(仮称)輪島市南志見風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書

別紙
令和3年3月1日

南志見風力発電合同会社
代表社員 一般社団法人エナジーエクスプローラー
職務執行者 野坂 照光 様

日本野鳥の会石川
代表 中村 正男
〒929-1125 石川県かほく市宇野気1-71

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一 (公印省略)
〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル

(仮称)輪島市南志見風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書

現在、貴社が意見募集をしている(仮称)輪島市南志見風力発電事業に係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対して、環境影響評価法第8条に基づき、鳥類の保全の見地から下記のとおり意見を述べます。

1.累積的影響評価の実施の必要性について
(1)(仮称)深見町ウィンドファーム事業との間の累積的影響について

方法書に示されている対象事業実施区域(以下、計画地という)は、令和2年8月26日より公告縦覧されていた他社による(仮称)深見町ウィンドファーム事業(以下、重複他事業という)の計画段階環境配慮書(以下、配慮書という)にある事業実施想定区域と大きく重複しています。ほぼ同じ場所に、異なる事業者の風力発電施設(以下、風車という)が建設されることは一般的には想定し難いですが、現段階で計画地が重複している以上、貴社は重複している他事業の事業者と協力、または情報の共有を図りながら累積的環境影響評価を実施し、影響の回避・低減策を講じなければ、輻輳する風車の存在やその設置工事により、生態系への影響や鳥類のバードストライク、および障壁影響を含む生息地放棄などの重大な影響が生じる可能性があります。

貴社が作成した配慮書に対し、私ども2団体が令和2年7月30日付で提出した意見書では、能登半島には多くの風力発電所や計画中の風力発電事業があり、累積的環境影響評価の実施が必要と述べました。しかし、方法書には累積的環境影響評価に関する具体的な方針や評価手法が記載されておらず、不十分な内容となっています。計画地が重複することにより生じる鳥類をはじめとする自然環境への重大な影響を回避するための方法等が示されない限り、本事業は実施すべきではありません。

(2)計画地周辺に多く存在する他事業との間の累積的影響について

計画地の周辺には(仮称)深見町ウィンドファーム事業以外にも、下記のように既設、建設中、計画中の事業(以下、他事業という)が数多く存在します。貴社は他事業の事業者と協力、または情報の共有を図りながら累積的環境影響評価を実施し、能登半島北部全体における鳥類や自然環境への影響の回避・低減策を講じなければ、輻輳する風車の存在やその設置工事により、生態系への影響や鳥類のバードストライクおよび障壁影響を含む生息地放棄などの重大な影響が能登半島北部全体で生じる可能性があります。

しかし、方法書には累積的影響評価に関する具体的な方針や考え方、評価手法等が記載されておらず、不十分な内容となっています。貴社は海外事例を参考にするなどして累積的影響の予測および評価を行い、計画地の周辺に他事業が数多く存在することにより生じる鳥類をはじめとする自然環境への重大な影響を回避するための方針や方法を示すべきです。また、風車の運転開始後には事後調査を行い、その結果を公表すべきです。事後調査を実施すること、また、その具体的な手法等を記載できない限り、本事業の規模を縮小するか、計画を撤回すべきです。

【計画地周辺の他事業】

  • 既設:輪島もんぜん市民風車(1基)、輪島コミュニティウインドファーム(10基)、珠洲風力発電(30基)
  • 計画中:(仮称) 輪島ウィンドファーム事業(最大21基)、(仮称) 宝立ウィンドファーム事業(最大15基)
2.鳥類調査の方法等について

【表 6.2.2-14(1)~(4) 動物に係る調査、予測及び評価の手法】、【表 6.2.2-15(1)~(2) 動物調査項目及び内容等】に記載されている内容について、下記のように意見を述べます。

  • 計画地全体はKBA(Key Biodiversity Area)に含まれています。そのため、貴社は風車の建設により発生する土砂の扱いには十分留意し、土砂流出等により、ホクリクサンショウウオの生息地をはじめ、地域の生態系や、鳥類を含めた地域の生物多様性に影響を与えることのないよう、事業を計画、実施すべきです。
  • 鳥類の繁殖状況や渡り鳥の渡来・通過・渡去の状況は年変動が大きいことは既知のことです。貴社はこの年変動も考慮して、鳥類調査全般の実施期間は少なくとも2年間実施する必要があります。
  • 一般鳥類調査のうちスポットセンサス法による調査と任意観察調査は、「4回(春季・夏季・秋季・冬季)」実施するとあります。しかし、方法書には具体的な調査頻度が記載されていません。そのため貴社は、各季の中でどのくらいの回数で調査を実施する予定なのかを記載し、それが適切であるかどうか専門家等の意見を聞くべきです。私ども2団体としては、現地の鳥類の状況を詳しく把握するために、繁殖期(5~6月)は調査地において出現種数が飽和するまで実施し、それ以外の時期は各月1~2回程度の調査が必要と考えます。
  • 貴社は、希少猛禽類調査および渡り鳥調査のための観察地点からの視野を示す視野図を作成し、観察地点の設置位置の妥当性を検討すべきです。希少猛禽類調査および渡り鳥調査においては、各観察地点からの視野が重なって計画地全体を覆うようになっている状態で調査を実施し、影響を評価すべきです。
  • 渡り鳥調査において、夜間にレーダー調査を「春季、秋季に各1回、1地点」で実施するとありますが、この調査内容では不十分であり、頻度および調査地点を増やす必要があります。あわせて、夜間録音による調査も実施するなどして、計画地における渡り鳥の利用状況等を詳細に把握したうえで影響を評価すべきです。
  • 希少猛禽類調査では、計画地とその周辺における希少猛禽類のペアの生息および繁殖状況をより適切かつ十分に把握するために、定点観察法だけではなく、適宜、移動観察(早朝の声による確認など)を交えるなど、対象種や環境に合わせて柔軟に調査を実施すべきです。
  • 希少猛禽類調査および渡り鳥調査では、鳥類の飛翔位置を正確に把握するため、レーザーレンジファインダー等の機器を使用すべきです。
3.アセス図書の縦覧方法について

貴社が作成した方法書は、Internet Explorer以外のブラウザでも閲覧可能ですが、配慮書を含め貴社が作成したアセス図書がダウンロードや印刷できないのは、著作権者である貴社の意向によるものです。しかし、パソコン上にダウンロードおよび印刷して閲覧できないことは非常に不便であることから、貴社は利用者から申請があれば、ダウンロードおよび印刷を可能にすべきです。

今回は、貴社のアセス図書の縦覧期間が意見書の提出期限前に終了していますが、利用者の利便性のために、また、環境省からの依頼に応じて、意見書の募集期間中および意見募集期間終了後もインターネットで閲覧できるようにしていただくことを要望いたします。

以上