IBAとは?

重要な自然環境を選定し、その法的な保護目標を示す

奥入瀬渓流(十和田) 写真:高橋雅雄
奥入瀬渓流(十和田) 写真:高橋雅雄

現在、湿地についてはラムサール条約という国際的な枠組みがあり、重要な湿地をリストアップするための基準が示されています。しかし、湿地以外の環境(森林・草原・島嶼・崖地など)について、国際的な重要度を示す基準はIBA基準以外にありません。
ヨーロッパでは「特別保護区(SPA)」を指定するときには、IBA基準生息地リストをもとに指定するよう、EU議会が加盟国に義務付けています。これは、IBA基準生息地リストが、生態系の上位にある鳥類を指標とすることで、重要な自然環境を保全するためによい指針となっているからです。
このように野生生物の保全を考えると、その重要性を反映した数値基準に基づいて、重要な場所のリストを作り、法的指定等の保全目標を定めて、進めていく事がとても大切です。

野鳥の生息に重要な自然環境

新堤・北上川 写真:高橋知明
新堤・北上川 写真:高橋知明

大雪山 写真:柳田弘子
大雪山 写真:柳田弘子

仏沼 写真:宮彰男
仏沼 写真:宮彰男

島嶼・崖地:日本沿岸には5目97種の海鳥が生息していて、その多くが1年を海上で過ごしますが、繁殖期だけは上陸します。このため海辺の崖地や島は海鳥類の繁殖地として非常に重要な環境です。

干潟・潟湖:長距離を渡る多くのシギ・チドリ類は、渡り途中に羽を休め食物を採り、次の渡りに備えます。干潟はこの中継地として利用されている、重要な環境です。

淡水性湿地(水田):冬には北から渡ってきて越冬するガン・カモ類やツル類の餌場として、繁殖期には内陸性のシギ・チドリ類の繁殖地として、また春・秋には渡り鳥の中継地としても重要な環境です。

森林:春から夏には南から渡ってくる夏鳥が繁殖する場所として、冬には北から渡ってくる冬鳥の越冬地として、また猛禽類の繁殖地として重要な環境です。

河川:上流域は森林に生息する鳥類の水場として、下流域ではサギ類や淡水性カモ類、カワウなどの餌場としてなど、その流域全体が多くの鳥類にとって重要な環境です。

浅海域:海の水深の浅い場所は海の生物が生産・成長する場所であり、生物量が多いため海上に生息する海ガモ類や海鳥の餌場として、非常に重要な環境です。

草地(放棄地):川岸の裸地や草丈の短い草の生える場所は、シギ・チドリ類やアジサシ類の繁殖地として重要な環境です。
湖沼:ガン・カモ類にとっての餌場として、また外敵に襲われない安全なねぐらとして、重要な環境です。

砂浜:砂浜は砂地で繁殖するシギ・チドリ類やアジサシ類の繁殖地として、また長距離を渡るシギ・チドリ類などの渡りの中継地として重要な環境です。

歴史

IBAプログラムは、バードライフインターナショナル(BirdLife International)の加盟団体が中心となって進めている国際的な事業です。
IBAプログラムが始まった背景は、1979年にヨーロッパでベルン条約(欧州の野生生物と自然の生息地・生息地の保全に関する条約)が結ばれたことにあります。この結果、EU加盟国では鳥類を含む動植物の重要な生息地に対して「特別保護区(SPA)」を定めることになりました。そのときに選定基準として作られたのが、現在のIBAの選定基準の原型です。
そして1989年に、ヨーロッパで最初のIBAリストが発行されました。
当時のリストにはヨーロッパの39ヶ国が含まれており、ヨーロッパ全域において鳥類がどのように分布し、どの場所がその生息地として重要で、またそれぞれがどのような繋がりを持っているのかを指し示す、初めての貴重な資料でありました。
その後、リストは新たな情報に基づいた見直しが行われ、ヨーロッパ各国の保全活動家、鳥類専門家、政策決定機関等に、保全活動計画作成の際のツールとして利用されたり、欧州裁判所においても「野鳥保全に関する重要な参考資料」として認められるなど、その重要性が認識されています。

