第1号 1997年12月1日


甦れ!里山シンポジウム」開かれる

 11月1・2日、千葉県で、里山の自然保護を考える「甦れ!里山シンポジウム」が、(財)日本野鳥の会の、主催、干葉県支部の共催で開催されました。
 第1日めのシンポジウムは柏市の「さわやかちば県民プラザ」で行われ、ステージセッションではナチュラリスト、ケビン・ショートさんが講演し、里山の自然とその魅力が、美しい写真とユニークな視点から紹介されました。干葉県に住んで里山をフィールドとして活動しているケビンさんの軽妙な語り口は、集まった150人の参加著の拍手と笑いを呼んでいました。地元流山市など、地域で活動する里山保全グループの中から活動の事例が紹介された後、「里山のために私たちのできること」のテーマでパネルディスカッションが行われました。
 展示セッションも同時に行われ、出展した22団体の活動を説明したポスターに見入ったり、団体のメンバーに熱心な質問をする参加者の姿も見られました。
 今回のシンポジウムは、「バードソン'97」で集められた「甦れ!里山募金」による20の支援団体の活動紹介を中心として、日本野鳥の会会員、里山で活動している人や団体、里山に興味のある人々の交流を目的に開かれたもの。交流の中で、保全活動の中での悩みを交換し合い、里山の明日のための新しい保全の方策を交換すること、また実際に活動する人とそれを応援する人の輪をつくるのがねらいです。
 2日めは流山市市野谷の森と江戸川周辺に会場を移し、自然観察を楽しんだり、千葉県支部特製の「里山なべ」に舌鼓を打ったりと、秋空の下での交流を楽しみました。
 このシンポジウムの様子は、次号でも紹介します。




コラム ふみわけ道 「やつ、やと、やち」

 野鳥誌9・10月号の里山特集、いかがでしたか。さっそく読者の方から、冒頭記事の中の「谷津田」というのは何ですか、という質問をいただきました。
 これは「やつだ」と読み、丘陵地や台地に細長く入り込んだ谷地形の低地に作られた水田を指します。横浜市内で谷津田の保全活動に取り組んでいる十文字修氏によれば、こうした谷地形を指す「ヤッ(谷津)」ということばは、干葉県や茨城県などの方言で、南関東では「ヤト(谷戸)」北関東では「カイト(貝戸など)」「ガイト」などと呼ばれ、東北地方に近い関東圏では「ヤチ(谷地)」と呼ぶ、とされています(*1)。栃木では「ヤジッカ」と言うのだと、栃木県支部の方からお聞きしました。
 里山というと「山」の字の印象から、「小高い場所」「乾いた場所」というイメージを持たれる方もあると思います。「雑木林」と同じ意味で使っている場合もあります。「甦れ!里山」活動では、雑木林や草地や畑に、田んぼや用水路、ため池などの水辺も含んだ場所、生態糸をひとくくりにして「里山」と呼んでいます。農村景観とか、2次的自然地、と言い換えてもよいかも知れません。
 千棄県支部の志村英雄氏によれば、里山という言葉が大型国語辞典の見出しに初めて現れるのは1995年のことだそうです(*2)。新聞記事では保護運動に関連して使われていることが多く、農的自然が急速に失われた近年に、自然保護の文脈で市民権を得た新しいことばであることがわかります。
 これに対して、地形を指す言葉ではありますが「谷津」「谷戸」「谷地」などは、里山を指す古くからのことばと言えます。岐阜県等では、低山に入り込んだ谷の湿地と周囲の斜面を「ホラ(洞)」と呼んでおり、岐阜県支部の里山保全活動場所も「坊ケ洞」「一ケ洞」といった地名がついています。これも里山(の一部)を指すことばの一つでしょう。朝鮮半島では里山のことを「洞由(トンサン)」と呼ぶそうですが(*3)、これと何か関連があるのかも知れません。
 みなさんのお近くでは、里山を呼ぶこんな言葉はありませんか。(古)

 *1 『谷戸‐よみがえる人と自然のシンフォニー』舞岡水と緑の会編・発行
 *2 『バーダー』1997年5月号(文一総合出版)、76頁
 *3 『里山の自然』田端英雄編著(保育社)、44頁



第2号   1998年1月1日


里山シンポジウムレポート(2) 里山保全NGO、活動事例を紹介

「甦れ!里山シンポジウム」ステージの部では、基調講演に続き、「バードソン'97」の「甦れ!里山」募金の支援団体となった里山保全NGOにより、それぞれの活動の事例発表が行われました。
 今回発表したのは支援団体となった20団体のうち8つのNGO。「開発される里山」と題された第1部では、北海道幌別川で活動する「自然愛好グループ・ヨシキリの会」をはじめ2005年の万博開催予定地となっている愛知県『海上の森』の保全に取り組む「日本野鳥の会愛知県支部」など4団体がフィールドの現状と活動を紹介しました。続く第2部では「保全への提案」をテーマに、産業廃棄物の処埋施設の計画があった土地をナショナルトラスト運動で守った三重県の赤目の里山を育てる会やオオタカの舞うまちづくりを目指して行政側とのパートナーシップを模索する、「流山自然観察の森を実現する会」など4団体が、これまでの取り組みと具体的にあがった成果について報告しました。
 この日会場にあつまった参加者は約150名。行政との折衝の難しさなど、活動につきものの悩みに大きくうなずいたり、美しいスライドに喚声をあげたりしながら発表に耳を傾けました。参加者からも質問や提言が数多く出されたほか、休憩時間にも他の団体と情報交換を行う姿も見られるなど、会場は熱気に包まれました。(つづく)

 ●ステージでの発表団体とテーマ●

(第1部)「開発される里山」
 「身近な自然に愛を込めて」
   自然愛好グループヨシキリの会 伴野美江さん
 「海上の森と愛知万薄」
   愛知県支部 瓜谷章さん
 「藤沢市北部におげる里山との共生活動」
   藤沢探鳥クラブ 森要さん
 「楽しんで守る身近な自然」
   西岡の自然を語る会 山田三夫さん


(第2部)「保全への提案」
 「里山の四季を追いかけて」
   西多摩自然フォーラム 佐藤留美さん
 「都市近郊の里山保全活動」
   (社)大阪自然環境保全協会里山委員会 氏家巧さん
 「里道の修復で里山をよみがえらせる」
   赤目の里山を育てる会 伊井野雄二さん
 「オオタカが舞うまちづくり」
   流山自然観察の森を実現させる会 恵良好敏さん





【バードソン'98「甦れ!里山II」 今年は五月十日に開催】


 ●「バードソン」とは

 「バード」+「マラソン」から作られた造語。野鳥保護のためのチヤリティ・バードウォッチング・イベントのことです。12時間内の記録種数を競って、記録した種類ごとにチームを応援する皆さんから募金をいただくのがバードソンのルールです。
 昨年5月11日に行われたバードソン'97「甦れ里山」では、五八チームが多くの方の応援を集めて、また野鳥や里山とのふれあいを求めて、全国でマラソン・バードウォッチング。
 5096人の方から、里山を支援するための募金13、260、069円をいただきました。

 ●「甦れ!里山」

 こうして皆さんの熱い思いを集めた募金によって、次のような事業を行うことができました。

  • 全国20の支部や草の根NGOの里山保全活動の支援
  • 「変容する里山景観と鳥類相」に関する調査研究
  • 里山を守るための社会制度の調査研究
  • 里山シンポジウムの開催
 この募金により応援しているグループの活動の様子は、本欄「里山奮闘記」でも順次ご紹介しています。  こうした支援団体を中心とした人々の保全の取り組み、活動の悩み、成功のきっかけ‐そうした貴重な体験談を集め、また課題を持ち寄ったのが「第1回甦れ!里山シンポジウム」でした。
 ことしのバードソンは、この里山の自然と野鳥を守る活動をさらに進めるための第2段。里山の自然を大切に思う気持ちと、活動をつなげて、もっと大きな輪をつくりたい−バードウィーク初日の5月10日の実施に向けて、ただいま参加募集中です。
 保護・調査センター内 バードソン'98事務局(古南・小板・宮坂)


「甦れ!里山」活動を支えるバードソン募金




第3号   1998年2月1日


里山シンポジウムレポート(3) 里山をどう守るか、保全へ具体的提案

 里山保全団体による事例発表に続いて、ケビン・ショートさんら5名のパネリストによるパネルディスカッションが行われました。多くの団体が直面している問題として、土地をどのようにして確保するのか、また確保した土地をどう保全していくのかがテーマとなりました。
 里道(りどう:雑木林が薪炭林として使われていた頃、薪をつんだリヤカーなどが通るための通行権が確保されていた公道)を修復し拠点となるポイントを結ぶことで地域全体を保全するという方法、都市公園法の改正によって新しくできた野生生物保護などを目的とする都市公園のカテゴリーである「都市林」の紹介、地主が自治体などと契約を結んで相続税の減免などの税制上の優遇措置を受ける都市緑地保全法の中の市民緑地制度の仕組み、市民と農家が一緒になって農業に新たな経済価値を見出す活動など、具体的かつ効果的な保全策が次々と紹介されました。話は尽きることなく時問が足りないことが惜しまれましたが、里山保全のネットワークを今後も一層広めていくことを確認し合い、里山を身近な環境の砦として守り続けていくというアピール文が読み上げられて、ステージの部は終了しました。
 2日目は流山市の里山を歩き、秋晴れの空の下で千葉県支部のボランティアの方々特製の里山鍋を楽しみました。参加者はそれぞれにたくさんの収穫を得て、「甦れ!里山シンポジウム」は無事閉幕しました。(おわり)


第4号   1998年4月1日


全国雑木林会議開かれる

 昨年10月25日、香川県坂出町にて「第5回全国雑木林会議」が開催されました。全国雑木林会議は1993年、全国各地でそれぞれに雑木林の保全活動を始めていた市民が集まり、惰報交換と親睦を目的に名古屋市で開権したのが始まりで、以後は自主的に名乗りを上げた雑木林をフィールドとする市民団体が順番に運営をしています。第6回は「よこはまの森フォーラム」の主催で、今年10月31日、11月1 日に横浜市内で開催されます。
 全体会議では「暮らしとつながる森を考える」をテーマに意見交換が行われました。雑木林の地主さんの多くは、その土地の自然や作業を楽しむことにあまり関心を持っていません。一方で、雑木林の生きものを観察したり管埋作業に汗を流すことを楽しみとする、土地を持たない市民もたくさんいます。この両者を結びつけるにはどうすればよいでしょうか。私有地である雑木林で実際に活動を行っている市民団体の代表等から、雑木林での作業や遊びを収入に結びつける方法を地主さんと一緒に考えていくことが大切である等の意見が出されました。
 2日目は、主催団体である「どんぐりボランティアネットワーク」恒例行事の「森の文化祭」が開かれました。香川県林務課内に事務局をおく同ネッワークは、雑木林の管理の他に「どんぐり銀行」というユニークな活動を行っています。森で拾い集めたどんぐりを〃預金〃すると通帳が作られ、払い戻し時には苗木となって返ってきます。森の文化祭での使用通貨は全て「D(ドングリ)」です。アベマキとクヌギの大きなどんぐりは1つ10D、その他の小さなどんぐりは全て1D。会場にならぶ店々には、“ドングリコーヒー1杯10D”、“草木染体験50D”などの看板が立ち並びます。遊びを通して森に入る人を増やし、森づくりへとつなげるのがこの活動の目的です。どんぐりが一杯入った大きな袋を下げた家族連れ、走り回りながらどんぐりを拾い集める子供たち、また童心にかえって木の下にもぐり込む大人たちで会場は賑わいを見せました。


