プレスリリース 2006.05.26-1

日本野鳥の会が福井県下と三重県下の風力発電施設建設計画について見直し、変更を経産省等に申し入れ

2006.5.26

 (財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博 会員・サポーター数:5万2千人)は、福井県あわら市と三重県鳥羽市に計画されている風力発電施設の建設計画に対して、野鳥保護と生態系保全に対して支障が出るおそれが強いと判断し、経産省に対し、補助金の交付にあたって環境影響についての専門的な審査と必要に応じて交付を行わないことを求める要望書を提出、また関係省庁・自治体に対しては懸念を伝えあるいは計画の変更を求める要望書を提出しました。

あわら市の建設予定地は、福井県の北潟湖西岸で、国指定鳥獣保護区特別保護地区・ラムサール条約湿地である片野鴨池に飛来するマガン、ヒシクイ(国指定天然記念物、レッドデータブック掲載種)が、ねぐらである片野鴨池と採餌場所である福井県の坂井平野の水田を往復する際に通過することがある位置で、事業主による環境影響評価も行われていますが、影響の有無を判断するには回数が少なすぎるため、日本野鳥の会と鴨池観察館友の会が
23回の調査を実施。この結果、建設予定地上空を多数のマガンが通過しており、最大時は鴨池に飛来するマガンのほとんど全てに相当する数のマガンの通過が確認されました。また、撮影された写真から、飛行高度は風車のプロペラが回転する範囲内であることが推定されました。これらの調査結果から、風力発電施設の建設がラムサール条約湿地・片野鴨池、福井県坂井平野の生態系およびマガン、ヒシクイなどの希少鳥類に影響を与えるおそれが強いと判断しました。

鳥羽市の建設予定地は、志摩半島の海岸近くの丘陵地で、伊勢志摩国立公園の普通地域内にあります。この場所はタカの渡りの日本最大級の中継地である渥美半島の伊良湖岬の対岸にあたり、サシバなどのタカ類が多数渡っていく地域にあたると考えられます。日本野鳥の会三重県支部の本年4月の予備的な観察では希少鳥類のオオタカとクマタカ(共に種の保存法の国内希少野生動植物種)の生息も確認されています。事業者側の事前調査はこれらへの影響を評価するには不十分で、渡りの時期の現地調査は秋の6日間のみ、また繁殖期の猛禽類の調査はまったく行われておらず、この事前調査に基づいて建設が行われれば鳥類への甚大な影響が起こるおそれがあることが判りました。またこの地域は地盤が軟弱で、施設工事のための道路建設によって土壌崩壊等により周辺の植生に大きな影響が出るおそれもあり、国立公園内で行う事業としてはふさわしくないと判断しました。

これらの結果に基づき、これらの事業の補助金(新エネルギー事業者支援対策事業)の審査を行う経済産業省には、補助金の交付にあたって環境影響についての専門的な審査と必要に応じて交付を行わないことを求める要望書を提出しました。また判断に関わる可能性のある関係省庁、自治体にも同様の文書を提出しました。

なお本日、あわら市の案件については、加賀市からも同様な要望書が出されています。

要望書提出先

経済産業省(資源エネルギー庁)、環境省、文化庁、福井県、あわら市、石川県、北陸電力株式会社、電源開発株式会社

同時発表

加賀市記者クラブ、福井県庁記者クラブ 、環境省記者クラブ(環境問題研究会・環境記者会)

本件についてのお問い合わせ先
財団法人 日本野鳥の会 自然保護室
TEL : 042-593-6872  担当 古南(こみなみ)


日野鳥発第21号
平成18年5月26日

経済産業大臣
二階 俊博 殿

東京都渋谷区初台1 – 47 – 1
小田急西新宿ビル1F
財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博

