国際シンポジウム「野鳥と風力発電のセンシティビティマップ」を開催しました

当会は2月17日、神奈川県横浜市の東京都市大学横浜キャンパスで、地球環境基金の助成、東京都市大学環境学部およびバードライフ・インターナショナル東京の共催により、シンポジウム「野鳥と風力発電のセンシティビティマップ-その作成と活用方法」を開催し、当会会員のほか、研究者や学生、環境コンサルタントを中心に約50名の方にご来場いただきました。

講師でお呼びしたバードライフ・インターナショナル本部(英国)のT. Allinson氏には「野鳥と風力発電の調和‐センシティビティマップの重要性」に関して、「①風力発電施設が鳥類の個体群に影響を与えない最善策は、影響を受けやすい脆弱な場所から離れたところに設置すること、②開発事業者、資金提供者(金融業界)、計画当局(行政機関)などが、風車建設予定地の選定がまだ途中であっても、先んじて生物多様性評価を行うことが不可欠なこと、③センシティビティマップは鳥類にとって安全な風力発電施設の立地選定を助ける重要な手段となっていること。」について紹介いただきました。

バードウォッチアイルランドのO. Duggan氏には、「アイルランドにおける風力発電のための鳥類センシティビティマップ作成ツール」に関して、「①アイルランドは国内法とEU法により鳥類とその生息地を保全する義務があること、②その保全とは鳥類にとって重要な地域である保護区に限定されず、より広い地域を含むものであること、③各鳥類種の分布データからアイルランド本島の風力発電に対する鳥のセンシティビティマップ(1kmメッシュ)を作成していること、④マップは“風車建設禁止”エリアを示すものではなく、ある地域で風車に脆弱な鳥類が存在する可能性を意思決定プロセスに早期に示すもの。」について紹介いただき、ブルガリア鳥類保護協会のI. Mateeva氏は「①ブルガリアのドブロジャ地域の風力発電施設は建設後4年で、アオガン、シロエリハゲワシ、モモイロペリカン、クロヅルなど数千羽の渡り鳥、越冬鳥、繁殖鳥に深刻な影響をもたらしたこと、②EUによる戦略的環境影響評価のために、ブルガリア全土で野鳥と風力発電施設のための、また、アオガン単独種のためのセンシティビティマップを作成したこと。」についてご紹介いただきました。

その他、当会の浦主任研究員、環境省自然環境局、東京都市大の北村氏、WWFジャパンの市川氏、北海道大学の風間氏、自然エネルギー財団の分山氏に講演とパネルディスカッションに出演いただき、今後、どうすれば日本国内でセンシティビティマップの作成と活用が進んでいくのか、議論しました。その結果、作られたマップは法的な義務付けにより活用されるようになるべきである、という共通認識を参加者間で持ったところで閉会となりました。

「野鳥と風力発電のセンシティビティマップ-その作成と活用方法」のプログラム内容はこちら(PDF/183KB)