第5号   1998年5月1日


都市と里地を結ぶ「里地ネットワーク」発足

 カエルやホタルの棲む田んぼや小川、雑木林、といった昔ながらの農村の自然を指す「里山」という言葉は最近いろいろな場面で取り上げられ徐々に、なじみのあるものになってきました。「里地」は、里山の自然環境に地域の文化や歴史、経済活動を含めた地域全体を指すのに使われます。「平成6年に閣議決定された「環境基本計画」は、国土を山地、里地、平地、沿岸海域の4つに分け、このうち里地を二次的自然が多く残っており、人間の働きかけを通じて環境が形成されてきた地域としています。
 地域に根ざした産業の低迷、過疎化や高齢化という里地を取りまく厳しい状況の中、地元の文化や資源を上手に利用したユニークな地域おこしの試みが、いくつかの自治体や企業によって行われ始めています。このような地域では、都市の情報や人材、アイディア、資金面でのサポートが求められています。一方、コンクリートのビルの狭間に集中して生活する都市の住民は、季節ごとの自然の彩りや人との温かなふれあいのあるふるさとの環境を求めています。
 この都市と里地、双方の二−ズを結ぴつけ、行政、企業、NGO、研究者のパートナーシップを通じて里地の持続的な発展をサポートしていくためのネットワーク、「里地ネットワーク」の発起集会が2月25日、東京で開かれました。
 集会後の記念シンポジウムには約400名が参加しました。JR東日本の地域滞在型の旅行プラン、社員が地元の天竜川水系の水質調査を行ったり、林業の技術を学ぶ森林塾を主催することから企業と地域の連携を考えるKOA(株)の取り組み、原材料の調達から販売までを地元で行い、消費者団体と連携して顔の見える販売ルートを基本とする静岡県の丹那酪農王国、現代風の斬新なデザインと工法を取り入れつつ、地元産の材木を使った木造建築で町おこしを成功させた能本県小国町の取り組みなど、企業、農業、自治体のそれぞれから事例が紹介されました。
 事務局の専従スタッフとして全国を駆け回る竹田純一さんは、「都市の情報と地方のやる気を合わせて里地づくりを成功させたい」と意欲満々です。今後は、地方での研究会の開催や先進的な里地の事例調査などを行っていく予定で、「地方巡業が多く、事務局にはいません」とのこと。お問い合わせはFAXかパソコン通信が確実です。(T)

(里地ネットワーク事務局)
〒105-0003
東京都港区西新橋1−17−4 西新橋YKビル6階
TEL:03−3503−7743
FAX:03−3503−7808
E−mail:QWS04137@nifty.ne.jp
団体、個人会員制度があります。



第6号   1998年6月1日


美しい住宅街を好むのは人間だけ?

〜保護・調査センター調査室より中間報告〜

 現在、保護・調査センタ−では、里山の環境と開発造成された住宅地が隣接している区城を選んで調査を行っている。今回は、そんな環境の中でどんなところにアオバズクがいるか、昨年の繁殖期から調べているのでその一部を報告したい。
 まず、アオバズクがいるかどうか、日没頃にトウキョウダルマガエルなどの鳴く水田の近くにある街灯の下で、食痕(オナガミズアオやオオミズアオという蛾)を探すことからはじめた。加えて、日没から1時間から3時間程、ホォーホォーという鳴き声を定点を決めて聞くようにした。5月の連体明けには、パートナーも見つけて落ち着いていることが多いので、この時期に確認されれば、その環境を選好していて繁殖に入っている可能性が高い。
 結果として、アオバズクは里山の環境のなかにある神社と水田と人家のあるところで観察された。最近は、市街地でもアオバズクの繁殖が確認されているが、市街地もしくは住宅地のような環境と里山の環境が隣あった区域では、生息・繁殖場所としては後者を選好しているようだ。
 さらに、この調査地では、調査区域内の里山側で3つがいがいることが推察された。里山の環境のつながりが維持できれば、ある大きさのアオバズクの個体群が維持できるのではないかと恩われた。
 アオバズクの他に、サシバや水田を利用するシギ・チドリ類についても調べている。この4月中句には、サシバが二羽同じ調査地内で確認された。アオバズクと異なるのは、同じ水田という環境のなかでもサシバは人家のほとんどない谷津田で確認されたことである。今後も、里山の環境と現代が作り出した人工的な環境の拡大が、鳥類の生息にどのように影響していくのか調査していきたい。
 今、一見美しい住宅街の鳥類相の単調さに改めてがっくりさせられ、現代人が生き物のことを考えないで作り出す環境の貧しさを再認識させられている。
(保護・調査センター調査室 小板正俊)


第7号   1998年7月1日


東京に残された里山でバードソン!

 去る5月10日、バードソン’98「甦れ!里山II」が開催されました。保護・調査センターからは、「さとやま大好き探検隊’98」チームが参加し、東京都西部の丘陵地にニつの里山保全団体を訪ねました。
 高尾山での早朝バードウォッチングの後、最初に訪ねたのは「宇津貫(うつぬき)みどりの会」の皆さん。宅地計画が進む地域で雑木林の保存活動を行っています。手作りのガイドマップを手に、シジユウカラやコゲラの声を間きながら、ヤマツツジの咲く八王子の雑木林を案内していただきました。この地は、豊かな里山の自然を満喫できる一方で、宅地の造成、新駅の完成と、都市化の波も急速に押し寄せてきています。しかし、林の中は手入れがしっかりと行き届いており、会の方は、「朝早くからの作業は楽ではないけれど、持ち寄ったお弁当を皆でいただいているひと時は本当に楽しいんです」と笑顔で話してくれます。こうした姿の向こうに、この雑木林に対する皆さんの強い想いを感じました。
 八王子の雑木林を後にして、次に訪ねたのは「BIRTH(バース)」の皆さん。緑地保全の法制度の研究、市民団体の支援、環境教育などを行っている団体です。この日の舞台は青梅の大荷田(おおにた)丘陵。小さな集落の周りに、今でも落ち葉かきや下草刈りがなされる手入れざれた雑木林が広がります。
 大荷田川の南には、イカルやアオゲラの声が響く山並みが連なっています。その樹高の揃った美しい山並みは、約30年前に一斉に皆伐されたはげ山が、その後の開発中断で現在にかけて徐々に形成されたものだという説明がありました。
 この日、「BIRTH」の皆さんは、我々が訪ねるということで、独自の里山自然観察会を開催してくれていました。「目に青葉、のたり里山、オープンアンパン(※1)」ごと名付けられたこの観察会は、パソコン通信「二フティサープ」のネイチャ−系フォーラム(※2)である「自然観察フォーラム(FFIELD)」と「野鳥フォーラム(FBIRD)」でも参加を呼びかけて行われました。以前この地を訪れたことがある保護・調査センター所長の品田も出席。鳥や植物からキノコ、炭焼き、法律、農業問題…と様々な興味や得意分野を持つ約50人が参加したこのイベントでは、1日中、里山談義に事欠きませんでした。
 今回、二つの里山保全団体を訪ねて、里山の自然に触れる皆さんの元気で明るい姿が印象に残りました。そして、各地域に住む人々の想いが、その地域の里山を守るうえで、いかに大切な要素であるかということを改めて感じました。
(保護・調査センター 山崎)

※1 オープンサンドイッチならぬオープンアンパン。
   「BIRTH」オリジナルメニユー
※2 バソコン通信上の会議室



第8号   1998年8月1日


第2回「甦れ!里山」シンポジウムを開催します

 昨年11月に干葉県柏市・流山市で開催した「甦れ!里山シンポジウム」里山の自然が大好きな人たちと、里山を守るために実際に活動している人たちが、干葉の里山を舞台に出会い、里山の自然について語り合い、里山を保全するにはどうしたらよいのがを一緒に考えました。
 第2回となる今回のシンポジウムでは、里山の保全に関して、どのような行政の仕組みや調査・研究例があるのかについて、それぞれの専門家の方々から学び、私たち市民は具体的に何から始めていけばよいのがを先進的な事例から探ります。
 里山を守りたい市民、行政の担当部署の方、研究者など、皆さまのご参加をお待ちしています。
日   時: 1998年11月7日(土)10時30分〜17時
        8日(日) 9時〜15時
交流会     7日(土)18時〜20時
場   所: 国立オリンピック記念青少年総合センター
    (東京都渋谷区代々木)
参 加 費: 1000円(資科代)※交流会費は別
主   催: (財)日本野鳥の会
後援 (予定): 環境庁



第9号   1998年10月1日


バードソン’97 「甦れ!里山」募金成果報告

 昨年5月10日に開催したバードソン'97では、全国の皆さまより総額約1300万円のご寄付をいただきました。この内、約880万円により、各地で里山の保全に取り組んでいる以下の20団体の活動支援を行いました。残りの約420万円は「日本野鳥の会野鳥保護基金」に積み立て、今後、主に里山保護のために使います。

 今回ご紹介した各団体に参加を呼びかけ、1997年11月に干葉県柏市・流山市で「甦れ!里山シンポジウム」を開催し、シンポジウムの報告書も作成ました。
西岡の自然を語る会 自然愛好グループ
ヨシキリの会
日本野鳥の会
いわき支部
生きもの調査報告書「西岡水源池」
(入手可)お電話でお問い合わせください。
1000円(電話 011-613-7973)
野鳥図鑑
「ピリカチカッポ/登別の美しい鳥たち」
(入手可)お電話でお問い合わせください。
価格未定(電話0143-85-751 5)
「石森山自然観察調査報告書」
170万人都市札幌から間近にあって、様々な水辺環境が組み合わさった豊かな自然の残る面岡水源池の生きものリストです。魅力あふれる自然を次世代に引き継ぐ活動に使われます。 幌別川の野鳥観察データをもとに、地域色豊かな野鳥図艦を作成中です。たくさんの市民に野鳥観察の楽しさを伝え、身近な自然の大切さを共に考えていく活動に活かされます。 いわき市の代表的な里山、石森山生活環境保全林の自然環境についてまとめた一般向け報告書です。里山体験学習の拠点となるネイチャーセンタ−の設置を目指す活動に役立てられます。
武蔵丘陵森林公園の
自然を考える会
流山自然観察の森を
実現させる会
成山の自然を守る会
資料集「森林公園」 「オオタカのすむ市野谷の森」 「四街道の自然」写真展、絵パガキ
(入手可)お電話でお問い合わせください。
500円(電話043-432-8701)
オオタカやトウキョウサンショウウオなど、里山の希少種が生息する国営武蔵丘陵森林公園での活動についてまとめました。自然保全型の公園管埋を提案する活動に活用されます。 流山市の雑木林、市野谷の森が会の働きかけ等により県の「都市林」として保全されることになり、管理用具を購入しました。保全までの経緯を記した小冊子(写真)も販売中。 急激な都市化が進む四街道の里山。写真展には千名を越える市民の来場があり、普段はあまり気にとめることのない四街道の素晴らしい自然を再確認し、今後のあり方を共に考えました
天合峰野鳥
調査グループ
西多摩
自然フォーラム
藤沢探鳥クラブ
調査報告書
「生きている里山 天合峰の野鳥たち」
(入手可)お電話でお問い合わせください。
500円(電話0426-26-1295)
谷戸の保全作業
「市民が耕す田んぼ作業ハンドブック」
パンフレット「遠藤・笹窪谷」
(入手可)お電話でお問い合わせください。
240円(電話0467-85-6077)
オオタカの営巣が確認され、開発計画が中断している都市近郊の里山で、調査結果に基づいた森の保全を提案するため、これまで続けてきた鳥類調査の結果をまとめました。 ハンドブックには市民参加型の田んぼづくりのノウハウが凝縮して紹介されており、今後他の市民団体が保全作業を行う際にも役立てられる、他に類をみないマニュアルとなりました。 藤沢市最大の里山、オオタカの繁殖も確認されている遠藤笹窪の谷戸には市の開発計画が迫っています。谷戸の自然の素晴らしさを広く市民に知ってもらうために使われます。
小網代の森を守る会 鴨池たんぼクラブ 日本野鳥の会
愛知県支部
スライドライブラリ−
(CD-ROM)、活動ビテオ
観察用具、農具などを購入 「海上の森マップ」
(入手可)お電話でお問い合わせください。
無料(電話052-241-3440)
関東で唯一、森・干潟・海が一まとまりになった集水域生態系である小綱代の森には、たくさんの命が息づいています。この姿を確実に後世に伝えるためにCD-ROMとビテオに収めました。 ラムサール条約登録湿地、片野鴨池に渡来するガン類は周囲の水田を体息地としています。市民参加の田んぼづくりは市による水田復元事業の開始へと大さな広がりを見せつつあります。 大都市名古屋の近郊に奇跡的に残っている広大な里山、海上の森は、2005年の万国博覧会会場予定地とされています。このマップを手に一人でも多くの方に海上の森を訪れ森の素晴らしさを感して欲しい。切実な想いをこめて作られました。
赤目の里山を
育てる会
尊延寺の
自然を守る会
大阪自然環境保全協会
里山委員会

