カワウの生態と調査 カワウの生態と基本的な調査について解説します。
 
 
もくじ
生態編
  カワウの形態
  分布と生息環境
  ねぐら・コロニー
  採食
  環境汚染の影響
  物質循環の役割
  行動圏
  生息状況の変遷
     
調査編
  ねぐら個体数調査
  繁殖状況調査
  河川飛来調査
  移動調査
物質循環の役割
 カワウは、魚類が体内に取り込んだ水中の栄養塩類を魚を捕食することを通して外に持ち出す。結果的に水中の富栄養化を抑制する働きがある。また、カワウはねぐらや巣において、排泄物を落とすことにより、水中から取り出した栄養塩類を重力に逆らって水中から陸上にもたらす。ねぐら・コロニーの表層土は天然の肥料として活用されていた文化がかつては存在した。
 短期的に見ると、カワウは造巣のための枝折りや糞で樹勢を弱らせ、土壌を変成させるなどの働きをするが、長期的に見ると、森林の更新のサイクルの中では、土壌を肥沃にして林床に日照をもたらすなど、林を育てる働きもしている。このようにカワウは、水域生態系と陸域生態系の物質循環を連結し、湿地生態系と森林生態系の双方で重要な働きを担っている。

図
カワウの物質循環における役割(原画:miyasaka 一部改変:高木憲太郎)