カワウの生態と調査 カワウの生態と基本的な調査について解説します。
 
 
もくじ
生態編
  カワウの形態
  分布と生息環境
  ねぐら・コロニー
  採食
  環境汚染の影響
  物質循環の役割
  行動圏
  生息状況の変遷
     
調査編
  ねぐら個体数調査
  繁殖状況調査
  河川飛来調査
  移動調査
カラーリング標識による移動調査
 現在東京、千葉、静岡、愛知、滋賀、兵庫において、学術研究目的で毎年巣立ち直前のカワウの巣内ヒナを手取りで捕獲し、足環をつけて標識する調査が行われている。この調査では環境省鳥類標識調査用金属リングの他に、個体識別用のカラーリングを装着している。金属リングは回収されなければ個体識別は難しいが、カラーリングに刻印した記号は、野外でも双眼鏡や望遠鏡によって確認することができる。標識を観察した記録が多く集まれば、コロニーからの移動分散状況や行動圏、生存期間などの情報が得られる。

 関東の3ヶ所のコロニー(東京都第六台場、千葉県行徳鳥獣保護区、千葉県小櫃川河口)において、カワウ標識調査グループと(財)日本野鳥の会自然保護室は共同で巣立ち雛へのカラーリングによる標識を行なってきた。カラーリングはどのコロニーも黄色に黒い刻印のものを用いている。黄色のカラーリングを付けているのが、(1)左足だと第六台場、(2)右足だと行徳鳥獣保護区、または小櫃川河口となっている(図)。また、カラーリングの記号はおおよその放鳥年も分かるようになっている。
 第六台場で標識したカワウは東京湾沿岸や神奈川県で多く観察されており、行徳鳥獣保護区で標識したカワウは関東の東側で多く観察されるという傾向が見えてきている。ねぐらとねぐらの間には個体の交流が多いところとそうでないところがあるのかも知れない。足環標識による調査の精度は、観察努力量によって強く影響される。

図
関東地方でのカラーリングによる標識(出生)地の識別。小櫃川河口では左足に黄色のカラーリング、右足に赤いコイルリングを付けているものもいる(2005年放鳥のものまで)。図示していないが、全ての場所においてカラーリングが付いていない方の足に環境省鳥類標識調査用金属リングを付けている。(原画:miyasaka 一部改変:高木憲太郎)

 カラーリング識別リーフレットはこちらからダウンロードできます。

 この調査に関する野鳥誌記事は、こちら。