神立里山保全プロジエクト
トンボ池に観察小屋を設置 カラ−マップ
「梟の杜からのメッセージ」
管理用具の購入
ナショナルトラストによる里山保全活動が続けられている赤目の里に、休耕湿地を利用したトンボ池と観察小屋ができました。地城の子どもたちも里山体験に訪れるようになりました。 棚田や雑木林、ため池などが組み合わさった枚方市最後の里山、尊廷寺を横断す国道が計画されています。身近な里山の自然を多くの人にアピールするカラーマップを作成中です。 独特の歴史をもつ里山を伝続的な手法で管理する活動に、協会スタッフ一般市民、行政、地主さんが一体となって取り組んでいます。活動により里山は本来の姿を回復しつつあります。
鉢ケ峯の
自然を守る会
日本野鳥の会
兵庫県支部
蒜山森を語る会
カラ−マップ
「こんな里山がいいなあ
〜鉢ケ峯里山公園構想〜」
(入手可)お電話でお問い合わせください。
330円(電話0722-99-1779)
生きもの調査
パンフレット
学習会の開催など
リゾート開発の対案として提案している「里山公園」の構想を具体化したカラーマップ。農業の振興を図りつつ、豊がな自然環境の保全と再生を行う、新しい里山像を創造する提案です。 県内初のオオタカの繁殖が確認され、ゴルフ場計画が中止になった押部・近江の里山。新たな開発を阻止するため、周辺住民に里山の自然の大切を伝えるパンフレットを作成しました。 県の公園整備により生熊系が単純化してしまった三平山森林公園に野鳥も人も親しめる里山林を複活させるため、地域住民が里山の理解を深め、交流する場をつくる活動が行われました。
ドウダンツツジ
里づくりの会
長崎の自然と
文化を守る会

土地の買い取り 「長崎式見 里山ガイドブック」
(入手可)お電話でお問い合わせください。
500円(電話095-847-1111
内線2368)
秋にはドウダンツツジで山が真紅に染まる日高村錦山。蛇紋岩の採掘に脅かされている生態系豊かなドウダンツツジ自生地を保全するため、土地の買い取りに向けて活動が続いています。 ゴルフ場の対案として提案していた里山公園の構想が市の「長崎いこいの里」計画に1部取り入れられました。式見の里山の歴史や自然を紹介しながら里山へ案内するガイドブックです。



第10号   1998年11月1日


開催直前 第2回「甦れ!里山」シンポジウム
      −里山の未来はひとのネットワークから−


 第2回「甦れ!里山シンボジウムの開催まであとわずかとなりました。
 1日目は専門家や行政、NGOの方々の講演と事例報告、そして2日目は里山の保全にまつわる4つの課題について、分科会の中で議論を深めていきます。
 まだお申し込みをすまされていない方は、お申し込み忘れのないようにお願いします.
第2回「甦れ!里山」シンポジウム
日時:11月7日(土)〜8日(日)
国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)


7日
講演
 守山弘(農林水産省農業環境技術研究所)
 鷲谷いづみ(筑波大学)
事例報告
 荻野豊(東京都環境保全局)/粕谷和夫(天合峰野鳥調査グループ)/
 高松健比古(日本野鳥の会栃木県支部)/伊井野雄二(赤目の里山を育てる会)/
 恵良好敏(流山自然観察の森を実現させる会)/飯島博(ヒシクイ保護基金)
交流会
ボスター発表

8日
講演
 鬼頭秀一(東京農工大学)
分料会
(第1分科会)「里山の社会環境と制度の現状と課題」
 座長:佐藤留美(BlRTH)
 コメンテーター:折原磨寸男(BlRTH〉
 発表者:田並静(横浜市緑政局)
     悪良好敏(流山自然観察の森を実現させる会)他
(第2分科会)「里山の自然環境調査の現状と課題」
 座長:新保國弘(流山市民まちづくりネットワーク)
 発表者:東淳樹(東大大学院)
     日本野鳥の会兵庫県支部研究部
     粕谷和矢(天合峰野鳥調査グループ)
     福山欣司(慶応大字・生物学教室)
     田中利勝(自然通信社)
(第3分科会)「里山保全の意義をより多くの人々に」
 座長:伊井野雄二(赤目の里山を育てる会)
 コメンテーター:鬼頭秀一(東京農工大学)
 発表者:竹田純一(里地ネットワーク)他
(第4分料会)「里山と農」
 座長:高松健比古(日本野馬の会栃本県支部.専業農林業家)
 コメンテーター:守山弘(農業環境技研)
 発表者:遠藤和子(農林水産省農業研究センター)
     棚田支援市民ネットワーク
     大嶋範行(神戸エコアップ研究会)
     白石好孝(練馬区在住農家)
     金親博栄(谷当グリーンクラプ)他
全体会ポスター発表

<お間い合せ・お申し込み>
 里山シンポジウム係
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第11号   1998年12月1日


伊勢の里山でサシバを考える

 保護・調査センターでは、里山の自然環境調査の主要な課題として、里山に生息するサシバの繋殖状況や保護上の問題点を明らかにするため、日本オオタカネットワーク、東京大学大学院の東淳樹氏と共同で、「平成一○年度サシバの全国繁殖状況調査」を行っています。
 去る9月13日、14日には、いただいたアンケートをもとに、実際の生息地の現状を知るため、三重県伊勢市周辺のサシバの生息地を訪ね、水田の状況や周辺の環境を調査してきました。
 現地を案内してくださったのは、この地域でサシバの観察を続けておられる、三重県支部の会員の皆さまほか七名。広げられた地図にはかつてのサシバの繋殖地が詳細に記されていました。2日間かけて、「かつての繁殖地」を含めたサシバの生息地を、ひとつひとつ案内してもらいました。これらの生息地は、ここ20〜30年の間の急速な宅地開発や道路建設、大量の松枯れ、耕作されなくなった水田の増加などで環境が激変し、サシバの数も滅少の一途を辿っているそうです。今回、駆け足で見てまわっただけでも、その様子は感しられました。こうした現象はこの地に限らず、全国各地のサシバの生意地でも見られています。
 ところで、当地域は、サシバの渡りで有名な伊良湖岬から、西南西の方向、約30キロメートルのところに位置しています。秋には、伊良湖岬を通過したサシバが西へ飛ぶ際の、渡りのメインルートにあたります。この時期に雨の日が続くと、樹上に点々と止まるサシバの姿が観察されることもあるそうです。シギ・チドリ類にとっての干潟と同様に、渡り鳥であるサシバにとって、中継地となり得る里山の自然環境は、エネルギー補給や休息の場として欠かすことができません。繁殖地としてだけでなく、渡りのルートとしても当地域は重要な意味を持っているようです。サシバとの縁の深さは、周辺の地名や古くからの石碑に刻まれた文字、地域のご老人のお話しなどがらも察することができるということでした。
 全国的にサシバの生息環境の減少が懸念される中、改めてそ難しさと対策の必要性を考えさせられた2日間でした。
(保護・調査センター/山崎宏)




里山とインターネット 日本に棲む全てのカエルを紹介中

 帰化種を含めて日本に生息する37種(5亜種を含む)のカエルを写真や鳴き声入りで紹介したホームページがあります。このホームページを作成しているのは、カエル探偵団という方々です。実は、この方々は最近の話題書籍『カエルが消える』(キャサリン・フィリップス著、大月書店刊行、2400円十税)の翻訳を担当された長谷川雅美さん、福山欣司さん他が中心になって作成されています。
 「このホームページは、日本産のカエルやサンショウウオの保護やその生息環境の保全を支援するために、日本の両生類の分布、生息環境、生活史、行動など、様々な情報を蓄積して提供することを目的として作られました」と、その目的が掲載されています。「インターネットは、里山の保全に優れている」とは、担当の福山欣司さんの言葉です。日本で2000年以上前から絶ゆまず営まれてきた里山を生かす取り組みに、インターネットの活用が効果的であるとは、興味深いことです。
 ホームページでは、近い将来に両生類の調査について情報の提供をしてくださる専門家の紹介も行う予定とのことです。また、カエルに関する情報が少ないことから皆さんからの情報の募集もしています。
 是非、一度アクセスして、里山のカエルを調べる参考にしてください。
(保護・調査センター/小板正俊)

ホームページアドレス:http://www.hc.cc.keio.ac.jp/~fukuyama/frogs/


第12号   1999年1月1日


第2回「甦れ!里山」シンポジウムを開催

 11月7日・8日、東京渋谷の国立オリンピック記念青少年総合センターにおいて、日本野鳥の会第2回「甦れ!里山」シンポジウムを開催しました(後援:環境庁・建設省・東京都)。「里山の末来はひとのネットワークから」をテーマに、2日問で合計約300人の来場者が集い、里山の保全について話し会いました。
 守山弘さん、鷲谷いづみさん、鬼頭秀一さんの3人の研究者をはじめ、行政やNGO、農林業家の方々からは、様々な専門分野から里山を見つめた広範な講演が行われました。別室では20数団体が各地の里山保全の取り組みについてポスターで発表し、来場者との直接のやりとりを通じて盛んに情報交換がされました。
 2日目に開かれた分科会では、4つのテーマ別に部屋を分け、それぞれの問題についてより深く考えるための発表と意見交換が行われました。第1分科会「里山の社会環境と制度の現状と課題」では、法制度を里山を守るためのツールとして捉えて十分に活用していくことの必要性について、第2分科会「里山の自然環境調査の現状と課題」では、市民が調査を行っていく際に参考となる調査マニュアルや、調査結果などの情報を発信・受信するシステムをつくることが必要であること、第3分科会「里山保全の意義をより多くの人々に」では、里山を守ろう、というコンセンサスを地域の中でどのようにして広げていくかについて、第4分科会「里山と農」では、専業の農林業家の方を交え、農業を取りまく様々な難しい状況がある中で、都市と農村の交流を通して農業に生きものや環境教育、福祉などの視点を取り入れていくことの可能性について、それぞれ話し合われました。
 その後に行われた全体会では、各分科会での話し合いの中からまとめられた行動計画がそれぞれについて発表され、それらの項目を含むアピ−ル文が参加者共同アピールとして採択されました。

第2回「甦れ!里山」シンポジウム 参加者共同アピール

第2回「甦れ!里山」シンポジウムの内容をまとめた報告書をご希望の方はこちらへ

シンポジウムの企画・実施にあたっては、以下の皆さんに大変お世話になりました。
誠にありがとうございました。
(敬称略・順不同)

●実行委員・アドバイザー
辰濃和男(元朝日新聞論説委員)、鬼頭秀一(東京農工大学教授)、鷲谷いづみ(筑波大学助教授)、守山弘(農林水産省農業環境技術研究所)、志村英雄(本会自然の保護と調査に関する委員会委員)、笹川喜久夫(本会理事)、浅川千佳夫(本会理事)、伊井野雄二(赤目の里山を育てる会)、恵良好敏(流山自然観察の森を実現させる会)、粕谷和夫(天合峰野鳥調査グル−プ)、佐藤留美(NPO-birth)、新保國弘(流山市民まちづくりネットワ−ク)、高松健比古(日本野鳥の会栃木県支部)、品田穣(委員長/保護調査センタ−所長)
●全体会講師と分科会座長・コメンテーター
守山弘、鷲谷いづみ、鬼頭秀一、荻野豊(東京都環境保全局)、粕谷和夫、高松健比古、伊井野雄二、恵良好敏、飯島博(ヒシクイ保護基金)、佐議留美、折原磨寸男(NPO-birth)、新保國弘





