野鳥と生物多様性を守りたい

スズメの群れ(写真:AdobeStock_Tomoya SUZUKI)

スズメ/秋から冬にかけては群れで過ごす。日本人にとっては最も身近な野鳥だが、近年その数は減少している。

日本は、森林、河川や湖沼、里山などの豊かな自然があり、地球上の6%にあたる約600種もの野鳥が生息する生物多様性の宝庫です。しかし、気候変動や開発など人間活動の影響によって自然環境は悪化し、野鳥たちもその影響を受けています。多様な環境に生きる野鳥は、自然環境の状態を教えてくれる“バロメーター”。今回「野鳥の国勢調査」ともいえる全国調査の結果から、日本の自然環境の「今」と、野鳥たちに迫る危機が見えてきました。

野鳥とともに、あたりまえの自然の姿が失われつつある

全国規模で野鳥の分布や生息数の変化を捉えるため、20年に一度実施される「全国鳥類繁殖分布調査」。過去2回、当会が環境省から委託を受け、全国の支部と共に実施した重要な調査です。

第3回となる2016年~2021年の調査は、環境省の予算が限られ実施が危ぶまれましたが、当会だけでなく他のNGO、研究者やボランティアが協力して、無事継続できました。

調査結果を過去と比較したところ、水辺に生息するコアジサシやコサギなど、小型の魚食性の水鳥が減少し、狩猟対象でもあるゴイサギやバンも大幅に減少していることが明らかになりました。

コサギ

コサギ(写真:戸塚 学)

また、スズメやツバメ、ムクドリといった、農地など開けた場所を利用する、私達にとって身近な野鳥も大きく減少していました。

小型の水鳥では、彼らのエサとなる小魚を食べてしまうブラックバスなど外来種の増加が、スズメなど身近な野鳥では、農地の集約化や農薬の影響など、それぞれ減少の背景には、生息する自然環境の悪化があると考えられます。

スズメ

スズメ(写真:戸塚 学)

スズメの声で目を覚まし、田畑にはツバメが舞い、水辺にサギの仲間が小魚を求める――そんなあたりまえの自然の姿が、人間の都合を優先した社会の影で失われつつあることが、浮き彫りになったのです。

スズメ

ツバメ(写真:掛下 尚一郎)

継続的な調査は、野鳥と自然環境の変化を把握し、保護活動を進める基礎データとなります。当会は、鳥類繁殖分布調査だけでなく、市民参加型の野鳥観察記録データベース「eBird Japan」なども活用して、野鳥の立場から生物多様性の保全が進むよう、国の施策や開発事業者へ働きかけていきます。ご支援をお願いいたします。

全国鳥類繁殖分布調査報告 表紙

報告書
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当会の取り組み

1.ゴイサギとバンが狩猟対象から除外に

野生鳥獣の捕獲は原則として禁止されていますが、例外として鳥類では11種のカモ類の他、カワウ、ゴイサギ、バンなど、28種が狩猟鳥と定められていました。しかし今回の第3回調査で、ゴイサギは過去の記録の分布から約6割も激減、またバンも同様に半減していることがわかりました。当会は、国の鳥獣保護に関する委員会で狩猟鳥の見直しについて意見し、その意見に関する環境省からの照会に、改めて両種の狩猟鳥からの指定解除を求めたところ、今年の狩猟期が始まる前の9月15日に指定が解除されました。

ゴイサギの分布数の変化
ゴイサギ
ゴイサギ(写真:戸塚 学)

全長57.5cm 本州から九州で繁殖する。日中は薄暗い林などで休み、夕方から水辺で魚をとることが多い。主に夜間、飛びながらクワッ、コワッと鳴く。

バンの分布数の変化
バン
バン(写真:戸塚 学)

全長32.5cm 全国的に繁殖するが、冬期は関東以南に多い。 湖沼・池・川などに生息し、草かげや水田でエサをとることが多い。クルルと鳴き、キャッという声も出す。

※グラフ出典:「全国鳥類繁殖分布調査報告2016-2021」

2.水鳥たちを脅かす外来生物への対応

第3回調査では、魚食性の野鳥のうちコアジサシやコサギなど、比較的体の小さな水鳥が減少していました。ブラックバスが増えた湖沼では小型の魚が減少し、これをエサとする水鳥も減少するとの報告※があり、魚食性外来魚の存在が水鳥の減少の一因であると考えられます。

外来生物の影響は、日本の生物多様性を脅かす「4つの危機」の一つです。当会は、2022年8月に自然保護6団体連名で、国と地方自治体に対しブラックバスの規制・対策強化に関する要望書を提出しています。

※参考: 「オオクチバス急増にともなう魚類群集の変化が水鳥群集に与えた影響」Strix Vol. 23, pp. 39-50, 2005

ブラックバス駆除されたブラックバス


当会は調査活動を続け、野鳥と自然環境の変化をとらえ、
生物多様性の保全に活かしていきます。
多様な生きものがくらす日本の豊かな自然を守るため、ぜひご支援をお願いします。

ゴイサギゴイサギ(写真:掛下 尚一郎)


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第3回「全国鳥類繁殖分布調査2016-2021」主催団体
(特非)バードリサーチ、(公財)日本野鳥の会、(公財)日本自然保護協会、日本鳥類標識協会、(公財)山階鳥類研究所、環境省生物多様性センター