公益財団法人日本野鳥の会
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当会の活動

Strix

第12巻 掲載論文

黒沢令子・樋口広芳. 1993. ササゴイのまき餌漁の種類とみられる地域の特性. Strix 12: 1-21.

  • 東京都の繁殖鳥類の分布状況を1973〜78年と1993〜97年に調査した.この調査とほぼ同時期に調査された植生調査の結果と比較することにより,鳥類の分布変化の要因を植生面から検討した.

    TWINSPAN法をもちいて鳥類相を区分して1970年代から1990年代にかけての鳥類相の変化をみてみた.その特徴的な変化には(1)スズメ,ムクドリ,ヒヨドリ,キジバトなど市街地でも生息することのできる種のみが記録される鳥類相から,それらとともに緑地に生息するコゲラ,メジロやハクセキレイなども記録される鳥類相へと変化した区画と,(2)ヒバリ,モズなど草地に依存する種が記録される鳥類相から市街地の鳥類相などへ変化した区画が多かった.また,(3)チドリ類,オオヨシキリ,セッカなどの水域に依存する種が記録される区画の減少や(4)夏鳥の多い山地の鳥類相だった区画の減少があった.

    植生の変化をみてみると,(1)の鳥類相の変化がおきた場所では,緑地の増加が目立ち,(2)のおきた場所では,畑地や草地の減少が目立った.(3)がおきた場所では畑地や水田の減少が目立ったが,畑や水田は一部の種を除き,水域依存の鳥類の主要な生息地ではなく,鳥類相の変化と環境の変化との関係は不明確で,(4)がおきた場所では大きな環境の変化は認められなかった.

    東京でみられたこれらの大きな鳥類相の変化のうち,(1)については緑地の増加と住宅地での樹木の生長による環境の改善と鳥類の都市環境への適応が原因と考えられ,(2)については畑地や草地の減少が鳥類相の変化をもたらしたと考えられる.(3)については植生図に示されないような水辺の微環境の変化やレジャーなどの人による河川の利用圧の増大が原因の可能性があり,(4)については鳥類相の変化に夏鳥の減少がおよぼす影響が大きいので,調査地の植生変化ではなく,越冬地や中継地の植生変化が影響していることや,森林の面積といった量的な変化ではなく,荒廃化や食物である昆虫の減少など質的な変化が影響している可能性が考えられた.

樋口広芳・中根正敏・丸武志. 1993. メグロの行動圏とつがい. Strix 12: 23-33.

  1. 1983年3月から1984年12月にかけて,小笠原列島の母島でメグロの行動圏,つがい関係,なわばり,一腹卵数,営巣習性などを調査した.
  2. メグロの多くは,1年をとおして,安定した行動圏内でつがいで生活していた.つがいの相手は,一方が死なないかぎりかわらないようように思われた.
  3. なわばりは,繁殖期の行動圏の中に占められ,境界はきびしく防衛された.ただし,つがいの中にはなわばり行動を示さないものもいた.
  4. さえずりは繁殖期でもあまり聞かれず,つがいになっているものにとってはあまり重要でないように思われた.
  5. 造巣,抱卵,育雛は雌雄ともに行なった.一腹卵数は3または4個だった.いくつかのつがいは,1回目の繁殖に成功したのち2回目の繁殖を行なった.

藤田剛. 1993. 営巣場所によるツバメの繁殖成功度の違い−予報−. Strix 12: 35-39.

  1. ツバメについて,半閉鎖的な場所につくられた巣と,開放的な場所にある巣のあいだで巣立ちヒナ数に違いがあるかどうかを調べた.
  2. 半閉鎖的な場所の巣立ちヒナ数は平均3.30(±0.35)羽で,開放的な場所の平均1.24(±0.47)羽よりも,有意に多かった(Mann-Whitney U=86.5, z=-3.11, P=0.02).
  3. 半閉鎖的な場所での巣立ちヒナ数が多かったのは,捕食や遺棄など営巣の失敗が,少ないためだった(Fisherの正確確率検定 P=0.005).
  4. 以上の結果より,現在,ツバメが人工建築物を営巣場所として選好している理由のひとつとして,ツバメの営巣の失敗する率を低くする半閉鎖的な空間を,人工建築物が豊富にそなえていることが考えられた.