再生へ向かう水俣で、新たな旅の試み

 近年、環境保全型のまちおこしやグリーンツーリズムに対し、積種的な試みを展開している自治体が目立ってきています。里山保全の観点からも、こうした取り組みは大きな意味を持ってくるものと思われます。都市から離れた地域においては過疎化や農林業の衰退など、里山の荒廃に繋がる大きな課題が存在します。こうした問題が、地域の自然や文化、歴史、人など、それぞれの個性を活かしたまちおこしやツアーの開発などでその地域が元気になることにより、少しでも解決の方向に向かう可能性はないものがと考えさせられます。
 こうした中、昨年10月2日から4日にかけて、熊本県地域政策総室と水俣市企画課の主催により、「環境再生水俣・生活文化体験ツア−」が行われた為、里山保全との繋がりの一端を探るという観点から参加してきました。
 このツアーの特徴は、水俣病の教訓に学びながら再生の道を歩みはじめている水俣の、様々な取り組みや人々の暮らしを、地元の自然、そして地元の人々との遊び・語らいを通して提供し、新たな水侯の魅力を知らせていこうとしている点です。そこには、一過性の観光旅行ではない、地元の生活を実感できる新しい旅の形がありました。
 水俣市は人口約3万2000人、面積約163平方キロで、市域面積のおよそ7割が森林で占められています。また、直線距離で20数キロの水俣川の源流域から河口までを市域の中に有しているため、市全体が一つの里山の風景を作り出しているような印象があります。そして、植林のなされていない所にはシイや力シの照葉樹の林が広がり、斜而には棚田の風景が連なります。
 ツアー2日目は、水侯の自然や風士、文化、生活などを少人数のグループに分かれて満喫することができるプログラムになっています。AからDまでの4つのコ−スには、それぞれ個性豊かな地元の案内人がつき、独自の内容が用意してありました。

水が作り出す風土と暮らし
 …湿地の散策・用水路を見る・農村の水使い・いつもの食事を味わう
海のある暮らし
 …海岸線を船から見る・釣りをする・あわび養殖の話を聞く・無添加イリコについて聞く
山の幕らし
 …棚田を見る・水源の水を飲む・木を切る・水の作った景観を眺める
湯治場を拓く
 …各地の水を飲む・作業で棚田を知る・川のある幕らしを探る・草木の用を知る

 当日はCコースに参加しました。照葉樹林の中での自然観察やごろ寝では時の経つのを忘れ、巧みに積まれた石で造られた美しい棚田の風景には歴史や文化、農業のあり方を想い、ヒノキの間伐作業では林業家の苦労の一端を身をもって理解し、いつの間にか日が暮れていました。地元を知り尽くした案内人とともに遊び、学び、有意義な時間を過ごしました。
 夜には、「夜なべ談義」と称して、各グループごとに地元の産物をふんだんに取り入れ、水俣の人が日頃会べている夕食をいただきながら、地元の方々と語り合う時間が設けられました。農林業の苦労話や地元料理の作り方、地域の活性化の可能性など、様々な話題が繰り広げられました。
 水俣では今、水俣病の発生によって損なわれてしまった地域のきずな、人と人との結びつきを取り戻していこうという「もやい直し」という運動が始められています。「もやい」とは、船と船とをしっかりと繋ぎ止めることで、固い結びつきを表す言葉になっています。
 ツアーの初日、水侯病と共に生きてきた、語り部の杉本栄子さんは、人と人との繋がり、すなわち「もやい」がいかに大切なものであるかを、自らの体験を交えて話してくれました。そして、今や杉本さんの「治療の場である水俣の海」は、「水俣のすばらしい山と川がつくり出してくれたものだ」という力強い一言が印象的でした。
 ゴミの分別収集(資源ゴミは20種類に分別収集されます)、修学旅行の招致、「環境モデル都市」づくり、ISO14001の認証取得への動きなど、水俣では、かつての経験を活かした様々な取り組みがなされています。今回のような、自然環境を活用したツアーの試みも、こうした取り組みの一つでしょう。そして、これらを支えているのは地域の元気な人達でした。これは、里山の活牲化を目指すあらゆる地域にとって何よりも大切なことであると感じました。
 10月とは思えないほどの暖かい天候に恵まれた水俣の自然の中で、里山を取り巻く様々な事柄を見つめ直した三目間でした。
(保護・調査センター/山崎宏)


第二回「甦れ!里山」シンポジウム 参加者共同アピール

 日本各地では2000年ほど前から、人の力を中心とした水田耕作が行われてきました。人の営みは、四季を通じて変化に富んだ自然環境を形づくり、多様な生物の生息を可能にしてきました。自然の恵みを受け、それを繰り返し永く使い続ナることで、人々の生活文化は周囲の自然環境と実にうまく調和してきました。
 雑木林や小川、田んぼや畑、ため池、原っぱ、屋敷林・・、 古くから私たちの暮らしのまわりにあり、農林業などの営みと深い関わりを持ちながら維持されてきたこうした自然環境を私たちは「里山」と呼びます。そこでは、トンボやメダカ、カエル、サンショウウオ、道ばたやあぜや水路の草花、野鳥たちなど、様々な生きものの生活が長年にわたって培われてきました。
 けれども、この40年程の間に私たちの生活の仕方が大きく変わり、里山との関わりが薄れていくこつれて、かつてどここでも見られた里山の自然やそここすむ生きものが、そして文化がいつの間こか姿を消しています。私たちの身の周りで最も身近な自然、里山が失われていく状況は、いわば自然環境の「静かな危機」が進行している状況と言えます。
 そんな思いをもつ私たちは、第二回「甦れ!里山」シンポジウムに集い、里山の現在を見据えるカを養い、お互いの経験の交流から里山を生かすためにどんな協力ができるのかを話し合いました。  里山の自然環境とそこにすむ生きものの大切さに気づき、また里山に人の住みかとしての未来を思い描き始めた人が、全国各地にたくさんいることを私たちは知っています。今回のシンポジウムで得た経験をできるだけ多くの人たちに伝えるため、私たちはこれから、次のようなことを実行していきます。
一. 法制度を活用し、生きものと共に生きる里山を維持するように行動します。
一. 里山へ足を運んで、楽しもう!
一. 津々浦々それぞれのフィールドで大きなものから小さなものまで、多様な魅力と意義を発見しよう!
一. 横のつながり、情報交換が大切です。他の場所でも役に立つ公式のようなものがみつかったら、みんなに知らせて広めよう。
一. 里山が少しでも生かせるように、地域社会のなかで話し合い、仲間づくりに挑戦します。
一. 里山に住んでいるひと、里人と里山の将来を話し合います。
一. 里山を生かすための情報や知恵を出し合い、共有できるようにします。
一. 里山の良さを楽しく、継続して、正確に調べて、みんなに伝え、里山を生かす基礎づくりとします。
一. 生きた里山を子供たちが体験できるように、いろいろなところで働きがけます。
一. 里山を生かすひとのネットワークづくりにつとめ、農業などの情報や経験がうまく伝わるようにつとめます。

以上を踏まえ、次の機会に向け、さらに新しい成果が各地で生まれるように努カしていきます。

第二回「甦れ!里山」シンポジウム参加者一同
1998年11月8日 於:国立オリンピック記念青少年総合センタ−


第13号   1999年2月1日


全国雑木林会議開かれる

 昨年10月25日、香川県坂出町にて「第5回全国雑木林会議」が開催されました。全国雑木林会議は1993年、全国各地でそれぞれに雑木林の保全活動を始めていた市民が集まり、惰報交換と親睦を目的に名古屋市で開権したのが始まりで、以後は自主的に名乗りを上げた雑木林をフィールドとする市民団体が順番に運営をしています。第6回は「よこはまの森フォーラム」の主催で、今年10月31日、11月1日に横浜市内で開催されます。
 全体会議では「暮らしとつながる森を考える」をテーマに意見交換が行われました。雑木林の地主さんの多くは、その土地の自然や作業を楽しむことにあまり関心を持っていません。一方で、雑木林の生きものを観察したり管埋作業に汗を流すことを楽しみとする、土地を持たない市民もたくさんいます。この両者を結びつけるにはどうすればよいでしょうか。私有地である雑木林で実際に活動を行っている市民団体の代表等から、雑木林での作業や遊びを収入に結びつける方法を地主さんと一緒に考えていくことが大切である等の意見が出されました。
 2日目は、主催団体である「どんぐりボランティアネットワーク」恒例行事の「森の文化祭」が開かれました。香川県林務課内に事務局をおく同ネッワークは、雑木林の管理の他に「どんぐり銀行」というユニークな活動を行っています。森で拾い集めたどんぐりを〃預金〃すると通帳が作られ、払い戻し時には苗木となって返ってきます。森の文化祭での使用通貨は全て「D(ドングリ)」です。アベマキとクヌギの大きなどんぐりは1つ10D、その他の小さなどんぐりは全て1D。会場にならぶ店々には、“ドングリコーヒー1杯10D”、“草木染体験50D”などの看板が立ち並びます。遊びを通して森に入る人を増やし、森づくりへとつなげるのがこの活動の目的です。どんぐりが一杯入った大きな袋を下げた家族連れ、走り回りながらどんぐりを拾い集める子供たち、また童心にかえって木の下にもぐり込む大人たちで会場は賑わいを見せました。




雑木林のある暮らしを
 「武蔵野・里山保全シンポジウム」報告


12月6日、埼玉県所沢市で、武蔵野の里山の保全を考えるシンポジヴムが開かれました。

 国木田独歩が「武蔵野」の中で描いた里山の景観が色濃く残る狭山丘陵を舞台に、人気アニメ『となりのトトロ』の主人公をシンボルとしたナショナル・トラスト活動を展聞している(財)トトロのふるさと財団の主催によるものです。(本会他後援)。
 同財団は、これまでに三か所の雑木林を買い取っています。ひとつひとつの取得地はそれほど大きくはありませんが、自治体に働きかけ、地主の方とよく話し合うなどして、周辺の土地を含めたまとまった面積の雑木林を保全することができました。これらの活動について、同財団の荻野豊氏より報告がありました。  続いて、狭山丘陵の雑木林と共に武蔵野の面影を今に伝える三富(さんとめ)新田について、元気のでる風景を探す会の松本富雄氏より報告されました。
 今も受け継がれる約300年前の開拓当時の地割りには、県内有数の生産性を誇る畑作農業の基礎となる様々な工夫が見られます。

    縦約六七五メートル、横約七ニメートルの細長い短冊型の一軒あたりの区画の中は、道路側から、屋敷、耕地、雑木林が順に配され、地域全体では、広大な耕地を帯状の雑木林が挟むように見えます。一区画あたりの耕地は、この土地の痩せた土壌でも自作農として自立できる収量が得られる広さ、また雑木林は、それだけの耕地を肥やす落ち葉が確保できる広さになっています。屋敷林には竹やケヤキ、スギなどが植えられ、竹細工や家の材木として利用されてきました。また雑木林は、畑の肥料となる落ち葉の供給源として、今もこの地の農業に欠かせません。
 辺り一帯は、開拓当時の景観を残す歴史遣産としで県の旧跡に指定されているだけでなく、農と緑と人の暮らしが巧みに組み合わさった昔ながらの里山の機能が今も生かされている地域として、国内外の注目を集めています。
 JAいるま野の渋谷豊氏からは、平地林を相続する際に生じる税金の問題について説明がありました。雑木林や屋敷林には非常に高額の相続税がかかります。地主の方が現状のまま林を残すことを望んでも、時に数干万円ともなる税全を支払うには林を売り払うこともやむを得ません。農地に認められている納税猶予(農業を続けることを条件に相続税が猶予される)制度を平地林にも適用することで、この問題が幾分か解決されるのではないか、との問題提起がありました。
 町田歴環管理組合の田極公市氏からは、都の保全地域を元々の地主の方々が伝統的手法で管理する取り組みについての報告、また、四元忠博埼玉大学教授からは、英国のナショナル・トラストによる地域づくりについての記念講演がありました。
 最後に採択された集会宣言では、相続税制度の改善が訴えられ、雑木林の多様な価植を未来への財産として残していく努力を続けていくことが誓われました。
(保護・調査センター/坪木なおみ)




【書籍紹介】「親子で楽しむ里山歩き トトロの森の探検ガイド」
(財)トトロのふるさと財団編/幹書房/1500円(税別)




田んぼの花を探そう、虫の音を聞こう、など、身近な自然を楽しむポイントがいっぱい。
この本を手に、自宅の周りの”トト□の風景”を探しに行こう!


