プレスリリース 2015.11.13

2015年11月13日

四国地方に飛来した絶滅の恐れのあるナベヅル、マナヅルの緊急保護のため、
四国4県に要望書を提出しました

 本年10月下旬より四国地方に絶滅の恐れのあるナベヅルが150羽以上(11/11 約240)飛来しています。このような規模の集団渡来は稀であり、越冬地保全が叫ばれている昨今、その保護対策が急務であることから、四国4県に対して、

  1. 飛来地での銃猟、河川への夜間の立入り、カメラマンや見物客の過度の接近防止対策などについての協力
  2. 地元猟友会、内水面漁業組合連合等関係者への周知
    を要請しました。

(理 由)
 ナベヅルは、かつては全国に飛来していましたが、乱獲や圃場整備等による湿田の減少等によって、現在は国内外でも非常に限られた地域にしか飛来していません。鹿児島県出水地方では保護施策により1万羽以上が越冬するようになりましたが、世界のナベヅルの約9割が集中していることにより、重篤な感染症が発生した場合に絶滅の危険があることが問題となっています。環境省や自治体、自然保護団体等によって、国内で複数箇所の越冬地の形成が進められていますが、警戒心が強いため、飛来しても、銃猟による銃声や落ち鮎漁等での河川への夜間の立入り、カメラマンや見物客の過度の接近により定着が阻害され、ほとんど越冬に至っていないのが現状です。
 ツルは寿命が長く、越冬できた場所は学習すると考えられています。今回の越冬が成功すれば、大規模な新しい越冬地が形成される可能性が高まります。

【要望書提出先】
徳島県、香川県、愛媛県、高知県

【要望団体】

  • 公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博、会員・サポーター数約5万人)
  • 公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン、事務局:東京、会長:徳川恒孝、個人サポーター:約4万3千人、法人サポーター:約420社)
  • 公益財団法人日本自然保護協会(事務局:東京、理事長:亀山章、会員数2万4千人)
  • 日本ツル・コウノトリネットワーク(会長:金井裕)
  • 四国ツル・コウノトリ保護ネットワーク(代表:中村滝男)

【要望書】
別紙参照

【本件問い合わせ】
(公財)日本野鳥の会自然保護室 担当:伊藤加奈、葉山政治
〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
TEL/FAX:03-5436-2633/2635 Eメール:[email protected](伊藤) http://www.wbsj.org


平成27年11月6日

徳島県知事 飯泉嘉門様
香川県知事 浜田恵造様
愛媛県知事 中村時広様
高知県知事 尾﨑正直様

公益財団法人日本野鳥の会 理事長 佐藤 仁志
公益財団法人日本自然保護協会 理事長 亀山 章
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン 会長 徳川 恒孝
日本ツル・コウノトリネットワーク    会長 金井 裕
四国ツル・コウノトリ保護ネットワーク 代表 中村 滝男

四国に飛来するツル類の緊急保護対策について

 平素から、ツル類など野鳥の保護につきましては、ご理解とご協力を賜り深謝しております。
 すでにご承知のこととは思いますが、本年10月下旬より四国各地でナベヅルの飛来が多数確認されており、高知県四万十川下流域では現在150羽以上の大規模な群れがみられます。このような規模の集団渡来は稀であり、越冬地保全が叫ばれている昨今、下記の理由によりその保護対策が急務と考えます。
 そこで、飛来地での銃猟や河川への夜間の立入り、カメラマンや見物客の過度の接近防止対策などについて、ご理解とご協力をいただきますよう緊急に要請いたします。
 つきましては、狩猟期の直前に唐突なお願いで大変恐縮ですが、別紙に示す配慮事項について、貴県下の猟友会、内水面漁業協同組合、関係機関等に周知していただきたく、お願い申し上げます。なお、落ち鮎漁などのため、現に使用されているツルのねぐらを保全することが困難な場合、代替地の保全整備等について、地域の実情に詳しい自然保護団体等と協議して取り組んでいただきますよう、併せてお願いいたします。

 ナベヅルは、冬季に日本の水田地帯に飛来する絶滅の恐れのある鳥類で、かつては全国に飛来していましたが、乱獲や圃場整備等による湿田の減少等によって、現在は国内外でも非常に限られた地域にしか飛来していません。鹿児島県出水地方では長年継続した保護施策により、1万羽以上が越冬するようになりましたが、世界のナベヅルの約9割が当地に集中していることにより、重篤な感染症が発生した場合に絶滅の恐れが高いことなどから、一極集中は大きな問題となっています。
 そこで、出水地方以外に複数箇所の越冬地を確保することが重要との観点から、環境省や関係自治体、自然保護団体等が協力して新たな越冬地形成にむけて努力しているところです。しかしながら、非常に警戒心が強いため、飛来があっても銃猟による銃声や、落ち鮎漁等での河川への夜間の立入り、カメラマンや見物客の過度の接近等により定着が阻害され、ほとんど越冬には至っていないのが現状です。特に、飛来して間もない期間は警戒心が強くなります。
 ツル類は寿命が長く、一度越冬できた場所は学習すると考えられています。これほどの大規模な群れの飛来は過去にほとんど例がないため、今回の越冬が成功すれば、国内最大の自然な越冬地が形成されることになります。

(添付資料)
・別紙 ツル類保護に必要な配慮事項と対象地域

【問合せ】
公益財団法人日本野鳥の会自然保護室 葉山政治、伊藤加奈
東京都品川区西五反田3-9-23
電話/Fax:03-5436-2633/2635 Eメール:[email protected]