西出隆. 1993. 八郎潟干拓地におけるオオセッカの生態 3. 個体数変動とその変動要因. Strix 12: 41-52.

  1. 秋田県八郎潟干拓地で20年間(1973〜1992年)にわたってオオセッカMegalurus pryeriの調査を行ない,個体数の変動と生息環境の関係について検討した.
  2. 八郎潟干拓地20年間の個体数経年変化では,1973年の28羽から次第に増加し1977年をピ−クに減少し,その後は,1991年に13羽,1992年には6羽にまで減少した.
  3. 1976年から1982年まで,A40地区の生息密度は1.6羽/haから3.2羽/ha,平均で1.34羽/haと高密度で,個体数も安定していた.
  4. 確認された巣は133巣で,そのうち102巣で産卵が行なわれ,76.7%が巣立ちした.
  5. 巣は,1973年から1974年にかけて湿潤地帯に多かったが,1975年からは乾燥地帯に移行し,1981年以降,乾燥地帯に集中するようになった.
  6. 巣は、年に関係なく下草で多く確認され,ヨシでの巣は1980年から記録されておらず1979年ころからは,ススキでの巣が増加した.
  7. A40地区のオオセッカは,下草の豊富な環境を選好しており,1975年にイ・ヨシ・ススキ群落で確認された巣が54.8%,それに下草の多い2群落を加えると,96.8%,1979年も同じ2群落で全体の80.7%の巣が確認された.
  8. オオセッカは,植物群落と群落の境界付近を選好し,下草が豊富な場所であれば,乾燥した場所でも湿った場所でも生息していた.
  9. 八郎潟干拓地でのオオセッカの減少要因は,1)土壌の乾燥化による植物層の変化,2)高茎植物の密生と単一化,3)下層部の草本類の退化,4)湿地から乾燥地に移行過程のごく限られた微妙な環境の減少などがあげられる.

飯田知彦・田中晋. 1993. 広島県西部におけるヤツガシラの繁殖生態. Strix 12: 53-60.

  1. 1992年と1993年,広島県西部でヤツガシラの繁殖生態の調査を行なった.1992年と1993年のあいだにつがいの雄個体は入れ替わり雌も入れ替わった可能性が高い.
  2. 給餌頻度に日周性はみられなかった.育雛中期を過ぎると,1日の給餌回数は減少した.
  3. 育雛は雌雄で行なうが,ヒナが巣立ち始めると,巣に残ったヒナへの給餌は雄が行ない,雌雄の役割分担がみられた.
  4. 育雛中期から給餌の際に親が発声をすることが多くなり,また,巣立ち期には帰巣後すぐにヒナに食物を与えない行動や,巣の周囲での雄のさえずりが観察された.これらはヒナの巣立ちを促す行動と思われる.巣立ち期の給餌回数の大幅な減少も,同様な理由によるものと思われる.
  5. 1993年には,雌による巣内のフン捨て行動が観察された.
  6. 食物の40%以上はケラその他の地中性の動物であったが,地表性の動物も10%以上含まれていた.ヤツガシラは,繁殖地の状況に応じて,食物を有効に利用できるものと考えられる.
  7. 行動圏の面積は育雛の進行より変化したが,最終的には1992年,1993年平均で34.9haであった.
  8. 巣のごく周辺を除いて,ヤツガシラは行動圏内に入ってくるほかの個体を排除しなかった.隣接する行動圏を持つ雄が,調査地の巣に対して興味を示したが,これは新たな繁殖可能地やつがい相手の探索行動である可能性がある.

村松俊幸. 1993. 工業埋立地における非繁殖期のワシタカ類の捕食行動と優劣関係. Strix 12: 61-71.

