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大規模白化から2年経過した三宅島周辺海域の造礁サンゴの状況
2026年6月11日
主催:三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館
共催:コーラル・ネットワーク
1. 三宅島でのリーフチェックの経緯と調査方法
三宅島では1998年より調査を開始し、2000年の雄山噴火に伴う全島避難で一時調査を中断した。2005年の帰島以後は、2007年以外毎年実施し、今回の調査は23回目となる。今回はコーラル・ネットワークのリーフチェックコーディネーター1名、駒沢大学応用地理研究所所員1名、島内のダイビングショップインストラクターおよびスタッフ3名、日本野鳥の会の職員でアカコッコ館のスタッフ1名で富賀浜と伊ヶ谷(カタン崎沖)を調査した。
世界共通の調査方法に準じ、サンゴ群集上にメジャーで100mのラインを設置し、ライン直下の構成種を造礁サンゴ、海藻、砂床など10種に分類し記録した。あわせて、ライン周辺の魚やエビ、ウニなど世界共通の対象種および三宅島独自対象種の生きものの数を記録した。
※リーフチェックとは
サンゴ礁の健康度を測るために世界同一基準で用いられているモニタリング調査で1997年に始まった。アメリカ・カリフォルニアに本部を置く民間団体が推進している。調査は科学者とボランティアダイバーでチームを編成し、サンゴ、魚類、海底の生物など国際基準の調査項目を潜水して調査し、調査結果をインターネットを通じて本部に送る。各地の結果は毎年本部で取りまとめられ、ホームページなどを通じて公表される。
2. 調査結果
(1)富賀浜
富賀浜では、今年海底の1.9%がサンゴに覆われていた(2023年68.8%、2024年23.1%、2025年1.3%)。造礁サンゴは昨年1.3%まで減少しており、それは2024年夏の高海水温による大規模白化に伴うものである。本海域で優占的に生息していた卓状ミドリイシ群生は、全滅しており、死亡したサンゴの表面を藻類が覆っている状態であった。なお、今年の調査時に、測線上で白化したサンゴは認められなかった。
調査区域内ではオニヒトデや他のサンゴ食生物による食痕もみられていない。調査ライン周辺の魚類については例年確認されていたチョウチョウウオが確認されなかった。無脊椎動物においては例年通りの結果となった。2019年から見られていた漁網くずが今年も数カ所で見られた。

調査始点付近の漁網くず(撮影:鈴木倫太郎)
(2)カタン崎
今年の伊ヶ谷では、海底の11.3%が造礁サンゴに覆われていた(2023年43.1%、2024年度24.4%、2025年10.6%)。富賀浜同様、2024年夏の高海水温による大規模白化に伴い減少した造礁サンゴの回復は見られなかった。また、測線上で白化したサンゴも認められなかった。
サンゴ食の生きものではサンゴ食の巻貝等は認められなかった。オニヒトデは確認されていない。サンゴ周辺の生きものでは、調査対象の魚類、無脊椎動物ともに目立った変化がなかった。

調査の様子(伊ヶ谷)
3. 総評(駒沢大学応用地理研究所 鈴木倫太郎 博士 コメント)
2024年に世界規模で確認された造礁サンゴの白化現象は、三宅島周辺海域でも広範囲に発生し、同年夏季の高海水温により造礁サンゴ群集は大きく衰退した。それから約2年が経過した2026年6月現在、各調査地点における造礁サンゴ被度は以下のような推移を示している。
富賀浜(水深5m)における被度の推移
白化現象前の2023年6月には68.8%の高い被度を記録していたが、2024年10月には23.1%に急減し、2025年6月には1.3%にまで落ち込んだ。富賀浜の広範囲に見られた卓状ミドリイシの群生はほぼ消失し、その後も回復が見られない状況が続いている。2026年6月の最新調査時点でも1.9%にとどまっており、極めて低い被度のまま推移している。
伊ヶ谷(水深10m)における被度の推移
2023年6月時点では43.1%を維持していたが、2024年夏の高水温期を経た同年10月には24.4%へと減少し、翌2025年6月には10.6%まで低下した。2026年6月の最新調査では11.3%となっており、大幅な減少後の低い被度で推移している。
両海域の現状と今後の展望
造礁サンゴは海水温などの環境変化に敏感に応答することから、沿岸生態系の変化を把握する上で重要な指標生物とされている。2024年夏に三宅島周辺海域で継続した高水温環境は、富賀浜と伊ヶ谷の双方に著しい影響を与えた。発生から約2年が経過した2026年現在も、両地点ともサンゴ被度は低い水準で推移しており、顕著な回復傾向は認められていない。
なお、そのほかの無脊椎動物や魚類については、全体として大きな変化や特筆すべき変化は確認されなかった。しかしながら、造礁サンゴが大規模に減少した富賀浜においては、これまで確認されていたチョウチョウウオ類が確認されなかった。この結果は伊ヶ谷では見られず、富賀浜のみで確認されたものである。
チョウチョウウオ類にはサンゴのポリプを餌資源とする種が含まれるほか、サンゴ群集の隙間を隠れ場所として利用する種も知られている。そのため、富賀浜でのみチョウチョウウオ類が確認されなかったことは、サンゴ群集の衰退が生物相へ影響を及ぼしている可能性を示唆する結果と考えられる。
今後も引き続きこれらの定点における動向を注視し、長期的なモニタリングを継続する必要がある。それとともに、変化した島内沿岸域のサンゴ群集の現状をより包括的に把握するため、三宅島内における新たなモニタリング地点の選定についても検討していきたい。

調査メンバー