第15号   1999年5月1日


「メダカの減少」から身近な自然を考える
  汽水・淡水魚類の新しいレッドリストより


 「メダカが絶滅の危機!?」二月中頃の新聞にギョッとされた方も多いでしょう。
 今年の二月に環境庁が取りまとめた汽水・淡水魚類に関する新しいレッドリストには、メダカやホトケドジョウなど、その名が広く知れ渡り、普通に生息していると考えられていた種も「絶滅のおそれのある種」として掲げられました。
 環境庁では、平成七年度から専門家による検討会を設置し、平成三年度版レッドデータブックの見直し作業を進めてきました。そして、今年の二月、汽水・淡水魚類のレッドリストがまとめられ、脊椎動物についての見直しを終了しています。
 「レッドリスト」とは、絶滅のおそれのある野生生物の種のリストのことで、環境庁のレッドリストは、現在のところ法律的な拘束カはないものの、野生生物の保護を推進するための基礎的な公的資科として活用されています。ちなみに、このレッドリストに掲載された種について生息状況等を取りまとめたものが「レッドデータブック」です。
 環境庁野生生物課では、今回、メダカやホトケドジョウなどがリストに掲載されたことについて、「生息地の滅少が最も大きな原因。そこに外来種や人による補獲など様々な要因が複合的に絡み合っているのでは」と分析。今年度中にも汽水・淡水魚類の「レッドデータブック」を作成する予定です。
 さて、メダカの滅少に対して私たちができることは何なのでしょうか。 
 横須賀市自然・人文博物館の副館長で、今回のリスト作成の作業部会メンバーでもある林公義氏(神奈川支部顧問)は、「まず、地域の人たちに身近な自然を見直してほしい。生息に適した環境を取り戻せばメダカの復活は可能なはず」と語ります。また、「安易な移入による遣伝子レベルの撹乱は長い目で見ると心配。水系を意識した保全・回復を目指すべきだろう」とも。水系間の移動が困難な淡水魚の多くは、地域ごとに異なった遺伝的特徴を持っています。数を増やすためだけに他水系のメダカを移入するようなことは、かえって彼らにとって望ましい対応ではないとのことです。
 身近な自然の調査・研究の蓄積により、馴染みの深い生きものの多くが滅少傾向にあることがわかってきています。昨年の「野鳥」誌三・四月号では、植物版レッドリストの観点から「身近な自然」の危機を示しました。このなかで、筑波大学の鷲谷いづみ氏は キキョウやフグジュソウ、アサザなどを滅少する身近な植物として掲げ、市民が果たす役割の重要性を指摘されています。

 農林業など、人問生活との徴妙なバランスのなかで存続してきたこうした生きものを守っていくには、日頃から身近な自然に関心を持ち、彼らとの関係を断ち切らないようにすることが大切なように思います。
 「メダカの学校」がなくなるかもしれない。この事実は私たちに何を示しているのでしょうか。真剣に考える必要がありそうです。
(保護・調査センター/山崎宏)

『汽水・淡水魚類レッドリスト』の入手方法

  1. 環境庁野生生物課に直接取りに行く。
  2. 環境庁ホームページから入手する。
    http://www.env.go.jp/
  3. 返信用封筒(角形2号に切手130円分
    を貼り、返送先をあらかじめ記入)を
    同封の上、次の宛先に申しこむ。
  〒100−8975
  東京都千代田区霞ケ関1−2−2
  環境庁自然保護局野生生物課
  魚類レッドリスト係



第16号   1999年6月1日


サシバの渡り調査で里山環境を保全
カラーマークのあるサシバを探そう


 サシバは東南アジアや沖縄で越冬し、九州から本州に夏鳥として渡ってきます。低山や丘陵の林の大きなスギの木などに営巣し、近くの木の枝から、田畑やあぜのカエルやヘビ、トカゲなどの小動物をねらって捕らえます。サシバのこのような生活は、林と水田が組み合わさっている里山の環境に支えられていると思われます。
 近年、サシバが繁殖できるような良好な里山の環境が、開発や農林地の荒廃などにより減少しています。また、渡りのルート上にあり、中継地となる各地の里山のような環境も同じような状況にあると考えられます。
 このような状況から、サシバの渡りのルートを送信機と各地の観察記録を利用して追跡し、繁殖地、中継地、越冬地の環境利用をよく調ベ、サシバが渡りの際によく利用している環境を抽出して、サシバと里山環境の保全に役立てることを目的として、今回、東大野生動物学研究室の樋口広芳先生、我孫子市鳥の博物館の時田賢一氏により研究が始められました。
 樋口先生らは今年3月上中旬、沖縄県石垣鳥で12羽のサシバを捕獲し、6羽に人工衛星追跡用送信機を、また、12羽すべてに赤、黄、青、緑の染科で色をつけました。色がついているのは翼下面、尾羽の裏側、のど、下尾筒で、個体によって色のついている部位と色の組み合わせが違っています。
 もしも、渡りの途中や繁殖期にこれらの着色されたサシバを見かけたら、ぜひ下記までご連絡をお願いします。(保護・調査センター)

<連絡先>
 〒113‐8657
 東京都文京区弥生1−1−l
 東京大学大学院農学生命科学研究科
 野生動物学研究室
 担当:森下英美子
 電話 :03-6841-7541
 FAX:03-5841-8192
 e-mail:emi@es.a.u-tokyo.ac.jp

<連絡事項>
  1. 観察された月・日・時間
  2. 観察場所の地名
     分かれば緯度と経度
  3. 着色部位と色
     二色着色しである個体もいるので色のついていた部分はすべて書いてください。
     (例;右翼下面/赤)

  4. 観察時の状況
     (例:渡り途中の6羽の中の1羽、谷津田で繁殖中など)
  5. 観察者のお名前/ご住所/郵便番号/電話番号/FAX番号/電子メールアドレス


サシバを見つけたら、写真の「→」で示された部位に注意して観察してください。
ま た寄せられた報告例から、どの程度まで野外で色の識別が可能であるかも調べ
るため、今回の記事では12個体それぞれの色の組み合わせを掲載していません。
どうぞ、ご了承ください。(写真・高嶌成仁)





『里山の自然と野鳥を守る』活動展開中
今年度の長期重点事業のお知らせ


長期重点事業「里山の自然と野鳥を守る」は今年で四年度目を迎えました。今年度もこれまでの成果をふまえて、次のような事業などを展開していきます。
  • 里山の白然環境、社会環境の調査(継続)
  • 第三回「甦れ!里山」シンポジウムの開催(十一月を予定)
  • 「甦れ!里山」共同事業
今回は、このうちの「甦れ!里山」共同事業について詳しくお伝えします。



「甦れ!里山」共同事業について

 これまでの事業を行う中で生まれてきたネットワークをいかし、地域で里山の保全活動を行っている本会各支部・NGOと共同で事業に取り組みます。

1.里山保全のための検討会(「里山タスクグループ」との共同事業)

 近年、「里山」は身近な自然を表現する言葉として広く知れ渡り、多くの人々の間でその保全の必要性が認識され始めています。今この時期を、人と自然の適正な関係性を創り出す大きなチャンスであると捉え、将来に向けてのビジョンを提示するために、「里山タスクグループ」を立ち上げました。
 「里山の自然を守るために、私達は何をしなければならないのか?」を命題として掲げ、約半年間、ゲストを招いての検討会や事例分析を重ねていく予定です。最終的には、問題解決への提言を取りまとめ、発信していくことを目指しています。
2.連続勉強会1999
 「市民による環壊アセスメント−里山が甦る未来のために−」
 (「日本野鳥の会愛知県支部」との共同事業)


 環境影響評価法(以下アセス法)が本年6月12日から施行されます。2005年国際博覧会事業(愛知万博)、中部国際空港建設事業などでは、アセス法の先取りとして環境影響評価が行われており、すでに準備書の公告・縦覧が行われました。とりわけ愛知万博については、二次的な自然環境である里山をどのように評価し、将来に向けで保全していけるのか意見を述べていくことが必要です。万博の環境影響評価は今後、アセス法の施行により都道府県レベルで進行する里山の環境影響評価に大きな影響があると考えられています。
 そこで、環境影響評価の現状と将来について理解を深め、意見書作成の経験や知識を集積するため、第一線で活躍されている先生方をお招きして連続勉強会を実施しました。成果は今後、報告書としてまとめ、全国で里山保全に向けて活躍されている市民の方々に提供していきます。

  • 第1回(3月13日)
    「環境影響評価の歴史・現状−藤前から万博まで−」
     講師:島津康男氏(名古屋大学名誉教授)
  • 第2回(4月24日)
    「市民はどのように環境影響評価に意見を述べるか‐生態系、とりわけ愛知県の鳥類を中心に」
     講師:小笠原昭夫氏(愛知県自然環境保全審議会専門委員)
  • 第3回(5月16日)
    「市民と研究者が協働して環境影響評価に意見を述べる」
     講師:鷲谷いづみ氏(筑波大学生物科学系助教授)

3.水田を利用する鳥類の保全手法研究会
 (「日本野鳥の会神奈川支部」・「日本野鳥の会栃木県支部」との共同事業)


 身近な白然の重要性が見直され始めている中、水田生態系における生物の多様性が注目されています。農業を取り巻く様々な問題により、水田農業と生物多様性との調和には多くの困難が存在しますが、全国各地では様々な試みが展開されつつあります。
 「水田環境‐鳥類の生息環境」という視点に立ち、各地の取り組みの中心的な役割を担っている方々にお集まりいただいて研究会を実施します。講義や事例報告、その後の議論を通じて、各地に点在している具体的な手法や問題点の情報交換をし、この分野における今後の方向性を検討します。また、記録等をまとめた資料集を発行して全国各地に広めていきます。(本年夏頃実施予定)
4.里山情報ネットワーク構築事業
 (「里山情報インフラ検討チーム」との共同事業)


 里山を生かすための活動をしている人々、これから里山について活動をしていくであろう人々、里山に関連する行政に携わる人々、里山に関連する研究をしている人々。これらの人々の現場では、どのような情報が必要とされているのでしょう。里山に関わる全国の人々が質的・量的に十分な情報交換ができるよう、経験豊かな方々による検討チームと共に、ホームページ開設などの情報通信のインフラストラクチャーの構築、その継続的な運用ができる体制の整備を行います。


第17号   1999年7月1日


私たちに何ができるのか?
里山保全のための検討会が始動!(「甦れ!里山」共同事業)


 「里山の白然を守る」、そのために私たちにできることは何なのでしょうか。
 この点を具体的に考え、将来に向けた里山保全のビジョンを提示する検討会が始動しました(先月号のさとやま新聞もご参照ください)
 品田穣常務理事、保譲・調査センタースタッフの他、NGO、農林業、行政、企業など、様々な立場のメンバーで構成される「里山タスクグループ」が、約半年間をかけて、ゲストを招いた検討会や事例分析を重ねていく予定です。
 このタスタグループのコーディネート役の一員であるNPO birthの折原磨寸男さんは「なだらかな畔やメダカの泳ぐ小川、風に揺れる林のざわめき、遠くに聞こえる祭りの音など、人と自然の美しいハーモニーの証が里山だと思う。この風景を守っていくために、人と自然はどのような関係を持てばいいのか。その答えを導き出すのが里山タスクグループの使命です」と語ります。
 去る5月8日・9日、第1回検討会を束京都檜原村で開催しました。カジカガエルの心地よい声が響く、山の麓のコテージが会場です。周囲の自然環境は「里山」というより「奥山」という印象。しかし、そこで見て、聞いたことは里山保全に役立つ暮らしのあり方でした。
 初日には里山に関する年表づくりを行いました。法制度の流れや市民運動の動きなどが大きな模造紙の上に次々に書き込まれていきます。環境パートナーシップオフィスの川村研治さんは「電子メールを使っての下地ができていたこと、そして何より、同じ思いを持つ者同士の連帯感がすぐに活気ある雰囲気をつくり出したようだ」と振り返ります。生きもの、経済、地域社会・・・話題は尽きることなく、熱のこもった議論が深夜まで続きました。
 翌日にゲストとしてお迎えしたのは、檜原村で林業を営み、会場となったコテージの経営者でもある田中惣次さんです。
 20数年前、林業を続け、地域と共に生きることを選んだ田中さんは、自らの林業経営を継続させるために、「経済から環境へ」という時代の変化を強く意識しました。林業家と外部(人・地域など)とをつなげるものは「木材」です。しかし、環境の時代ならその時代なりの「つなぎ役」もある、というのが田中さんの考え方です。癒し、教育、趣味、健康などなど、様々な切り口から関係性を築いています。学生ボランティアの受け入れ・育成、郡会人との積極的な交流、コテージの経営、環境教青と林業のリンクなど、田中さんの生活を成立させている関係性は多種多様です。自然を媒介に人と人とのつながりをつくる。そして、それを守ることこそが田中さんの森を持続させることだったのです。
 里山を取り巻く問題は、人と自然の関わりのあり方の変化によるものです。昔に戻れない以上、時代にあった、適正な関係性を探ることで、問題の解決に向かうことはできないものか。田中さんのお話しにはそのヒントがありました。
 里山タスクグループではこうした検討会を全五回開催していく予定です。この度の始動を機に、NPO birth事務局長の佐藤留美さんは、タスクグループヘの期待の言葉を次のように表現してくれました。「時代を切り開くパイオニアたち、集まれ!‐出会い、つながり、共に知恵を分かち合い、栄養を蓄えて、また散らばろう。人と自然の結び目をもう一度、つむぎ直すために」
(保護・調査センター/山崎宏)