1987年を除く1980〜1991年の8月〜翌4月にかけて,福井臨海工業地帯において,非繁殖期のワシタカ類の捕食行動,優劣関係および排他性を調査した.おもに捕食行動が観察された種とその食性は,ミサゴが魚類,チョウゲンボウがネズミ類,コチョウゲンボウが小鳥類,ハヤブサとオジロワシがカモ類であった.捕獲行動開始時の行動は,「飛翔型」と「とまり型」にわけられ,おもに「飛翔型」が多かった種は,ハヤブサ,チョウゲンボウ,ミサゴ,オジロワシであり,「とまり型」が多かった種は,コチョウゲンボウであった.捕獲行動と摂食行動が行なわれた場所は,ハヤブサ,チョウゲンボウ,コチョウゲンボウが同一環境であったが,オジロワシとミサゴでは,異なった環境への食物の運搬が観察された.チョウゲンボウとコチョウゲンボウにおいては,小鳥類が多く渡った日にカワラケツメイの根元に,食物を貯蔵する行動が観察された.ワシタカ類およびカラス類の接近行動は,12種で計63回観察された.特徴的なものとして,オジロワシがハヤブサが捕らえた獲物を奪うなど優位であった行動と,チョウゲンボウとコチョウゲンボウの間で,コチョウゲンボウの雄の幼鳥が劣位であった行動が観察された.
摂食行動時に種間および種内の食物をめぐる争いが観察されたことから,開放地での摂食のためには,食物の遠隔地への運搬,逃避しながらの摂食,開放地から林内への運搬などの対応措置が必要なのであろう.このことは,非繁殖期のワシタカ類の生息には,餌の種類と量,種ごとの捕獲行動の型にあった環境が必要であること,また摂食場所として異なる環境を利用する種については,摂食する場所の確保が必要であることを示している.

藤田薫. 1993. シジュウカラの冬期の体重変化. Strix 12: 73-79.

  1. 1991〜92年と1992〜93年の冬期,シジュウカラの体重を調査し,体重に影響を及ぼす要因について考察し,体重が繁殖に影響するかどうかを調査した.
  2. 1月から3月にかけて,体重は減少する傾向にあった.
  3. 冬期の体重の減少は気温に関係しておらず,積雪量に影響を受けていた.2月から3月上旬にかけて,シジュウカラはつがいやなわばりの形成に時間をかける.その結果採食量が減るため,この時期体重が減少すると考えられた.
  4. 給餌場の影響による体重の違いは,認められなかった.
  5. 繁殖した個体は,冬期に体重の重い個体ではなかった.

植田睦之. 1993. 繁殖期にツミが捕食する獲物の季節変化−シジュウカラの被捕食率の変化とシジュウカラの巣立ち時期との関係−. Strix 12: 81-84.

繁殖期にツミが捕食する獲物の季節変化を1987〜1992年の6年間,東京都多摩地域で調査した.ツミはおもにスズメを捕食しているが5月中旬にはシジュウカラが有意に高頻度で捕食された.この時期はちょうどシジュウカラの巣立ちの時期にあたっており,全体の51.9%もの巣立ちがこの時期に集中していた.5月中旬以外の時期に関してはスズメがシジュウカラより有意に多く捕食されていたが,5月中旬においては,有意差はみられなかった.これらの結果は,ツミは繁殖期をとおしてスズメを選好して捕食しているが,シジュウカラの巣立ちビナが多く出現する時期のみ,シジュウカラを多く捕食するように選好性をかえていることを示している.シジュウカラの成鳥は,スズメに比べて動きが速く,木の茂みの中で行動しているため,スズメよりも捕食するのが困難と思われる.その結果,シジュウカラとの遭遇頻度の方が高いにもかかわらず,ツミはスズメを選好して捕食し,シジュウカラは選好されないのだろう.しかし,シジュウカラの幼鳥はまだ飛翔能力が十分発達しておらず,なおかつ大きな声で鳴いて目立つため,ツミが容易に捕食できることが予想される.そのため,巣立ちまもない幼鳥が多く出現する,シジュウカラの巣立ち時期に,ツミはシジュウカラを多く捕食するようになるのだろう.

井上勝巳. 1993. 春期に西へ渡るハイタカ属3種. Strix 12: 85-92.

佐田岬半島先端部において,春期に西へ移動するオオタカ,ツミ,ハイタカの実態を調査するため,1993年3月9日から4月13日までのあいだに30日間調査を行なった.そして以下のような結果をえた.

