野鳥の保護に関係する主な法律や条約

2023年4月現在

鳥獣保護管理法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)

(平成14年7月12日)

鳥類・哺乳類など鳥獣の保護及び管理を図るための事業の実施と、狩猟の適正化について定めた法律。捕獲や狩猟の制限、飼育や販売の規制、鳥獣保護区の設定や整備等について決められています。許可なく野鳥を捕まえたり飼ったりすると、この法により罰せられます。

登録狩猟

原則として狩猟免許が必要で、カスミ網、とりもち、矢等は禁止。期間は11/15~2/15(北海道では10/1~1/31。青森、秋田、山形各県の狩猟鳥カモ類11種は11/1~1/31)。
対象種は哺乳類20種、鳥類は以下の26種;
カワウ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、クロガモ、エゾライチョウ、ヤマドリ(亜種コシジロヤマドリを除く)、キジ(コウライキジを含む)、コジュケイ、ヤマシギ、タシギ、キジバト、ヒヨドリ、ニュウナイスズメ、スズメ、ムクドリ、ミヤマガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラス

鳥獣保護区

国や都道府県が指定し、調査、管理を行う。狩猟は禁止。特別保護地区では建築、埋立て、伐採等は許可制。

その他の捕獲(学術研究、有害鳥獣捕獲)

都道府県知事(一部市町村長)の許可が必要。政令で定める希少鳥獣、国指定鳥獣保護区内、カスミ網を使う場合は環境大臣の許可が必要。

管理捕獲

国が定めた指定管理鳥獣(ニホンジカ、イノシシ)の被害を防ぐため、都道府県および国が計画を立てて自ら捕獲等を行う事業。

飼育

野鳥をペット用に飼うのは原則禁止。しかし一部都府県では知事の判断で、メジロのみ1世帯1羽に限って知事か市町村長が許可を出しているところがあります。2016年以降飼養のための捕獲は原則不許可。また、毎年、飼養登録証の更新が必要です。

鳥獣保護管理事業計画

国の指針に沿って都道府県は5ヵ年の保護計画を立て、鳥獣保護事業を実施します。2017年4月より第12次の計画期間となります。
★もし違法な狩猟、捕獲、飼育を見つけたら、都道府県庁の鳥獣保護担当部署や警察署(110番通報、または生活安全課)に、また傷病鳥の保護は都道府県庁の鳥獣保護担当部署にご連絡、ご相談ください。
都道府県の連絡先リスト

種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)

野生動植物の種の保存を図ることにより良好な自然環境を保全することを目的とする法律。国内希少野生動植物種と国際希少野生動植物種を指定、個体(剥製などの製品を含む)の売買、譲渡、輸出入を禁止し、また国内希少野生動植物種のための生息地等保護区の指定、土地所有者の義務、保護増殖事業について定めています。また、里山のような二次的環境に生息する種を対象とした特定第二種国内希少野生動植物も定められた。環境省のレッドデータブックは、この法律の科学的根拠とするために作成されます。国内希少野生動植物種の指定について、国民からの提案制度もあります。

文化財保護法

我が国の貴重な国民的財産である文化財(天然記念物など)を保存し、活用をはかることによって国民の文化的向上と世界文化の進歩に貢献することを目的としています。国や自治体は学術上価値の高い動植物・地質鉱物を天然記念物に、特に重要なものは特別天然記念物に指定します。野鳥で国指定の天然記念物の種は19種、特別天然記念物は9種あり、他に集団繁殖地、集団渡来地等も指定されています。国は文化庁、地方自治体は教育委員会が担当します。

生物多様性基本法

生物多様性条約(後述)を踏まえ、長い進化の歴史の結果、地球上に様々な生物の種や生態系や遺伝子が関わりあって存在すること(生物多様性)の重要性を認め、その保全と持続可能な利用について、国土や自然資源の利用に際しては保全を基本として行うといった基本原則と、国や地方自治体の生物多様性戦略の策定等の施策の基本について定めています。当会を含む自然保護団体の活動の末、2008年に制定されました。

自然公園法

すぐれた自然の風景地を自然公園に指定して保護、利用の増進をはかり、国民の保健、休養、教化に役立てるための法律。環境大臣が指定する自然公園のうち国立公園は環境省により、また国定公園は都道府県により管理されます。また、条例によって都道府県立自然公園の制度もあります。これらは「特別地域」「普通地域」といった指定区分に応じ開発行為が規制されます。2009年の改定で、「海域公園地区」の制度が設けられ、干潟や岩礁を含めることが可能になりました。