市民と研究者が協働して環境影響評価に意見を述べる連続勉強会1999
 「市民による環境アセスメント−里山が甦る未来のために」

(「甦れ!里山」共同事業)


 第3回の勉強会を鷲谷いづみ先生(筑波大生物科学系助教授)をお招きして名古屋市内で5月16日に行いました。当日会場には、50名をこえる参加者があり、愛知万博の環境影響評価の進行の関係から、報道関係の方数名も参加されていました。
 鷲谷先生は、保全生態学の基本的な考え方を紹介されながら、海上の森を保全することの重要さをわかりやすく説明されました。
 保全生態学とは、健全な生態系の持続、健全な白然の機能の持続のなかで、その複雑なネットワークを損なわないようにし、生物の多様性(遣伝子・種・生態系などの多様性)の保全をはかることを目指す学問であると述べられました。そして、こうした努力などにより「後の世代が私たちと同じような自然の恵みを享受しながら豊かな生活を営むことを保障することを目標としている」と説明され、一言でいえば「持続性の希求」であると述べられました。
 基本的な説明の後、保全生態学と環境影響評価の関係、つまり事業などの実施により環境に与える影響の計り方について、

(1)それぞれの種の潜在的な生息・生育場所の減少を評価する。
(2) 個体数が間引かれる効果を評価する(必要に応じて数理モデルを活用)。

という考えを示されました。この説明は、参加者で愛知万博の準備書に疑問を持っている人々には大変に参考になったと思われます。
 現在の調査では、動植物の個々の種類が生育・生息の可能な「場所」についての評価はほとんどなされていません。しかし、調査時には生息・生育していなくとも、ある種類にとってその可能性を持つ場所をつぶしてしまうと、その種類の地域にすんでいる集囲(地域個体群)の存続に大きな影響を与える可能性が示されたからです。参加者は、この春、会場予定地内でオオタカの営巣が確認されたというホットなニュースと、会場予定地は潜在的にオオタカが営巣可能な場所であったのに、準備書ではそうした評価は抜け落ちていたことを連想しながら、説明に聞き入りました。
 この後、先生は保全生態学者として、海上の森の「里山景観」に日本の固有の景観の保全の観点から大変に関心を持っていること、環境影響評価は、持続可能性の観点が欠けており、今後は重視する必要があることについて述べられました。
 今回の勉強会は、これまでのまとめにふさわしい勉強会であったと思います。3回の講師を動めてくださった先生方誠にありがとうございました。勉強会の成果は、小冊子にまとめて刊行していく予定です。
(保護・調査センター/小板正俊)


第18号   1999年8月1日


サシバはどこを通って渡るのか?
 「鷹の渡りの謎を探る集い」開催


 上空高くに輪を描いて飛ぶ、渡り途中のサシバの群れは、バードウォッチャーにとって秋の風物詩です。  サシバは、夏鳥として日本に渡来し、繁殖を終えた九月から十月頃、東南アジアなどの越冬地に渡っていきます。上昇気流を利用した上昇と滑空とを繰り返して移動するため、渡りの時期には上昇気流が発生しやすい地形の所に集中し、多いところでは1日に数百羽から数千羽が観察されます。その壮観な眺めに魅了され、各地の渡りのポイントでは、通過数や飛行、飛来の方向について、長年に渡って観察、調査している個人・グループが多数あります。
 6月13日、東京都八王子市にて「鷹の渡りの謎を探る集い」が開かれました。関東地域でサシバを観察しているバードウォッチャーが、各地点の情報を持ち寄り、共有することによって、関東全域のサシバについて総合的に考察しようという試みです。
 第1部では、東京大学大学院の東淳樹さんによる講演が行われました。東さんは、ご自身の干葉県内でのサシバとその生息環境の研究の中から、サシバが繁殖地として選択しているのは、湿地と林がひとまとまりになっている谷津田の環境であること、さらに、地形としてそれがあれば良いのではなく、耕作された水田や生きものが移動できる水路があることが大切であることなどを報告されました。サシバが生きられる環境を保全することは、サシバの命を支えるたくさんの小動物や、それらが生きられる里山の多様な自然環境を保全することにつながります。
 第2部ではパネルディスカッションが行われ、本会茨城支部、埼玉県支部などが、近年の観察記録について発表しました。渡りのコースや通遇する数はその年の気象状況や渡りの当日の天候に左右されること、本格的な渡りの前に、渡りの前駆的な行動が見られることなど、それぞれが日頃観察していることを確認しあい、各地の記録を重ねあわせて具体的なルートの推測が行われました。
 第3部では、主催団体の八王子カワセミ会より、今後、調査方法の共通化や、結果の共有化をはかっていくことが提案され、参加者一同の賛同が得られました。会場には、関東地域の2万5千分の1の地形図が広げられ、参加者が過去にサシバの渡りを観察したことのある地点に、赤いシールが張られていきました。主催者としてこの集いを企面した八王子カワセミ会代表の粕谷和夫さんは、「この地図に天の川のように、サシバの渡りのルートを描きたい。個々のデータを集約し、蓄積することが、繁殖地、中継地である里山の保全の一助となるのではないか。」と話しています。
(保護・調査センター/坪本なおみ)




里山に住んで、里山問題を考える
 栃木県支部で勉強会


 6月19日、しとしとと梅雨らしい雨の降る中、栃木県真岡市にて日本野鳥の会栃木県支部の「里山を守っていくための意見交換・勉強会」が行われました。
 午前中は、会場周辺の里山を皆で散策しました。トウキョウダルマガエルの声を聞きながら、なだらかな山に囲まれた田んぼの脇を過ぎて、雑木林の中を分け入ると、大きなため池のほとりにたどり着きました。周囲の森林は干害防備保安林に指定されています。きれいに林床が管埋された広葉樹林や、あちらこちらに奉ってある山の神様、水の神様などからは、この地に暮らす人々に代々受け継がれてきた人と土地との心のつながりが感じられました。
 里山の自然を満喫した後は、室内で意見交換が行われました。テーマは「里山を残すために―里山に行く人・住む人・愛する人―」。里山が、その地域の人と自然との関わりの中から生まれてきたものである以上、その保全を考えるには、里山に「住む人」の視点は欠かせません。この日は、実際に里山に住む支部の会員の方も出席し、「行く人」である他の参加者との間で活発な意見交換が行われました。
 時おり訪れる人にとっての里山は、故郷の風景を思い起こさせ、心を穏やかにしてくれる優しい場所です。けれども、そこに住んでいる人にとっては、経済的な問題や人手の問題など、守りたいという気持ちだけでは守れない、厳しい側面も多々あります。
 里山は、その場所の地形や生物相、産業、財政状況、土地の所有形態などが地域によって様々です。これらの要素が絡み合い、地域ごとの複雑な問題を形成しているため、保全するには地域ごとの地道な取り組みが重要になってきます。その一方で、全国で同時多発的に里山の環境が消失しつつある今、地域の問題を社会全体の問題として考え、法制度などの社会システムから見直していくことも必要です。
 栃木県支部では、地域の立場から身近な自然について考える活動を以前から積極的に行っています。支部の担当者である高松葉さんは語ります。「“里山”を守るためには、やらなくてはならない事、やりたい事が多すぎて、“守る”事を忘れてしまいそうになります。ひとつずつ整理して、実行して…。“登り続けねばならない山”の、今、一合目。次回も本音で掘り下げます」。
(保護・調査センター)




「地域との絆をつむぎ直す」がテーマ!
 里山保全のための検討会(第2回)開催


 都市環境の悪化や価値観の多様化が進行している昨今、循環を基調とした農的な生活スタイルが改めて見直され始めています。同時に、都会から里山に移り住み、地域の自然や文化を見つめ、受け止めながら、移住した先で新たな絆をつむぎ直そうとしている人たちがいます。
 里山保全を考える第2回目の検討会は、こうした営みを実践している女性3人をゲストに迎え、6月6日に開催しました。
 首都圏での会社勤めを辞め、長野県でご主人とともに無農薬農業を始めた山内智絵さん。「中途半端な気持ちでないことを地域の人に伝えるためには、ただ一生懸命やるしかありません」と力強く語ります。「生産者の苦労を実感している」とのことですが、南アルプスを一望できる畑で野菜や鶏の世話をしながら過ごす日々は、毎日が充実感に満ちているそうです。
 地域の自然資源を利用しながら、染織職人として千葉県の里山で暮らす木下昌子さんもまた、「今の生活は楽しいことに溢れている」と言います。幼少時代に山と海に囲まれて育った木下さんにとって、今の暮らしはずっと望んできたものでした。地域の人とのつながりの大切さを毎日の生活の中で感じながら、里山暮らしのすばらしさを人々に伝えています。
 もう1人のゲストである丹治由美さんは、現在住んでいる東京から地元の福島県にUターンすることを望む、大学院の学生です。「東京にはたくさんの人がいるから…」と話す丹治さんは、「だからこそ東北に戻り、学生時代に学んだことを活かしながら、地域の自然の大切さを住民の視点で様々な人に広めたい」と続けます。
 近年、自然に囲まれた生活に、お金には換えられない価値を感じている人々が増えてきています。「豊かさ」の基準が多様化してきているのでしょう。外から入ってきた人が地域に活力を与え、新たなコミュニティを築き上げること。これは、荒廃に直面した里山に求められる一つの大切な要素ではないかと感じました。
(保護・調査センター/山崎宏)


第19号   1999年10月1日


海上の森も守りたい!
 第3回「甦れ!里山」シンポジウム愛知県瀬戸市で開催


 一昨年の11月に千葉県柏市・流山市でスタートした「甦れ!里山」シンポジウム。第1回のこの時は、里山の楽しさや守ることの難しさについて、それぞれに蓄積されてきた情報を共有し、各地の活動に活かすための意見交換ができました。昨年行った第2回では研究者や行政担当者、農林業者の方々も迎えて、法制度や生きもの、農といった視点から里山を守るということはどのようなことなのかを考えました。
 そして今年、「甦れ!里山」シンポジウムは第3回目を迎えます。重点事業は一つの山場を迎え、これまでに積み上げてきた議論をかたちにする時です。
 8月21日、渋谷区初台の事務局でシンポジウム実行委員会が開かれ、今回のシンポジウムが目指すべき方向性や具体的な内容の検討が行われました。
 里山は、そこに人がいて、人と自然との関わり合いの中で保たれていてこそ、地域の中で価値を持ってきます。歴史上、その地域で人と自然がどのように関わってきたかということ、社会や経済の状況の変化を経て、新たにどのような関わりが生まれてきたかということは、その里山にとってとても重要です。そして、里山の自然を守るということを考える時には、その里山を地域の中にどのように位置づけ、これから先、その場所で人が自然とどのように関わっていきたいのかということを、その地域に住む人たちがよく話し合って確認することが大切です。
 このような人と自然との関わりのあり方について考えるために、今回のシンポジウムでは、愛知県瀬戸市、海上の森の里山を事例として取り上げます。万博開催問題の渦中にある海上の森。訪れる人を魅了してやまないこの森はどのような場所で、そこで開催されようとしている万博は、誰のため、何のために、どのようなビジョンに基づいて計画されているのでしょう。現在の計画の何が、どうして問題となっているのでしょう。これらの基本的な疑問点に答えた上で、今後、海上の森という場所を地域の中で活かしていくためにはどのようなあり方が望ましいのか、それを実現するためには、誰が、何を、どう進めればよいのかを、皆で考え、話し合います。
 全国の里山問題の一つのかたちとして海上の森の未来像を考えることにより、21世紀の日本の里山のあり方を浮かび上がらせることができればと思います。
 たくさんの方々のご来場をお待ちしています。参加のお申し込みについては、今月号に同封の案内チラシをご覧ください。
(坪本なおみ/自然保護センター)