世界のIBA

IBA基準生息地の選定は、ヨーロッパに続いて中東地域で行われました。ここでは14ヶ国391ヶ所が選定され1994年に目録が出版されました。現在、各国のパートナー団体が協力し、IBAの情報更新を進めています。
南北アメリカ大陸では、1995年にカナダで調査が始まったのを皮切りに各国で選定が進められ、現在では57か国2345カ所がIBAに選定されています。これに並行するように進められていたアフリカ大陸では、現在59か国1250以上のサイトがIBAに選定されています。
アジアのIBA基準生息地の選定は、1997年に始まり2004年3月にそのリストが公開されました。現在、アジア全体では2381カ所のIBAが選定されています。これらのIBAの82%は、絶滅の危機にある鳥類の生息情報をもとに選定されました。アジアのIBAの43%は、国の保護区などに指定されていますが、14%はその一部しか保護区に含まれておらず、半数近くは法的な規制が無い状態です。日本野鳥の会は、バードライフインターナショナルや、アジア各国のパートナー団体と共に、これらIBAの保全に努めていきます。

これまでに選定された世界各地のIBAを合わせると、12000カ所以上になります。そのうち、法的に守られているIBAは約40%です。バードライフインターナショナルでは、IBAの中でも特に生息環境の破壊の危険性が高い地域を“IBAs in Danger”とし、優先的に保護活動を行っています。

IBA(バードライフインターナショナル東京のホームページへ)
IBA(バードライフインターナショナルのホームページへ 英文)

日本のIBA基準生息地の選定

タンチョウ 写真:千嶋淳
タンチョウ 写真:千嶋淳

十勝海岸湖沼群 写真:千嶋淳
十勝海岸湖沼群 写真:千嶋淳

IBA基準生息地の選定は、バードライフインターナショナルの定めた全世界共通の基準により進められています。この基準はバードライフインターナショナルの発行しているアジア版レッドデータブックや世界の固有種生息地リスト、およびウェットランドインターナショナルの発行している水鳥個体数推定値、ラムサール登録湿地に指定される為の基準5および基準6などを元にして定められたもので、おおまかには以下の4点をIBA基準としています。

A1 世界的に絶滅の危機にある種が生息
A2 限定された地域に生息する種、または固有種が生息
A3 あるバイオームに特徴的な種の相当数が生息
A4 多くの渡り鳥が利用/生息

しかしながらこの選定基準は世界共通で利用できる基準として設定してある為、個々の国においてはその国の状況に応じた解釈が必要となってきます。よって日本国内においては、環境条件や生息する鳥類種などから、この基準の解釈をある程度独自に判断する必要がありました。これらの解釈を含めた基準の詳細については選定基準のページをご参照ください。
IBAの選定基準

日本のIBA

IBA基準生息地の環境構成、日本産鳥類の生息環境構成

日本国内のIBA基準生息地選定作業は1995年に始まり、2003年に国内167地点のIBA基準生息地が選定されました。(2018年現在、110旧浅井新田養魚場が消失し、166地点となっています)
選定された生息地の環境構成は図に見られるように26%の森林と、21%干潟、20%の島嶼および岩礁、約23%の淡水性水域環境でした。これは、すべての日本産鳥類が利用する、環境の割合にほぼ一致することからも、日本に生息および渡来するすべての鳥類の生息地を保全する上で、妥当な選定となっています。今後、日本に渡来するすべての鳥類をバランスよく保全して行くには、このIBA基準で選定されたすべての生息地を保全していくことが重要です。

マリーンIBA

これまでのIBAの選定は、陸域を対象として進められてきましたが、海鳥を指標に、海域を対象とした野鳥の重要生息地マリーンIBA(Marine Important Bird Areas)の選定が進められています。詳細はマリーンIBA のサイトをご覧ください。
マリーンIBA選定事業ホームページ

KBA(Key Biodiversity Areas)

KBA(Key Biodiversity Areas)とは、生物多様性の保全に世界的に重要な地域のことです。IBAの考え方を鳥類以外の分類群に広げたもので、現在日本では鳥類、哺乳類、爬虫類、両生類、魚類、トンボ類から約100種以上の対象種が生息する232カ所が選ばれています。国内のIBAは、すべてKBAに含まれます。現在選定されているKBAの約半分は保護指定がないため、今後、保護地域にしていくための働きかけが重要となります。
KBAは国際基準により選ばれており、IUCN(国際自然保護連合)の種の保存委員会と、世界保護地域委員会により、選定のガイドラインが発表されています。
KBAの詳細はこちら
KBAのガイドライン