鳥羽ウインドファーム株式会社が三重県鳥羽市に建設予定の
風力発電施設への補助金拠出に関する要望

 平素より本会の環境保全活動に関するご理解、ご協力に対し、深く感謝申し上げます。

さて、さて、現在、伊勢志摩国立公園内の 鳥羽市船津町行者山において、鳥羽ウインドファーム株式会社により風力発電施設の建設計画が立てられており、まもなく新エネルギー事業者支援対策事業による補助金の申請が行われる予定と聞いております。この地域は、タカの渡りの日本最大級の中継地である渥美半島伊良湖岬の対岸にあたり、サシバなどのタカ類が多数渡っていく地域にあたると考えられます。日本野鳥の会三重県支部の本年4月の予備的な観察では希少鳥類のオオタカとクマタカ(共に種の保存法の国内希少野生動植物種)の生息も確認され、繁殖の可能性が指摘されています。

事業者の事前調査の報告書(鳥羽風力発電事業に係る環境調査業務報告書 平成 17年11月)を見ると、これらへの影響を軽微と評価しているようですが、調査の実態は影響を評価するには著しく不十分で、渡りの時期の現地調査は秋の6日間のみ、また繁殖期の猛禽類の行動圏等の生態調査に至ってはまったく行われていません。上掲の報告書の中では「大型風車施設建設計画地における営巣の可能性が否定できないクマタカ、フクロウ、サンショウクイ、サンコウチョウの営巣状況について確認する必要があると言える」「今後、大型風車施設建設計画地と渡り鳥の渡りのコースとの関係について詳細な調査を行い、事業影響の有無について検討する必要がある」としているにも関わらず、実際に調査・検討を行わないまま、影響は軽微である旨の結論に導こうとしています。しかしこれはあまりに強引な結論であると言わざるを得ません。この不十分な事前調査に基づいて建設が行われれば鳥類への甚大な影響が起こるおそれがあります。またこの地域は地盤が軟弱で、施設工事のための道路建設によって、土壌崩壊等により地形や周辺の植生に大きな影響が出るおそれも考えられます。

当該計画の風車の設置基数は3基と聞いておりますが、風車の規模は 3000kWと非常に大きく、地上高は百数十mに及ぶと思われ、景観への影響と共に鳥類の衝突死のおそれはその分増大していると考えられます。希少猛禽類の風力発電施設による事故例として近年、オジロワシの衝突死の事例が北海道で5例報告されておりますが、そのうち2004年12月の
根室市での事故は風車の設置基数が5基、 2005年12月の 石狩市の場合は2基のファームにおけるものでした。これらの事例から、設置基数の多寡と事故の確率は、必ずしも一致しない可能性が考えられます。1個体の死亡が個体群に与える影響が大きい希少種、特に希少猛禽類の生息地には、少数基であっても風車を設置するべきではないと考えられます。

こうした状況から、当該事業について私どもは、環境省が示す「 国立・国定公園内における風力発電施設設置のあり方に関する基本的考え方」
の 「特に自然風景の保護上大きな支障があると認められる場合」にあたる疑いが非常に強いと判断し、国立公園内で行う事業としてはふさわしくないと考えております。そこで、下記の通り要望いたします。

 伊勢志摩国立公園内の鳥羽市船津町行者山への風力発電施設の設置については、自然風景の保護上大きな支障があることが疑われますので、環境影響について上記の観点からの専門的な審査を行った上で、支障が認められた場合は補助金の交付を行わないといった、適切な判断をしてくださるよう要望いたします

以上


日野鳥発第20号
平成18年5月26日

環境大臣
小池 百合子 殿

東京都渋谷区初台1 – 47 – 1
小田急西新宿ビル1F
財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博

