プレスリリース 2011.12.15

2011年12月15日

釧路湿原周辺部でICTを活用したタンチョウ生息地の保全調査を実施
富士通株式会社のICT技術(マルチセンシング・ネットワーク)を
日本野鳥の会が進めるタンチョウ保護活動に活用

公益財団法人日本野鳥の会(東京都品川区 会長:柳生博 以下、日本野鳥の会)は、富士通株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本 正已、以下、富士通)と連携し、北海道鶴居村の日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリにおいて、富士通が開発したマルチセンシング・ネットワーク(注1)を活用した越冬期のタンチョウ生息地の保全調査のための実証実験を開始します。日本野鳥の会が整備したタンチョウの自然採食地にマルチセンシング・ユニットを設置し、撮影した画像を無線を用いたデータ転送で鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリに送信することにより、越冬期におけるタンチョウの自然採食地の有効性の確認に役立てることが期待できます。

背 景

タンチョウは国の特別天然記念物および国内希少野生動植物種に指定されており、環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類になっています。現在日本では、北海道東部を中心に約1,300羽が生息し、餌の少ない冬期は釧路湿原周辺の給餌場に集中しています。今後タンチョウが安定的に生息し、個体数を増やしていくには、人からの給餌に頼らずに過ごせる自然採食地を保全していく必要があります。
日本野鳥の会では、冬でも凍結しない湧水地や水路にタンチョウのための自然採食地を2008年よりこれまで8ケ所整備し、整備した自然採食地をタンチョウが実際に利用するか調査してきました。方法としては、調査期間中二週間に1日程度の頻度でビデオカメラに録画し、その内容を確認するものでした。しかし、積雪の多い現地への立ち入りやタンチョウの利用時間を避けての調査機材の設置など、これまで頻度の高い利用状況確認調査が困難でした。

マルチセンシングネットワークシステムの概要

 今回、富士通が開発したマルチセンシング・ネットワークを用いて、自然採食地に監視カメラを搭載したマルチセンシング・ユニットを設置し、1.9㎞離れたネイチャーセンターに撮影画像などのデータを定期的に送信します。測定に使用するマルチセンシング・ユニットはソーラーパネル、バッテリーを搭載しているため、電池交換が不要で人手に頼らずより精度高く効率的な調査を行います。また、自然採食地の状況をリアルタイムに把握し、温度情報などと合わせて分析することで、自然採食地の有効性評価、設備計画などに活用することも可能です。

なお、今回の調査に活用するマルチセンシング・ネットワーク及び本プロジェクトの概要を、環境展示会「エコプロダクツ2011」(会期:12月15日(木)~17日(土)、場所:東京ビッグサイト)の富士通ブースで紹介します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

(注1)マルチセンシング・ネットワーク :気象情報の計測や画像撮影が可能なマルチセンシング・ユニットを使用し、計測したデータをリモートで収集するネットワーク。特定小電力無線を用いているため、通信コストをかけずにデータ収集が可能。

タンチョウ Grus japonensis について

 タンチョウは、かつて江戸時代までは道内全域に生息していたと言われていますが、明治時代の乱獲と生息地である湿原の開発により激減し、一時は絶滅したと考えられていました。大正時代末期に釧路湿原で再発見されて以来、地元農家の冬期給餌などの保護活動が実り、個体数は1,300 羽を超えるまでになりました。国の特別天然記念物にも指定されていますが、分布は北海道東部に偏在し、冬期の人為的な給餌に依存しています。また生息地である湿原の面積は減少する一方で、残されている湿原も営巣地の約半分は法律による保護指定がなされておらず、いつ開発されてもおかしくないのが現状です。
1987年日本野鳥の会は全国からの募金をもとに、タンチョウの越冬地である阿寒郡鶴居村の給餌人、伊藤良孝氏(故人)のご理解とご協力を得て「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」を開設しました。そこでは日本野鳥の会のレンジャーが常駐し、タンチョウ保護のために生態調査や自然解説などを行う現地拠点となっています。また繁殖地の保護状況調査をもとに、タンチョウの営巣地でありながら法律で保護指定されていない湿原を購入、あるいは地主と協定を結ぶ等で、野鳥保護区の設置や、冬期自然採食地の保全の取り組みを行っています。

<タンチョウの保護指定状況>

  • 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法) 「国内希少野生動植物種」
  • 文化財保護法 「天然記念物」
  • 改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物‐レッドデータブック‐ 2 鳥類 「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」
  • IUCN(国際自然保護連合)レッドリスト 「EN C1」

公益財団法人日本野鳥の会  http://www.wbsj.org

自然と人間が共存する豊かな社会の実現を目指し、野鳥や自然のすばらしさを伝えながら、自然保護を進めている民間団体です。全国5万人の会員・サポーターが、自然を楽しみつつ、自然を守る活動を支えています。

  • 創設:1934 年 ・創設者:中西悟堂 ・会長:柳生 博 ・連携団体:全国90団体
  • 2011年4月、「財団法人日本野鳥の会」は「公益財団法人日本野鳥の会」へ移行しました。
  • 財団事務局: 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

関連リンク

<本件に関するお問い合わせ>

公益財団法人日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
担当:有田 茂生(ありた しげお)
〒085-1205 北海道阿寒郡鶴居村中雪裡南
TEL:0154-64-2620  E-mail:[email protected]


図1 中雪裡1号採食地に設置した富士通マルチセンシング・ユニット


図2 富士通マルチセンシング・ユニットで撮影したタンチョウの自然採食地


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[PDF] 「釧路湿原周辺部でICTを活用したタンチョウ生息地の保全調査を実施」に関するプレスリリース

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