  1. 東から飛来して西へ移動するオオタカ,ツミ,ハイタカの3種,2086羽を確認した.また,西より飛来して東へ移動する同種を93羽確認した.
  2. 渡りは調査開始日より終了日まで記録された.飛来のピークは3月23日から4月3日にか けて記録され,最多の飛来数は219羽/日であった.大分県関崎では2月下旬と4月下旬の飛来が報告されたことから,渡りは調査期間の前後を含め長期に及ぶものと推察された.
  3. 晴天,曇天の天候と飛来数との関連はみられなかった.渡りは穏やかな天候時に多く 風が強い時には著しく減少する傾向があった.視界と飛来数の関連はみられなかったが,飛翔高度に影響を与えた.視界が悪いと飛翔高度が低くなる傾向があった.
  4. 渡りは10時から15時までに集中し,それ以前と以降については少ない傾向があった.

和田岳. 1993. 京都市賀茂川におけるユリカモメの個体数の季節変化と夏羽への移行. Strix 12: 93-100.

  1. 京都市賀茂川においてユリカモメの個体数の季節変化,および冬羽から夏羽への移行について調査した.
  2. 総個体数は10-12月に増加し,4-5月には減少した.1984-1985年と1987-1988年の2年には,総個体数は1月はじめに最大約2500羽を記録したのち,1月終わりから2月に大幅に減少することがあった.一方,ほかの3年には総個体数は2月はじめまで増加した後減少し,最大個体数は3000〜3500羽であった.
  3. 幼鳥の個体数が増加する時期は,成鳥よりも遅かった.幼鳥が占める割合は,11月に20%前後になる年があったが,12-1月は10%前後の低い値をとり,2-5月は30%前後へ増加した.
  4. 成鳥は渡去直前の4月の終わりには多くの個体が,ほぼ完全な夏羽になっていた.夏羽への移行はどの年も4月の前半に急速に進んだ.
  5. 幼鳥は,1987年に数羽がほぼ完全な夏羽(頭部の黒い個体)になったが,多くの個体は頭部の黒味がやや強くなる程度であった.
  6. 賀茂川におけるユリカモメの個体数変動には,渡りと越冬域内での移動という2つの要素が影響していると考えられる.成鳥と幼鳥とでは,越冬域内での移動パタ−ンが異なっている可能性がある.

不破茂・鶴添泰蔵・小園磨馬. 1993. 鹿児島金峰山におけるアカハラダカの渡りについて. Strix 12: 101-107.

  1. 1992年の鹿児島県金峰山におけるアカハラダカの秋の渡りを検討した.
  2. 観察は8月末から9月末まで毎日山頂で日の出から約6時間行なった.
  3. アカハラダカは日の出から約2時間後から山腹に沿って帆翔し,南に飛行した.
  4. アカハラダカの初認は9月5日で,終認は27日だった.渡りの最盛期は12日から17日でありこのあいだに約98%が観察された.
  5. アカハラダカの秋の渡りと気象配置には密接な関係があることが示された.
  6. アカハラダカは西日本を覆っている移動高気圧からの吹き出し気流を利用して渡っていると考えられた.

武下雅文・佐本一雄・林修. 1993. 福岡県曽根干潟におけるスグロカモメの越冬数の年変化と季節変化. Strix 12: 107-114.

曽根干潟におけるズグロカモメの越冬数は1976年から1977年の冬に観察されて以来,数羽から20羽程度で一定していたが,1987年から1988年の冬以降,急激に増加した.1992年から1993年の冬には213羽に達した.

村瀬美江. 1993. アメリカコハクチョウとコハクチョウのつがいおよび家族群の連続越冬記録−第W報−. Strix 12: 115-119.

アメリカコハクチョウとコハクチョウのつがいが6年連続して岩手県北上市の同一地点に渡来し,越冬した.

成末雅恵・内田博. 1993. 土地改良とサギ類の退行. Strix 12: 121-130.

水田を農業水利の発達段階から,素堀水路型水田とパイプライン型水田の2タイプにわけ,そこに生息するサギ類の環境利用と,サギ類の食物資源となる生物の生息状況について調べた.
農業水利などの発達による土地改良,すなわち水田の質としての乾田化や,構造としてのパイプライン化は,河川と水田との水循環を分断し,ドジョウ,ナマズ,ギンブナなどの魚類や,アメリカザリガニなどの甲殻類の生息しない水田を形成する要因となっていた.サギ類にとって繁殖期の食物資源として重要なこれら水生動物の減少は,サギ類の減少や退行を助長していると考えられた.
河川と水田間の水循環を回復させ,素堀水路を見直すなどの生態系を保全した水田整備を検討することが必要であろう

安藤義範・檜山謙一・野崎研. 1993. 隠岐群島間における森林性鳥類群集の比較. Strix 12: 131-138.

