「生物多様性国家戦略2023-2030中間評価(案)」に対するパブリックコメントに意見を提出しました
2026年2月4日
私たちの社会や経済、暮らしは、長い地球の歴史の中で培われた生物多様性からさまざまな恩恵を受けています。しかし、人間活動による過度な開発行為や地球温暖化の進行などにより生物多様性の損失が進んでおり、このままでは私たちの生活に大きな支障が出てくる可能性があります。
生物多様性国家戦略とネイチャーポジティブ
生物多様性国家戦略は、生物多様性条約※1と生物多様性基本法にもとづき、生物多様性を守り、その恩恵を持続的に利用していくために国が定めた基本計画です。日本では1995年に初めて策定され、それ以降数年おきに改定されています。
現在、運用されている「生物多様性国家戦略2023-2030(以下、国家戦略2023-2030)」は、世界目標である昆明・モントリオール生物多様性枠組※2を達成するために日本が取り組む事項が掲げられ、さらに、2020年を基準として、2030年までに生物多様性の損失を止め、回復に転じる「ネイチャーポジティブ(自然再興)」実現のためのロードマップを示す内容となっています。
図1:生物多様性の損失を減らし、回復させる行動のポートフォリオ
出典:地球規模生物多様性概況第5版 Global Biodiversity Outlook 5(PDF)を改変
ネイチャーポジティブ実現に向けての評価
昆明・モントリオール生物多様性枠組では、締約国が目標実現のための実施状況をまとめた「国別報告書」の提出のタイミングで、それらの評価を行うことが決定されています。
そのため日本は、生物多様性条約第17回締約国会議(CBD‐COP17)に向け、2026年2月末までに「国別報告書」を提出しなければならず、それに合わせて環境省は、「国家戦略2023-2030の実施状況の中間評価(案)」および「生物多様性条約第7回国別報告書(案)」を取りまとめました。さらに、提出前に国民に向けてパブリックコメントを実施し、私たち国民から中間評価(案)と国別報告書(案)に対する意見を広く求めることとしました。
日本野鳥の会の意見
当会は「国家戦略2023-2030の実施状況の中間評価(案)(PDF/環境省)」に対して24件の意見を提出しました。ここでは、特に当会が事業として取り組んでいるプラスチック問題、絶滅危惧種の保護を中心に紹介します。
1.海洋プラスチック問題に関する意見
行動目標1-3について

プラスチック汚染問題の解決には、プラスチックの生産と消費を削減する発生抑制が不可欠です。一方、本中間報告では「<使用済プラスチックの有効利用>は増加傾向にある」と評価していますが、回収とリサイクル率だけでなくプラスチックの生産・消費の削減についても評価する必要があります。
そこで、今後の方針として、以下の記載を要望しました。
- 進捗状況評価のためにプラスチック生産・消費量の推移をモニタリングし評価に加えること
- 一次プラスチックの生産量削減と、使い捨てプラスチックや、問題のあるプラスチック製品、懸念される化学物質を含み人の健康や環境へのリスクがある製品の段階的な廃止・制限に向けた国内法整備を進めること
- 加盟国に対してプラスチックのライフサイクル全体を対象とする国際的に法的拘束力を持つ条約(国際プラスチック条約)を迅速に締結・署名・批准し、さらに時間をかけて強化するよう取り組みを進めること
- 海鳥への蓄積、影響も明らかになりつつある添加剤についても、影響の客観的な評価と有効性のある規制を進めること
2.種の保存法に関する意見
行動目標1-5について

「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行状況評価報告書(P12)」にもあるように、まだ保護増殖事業が開始されていない種も多くあるため、完了の考え方を検討すると同時に、新しく保護増殖事業を開始する種の検討を開始することを記載してください。
このほかに、当会が提出した意見の全文ならびに「生物多様性国家戦略2023-2030の実施状況の中間評価(案)」については以下のPDFをご覧ください。
当会は、今後も生物多様性の保全の推進と2030年のネイチャーポジティブ実現、2050年の自然と調和した社会の実現のために、さまざまな取り組みを進めていきます。
※1.生物多様性条約とは?
国連は、1992年6月に開催された「リオ地球サミット」(=環境と開発に関する国連会議)において、生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用、遺伝資源から得られる利益の公正な配分を目的に「生物の多様性に関する条約(生物多様性条約)」を提出・採択し、署名を呼びかけました。条約には同会議中に日本を含む168カ国が署名し、2025年3月現在、194カ国が参加しています。
同条約では、生物多様性の保全と、持続可能な利用を目的とした「国家戦略」の策定を締約国に求めており、日本では、生物多様性の保全と持続可能な利用、その恩恵を将来にわたって享受できる、自然と共生する社会の実現を目的に、2008年に「生物多様性基本法」が制定され、「生物多様性国家戦略」を策定することが国の責務として規定されています。
※リオ地球サミットでは、生物多様性条約のほかに、大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を目的として、地球温暖化がもたらすさまざまな悪影響を防止するための国際的な枠組みを定めた「気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約)」も採択された。
※2.昆明・モントリオール生物多様性枠組とは?
昆明・モントリオール生物多様性枠組とは、2022年の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された世界目標。愛知目標(2010年)で掲げられた「自然と共生する社会」を2050年ビジョンとして掲げ、その具体的姿を4つの2050年グローバルゴールとして表現しています。
さらに、2030年ミッションとしてネイチャーポジティブの実現が掲げられ、そのための23個のグローバルターゲットが設定されています。そして、それら以外に締約国の目標達成のための実施状況を評価することも決定されました。
これは、前の世界目標である「愛知目標」が十分に達成されなかった要因として、以下の評価があったためです。
- 愛知目標を達成するために各国が設定した国別目標の範囲や水準に、整合性がなかったこと
- 目標の達成状況を適切に評価する仕組みが十分だったこと







