プレスリリース 2018.09.18

2018年9月18日

世界で初めて、絶滅危惧種の鳥アカコッコの
周年の利用地域を把握しました

 公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博、会員・サポーター:約4万6千人)は、東京都三宅村のご協力のもと、2010年から絶滅の恐れのある鳥アカコッコの保護と生態調査に取り組んでいます。当会は、保護を進めるために必要な生態を明らかにするため、2017年から超小型GPS受信機(PinPointGPS、重さ1.7g)を5個体のアカコッコに装着して調査を実施しており、この度、世界で初めて、1年を通した利用地域の情報を得ることに成功しました。

■アカコッコは一年を通して三宅島に滞在 ~大路池と雄山を行き来~

 これまで、アカコッコの周年の利用地域について詳しい情報は無く、特に非繁殖期は断片的な観察情報があるのみでした。今回の調査の結果から、繁殖期に三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館周辺を利用していた成鳥のオス2個体は、一年を通して三宅島のごく限られた地域を利用していることが分かりました。この2個体は、繁殖期が終わる8月以降、12月までの間に大路池周辺から雄山の中腹に移動し、繁殖期が始まるかなり前の1月にはアカコッコ館の周辺に戻るという、互いに似た移動経路を持っていました。

 アカコッコが雄山のどの程度の標高まで登っていくかは、植生の発達具合に左右される可能性がありますが、今後、現地にてアカコッコの利用地域の環境を調べ、ここを利用する要因を解明する必要があると考えています。また、冬期に三宅島では観察されるアカコッコが減少する、越冬期には伊豆諸島を北上するとも言われていますが、今回の結果からは確認できなかったため、今後、例数を増やすとともに、若齢個体やメスについても調査を進めていく予定です。こうした調査結果を活用し、アカコッコの減少要因を解消し、三宅島を始めとしたアカコッコの生息地での個体数増加に取り組んでいきます。

■今回の調査について

1)使用した機械について
 今回の調査に使用した超小型GPS受信機は、重さ1.7g、アンテナを含む大きさ約5cmのカナダ製のPinpointGPSと呼ばれる機械で、GPS衛星の電波を受信して位置情報を取得、機械内部のメモリにデータを蓄積します。
 非常に小型であるためアカコッコのような体重の軽い種にも装着することができ、GPSを利用しているために位置情報の精度が高いのが利点です。代わりに、内蔵している電池の容量が小さいので取得できる位置情報に制限があり、今回のように一年間の動きを把握するためには10日に1回程度しか受信できません。
 さらに、メモリに蓄積されたデータを得るには、機械を装着したアカコッコを1年後に再度捕獲し、機械ごと回収しなければなりません。今回の調査では2017年7月に装着、2018年7月に回収を行ないました。

2)アカコッコへの装着について
 PinpointGPSのアカコッコへの装着は、テフロン加工されたヒモを使い腰にランドセルを背負うようにして取り付けます。テフロン加工したヒモは滑りが良く、皮膚に擦り傷を作ることが無いとされています。また、長くても3年程度で劣化し、再捕獲できなくても機械が自動的に脱落するため、鳥に不要な負担を強いることが無いよう配慮しています。

PinPointGPSを着けたアカコッコ
図1.PinPointGPSを着けたアカコッコ(左)。矢印は受信機のアンテナ。
PinPointGPS(右)。輪に足を通して固定する。

受信機のアンテナ


3)アカコッコの利用地域について
 2017年に装着したPinPointGPS5個のうち、アカコッコの成鳥オスに装着した2個を回収した。利用地域は図2、3の通り。

個体A(成鳥オス)
図2:個体A(成鳥オス)の2017年7月から2018年6月までの動き

個体B(成鳥オス)
図3:個体B(成鳥オス)の2017年7月から2018年7月までの動き


■アカコッコ保護事業について

 アカコッコは、ヒタキ科ツグミ属の鳥で、伊豆諸島とトカラ列島、屋久島、男女群島といった限られた地域に分布する日本固有種です。体長は約23㎝。三宅島は代表的な生息地となっています。三宅島では1970年代、80年代にネズミ類による農林業被害対策のためニホンイタチを放獣したところ、イタチの増加に対応するようにアカコッコの個体数が大きく減少し、さらに、イタチ放獣前は85%と高かった巣立ち率が、放獣後には7.3%に低下してしまいました。また、2000年におきた山頂噴火の影響で、森林面積の約6割が被害を受け、この大規模な森林面積の減少により、照葉樹林や夏緑樹林を好むアカコッコも数を減らしたと考えられています。その結果、2006年には、環境省により絶滅危惧指定がⅡ類(VU)からⅠB類(EN)へと引き上げられました。2015年に当会と三宅島の島民の皆さんと行った個体数調査の結果、三宅島のアカコッコの個体数は約7,800羽(2015年現在)と推定されています。
 本事業は、アカコッコの生息状況の把握及び生息数増加のために行っています。長期的には、本事業で確立された管理手法が伊豆諸島全域で実施され、レッドリストにおけるアカコッコのランクが下がる(当面の目標としてVU)ことを目標としています。

1)目標
(1)アカコッコの基礎データを積み上げて、生態および現況の生息状況を把握する
・アカコッコの生息状況や生態を把握する(伊豆諸島、トカラ列島)
・アカコッコの利用地域、移動ルートの把握する
・アカコッコの現況の生息数や生息数の変化についてまとめて一般化する
(2)アカコッコの個体数増に向けた森づくりを実施する。その効果を検証しながら、アカコッコを増やすための森づくりモデルを確立し、協力者を増やす
(3)外来の捕食者対策を考案する

2)概要
 2010年に事業を開始、2012年からアカコッコの生態調査や村有林をお借りしてのアカコッコの好適環境の調査などを行い、その結果を基にアカコッコの生息環境を改善するための森づくり活動を展開してきました。
 これらの活動は、主に繁殖期の利用地域において行ってきましたが、アカコッコの保護のためには、移動や周年の生息地域での保護も重要となります。アカコッコの利用地域を明らかにすることで保護の対象地や課題、森づくりの展開の可能性を把握するため、2017年からPinPointGPSを用いた調査を開始しました。2018年7月までにPinPointGPS 2個の回収に成功、データを得ることができ、世界初の記録となりました。

【事業に関するお問合せ先】

公益財団法人日本野鳥の会
保全プロジェクト推進室 TEL 03-5436-2634/FAX 03-5436-2635
東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
担当:手嶋洋子(teshima@wbsj.org)、田尻浩伸(tajiri@wbsj.org)
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