プレスリリース:日本野鳥の会とサロベツ・エコ・ネットワークが「シマアオジ」の生息地14.8ヘクタールを購入

2020年6月11日

「公益財団法人 日本野鳥の会」(事務局:東京)と、「認定NPO法人 サロベツ・エコ・ネットワーク」(北海道豊富町)は、協働の事業として、「絶滅危惧種の保全のために」と寄せられたご寄付を元に、北海道・サロベツ原野のシマアオジ生息地14.8haを購入しました。購入した土地は「野鳥保護区シマアオジ第1」とし、恒久的に保全いたします。

国内で繁殖するシマアオジの総つがい数は、2019年にはわずか10つがい強であり、国内絶滅の危機に瀕しています。また、生息つがいの営巣場所のほとんどは利尻礼文・サロベツ国立公園や国指定サロベツ鳥獣保護区内に位置し、法的な保護指定のある場所に生息しています。

極端に繁殖つがい数が減少している中で、今回購入した当該土地をシマアオジは利用していますが、保護区外に位置するため、農地整備等による生息環境の消失の恐れがあります。購入した土地は、過去に農地として改変されたことがないため良好な草原環境が維持されています。現在シマアオジの営巣は確認されていませんが、姿が確認されている場所であり、過去に繁殖記録もあるため、今後の営巣場所としての利用が期待できます。そうした背景から、シマアオジの繁殖場所を確保するため、寄付を財源としてこの土地を購入することといたしました。

今後、シマアオジの新たな繁殖場所が確認された場合は、土地のさらなる確保を行ない、野鳥保護区として保全する活動を継続する予定です。

注)土地の所在等は希少種保護の観点から非公表とさせていただきます。

シマアオジ
シマアオジ(学名:Emberiza aureola
スズメ目ホオジロ科ホオジロ属
全長約 15cm

サロベツ原野
サロベツ原野

提供:サロベツ・エコ・ネットワーク 写真:長谷部真

■シマアオジ Emberiza aureola について

シマアオジは、スズメ大の大きさの小鳥で、日本では北海道に渡来し、繁殖を行なう夏鳥です。西はフィンランドから東はカムチャッカ半島にまでおよぶ広大な範囲で繁殖し、北部ユーラシア大陸の草原環境で繁殖する最も数の多い小鳥の一つでした。北海道でも草原でごく普通にみられる野鳥でしたが、1980年代以降、急速に繁殖の分布域を狭めてきました。北海道のほとんどの場所で繁殖が見られなくなり、現在はサロベツ原野の一部でのみ繁殖が確認されている状況です。

IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでCR(近絶滅種)、環境省版レッドリストでも絶滅危惧ⅠA類と最も絶滅のおそれの高いランクにあり、2017年には「種の保存法」の指定種となっています。

減少が世界中の生息地の広い範囲で確認されていることから、その要因は中継地である中国や越冬地である中国南部や東南アジアでの密猟や生息環境の悪化が減少の要因とも言われています。

■保護活動について

日本野鳥の会とサロベツ・エコ・ネットワークの協働および環境省によって、2017年から繁殖状況の調査をサロベツ原野で行なっています。その結果、2017年は31つがい、2018年には25つがい、2019年には14つがいと、繁殖つがい数が2年で半減していることを把握しました。

日本野鳥の会とサロベツ・エコ・ネットワークでは、サハリンの鳥類研究者とも協力して調査を行なっており、サハリンの繁殖個体群が北海道のそれと遺伝的にほぼ同じこと、北海道と同様に繁殖個体数が減少していることを確認しました。

また、日本野鳥の会がメンバーである国際環境NGO「バードライフ・インターナショナル」と協力して、ロシア、モンゴル、韓国、中国、香港、東南アジア各国の鳥類関係者と、保護のための枠組みの構築と調査活動を進めています。

■NPO法人サロベツ・エコ・ネットワークについて

NPO法人サロベツ・エコ・ネットワークは、サロベツ及び周辺の自然と地域を愛する人々が集い、平成16年5月に設立されました。

自然環境の保全活動、調査研究活動及び環境教育活動を通して、自然と人間との共存の大切さを広く発信し、あわせて地域の発展、まちの活性化に寄与し、サロベツ及び周辺の豊かで美しい自然を次世代に引き継ぐことを目的として、地域に根ざした活動を続けています。

<具体的な環境保全活動>
サロベツに生息する絶滅危惧種のシマアオジ・チュウヒ・オジロワシ・マガン・ヒシクイ・ミコアイサ等の調査・保全・普及啓発活動

(詳しくはホームページ http://sarobetsu.or.jp/

■「日本野鳥の会」について

「野鳥も人も地球のなかま」を合言葉に、野鳥や自然の素晴らしさを伝えながら、自然と人間とが共存する豊かな社会の実現をめざして活動を続けている自然保護団体です。

独自の野鳥保護区を設置し、シマフクロウやタンチョウなどの絶滅危惧種の保護活動を行なうほか、野鳥や自然の楽しみ方や知識を普及するため、イベントの企画や出版物の発行などを行なっています。会員・サポーター数は約5万人。野鳥や自然を大切に思う方ならどなたでも会員になれます。

<組織概要>
組織名 :公益財団法人 日本野鳥の会
代表者 :理事長 遠藤孝一
所在地 :〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
創立 : 1934(昭和9)年3月11日 *創立86年の日本最古にして最大の自然保護団体
URL : https://www.wbsj.org/

■本リリースの配布先

環境省記者クラブ、稚内市役所記者クラブ 同時発表

■報道関係者様 問い合わせ先:(画像の提供も下記にお問い合わせください)

■公益財団法人日本野鳥の会 自然保護室
担当:葉山 政治(はやま せいじ)
〒141-0031 品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
TEL:03(5436)2633 携帯電話:090(8392)5027
E-mail:[email protected]

■特定非営利活動法人サロベツ・エコ・ネットワーク
担当:長谷部 真(はせべ まこと)
〒098-4122 北海道天塩郡豊富町字豊富東2条5丁目
TEL: 0162(82)3950 FAX: 0162(73)0360
E-mail:[email protected]