 

実行委員会名薄(敬称略)
委員長 市田則孝 本会常務理事、
自然保護センター所長
副委員長 山本卓也 日本野鳥の会愛知県支部
支部長
委員(順不同) 辰濃和男

鬼頭秀一

鷲谷いづみ
沢島武徳

折原磨寸男

新保國弘


本会顧問、自然保護委員、
元朝日新聞論説委員
本会自然保護委員、
東京農工大学教授
本会評議員、筑波大学助教授
本会理事(中部ブロック代表)、
日本野鳥の会岐阜県支部幹事
里山タスクグループ世話人、
NPObirth
里山ホームページ検討会
メンバー、流山自然観察
の森を実現させる会
(オブザーバー) 川村研治
里山タスクグループ世話人、
環境パートナーシップオフィス





「農」の魅力に大きな期待!
 里山保全のための検討会(第3回)開催


 近年、都市の中でも農業との関わりを求める住民が増えています。人々が農業を考え、農業に触れることができる場を築き上げていくことは、人と自然との関係のあり方を問い直していく上でも大きな意味を持っています。
 こうした考えのもと、里山保全を考える第3回目の検討会は、都市の農地を舞台に都市住民と農業との関わりづくりを実践されている方々をゲストに迎え、7月4日に開催しました。
 検討会当日は、ゲストのお一人でもある白石好孝さんの畑を見学させていただきました。東京都練馬区にある1.4へクタールの畑には、キャベツや枝豆、トウモロコシなど、たくさんの野菜が栽培されています。白石さんはこうした多品目の野菜を地元のスーパーや学校給食、直売など、様々なルートを通じて地域の人々に届けているそうです。
 そして、白石さんの農業経営の特徴は、農地の一部を練馬区の農業体験農園として開放していることです。利用者が年間授業料を支払うことで、園主から野菜づくりのノウハウと農地の提供を受けられるという、練馬区独自の制度によるものです。「大泉風のがっこう」と名づけられた白石さんの体験農園では、現在100名を超える利用者が野菜づくりに励み、毎年、収穫祭も行われています。
 こうした都市住民と農業とを結ぶ活動は各地で行われるようになってきました。
 「荒井沢緑栄塾 楽農とんぼの会」という市民グループをつくり、農家の協力のもとで農作業を楽しんでいる江成卓史さんは「新たな生きがいを見出す人、自分の食べ物を生産することに喜ぴを抱く人、心地よい汗をかくことが目的の人など、農業との関わりを求める人々にもいろいろなタイプがある。生産を介して土や自然と関わることで、各々が自然との結ぴつきを実感し始めているのが興味深い」と話します。
 今回の検討会を通じて、都市に存在する農地には、農産物の生産はもちろん、その他にも様々な可能性が秘められているのだということを感じました。実際に、白石さんは教育、福祉、レクリエーションなど、社会の実状に即した新しい切り口から地域との関係性を模索しています。このことは、都市の農地のみならず、人と自然との関わりが薄れつつある里山の現状を考えていく上でも、欠かすことができない大切な視 点の一つです。
(山崎宏/自然保護センター)




私たちの原風景を残したい
 柵田の保全に向けて様々な動きが生まれています


 この夏、東京・日本橋三越本店にて「棚田パノラマ体験展」が開催されました。会場を訪れてまずはじめに目を奪われたのは、巨大な「棚田」の展示。幅10メートルにも及ぶ棚田のパノラマ写真をバックに、本物の水や土を使っ田んぼの一部がつくられています。棚田の四季を再現する立体ジオラマや、カエルの目の高さから田んぼの世界を眺める「生きものの世界」のコーナーなど、都会の真ん中にいながらにして、棚田の世界を上から、下から垣間見ることができました。
 開催期間中の8月3日には、「棚田学会」の設立記念シンポジウムが催されました。学会は、棚田の機能や歴史、それに対する人々の工夫や技術を知ることによって、棚田が現代の社会で果たしている役割を明らかにし、次世代に継承していくための知恵と熱意を集めることを目的としています。農業土木学、地理学、民俗学、生物学などの研究者や、都市住民、農家の方など、分野・領域をこえて、棚田に関心のある多彩な顔ぶれが集まりました。今後、会員相互の自由な意見交換や現地調査、見学会などの活動を通して、現実的な保全に結びつけることが考えられています。
 棚田を有する自治体が全国から参加して意見交換をする「棚田サミット」は今年で第5回となりました。ボランティアを募集して棚田の農作業を体験する取り組みも各地で始まっています。
 これらに見られるように、近年、棚田に対する関心が高まっています。地滑りの防止や保水の役割、生きものや文化を育む場としての価値など、棚田の持つ多面的な機能が注目を集めてきています。そして、これらの取り組みを支えている一人一人の棚田に寄せる想い、日本人の原風景として棚田を後世にも伝えていきたいという気持ちは、今後の棚田保全を進める大きな力となるでしょう。
(坪本なおみ/自然保護センター)


第20号   1999年11月1日


「人の連携」が里山を守り、育てる!
 里山保全のための検討会(第四回)開催


 ほとんどの場合、里山の土地は個人の所有地です。所有者である農家、林家の多くは、農林業が経営的に続けられなくなったり、相続の際に重い税金がかかってくることなどで、土地を維持したくても維持できないという厳しい状況に直面しています。
 9月18日に開催した里山保全を考える第四回目の検討会では、横浜市緑区新治地区の里山を訪ね、こうした状況を乗り越えていくための視点を探りました。横浜市の樹林地・農地は、市域面積の約17パーセント。郊外には里山の風景がわずかに残されています。現地の案内をしてくれたのは、横浜市緑政局緑政課で市の緑地保全を担当する丸山知志さんと田並静さんのお二人です。
 雑木林と谷戸田のおりなす新治の里山は、面積がおよそ80へクタール。いくつもの開発計画から奇跡的に免れ続けてきた場所です。また、市の総合計画である「ゆめはま2010プラン」及ぴ、緑地保全や緑化推進のビジョンを示す「横浜市緑の基本計画(1997年)」において、保全を進めていく地域とすることが明記されています。
 この新治で、現在、農家と地域の人たち、ナチュラリスト、行政が互いに連携を結ぶことで、この里山を将来につないでいこうとする取り組みが始まっています。
 構浜市には「市民の森」という独自の緑地保全制度があります。これは、民有緑地の保存と、市民のいこいの場を提供することを目的としてつくられた制度で、市が土地所有者から緑地を借り入れ、簡単な整備をしたうえで、「市民の森」として公開するものです。新治の緑地はこの制度を活用して保全していくことになっており、指定後の森の管理は土地所有者や地域の入々によって構成される「市民の森愛護会」に委ねることになっています。
 「新治のように広面積の森を維持していくためには土地の所有者だけでは限界がある。緑とのふれあいを求める地城の人々を森の管理と結ぴつけていくことが必要」とお二人は口を揃えます。
 「ただし、所有者にしてみれば、他人が自分の土地の手入れをするなどというのは、心配でしかたがないというのが本音。互いが信頼関係で結ばれることが大切」
 そこで市では、森の手入れに関する技術や知識を持っている農家や市民、NGOなどの協力を得て、森の管埋を希望する地域住民約60名を対象に「森づくり講座」を実施しています。技術の習得はもちろん、関係する人々が顔を合わせ、生の声で話をすることで、この森を地域の財産として守っていこうという、共通のテーマに支えられた新しいコミュニティが形成されつつあります。
 様々な人や組織がそれぞれの役割を果たし、連携を取っていく。このことが、地域の里山を守り、育てていくうえで大きな意味を持ち得ることを、新治での取り組みは示してくれています。
(山崎宏/自然保護センター)




開催直前 第3回「甦れ!里山」シンポジウム

日時:11月6日(土)・7日(日)
場所:愛知県労働者研修センター(瀬戸市)
6日
海上の森見学会(8:00〜13:00)
 愛知県支部、および地元の自然観察グループがご案内します。
ステージプログラム(14:00〜18:00)
主催者挨拶 岩垂寿喜男(本会副会長)
基調講演
「生態学から見た日本の里山と海上の森の特性」
 ・鷲谷いづみ氏(筑波大学生物科学系助教授)
事例報告
「里山における共存の論理」
 ・品田穣(本会常務理事)
「里山保全の展望‐重点事業の成果から」
 ・古南幸弘(本会自然保護センター)
「里山保全の新しい事例‐市民、農林業者、行政の連携」
 ・大畑孝二(本会サンクチュアリセンター・加賀市鴨池観察館レンジャー)
 ・佐藤留美氏(NPO birth)
 ・田並静氏(横浜市緑政局)
 ※演題は一部仮題
スライド&朗読「海上の森の自然」(愛知県支部)
事例報告「海上の森と新住、万博―里山自然の保全へ」(愛知県支部)
交流会(18:15〜20:00)

7日
ステージプログラム(9:30〜16:00)
分料会
第1分科会「里山における時代との共存」
 ・コーディネーター折原磨寸男氏(NPO birth)
 ・コメンテーター鬼頭秀一氏(東京農工大学教授)
第2分科会「里山自然の開発と保全」
 ・コーディネーター小板正俊(本会自然保護センター)
 ・コメンテーター鷲谷いづみ氏
第3分科会「里山を生かした地域づくりを考える」
 ・コーディネーター新保國弘氏(流山自然観察の森を実現させる会)
全体会パネルディスカッション「里山自然の保全への提言」


 


第21号   2000年1月1日


第3回「甦れ!里山」シンポジウム開催


初日は朝から海上の森の見学会。
愛知県支部や地元の自然観察グループのリーダーが、
日頃から通い詰めている森を案内してくれました



 11月6日、7日、愛知県瀬戸市にて、「第3回『甦れ!里山』シンポジウム」を開催しました(共催/日本野鳥の会愛知県支部、企画協力/NPO birth)。2日間でのべ約440名が集い、里山の未来について、熱く議論を交わしました。1日目、海上の森の見学会の後、筑波大学生物科学系鷲谷いづみ助教授により、「生態学から見た日本の里山と海上の森の特性」のテーマで基調講演が行われました。「里山の問題は、日本の自然保護について考える上でとても重要。中でも海上の森の保全問題は、里山の保全と開発とを巡る天王山とも言えると思う」と冒頭で語った鷲谷先生。「健全な生態系の持続」、「生物多様性の保全」という保全生態学上の二つの大きな目標について解説する中から、里山を守ることの重要性について話されました。また、海上の森については、里山のシステムがまとまりで残っている貴重な場所であること、土壌などの特殊な条件の上に興味深い生態系が成立していること、そのために生物多様性のホットスポット(絶滅のおそれのある生きものが集中的に分布している場所)となっていることを、生態学の専門的な立場から解説されました。
 1日目はこの他、「里山における共存の論理」(本会常務理事品田穣)、「里山タスクグループ」(NPObirth佐藤留美さん)、「横浜市の里山保全の取り組み」(横浜市緑政局緑政課 田並静さん)などの講演、「海上の森の自然」についてのスライド上映と朗読が行われました。
 2日目は、三つのテーマに分かれて分科会が開かれました。
 第1分科会「里山における時代との共存」では、里山の時代的価値、里山保全の社会的意味について議論が展開されました。環境問題が危機的状況に直面している今、求められているのは持続可能な社会づくり。里山にはそのための鍵があります。持続可能な地域社会をつくるために、市民はどのように関わっていくことができるのか。その方向性が探られました。
 第2分科会「里山自然の開発と保全」では、自然資源という切り口から里山を見つめました。各地の丘陵地開発の事例を追うと、愛知県に最後に残された丘陵地の自然であり、多くの希少種が生息する海上の森の重要性が改めて浮かび上がってきます。里山の自然の価値を広く伝えていくことの意義について話し合われました。
 第3分科会「里山を生かした地域づくりを考える」では、瀬戸という地域の中で海上の森をどう捉えるかについて検討しました。暮らしに安らぎや潤いを与える場として、海上の森は大きな可能性を秘めています。まちづくりの基本構想の段階から市民が積極的に参画していくことの重要性が確認されました。
 最後の全体会では、本会が海上の森での新住宅開発計画への代案として提案している国営公園構想が話題となりました。パネリストの一人である東京農工大学鬼頭秀一教授は、市民が地域について学ぴながら、地域づくりに関わっていくことの重要性を指摘し、「自然観察や教育など、人と自然とのいろいろな関わり方を実現するために、『国営公園』という制度を利用する。市民がつくり上げる新しい『公園』が実現すれば、『公園』という概念が変わってしまうかもしれない」と話しました。シンポジウムは盛況の中、アピールを採択して閉会となりました。今回のシンポジウムでは、「共存」ということが全体を貫く大きなテーマとなりました。21世紀の人と自然の関わりのあり方、持続可能な社会のあり方、そのモデルが里山にあります。そして、同じく「人と自然の共生」をテーマに掲げる愛知万博が、真にそのテーマを実現するためには、海上の森を切り開いて跡地に住宅を築くのではなく、市民が主体となった地城づくりの核として、海上の森を保全していくことが必要です。シンポジウムでなされた議論は今後の海上の森の保全運動、およぴ全国の里山保全活動にいかしていきます。
(坪本なおみ/自然保護センター)