  1. 1992年5月,6月に隠岐群島においてラインセンサス法をもちいて繁殖期の森林性鳥類群集について定量調査を行なった.
  2. 隠岐群島はおもに島後,西ノ島,中ノ島,知夫里島の4島からなり,島後以外の3島は島前と呼ばれている.島後は多くの植生型を含み,植生は島前と比べると多様であった.島前の植生は西ノ島の一部に小規模の照葉樹林がみられる以外は,ほとんどがクロマツの植林からなっていた.
  3. 島後は他の島より多くの種が確認され,複数のクラスターにわかれたが,ヤマガラ,ウグイスを優占種とするセンサス区が最も多くみられた.
  4. 島前3島は1つのクラスターにまとめることができ,キジバト,ヒヨドリ,シジュウカラ,メジロ,カワラヒワの優占度が高かった.
  5. 島間で比較すると,コゲラ,オオアカゲラ,エナガ,ヤマガラなど種の欠落がみられた.

鈴木祥悟・由井正敏・作山宗樹. 1993. 飛鳥の森林性鳥類群集. Strix 12: 139-144.

山形県酒田市の飛島で,1991年から1993年にかけて繁殖期および冬期の森林性鳥類群集について,おもにラインセンサス法による調査を行なった.

  1. 繁殖期については,1991年から1993までの3年間,各々7月に実施したが,ヒヨドリ,メジロ,シジュウカラ,カワラヒワやウグイスが優占する鳥類群集を示し,各年間の群集組成は非常に類似していた.
  2. 調査した3年間を通して出現した繁殖陸鳥は16種であり,これまで知られている日本列島の各島の面積と繁殖陸鳥の関係に,ほぼ合致した.
  3. 冬期については,1992年1月に調査を行なったが,ヒガラ,シジュウカラやハシボソガラスが優占する鳥類群集になっていた.

金井裕・金連奎・林宏・桂千恵子・梁余・張躍文・魏鴻瀛・隋鳳仁. 1993. 遼寧双台河口国家級自然保護区の鳥類生息状況と生息環境の保全. Strix 12: 145-160.

1989年から1993年までの5年間,遼寧双台河口国家級自然保護区において,日中共同でラインセンサス法やテリトリーマッピング法など鳥類生息状況の調査法の研修を兼ねた調査とともに,タンチョウやオオセッカといった保護対策の必要な希少種を中心とした生息分布調査を行ない,調査で明らかになった保護区内での鳥類生息分布状況を基にして,保護区内の環境保全対策立案への考え方をまとめた.

柳川久. 1993. 北海道東部における鳥類の死因. Strix 12: 161-169.

鳥類の死因を明かにするために,北海道東部で1982年2月から1993年7月のあいだに集められた60種150羽の鳥類の死体を調べた.窓ガラスやその他の人工建造物への衝突死(70羽;46.6%)が最も重要な死因であり,次が交通事故(35羽;23.3%)であった.その他の死因は,衰弱死あるいは餓死11(7.3%),その他の事故死9(6.0%),ネコによる捕殺 7(4.7%),天敵による捕殺5(3.3%),不明13(8.6%)であった.衝突,交通事故,その他の人的事故により死亡する個体数は何種かの鳥類にとって重大な脅威となっていると思われる.これらの種類には,タンチョウ,シマフクロウ,オオタカ,ハイタカなどの絶滅危惧種,危急種,希少種が含まれている.

藤巻裕蔵. 1993. 北海道十勝地方におけるオシドリの生息状況. Strix 12: 171-176.

1978〜1993年に北海道十勝地方でオシドリの生息状況を調べた.春の渡来は4月中頃で,9月から10月にかけて越冬地にむけて移動する.おもな生息地は山間部の水域で,平野部では川幅のせまい支流や小さな沼である.約5×5kmの区画156か所における調査では,山間部28%,平野部19%の区画でオシドリが観察され,その際の個体数は,調査路2kmあたり1〜4羽であった.巣立ちは6月上旬で,子連れの雌は6,7月にみられ,雌1羽あたりの幼鳥数は6月に6.8±4.0羽(x±SD),7月に4.5±0.9羽であった.

