人
熊本県支部407人-4人
大分県支部213人2人
宮崎県支部244人1人
鹿児島302人-1人
やんばる支部76人-1人
石垣島支部19人0人
西表支部42人-2人
 29956人-65人

備考:支部別の会員数の合計は、都道府県別の会員数の合計と異なります。
これは、本部型(青い鳥)会員や支部に所属されていない個人特別会員が支部別の会員数に含まれないためです。


(会員室/佐藤 ゆき乃)


★支部ネット担当より

 暖かい日が続いております。先日、ウグイスのホーホケキョを今年初めて耳にしました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。いつも支部ネット通信をご愛読いただき、ありがとうございます。
 今月号では、6月に開催される評議員会傍聴申込要領について掲載しました。ぜひ連携団体でご検討ください。
 寒かったり暖かかったりと、安定しない日が続きますが、くれぐれもご自愛ください。

■支部ネット通信は支部の代表の方に電子メールでも配信をしています。電子メールでの配信を希望される支部の代表の方は下記メールアドレスまでお気軽にお申し込みください。

支部ネット通信 第168号
◆発行
公益財団法人日本野鳥の会 2018年3月23日
◆担当
総務室 総務グループ
奥田秋穂/林山雅子
〒141-0031
東京都品川区西五反田3-9-23
丸和ビル
TEL:03-5436-2620
FAX:03-5436-2635
E-mail:[email protected]