自然環境保全法

自然環境の保全を総合的に進めるための事項を定めた法律。国はこの法律に基き、野生動物等に関する全国調査(自然環境保全基礎調査、通称「緑の国勢調査」)を行います。また原生的な自然環境で自然公園を除く一定面積以上の地域を「自然環境保全地域」、「原生自然環境保全地域」、「沖合海底自然環境保全地域」に指定し、この保全のための事業計画を立て、また地域内の一定の行為を制限しています。この法律に基づいて都道府県でも条例で都道府県自然環境保全地域を指定している。

環境影響評価法

一定規模以上の開発を行う際に、環境への影響を極力小さくし保全措置を決めるための環境影響評価(アセスメント)の手続きを定めた法律。事業を行う前に、事業者は事前調査、影響予測を行って、保全措置を立案し、これに市民や行政が意見を述べる等の手続きを定めています。2011年の改正で、配慮書の手続きが組み込まれました。

その他野鳥の生息地の管理に関する法律

河川法 河川の治水、利水、環境の整備と保全について定めた法律。河川整備にあたって動植物の生息地の保全を考慮し、河川敷への車の乗入れ禁止等ができます。
海岸法にも同様の規定があります。こうした保全措置については、国土交通省の河川事務所または都道府県の土木担当部署に問い合わせください。

国際条約

生物多様性条約(生物の多様性に関する条約)

1992年の地球サミットで採択された、自然環境に関する最も重要な条約。「地球に生きるいのちの条約」とも呼ばれ、同時に採択された地球温暖化の防止のための「気候変動枠組み条約」とは、双子の関係と言われています。生物の多様性の保全と持続可能な利用、遺伝資源の公正・衡平な利益分配について定めています。この条約の第10回締約国会議(COP10)は2010年10月、名古屋市で開催され、2020年までの行動目標として愛知目標が建てられています。

ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約)

希少な野生動植物が国際取引によって絶滅するのを防ぐために、指定種の輸出入を規制する条約です。「種の保存法」の国際希少野生動植物種は、この条約に対応するための国内法で定めたものです。

ラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)

国際協力により湿地とその資源や機能を保全し賢明な利用を進めるためにできた条約。加盟国は特に重要な湿地を登録して保全を行います。2010年現在、国内にはウトナイ湖(北海道)、荒尾干潟(熊本県)、片野鴨池(石川県)、藤前干潟(愛知県)等52ヶ所の条約に登録された湿地があります。

二国間渡り鳥条約・協定

日本と渡り鳥が行き来する国との間で、捕獲の禁止、輸出入の規制、共同研究等により渡り鳥の保護を進めるための条約。アメリカ、ロシア、オーストラリア、中華人民共和国の4ヶ国との間に結ばれています。

正式名称は以下のとおりです。

  • 渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する日本政府とアメリカ合衆国政府との間の条約(日米渡り鳥条約)
  • 渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその生息環境の保護に関する日本政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の条約(日ソ渡り鳥条約)
    ※現在はロシアがソ連の結んだ条約を承継しているが名称は変更されていない。
  • 渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する日本政府とオーストラリア政府との間の協定(日豪渡り鳥協定)
  • 渡り鳥及びその生息環境の保護に関する日本政府と中華人民共和国政府との間の協定(日中渡り鳥協定)
  • 韓国との間には、渡り鳥保護のための条約・協定はないが、日韓環境保護協力協定のもとに、「日韓渡り鳥保護協力会合」が開催されています。

世界遺産条約

顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産を損傷や破壊などから保護することを目的とした条約。日本では「知床半島」「白神山地」「屋久島」「小笠原」が自然遺産として世界遺産リストに登録されています。

日本が未加入の環境関連の条約

  • ボン条約(移動性野生動物種の保全に関する条約)

 渡り鳥や鯨類、ウミガメなど国境を超えて移動する野生動物の保護のための条約。1979年にドイツのボンで採択され、現在124カ国が加盟していますが、日本は未締結です。

  • オーフス条約(環境に関する、情報へのアクセス、意思決定における市民参加、司法へのアクセスに関する条約)

 環境に関する情報へのアクセス、政策決定への市民の参加、司法への利用の3つの柱で、環境分野での市民参加を促すもの2001年に発行しているが日本は未締結です。