平野小二郎. 1993. ツグミのねぐら入り行動とねぐら入りをうながす要因. Strix 12: 177-182.

  1. ツグミのねぐら入り行動をうながす要因を明らかにするため,1992年1月12日より同年4月30日までの合計76日間,長野県須坂市の郊外の田園地帯において,ねぐら入り飛翔を観察した.
  2. 調査した項目は,ねぐら入り飛翔をはじめたそのときの時刻,および照度,ねぐら入りするツグミの個体数,および集団の大きさである.
  3. ねぐら入りの行動は,まず樹上にあがり,5分から30分ほど羽ずくろいや休息をしていた.それから集団または単独でねぐらに向かうというものであった.このあいだひんぱんに鳴きかわしを行なっていた.
  4. ねぐら入り飛翔を単独でする場合と集団でする場合の観察個体数の比率は,12%と88%で,圧倒的に多くの個体が集団でねぐら入り飛翔を行なっていた.
  5. 照度がおよそ10,000lx.以下になった時点で,多くの集団ないし個体がねぐら入りをはじめた.
  6. 照度の変化率が-2,000〜0lx.の時点で,もっとも多くの群れないし個体がねぐら入りした.
  7. 日の入りまでの時間に注目すると,ねぐら入りする集団の観察回数は,日の入り60〜50分前が最も多く,個体数は,日の入り20〜10分前が最も多かった.

平野小二郎. 1993. 山里におけるツグミのねぐらとその環境. Strix 12: 183-187.

  1. 長野県須坂市の南部に位置する妙徳山(最高点の標高1293.5m)の北側斜面でのツグミのねぐら場所および,そこを利用する個体数を調べた.
  2. 観察期間は1993年1月11日から同年5月4日までであり,観察されたねぐらの総数は87ヵ所,観察総個体数は338羽であった.
  3. ねぐらは,規模では5羽未満が63か所(73%),場所では山地中腹の標高900m付近が39か所(45%),植生別では雑木林が33か所(38%),利用個体数は山麓と山地中腹がほぼ同じで112羽(33%)と115羽(34%)でもっとも多かった.

武下雅文. 1993. 兵庫県西部におけるイワツバメの営巣記録. Strix 12: 189-191.

兵庫県西部において主要3河川の上中流域の477の橋梁を調査し,96の橋梁でイワツバメの営巣を確認した.営巣は桁下に壁面部があるH鋼をしようしたRC橋に最も多く集中しており,鉄桁の橋梁にはほとんどみられなかった.橋梁側面の橋台や橋脚部への営巣はきわめて少なかった.

矢作英三. 1993. 箱根地方におけるシジュウカラ類の巣箱の利用状況のつい. Strix 12: 193-199.

  1. 神奈川県箱根町の箱根樹木園で,シジュウカラ類の巣箱の利用状況を調査した.
  2. 巣箱の総架設数は660個で,シジュウカラ類の利用率は54.7%(361/660)であった.利用した種が判明した巣箱は357個で,その内訳はヤマガラが129個,シジュウカラが224個,ヒガラが4個であった.
  3. 敷地境界付近に架設した巣箱は,それ以外の巣箱より利用率が高く,特にヤマガラでその傾向が強かった.
  4. ヤマガラは落葉広葉樹林に架設した巣箱を利用することが多く,シジュウカラはヤマガラより針葉樹林に架設した巣箱を利用する傾向があった.
  5. 明るい芝生地に架設した巣箱は,ヤマガラよりシジュウカラのほうがよく利用する傾向があった.

峯岸典雄. 1993. 巣箱の穴の大きさの違いによるシジュウカラ類とスズメの使用状況の違い. Strix 12: 201-204.

  1. 日本全国に散在する1,392個の30mm穴巣箱の穴の直径寸法を測定した。
  2. シジュウカラ類のみでスズメのいないコース,また,大部分がスズメのコースでは,その使用にあたって両者とも,穴の直径に関係なく使用していた。
  3. シジュウカラ類,スズメが混在するコースでは,スズメが使用しやすい穴の直径の巣箱を使用し,シジュウカラ類がその他の寸法の巣箱を使用する傾向が認められた。
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