プレスリリース:世界最大の野鳥観察データベースeBirdの日本語版eBird Japanを公開

2021年11月1日

(公財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:上田恵介、会員・サポーター数:約5万人)は、コーネル大学鳥類学研究室(Cornell Lab of Ornithology)と協働で、世界最大の野鳥観察プロジェクトeBird(イーバード)を日本語で利用できる“eBird Japan”を開発し、本日公開しました。

eBirdは誰でも無料で利用できるオンラインの野鳥観察データベースを核とする、科学研究プロジェクトです。世界中のバードウォッチャーと共有できるデータベースを利用することで自分が見た鳥の記録だけでなく、まだ見たことがない鳥が見られる場所の検索や、世界各地のバードウォッチングスポットの検索などもできます。

eBird Japanは、eBirdのポータルサイトとして、eBirdの持つ機能や様々なサービスを日本語で利用できるように、日本野鳥の会がサントリーホールディングス株式会社の協賛を得て作成しました。

eBird Jaoanサイトイメージ

eBirdには、世界各国の70万人を超える利用者から、1万種以上の野鳥の観察記録が寄せられており、その数は10億件にのぼります。蓄積されたデータは鳥類の分布の変遷などの研究にも活用されています。eBirdに日本の野鳥観察記録が増えることで国内のデータが充実すれば、それらを活用した科学研究や自然保護活動が可能になります。

“eBird Japan”ができたことで、バードウォッチングの楽しみ方が広がるとともに、一人ひとりの観察記録が世界中のバードウォッチャーや研究者、自然保護団体と共有され、さまざまな野鳥保護・調査研究活動に活用されることが期待できます。

eBirdとは

世界的な科学研究プロジェクト

eBirdは、コーネル大学鳥類学研究室が運営する、世界的な科学研究プロジェクトです。世界中のバードウォッチャーの野鳥観察記録をオンラインで共有し、鳥類の研究や保護に役立てることを目的としています。2021年10月現在、eBirdの利用者は711,148人にのぼり、日々増え続けています。

13か国語に対応 非営利ならば自由に利用できるデータ

eBirdは、コーネル大学鳥類学研究室と、世界中のパートナー団体、何千人もの地域の専門家、何十万ものユーザーとの共同で運営されています。日本のポータル“eBird Japan”は、サントリーホールディングスの協賛を得て、(公財)日本野鳥の会が運営管理しています。

eBirdは13か国語に対応しており、世界中で利用できます。また、eBirdのデータは、調査研究や教育活動、自然保護活動など非営利目的であれば、自由に利用できます。

eBird概念図(画像クリックで拡大)

eBirdの主な機能

1.野鳥情報の検索

見たい鳥が見られる場所・時期の検索や、人気のバードウォッチングスポットの検索、他のバードウォッチャーの観察記録などを見ることができます。

eBird Jaoan検索ページイメージ
  • 種の検索:種の検索ページと分布域マップから、見たい鳥がどこで見られるかを詳しく知ることができます。種のページでは、他のeBird利用者が投稿した野鳥の写真や動画を見たり、音声を聞くことができます。
  • 場所の検索:地域や国で検索すると、そこでどんな種が観察されているかを見ることができます。他のバードウォッチャーがおすすめする、人気のバードウォッチングスポットも探すことができます。

2.観察結果の投稿・共有

eBird Jaoan観察結果の投稿ページイメージ

自分の野鳥観察記録を投稿し、オンラインでデータベースに保存・共有ができます。野鳥観察リストのほか、音声や写真、ビデオなどのメディアも投稿できます。また、前年の記録と比較したり、特定の場所や日にちに観察された鳥のリストを見ることもできます。

eBirdモバイルアプリ

リアルタイムでの野鳥観察の記録、結果の投稿には、モバイルアプリが便利です。

*公開後は日本語で利用いただけます

アプリ「Merlin(マーリン)野鳥識別」

「Merlin野鳥識別」は、eBirdに蓄積された野鳥観察情報を利用して、識別をサポートする無料アプリです。見た鳥の場所や時期、特徴、写真などから、世界中の8,000種以上の鳥類を識別することができます。

*Merlinは、eBirdに投稿される野鳥観察情報を利用しているため、eBirdの日本の利用者が増え、国内の野鳥観察記録が充実することにより、Merlinの識別能力も向上します。

詳細リンク


科学研究や、自然保護活動への活用

eBirdは、市民参加型の鳥類調査のプラットフォームとして、大規模なモニタリングプログラムに活用されています。eBirdのデータベースには、世界規模の鳥類モニタリング(繁殖分布調査、クリスマス・バードカウント(CBC)等)による観察結果も含まれています。

また、eBirdの観察結果は、eBirdサイエンスチームが開発した南北アメリカ大陸のツバメの個体数マップのように、個体数と分布のモデル作成にも使われています。

南北アメリカ大陸のツバメの個体数マップ

さらに、eBirdのデータを他の調査と組み合わせることで、自然保護の政策決定にも役立っています。例えば、米国カリフォルニア州で繁殖するサンショクハゴロモガラス(Agelaius tricolor)の個体数が、eBirdの観察データ等から10年間で約34%減少したと推定されたことで、この種は絶滅危惧種に指定されました。同じく米国では、eBirdのデータからハクトウワシ(Haliaeetus leucocephalus)の個体数をマッピングし、風力発電の開発を行う際に、衝突リスクが低い地域を特定しました。

このほかにも、2020年には2,500人以上がeBirdのデータを分析しています。


*eBirdを利用した調査・研究者の数 – 文献のリストはこちら(英文):https://ebird.org/science/research-and-conservation/publications


日本野鳥の会 組織概要

組織名:公益財団法人 日本野鳥の会(会員・サポーター 約5万人)
代表者:理事長 遠藤孝一
所在地:〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
URL:https://www.wbsj.org/

本プレスリリースのPDF版はこちら/350KB