伊勢志摩国立公園における風力発電施設計画に関する要望

 平素より本会の環境保全活動に関するご理解、ご協力に対し、深く感謝申し上げます。

さて、現在、伊勢志摩国立公園内の鳥羽市船津町行者山において、鳥羽ウインドファーム株式会社により風力発電施設の建設計画が立てられており、まもなく建設に関する届出が行われる予定と聞いております。この地域は、タカの渡りの日本最大級の中継地である渥美半島伊良湖岬の対岸にあたり、サシバなどのタカ類が多数渡っていく地域にあたると考えられます。日本野鳥の会三重県支部の本年4月の予備的な観察では希少鳥類のオオタカとクマタカ(共に種の保存法の国内希少野生動植物種)の生息も確認され、繁殖の可能性が指摘されています。

事業者の事前調査の報告書(鳥羽風力発電事業に係る環境調査業務報告書 平成 17年11月)を見ると、これらへの影響を軽微と評価しているようですが、調査の実態は影響を評価するには著しく不十分で、渡りの時期の現地調査は秋の6日間のみ、また繁殖期の猛禽類の行動圏等の生態調査に至ってはまったく行われていません。上掲の報告書の中では「大型風車施設建設計画地における営巣の可能性が否定できないクマタカ、フクロウ、サンショウクイ、サンコウチョウの営巣状況について確認する必要があると言える」「今後、大型風車施設建設計画地と渡り鳥の渡りのコースとの関係について詳細な調査を行い、事業影響の有無について検討する必要がある」としているにも関わらず、実際に調査・検討を行わないまま、影響は軽微である旨の結論に導こうとしています。しかしこれはあまりに強引な結論であると言わざるを得ません。この不十分な事前調査に基づいて建設が行われれば鳥類への甚大な影響が起こるおそれがあります。またこの地域は地盤が軟弱で、施設工事のための道路建設によって、土壌崩壊等により地形や周辺の植生に大きな影響が出るおそれも考えられます。

当該計画の風車の設置基数は3基と聞いておりますが、風車の規模は 3000kWと非常に大きく、地上高は百数十mに及ぶと思われ、景観への影響と共に鳥類の衝突死のおそれはその分増大していると考えられます。希少猛禽類の風力発電施設による事故例として近年、オジロワシの衝突死の事例が北海道で5例報告されておりますが、そのうち2004年12月の根室市での事故は風車の設置基数が5基、2005年12月の石狩市の場合は2基のファームにおけるものでした。これらの事例から、設置基数の多寡と事故の確率は、必ずしも一致しない可能性が考えられます。1個体の死亡が個体群に与える影響が大きい希少種、特に希少猛禽類の生息地には、少数基であっても風車を設置するべきではないと考えられます。
こうした状況から、当該事業について私どもは、貴省が示されております「国立・国定公園内における風力発電施設設置のあり方に関する基本的考え方」
の 「 特に自然風景の保護上大きな支障があると認められる場合」にあたる疑いが非常に強いと判断し、国立公園内で行う事業としてはふさわしくないと考えております。そこで、下記の通り要望いたします。

 伊勢志摩国立公園内の鳥羽市船津町行者山への風力発電施設の設置については、自然風景の保護上大きな支障があることが疑われますので、環境影響について上記の観点からの専門的な審査を行った上で、支障が認められた場合は補助金の交付を行わないといった、適切な判断をしてくださるよう要望いたします

以上


日野鳥発第22号
平成18年5月26日

新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 牧野 力 様

東京都渋谷区初台1 – 47 – 1
小田急西新宿ビル1F
財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博

三重県鳥羽市および福井県あわら市における
風力発電施設計画への債務保証に関する要望

 平素より本会の環境保全活動に関するご理解、ご協力に対し、深く感謝申し上げます。

さて、現在、以下の2件の風力発電施設の建設計画について、まもなく新エネルギー事業者支援対策事業による補助金の申請が行われる予定と聞いております。これらの計画について私どもはいずれも
自然風景、生物多様性、生態系の保護上大きな支障があるのではないかとの疑いを持っております。