 
第3回「甦れ!里山」シンポジウムアピール

 
シンポジウムの当日配布資料(A4版54頁。頒布価格1000円)
 E-mailで自然保護センター宛お申し込み下さい。
 E-mail:hogo@wbsj.org

 
 第3回「甦れ!里山」シンポジウム報告書
 (甦れ!里山−生命あふれる未来のために−長期重点事業「里山の自然と野鳥を守る」1999年度報告書 )

 
■これまでのシンポジウム報告書の紹介・・・■

第1回「甦れ!里山」シンポジウム報告書(A4版106頁。頒市価格1000円。)
 日本財団の補助とバードソン1997「甦れ!里山」募金(野鳥保護基金)の一部を使って作成

 ケビン・ショートさんの基調講演、「甦れ!里山」募金で活動を支援している里山保全NGOの事例紹介、パネルデイスカッションなどシンポジウムの報告に加え、里山保全の参考となる法や制度の解説、全国34の里山保全団体のプロフィール集を収録しました。

※第1回シンポジウムは、1997年11月1日〜2日千葉県柏市・流山市にて開催。
 共催:日本野鳥の会千葉県支部後援:環境庁、千葉県


第2回「甦れ!里山」シンポジウム報告書(A4版200頁。頒布価格3000円。)
 「野鳥保護基金」を使って作成。発行部数500部

 第二回目のシンポジウムでは、里山の研究者や、積極的な取り組みを行っている自治体、里山を生業の場としている農林業に従事している方々なども交え、里山を保全するためのより広範な協力関係について考えました。二日目の四つの分科会、「里山の社会環境と制度の現状と課題」「里山の自然環境の調査の現状と課題」「里山保全の意義をより多くの人々に」「里山と農」の内容も詳細に収録しました。

※第2回シンポジウムは1998年11月7日〜8日バードソン1998「甦れ!里山」募金により東京都渋谷区にて開催。後援:環境庁、建設省、東京都





第22号   2000年2月1日


コウノトリを再び野生へ
 「兵庫県立コウノトリの郷公園」オープン


 川に牛を水浴させにきた人と、そのすぐそぱで採食をするコウノトリ。今となっては夢のような、けれども昭和30年代の兵庫県豊岡市では確かに見られた光景です。
 1999年11月1日、豊岡市に「兵庫県立コウノトリの郷公園」(以下、郷公園)が開園しました。飼育下のコウノトリを野生に帰し、冒頭のような光景を再ぴ現実のものとして甦らせるための取り組みが、今後、この公園を中心として始まります。
 コウノトリは、明治初期までは国内各地に生息していました。けれども明治以降、乱獲と、食物となる小動物が農薬によって汚染、減少したことなどから、急激に姿を消していきました。そして昭和46年、最後の野生個体が保護されて以降、冬季にまれに大陸から渡ってくる以外には、国内で野生のコウノトリの姿を見ることはできません。
 兵庫県豊岡市(但馬地方)は、国内で最後の野生のコウノトリの生息地となった場所です。江戸時代から引き継がれた保護政策のもと、この地域ではコウノトリを瑞鳥として尊ぴ、親しんできました。生息数が減少し、野生での繁殖が困難になった頃からは、野生での保護活動と並行して施設内での飼育、増殖が試みられました。「コウノトリを再び野の空へ」と願う関係者の懸命の努力が徐々に実を結ぴ、現在では、郷公園と付属施設であるコウノトリ保護増殖センターに、合わせて67羽のコウノトリが飼育されています。そして、野生復帰への長年の夢は今、郷公園によって実現のための記念すべき一歩を踏み出したのです。
 コウノトリの郷公園は、「コウノトリの種の保存と遣伝的管理」、「野生化に向けての科学的研究及ぴ実験的試み」、「人と自然の共生できる地域環境の創造に向けての普及啓発」の三つの基本的機能を持っています。公園内は「コウノトリ自然馴化ゾーン」、「自然ゾーン」、「自然観察・学習ゾーン」に分けられ、開園に伴って「自然観察・学習ゾーン」が一般に公開されました。
 姫路工業大学自然・環境科学研究所の一部門として郷公園に設置された田園生態研究部の池田啓研究部長は、コウノトリの野生復帰への見通しは「明るいけれど、長い」と話します。野生復帰に向けては今後、遺伝的な多様性の維持、野外での生態や生息環境についてなど、研発を積み重ねていくことが必要です。そして池田氏が何よりも大切と指摘するのは、社会的な受け入れ体制の整備です。
 コウノトリは、田んぼや水路でドジョウやタニシを食ベ、人里近い高木の上に巣をかけます。人の生活圏の中で生活する鳥です。今後、コウノトリのような大型の野鳥が人里近くに現れるようになれば、農業をはじめ、人の生活の中のいろいろな場面で様々な問題が生じてくることでしょう。けれども、人とコウノトリとが共に暮らしていけるような社会環境は、私たちの暮らしにも、これまで以上の豊かさをもたらしてくれるに違いありません。すでに野生にはいなくなってしまった生きものを、飼育下から再ぴ野生に帰すという試み。この新たな挑戦を成功させるためには、この地域を中心とする人々の埋解と協力、そして、そんな人々を経済的、社会的、法的に支える仕組みが重要です。
 池田氏は、「コウノトリの野生復帰の取り組みを一台の自動車に例えるなら、郷公園は車体と車輪。運転手は市民であり、県民であり、国民の皆さんです。今、私たちは、失われたものを取り戻すための歴史的な現場に立ち会っている。そんな気持ちでここを訪れてほしい」と話しています。
(坪本なおみ/自然保護センター)

 
<兵庫県立コウノトリの郷公園>
  兵庫県豊岡市祥雲寺字ニヶ谷128番地
  電話0796−23−5666(代)
  http://www.hyogo-c.ed.jp/~kounotori-bo/




第23号   2000年3月1日


重点事業「里山の自然と野鳥を守る」この四年間の取り組み

 日本野鳥の会では1996年度より、重点事業「里山の自然と野鳥を守る」に取り組んできました。年度末にあたり、この4年間の取り組みと成果について振り返ってみたいと思います。なお、それぞれの活動の詳細については、これまでこのぺージ等でご紹介してきていますので、ご参照ください。




千葉市北部の里山環境調査
 干葉市内に、里山の環境と、里山を開発して住宅地になった環境とが隣接している区域があります。この地区をフィールドに、環境条件と野鳥の生息状況の関係について調査を行いました。調査結果から、単純化された住宅地の環境は、開発前の里山の環境に比べ種数や鳥類の生息密度が低いこと、アオバズク、サシバなどは里山環境により多く生息することが分かりました。

サシバの全国繁殖状況調査
 (日本オオタカネットワーク/東淳樹氏(東京大学大学院)との共同調査)
 サシバは里山の自然環境を代表する鳥です。生息状況についての全国アンケート調査から、サシバは、周辺に樹林地とやや大きな疎林が残っている耕作された水田に高密度に分布していることが分かりました。また、サシバは現在、環境庁のレッドリストには入っていませんが、圃場整備のされていない伝統的な耕作形態の水田が減少していることから、今後、急激に数を減らしていく可能性があることが示唆されました。



バードソンの開催
 1997年およぴ1998年5月、「里山の自然と野鳥を守る」をテーマにバードソン(日本野鳥の会のチャリティーイベント)を実施しました。たくさんの方にご参加いただいて集められた支援金は、本会の里山重点事業を資金面から支えています。また、これを機会に全国で「里山」をテーマとした探鳥会や募金活動を繰り広げることによって、各地で里山への関心を高めることができました。

パンフレット「さとやま」の発行
 1999年のバードウィークに合わせて、里山の価値をより多くの人に分かりやすく伝えるパンフレット「さとやま−・鳥・自然のものがたり−」を発行、配布しました。新聞等でも紹介され、会員内外から四千三百件を超えるお申し込みがありました。学校の文化祭や各地の自然観察施設などからもお問い合わせをいただき、幅広い層に活用していただいています。



「甦れ!里山」支援事業
 里山には地域によって異なる自然環境、社会的背景があり、保全のための課題も様々です。そこで、全国各地の里山で活躍する20団体が、それぞれの現場でより効果的にカを発揮できるよう、活動支援を行いました。また、支援を通じて各団体とのネットワークが生まれ、様々なかたちの協力関係を築くことができています。

水田を利用する鳥類の保全手法研究会
 「水田環境−鳥類の生息環境」という視点に立ち、水田農業と生物の多様性との調和を探る試みが各地で行われ始めています。それぞれの事例に取り組まれている方々にお集まりいただき、各事例の手法や課題についての情報交換を行いました。農業の果たしている公益的な役割や水田生態系の生きものの多様性が見直される中、このような事例を研究し、広めていくことが重要です。(報告書を作成中)

「市民による環境アセスメント」連続勉強会
 開発計画にさらされている里山を守る場合には、当面する開発計画について市民自らがよく知り、よく調べ、意見が取り入れられるよう積極的に働きかけていくことが重要です。環境影響評価法の施行にあたり、市民が里山の生態系を対象とした環境影響評価にどのように意見を述べていくことができるのか等について、愛知万博を事例として勉強会を開催しました。(報告書を作成中)

里山を守る法制度の研究
 里山の土地は、さまざまな環境がモザイク状に人り組んで構成されています。そのため、農地は農水省、都市公園は建設省、自然公園は環境庁など、いくつかの省庁に所管が分かれており、それぞれに異なる法制度が関わってきます。里山の土地を開発から守るため、あるいは健全に維持するためには、その土地がどこ(誰)によって、どのように管理されているかを調ベ、それぞれの土地について、どのような手法を用いた保全策が最も有効であるのかを検討する必要があります。横浜市、干葉県流山市などの先進事例から、既存の法制度を利用した里山の保全手法について検討しました。



 (NPO birth/環境パートナーシップオフィス/本会共同プロジェクト)
 「里山を守るために、私たちは何をしなければならないのか」のテーマのもとに集った約30名のメンバーが、インターネット上と、計5回の検討を通じた意見交換を行いました。里山の持つ新たな価値観について、様々な示峻を得ることができました。(報告書を作成中)



第1回:1997年11月千葉県柏市・流山市
 (共催:日本野鳥の会千葉県支部)
 千葉県在住のナチュラリスト、ケビン・ショートさんの基調講演と、各地の市民グループによる里山に親しむ活動、守る活動の事例報告から、里山の大切さを広く共有することができました。

第2回:1998年11月東京都渋谷区
 守山弘氏(農業環境技術研究所)、鷲谷いづみ氏(当時、筑波大学生物科学系)、鬼頭秀一氏(東京農工大学農学部)の3名の専門家による基調講演、行政担当者、農林業者、環境保全グループ、まちづくりグループ等の事例報告、「法制度」、「自然環境調査」、「農」の視点からの分科会など、広い分野の参加者とテーマで、各方面から里山とその保全について考えました。「里山の未来はひとのネットワークから」のテーマのもとに、分野を越えたネットワークづくりの大切さが確認されました。

第3回:1999年11月愛知県瀬戸市
 (共催:日本野鳥の会愛知県支部/企画協力:NPO birth)
 鷲谷いづみ氏(当時、筑波大学生物科学系)の基調講演、事例報告と3つの分科会から、地域の中に里山をどう位置づけ、守っていくのかを考えました。特に、万博と住宅地建設計画の渦中にある瀬戸市海上の森を事例として取り上げ、人と自然との「共存」の姿とはどうあるべきかについて探りました。