【四国のツル情報についての問合せ】四国ツル・コウノトリ保護ネットワーク 代表 中村滝男
〒781-0270 高知市長浜4964-11 公益社団法人生態系トラスト協会内
電話/Fax:088-841-5400 Eメール:[email protected]


ツル類保護に必要な配慮事項と対象地域

1.配慮事項
(1)銃猟の自粛
銃声に驚いて飛去してしまうので、ツルの飛来地域周辺での銃猟はご遠慮ください。

(2)ねぐらとなる河川、ため池等への立入りの自粛
 夜間(日の入~日の出1時間後)はツルがねぐらとして利用していますので、河川敷や中州に立ち入らないでください。

(3)その他
 ツルは非常に警戒心が強いので、ツルを見かけたら200~300mの距離を保つようにしてください。200~300m以内でツルと出会ってしまったら、車の場合は、そのまま通りすぎてください。ツルを見ようとして止まったり、車内から出ると、ツルが警戒して飛び去ることがあります。徒歩の場合は、可能であれば迂回を、無理であれば走ったり、急な動きはせずに、通行してください。

2.対象地域
(1)徳島県
・海陽町海部川下流域及び周辺水田
・阿南市那須川下流域及び周辺水田
・阿波市吉野川流域及び周辺水田

(2)香川県
・丸亀市南部ため池群及び周辺水田
・三豊市高瀬川河口域及び周辺水田(三豊海岸)
・高松市南部ため池群及び周辺水田

(3)愛媛県
・四国中央市関川河口域及び周辺の水田地帯
・西条市加茂川・中山川河口域及び周辺の水田地帯
・愛南町広見
・西予市宇和町宇和盆地

(4)高知県
・四万十市四万十川下流域、中筋川下流域及び周辺の水田地帯
・宿毛市小筑紫町福良川下流域及び周辺の水田地帯
・南国市及び香南市物部川下流域及び周辺の水田地帯

※上記地域以外にツル類が飛来した場合はこの限りではありません。
※飛来地の詳細につきましては、下記までお問い合わせください。

【各地のツル情報の問合せ】
・日本野鳥の会徳島県支部(徳島県)
 電話:0886-33-0180 Fax:0886-32-0170
・日本野鳥の会香川県支部(香川県)
 電話:090-9458-4414(矢本)
・日本野鳥の会愛媛(愛媛県)
 電話/Fax: 089-923-3081
・四国ツル・コウノトリ保護ネットワーク(高知県)
 電話/Fax:088-841-5400 Eメール:[email protected]

3.期間
 2015年11月~2016年3月末

4.ナベヅル、マナヅルについて
(1)ナベヅル(Grus monacha)
 ロシア南東部、中国東北部の高原の湿地帯で繁殖する。つがいごとになわばりをもち、最大2個の卵を産む。秋になると、その年に生まれた幼鳥と共に西日本、韓国南部の水田地帯に渡り、越冬する。日本には、10月~3月に渡来する。
 越冬地では、主に穀類の落ち穂や植物の種子、昆虫、小型の水生生物を食べる。開けた空間を好むので、干拓地のように広い水田地帯が多いが、周南市八代のような盆地の水田も利用する。
 基本的に冬も家族単位でなわばりをもって行動する。環境条件によって数十羽の群れを形成する場合もある。夜間は、水深10~20センチ程度の河川の中州や干潟の干出部、湿地、ため池等でねぐらをとる。



図1 ナベヅル 成鳥

図2 ナベヅルの家族(左から幼鳥、成、成、幼)

・全長 約100㎝
・世界の推定個体数 約12,000羽
・日本における主な生息地
 鹿児島県出水市(約10,000羽)
 長崎県諫早市 (約40羽)
 山口県周南市八代(約10羽)
・IUCNレッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
・環境省レッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
・日ロ渡り鳥条約
・日中渡り鳥協定
・ワシントン条約附属書Ⅰ
・種の保存法 国際希少野生動植物種
・文化財保護法 特別天然記念物
「鹿児島県のツルおよびその渡来地」
「八代のツルおよびその渡来地」


(2)マナヅル (Grus vipio)
 ロシア、中国、モンゴルの国境を流れるアムール川やウスリー川流域の湿原で繁殖する。越冬地は、西日本、朝鮮半島の非武装地帯、中国南部の湖沼。日本には、11月~2月に渡来する。開けた環境を好むため、干拓地のように広い水田地帯に飛来する。冬の生態はナベヅルと同様。両種がゆるやかな群れを作り、一緒に行動することがある。ナベヅルより湿潤な環境を好むとされている。


図3 マナヅル 成鳥

図4 マナヅルの家族(左から成鳥、幼、成、幼)
(環境省資料より抜粋)

・全長 約127㎝
・世界の推定個体数 約6,000羽
・日本における主な生息地
 鹿児島県出水市(約3,000~3,500)
 長崎県諫早市(約20羽)
 熊本県玉名市(約30羽)
 佐賀県伊万里市(10羽以下)
・IUCNレッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
・環境省レッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
・日ロ渡り鳥条約
・日中渡り鳥協定
・ワシントン条約附属書Ⅰ
・種の保存法 国際希少野生動植物種
・文化財保護法 特別天然記念物
「鹿児島県のツルおよびその渡来地」


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