1.三重県鳥羽市における鳥羽ウインドファーム株式会社による計画について
伊勢志摩国立公園内の鳥羽市船津町行者山において、鳥羽ウインドファーム株式会社により風力発電施設の建設計画が立てられており、この地域は、タカの渡りの日本最大級の中継地である渥美半島伊良湖岬の対岸にあたり、サシバなどのタカ類が多数渡っていく地域にあたると考えられます。日本野鳥の会三重県支部の本年4月の予備的な観察では希少鳥類のオオタカとクマタカ(共に種の保存法の国内希少野生動植物種)の生息も確認され、繁殖の可能性が指摘されています。

事業者の事前調査の報告書(鳥羽風力発電事業に係る環境調査業務報告書 平成 17年11月)を見ると、これらへの影響を軽微と評価しているようですが、調査の実態は影響を評価するには著しく不十分で、渡りの時期の現地調査は秋の6日間のみ、また繁殖期の猛禽類の行動圏等の生態調査に至ってはまったく行われていません。上掲の報告書の中では「大型風車施設建設計画地における営巣の可能性が否定できないクマタカ、フクロウ、サンショウクイ、サンコウチョウの営巣状況について確認する必要があると言える」「今後、大型風車施設建設計画地と渡り鳥の渡りのコースとの関係について詳細な調査を行い、事業影響の有無について検討する必要がある」としているにも関わらず、実際に調査・検討を行わないまま、影響は軽微である旨の結論に導こうとしています。しかしこれはあまりに強引な結論であると言わざるを得ません。この不十分な事前調査に基づいて建設が行われれば鳥類への甚大な影響が起こるおそれがあります。またこの地域は地盤が軟弱で、施設工事のための道路建設によって、土壌崩壊等により地形や周辺の植生に大きな影響が出るおそれも考えられます。

当該計画の風車の設置基数は3基と聞いておりますが、風車の規模は 3000kWと非常に大きく、地上高は百数十mに及ぶと思われ、景観への影響と共に鳥類の衝突死のおそれはその分増大していると考えられます。希少猛禽類の風力発電施設による事故例として近年、オジロワシの衝突死の事例が北海道で5例報告されておりますが、そのうち2004年12月の根室市での事故は風車の設置基数が5基、2005年12月の石狩市の場合は2基のファームにおけるものでした。これらの事例から、設置基数の多寡と事故の確率は、必ずしも一致しない可能性が考えられます。1個体の死亡が個体群に与える影響が大きい希少種、特に希少猛禽類の生息地には、少数基であっても風車を設置するべきではないと考えられます。

こうした状況から、当該事業について私どもは、環境省が示す「国立・国定公園内における風力発電施設設置のあり方に関する基本的考え方」の
「 特に自然風景の保護上大きな支障があると認められる場合」にあたる疑いが非常に強いと判断し、国立公園内で行う事業としてはふさわしくないと考えております。

2.福井県あわら市における電源開発株式会社による計画について
ラムサール条約湿地であり、国指定鳥獣保護区特別保護地区である石川県加賀市・片野鴨池に近い福井県あわら市富津に電源開発株式会社による風力発電施設の建設計画について、施設が設置された場合、ねぐらである片野鴨池と餌場である福井県坂井平野を往復する国指定天然記念物マガン、ヒシクイなどへの影響を強く危惧しております。理由は以下のとおりです。

