Important Bird Areas in Japan
Important Bird Areas in Japan -翼が結ぶ重要生息地ネットワーク-

IBAとは?

概要

IBA( Important Bird Areas ) 重要野鳥生息地プログラムは、国際的な鳥類保護組織であるBirdLife Internationalが、世界100ヶ国以上の加盟団体と共同実施している事業です。
このプログラムは、「鳥類を指標した重要な自然環境」を、世界共通の基準(IBA基準)によって選定し、個々の生息地はもちろんのこと、それらすべての生息地をネットワークとして世界全体で保全していこうというプログラムです。

IBAを簡単に説明すると、
(1)世界的に絶滅のおそれのある種の生息地
(2)世界的に生息地が限定された固有種の生息地
(3)大規模生息地
〜渡り鳥の中継地や越冬地、世界的に見て重要な森林等
の3つを併せたものとなります。

歴史

IBAプログラムは、BirdLife Internationalにより1989年に初めてヨーロッパ版IBAリストが出版されたことにより始まりました。当時のリストにはヨーロッパの39ヶ国が含まれており、ヨーロッパ全域において鳥類がどのように分布し、どの場所がその生息地として重要で、またそれぞれがどのような繋がりを持っているのかを指し示す、初めての貴重な資料でありました。
また2000年には、新たな情報に基づいた見直しが行われ、新しいIBA目録が出版されました。その結果51ヶ国3,619地点のIBAが選定されるに至っています。
このリストは、ヨーロッパ各国の保全活動家、鳥類専門家、政策決定機関等に、保全活動計画作成の際のツールと利用され、同時に欧州裁判所においても「野鳥保全に関する重要な参考資料」として認められるなど、その重要性がヨーロッパ全体で認識されています。
その結果現在では、ヨーロッパの全IBA選定地3,619ヶ所のうち、約60%のIBA基準生息地が何らかの国レベルの法制度に基づいた保護区となり、約50%がEU加盟国の定める特別保護地域(Special Protected Area)に指定されています。

世界のIBA

IBA基準生息地の選定は、ヨーロッパに続いて中東地域で行われました。ここでは14ヶ国391ヶ所が選定され1994年に目録が出版されました。この結果これらの生息地のうち、何らかの法的規制がかけられていたのは約1/4に過ぎないことが解りました。しかし幸いなことに、全体の2/3の地点についてはあまり大きな脅威が無かったため、現在は各パートナー団体が協力し地域のネットワーク作りや、各国におけるIBAの認知度向上に努めています。

南北アメリカ大陸では、1995年にカナダで調査が始まったのを皮切りに、現在では大陸の各国すべてで調査が進められています。カナダでは既に選定作業を終えており、597ヶ所がIBA基準生息地として選ばれました。またアメリカでは1995年に選定を開始して現在では40の州で約1200ヶ所が選定されており、現在もすべての州から情報を集め、最終的な目録作成に取り組んでいます。中央・南アメリカにおいては、カナダ政府の資金協力の元メキシコ・パナマ・ジャマイカ・パラグアイにおいて選定作業が進められています。

これに並行するように進められていたアフリカ大陸では、8年以上の歳月をかけて調査を進めた結果2001年10月に目録が出版され、58ヶ国1,230箇所が選定されました。そしてこの目録は、アフリカ地域のラムサールサイト選定に用いられることになるそうです。しかしながらIBA基準生息地に選定された内の約50%の生息地では、何の法的規制もかけられていないことが判明しており、アフリカ大陸の18ヶ国のバードライフパートナーは、現在これらの生息地の保全に協力してあたっています。

アジアのIBA基準生息地の選定は、1997年に始まり2004年3月にそのリストが公開されました。アジア全体ではおよそ2000ヶ所が選定されましたが、これらの生息地のうち約40%は何の法的規制も無いことが解っており、今後は日本野鳥の会も、アジア各国のパートナー団体と共に、これら生息地の保全に勤めてゆく必要があることが解りました。

日本のIBA基準生息地の選定

IBA基準生息地の選定は、バードライフインターナショナルの定めた全世界共通の基準により進められています。この基準はバードライフインターナショナルの発行しているレッドデータブックや世界の固有種生息地リスト、およびウェットランドインターナショナルの発行している水鳥個体数推定値、ラムサール登録湿地に指定される為の基準5および基準6などを元にして定められたもので、おおまかには以下の4点をIBA基準としています。


  1. 世界的に絶滅に危機にある種が生息している。
  2. 限定された地域に生息する種、または固有種が生息している。
  3. あるバイオームに特徴的な種の相当数が生息している。
  4. 多くの渡り鳥が利用/生息している。

しかしながらこの選定基準は世界共通で利用できる基準として設定してある為、個々の国においてはその国の状況に応じた解釈が必要となってきます。よって日本国内においては、環境条件や生息する鳥類種などから、この基準の解釈をある程度独自に判断する必要がありました。これらの解釈を含めた基準の詳細については選定基準のページをご参照ください。

日本のIBA

日本国内のIBA基準生息地選定作業は1995年に始められ、2003年にようやくその選定作業が終了しました。このように長い期間を要したのは、科学的情報に基づいて選定する為に、あらゆる文献資料を掘り起こしながら進めてきたためです。その結果、日本国内では167地点のIBA基準生息地が選定されました。
選定された生息地の環境構成は以下の左図に見られるように26%の森林と、21%干潟、20%の島嶼および岩礁、約23%の淡水性水域環境でした。これは以下の右図に見られるように、すべての日本産鳥類が利用する、環境の割合にほぼ一致することからも、日本に生息および渡来するすべての鳥類の生息地を保全する上で、妥当な選定であると考えられます。

グラフ:IBA基準生息地の環境構成&日本産鳥類の生息環境構成

よって今後、日本に渡来するすべての鳥類をバランスよく保全して行くには、このIBA基準で選定されたすべての生息地を、保全して行くことが重要であると考えられます。
また今後の保全戦略を考えると、これらのIBA基準生息地の中でどこを重点的に保全していくかということを考える必要があります。そこで選定されたすべてのIBA生息地について、その生息地の一部もしくはすべてが、法的に規制されているのかどうかを示したものが下の図です。(ここでいう法的規制とは、1:自然公園法で定められる国立・国定・自然公園のうち、特別保護地区がある地域。2:原生自然環境保全地域および自然環境保全地域。3:鳥獣保護区のうち特別保護地区がある地域。とする)

グラフ:各環境における法的担保の有無の割合

ここに見られるように。日本国内では全体の約53%の生息地が何らかの形で法的に規制がかけられていますが、砂浜・干潟・浅海域などの海岸線にある環境においては40%以下、また河川や草地においては50%以下しか法的な規制はかけられていません。よってすべての環境を保全して行く為には、今後これらの環境において、優先的に法的規制がかけられるように働きかけて行く必要があります。