(1)片野鴨池に飛来するマガンのほとんど全てが建設予定地上空を通過しました
ラムサール条約湿地である片野鴨池に飛来するマガンおよびオオヒシクイは、片野鴨池をねぐらとし、福井県九頭竜川流域の水田地帯を主要な餌場としているため、ねぐらと餌場の往復で毎日2回、建設予定地付近の上空を通過します。この時、北潟湖付近でどのルート、飛行高度を選択して通過するのかは、その日の天候、風向や風力などの気象条件や、その日の餌場の位置などによって変わる可能性があります。
私どもが実施した調査では、回数は少ないものの鴨池に飛来するマガンのほとんど全てである2400羽の群れも建設予定地上空を通過しました。また、3月15日に建設予定地上空を飛行した際には写真撮影に成功し、写真から算出した飛行高度は推定60mでした。今回の計画で設置予定の風車のプロペラの最高到達点は地上100mで、プロペラが通過する範囲は地上40mから100mです。このことから、施設建設によって片野鴨池に飛来するマガン個体群に直接的および間接的に与える影響は大きいと考えられます。一方で、事業主の調査によれば建設予定地はマガンの主要な飛行ルートには当たらず、少数は衝突する危険性があるものの、それによって地域個体群に与える影響は少ないとのことです。しかし、少数とはいえ、国指定天然記念物であり、絶滅危惧種もしくは準絶滅危惧種であるマガンやヒシクイが影響を受けることは避ける必要があります。
また、半年に及ぶマガンの越冬期間を考えれば事業主による調査回数は非常に少なく、越冬期間中のマガンの飛行ルート把握やルート選択の要因の特定ができているとは到底考えられません。急遽実施した私たちの調査とさえ結果が違っており、このことは調査回数が少なすぎることと施設の影響が過小評価されていることを示していると思われます。
なお、直接的に与える影響とは、プロペラや支柱に衝突すること、間接的に与える影響とは、巨大な人工建造物が飛行ルート近くにあった場合にねぐらと餌場を往復する行動に悪影響を与えることを意味します。

(2)マガン・ヒシクイは文化財保護法の定める国指定天然記念物です
マガンおよびヒシクイは文化財保護法の定める国指定天然記念物です。天然記念物とは、学術上貴重な日本の自然を記念するもので、地域の遺産として保護し、活用していく非常に重要なものです。
また、野生生物を人為的に絶滅させることがないよう、絶滅のおそれのある種を的確に把握し、各種事業者等が種の保存の取り組みに活用するために編纂された環境省のレッドデータブック(以下RDB)では、マガンは
生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性がある準絶滅危惧種に指定されており、石川県版RDB、福井県版RDBでは絶滅危惧II類に指定されています。ヒシクイは環境省のRDBでは絶滅危惧II類(亜種オオヒシクイ)、準絶滅危惧種(亜種ヒシクイ)に指定されており、石川県版RDBでは絶滅危惧II類、福井県版RDBでは県域絶滅危惧I類(亜種オオヒシクイ)、県域絶滅危惧II類(亜種ヒシクイ)に指定されています。このようなマガン、ヒシクイに対して、前述のような悪影響を与える可能性のある今回の計画は実施すべきではありません。
この他、福井県の県域準絶滅危惧種に指定されているコハクチョウに対しても、マガンと同様に悪影響を及ぼすと考えられます。

(3)国際的に重要なラムサール条約湿地・片野鴨池の生態系に影響を及ぼします
このマガンの休息地である片野鴨池は、地元の努力で江戸時代から330年以上に渡って保護されてきた場所で、湿地保全の国際条約であるラムサール条約の登録地になっています。また、石川県天然記念物、および生息地保全に関する国際的なネットワークであるIBAにも選定されている国内的にも国際的にも重要な湿地です。しかし、今回の計画が実行されれば、片野鴨池における生態系の中心であるマガンに悪影響を及ぼし、ひいては片野鴨池全体の生態系に重大な響を及ぼすおそれがあります。
以上の理由により、現在の予定地への建設は実施すべきではありません。

以上を踏まえ、下記の通り要望いたします。

 鳥羽ウインドファーム株式会社による鳥羽市船津町行者山への風力発電施設の設置、及び電源開発株式会社による福井県あわら市への風力発電施設については、自然風景、生物多様性、生態系の保護上大きな支障があることが疑われますので、
新エネルギー事業者支援対策事業に基づく債務保証にあたっては、環境影響について上記の観点からの専門的な審査を行った上で、支障が認められた場合は債務保証を行わないといった、適切な判断をしてくださるよう要望いたします

以上


志摩半島のタカの渡り=三重野鳥の会におけるデータの再解析
およびクマタカの生息について

日本野鳥の会三重県支部
保護部 平井正志

志摩半島のタカの渡り
三重野鳥の会は 1993 年に「志摩半島のタカの渡り」という報告書を発行している。
同報告書には 1988 年から 1992 年の志摩半島内陸部と沿岸部(上陸地点)でタカの渡りを観察し、どの結果が記載されている。記載されている
1988 年から 1992 年のデータのうち、上陸地点で観察が行われている合計 17 日間のデータを合計した。上陸地点の観察場所は鳥羽市小浜、池の浦、佐田浜、安楽島、および今浦である。(小浜は日向浜、西浜などの海水浴場のある半島、佐田浜は鳥羽港で鳥羽駅付近、安楽島は菅島側につきでた半島、今浦は鳥羽駅の南東、安楽島よりも南東)
http://map.yahoo.co.jp/pl?nl=34.28.40.958&el=136.50.46.907&la=1&fi=1&sc=5

この 17 日間伊良湖岬で観察されたサシバは 28,765 羽であった。上陸地点で観察されたサシバの合計は 14,090 羽であった。これは
55% に相当する。このうち安楽島で観察された個体数は 7,779 羽であった。これは伊良湖岬で観察されたサシバの 27% に相当する。ただし、伊良湖岬でのデータは終日観察した結果であり、上陸地点でのデータはほとんどが朝だけせいぜい昼まで、のデータである。伊良湖岬では午後に大群が渡る場合もあるが、それらは上陸地点での観察数から抜け落ちていると見ざるを得ない。従って安楽島へ上陸する実数は
27% よりかなり大きいと考えられる。
(むろん天候などにより、飛行ルートは変化するようである。安楽島 / 伊良湖岬のパーセンテージは 0% ( 1992 年 10
月 7 日)から 168%(1991 年 10 月 15 日 ) まで変化した。)
地理的に見ても、伊良湖岬、神島、菅島、安楽島半島と直線的に連続しており、有視界飛行をするサシバの飛行ルートとしては最適、最短であると思われる。地理的には答志島をへて、小浜半島へ上陸するルートも考えられるが、観察結果ではこのルートを取るものは少ない。

これらの考察から安楽島付近がサシバの主な上陸場所であろうと考えられる。安楽島は行者山に隣接しており、安楽島に上陸したサシバは行者山周辺で上昇気流を取り、伊勢方面へ飛び去るものと思われる。

なお同様に伊勢市内を含む内陸部で得られた 18 日間のデータを集計すると伊勢市内の藤里町において伊良湖岬で観察された個体数の
34% が観察されている。

クマタカについて
2006 年 4 月 22 日の探鳥会後に出現したクマタカは支部会員小坂里香により撮影された (下に掲載の写真 ) 。その写真を近藤保護部長が解析した結果、2,3歳の亜成鳥であろうとの結論であった。

志摩半島では伊勢市矢持(行者山から約 13km 西南西)で 1999 年の繁殖期にクマタカの棲息を確認している。( 99 年
1 月 6 日、 1 月 X 日 2 月 8 日、 3 月 2 日、 3 月 10 日、 3 月 Y 日、 3 月 Z 日、 5
月 6 日、 6 月 11 日いずれ飛翔、うち 1 回はディスプレイ飛行、 X-Z は日付不明)ここでは繁殖の可能性が高い。矢持から行者山までは数本の道路があるものの、広大な神宮林を含み、連続した山林であり、開発はほとんどされていない。この山林に複数つがいのクマタカが棲息繁殖し、その棲息繁殖域の末端にこの亜成鳥の生息域(なわばり)がある可能性がある。亜成鳥は一般に定住性がつよく、比較的狭い縄張り内で過ごすと考えられる。行者山周辺がその縄張りである可能性が高い。

クマタカの飛翔クマタカの飛翔


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