JP005 枝幸・目梨泊(えさし・めなしどまり)
北海道:枝幸町
| 位置 | N 45°02′ E 142°31′ |
| 面積 | 5ha |
環境構成【岩礁、草地】

写真:村山良子
枝幸町はオホーツク海に面した南北54km、東西約7.5kmの細長い町である。北端の神威岬(斜内山438.9m)を背景に位置する目梨泊地区に、堤防で繋がった海岸に突き出た周囲およそ600mの岩場はウミネコ繁殖地となっている。また郡界と接する南端海上約2km沖のゴメ島(オオセグロカモメが主、ウミウ) と共にオホーツク海沿岸の数少ない繁殖地である。
総面積50,947haの約68%を占める山林と24%の原野が広がるこの地は、東樺太海流によって運ばれた流氷群が最初に接岸する町であるが、近年はかつてのように大氷原に何日も覆われることは少ない。
年平均気温が最も低く、日本で1、2を隣町と争っている。この地区の目梨泊遺跡から国重要文化財指定の埋蔵出土品19点が出ている。
選定理由
| A4i | ウミネコ |
保護指定
法的な担保がない、もしくはわずか(10パーセント未満)である
<その他>
町指定天然記念物 音標ゴメ島
保全への脅威
- 港湾保全による堤防等作業(昭和40年~平成21年頃迄)
- 漁業の影響による餌資源の減少
- 過去に高波、4月末の降雪と戻り流氷があった
- 時々カメラマンや遊ぶ子供、漁民が仕事等で立ち入ることがある
- キタキツネによる捕食
保全活動
- 定期的なセンサス:昭和57年より継続(天敵による攪乱のため未調査年あり)
※サイト情報の詳細版はこちら(PDF 487KB)
※枝幸・目梨泊の周辺海域は、マリーンIBA(Marine Important Bird and Biodiversity Areas:海鳥の重要生息地)に選定されている。 詳しくはこちら
JP004 クッチャロ湖(くっちゃろこ)
北海道:浜頓別町
| 位置 | N 45°08′ E 142°18′ |
| 面積 | 2,803ha |
環境構成【湖沼、湿原】

写真:浜頓別クッチャロ湖水鳥観察館
クッチャロ湖は北海道北部のオホーツク海に面した海跡湖である。周囲27km、平均水深1.5mで、大沼(長径5.5km)と小沼(長径3.0km)の2つによって形成されている。標高が低く約3km離れたオホーツク海の海水が満潮時に川を逆流して流入している。周辺はスゲやミズゴケ、ヨシなどの湿原帯に覆われ、8本の流入河川がある。春と秋に数千羽のコハクチョウや数万羽のカモ類が飛来する。
選定理由
| A4i | コハクチョウ |
| A4iii | コハクチョウ |
保護指定
サイトの全域(90%以上)に法的な担保がある
<保護指定の内容>
国指定鳥獣保護区(浜頓別クッチャロ湖)、都道府県立自然公園(北オホーツク道立自然公園)、自然環境保全地域、保護林
<その他>
ラムサール条約湿地、東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ参加地
保全への脅威
- 農地改良等による堆積物の流入
- 海水の流入による植生等の変化
- 流水域での営農等により、湖へ有機物が流入し、富栄養化が見られる。
- 昭和初期に天然林の伐採が行われていた。
- 平成元年頃までは、湖は冬になると完全に結氷していたが、温暖化により、少しずつ冬に湖が結氷しない面積が広がっている。また、近年、大雨や強風によって、一時的に湖が増水し、流木などの大量の漂着物が流入する事が増えている。
- 湖周辺をはじめ、宗谷管内全域で複数の風力発電の建設計画が進んでいる。
- アライグマ・セイヨウオオマルハナバチの生息が確認されている。アライグマは定期的な駆除を行っているが、個体数の減少には至っていない。マルハナバチについては、駆除は進んでいない。
保全活動
- 環境管理:実施者(環境省・浜頓別町)
内容:定期的な水鳥の飛来状況の把握。情報の提供。国指定鳥獣保護区保全事業
の実施。植樹活動等。水質調査の実施。 - 外来種のコントロール:実施者(浜頓別町)
内容:アライグマの駆除。周辺地域を含めて、町内で年間約20頭程度の駆除を
実施している。 - 環境教育活動:
内容:教育機関と連携した自然観察会等の設置。地域の小中学校、高校と自然観察
会や環境についての学習会を実施(浜頓別町)
清掃活動の管理、環境教育(浜頓別町)
各季節の観察会、(浜頓別クッチャロ湖水鳥観察館) - 保全のための人材育成活動:実施者(浜頓別町)
内容:ジュニア活動の実施。他のラムサール条約サイトの子ども達の交流会なども
実施。 - 法律制定、政策、規制:実施者(北海道)
内容:「クッチャロ湖湿原保全プラン」を策定。 - モニタリング調査:実施者(浜頓別町)
内容:ガンカモ類飛来シーズンに月3回の調査を実施。定期的な水質調査の実
施。 - 経済活動を通じた保全(エコツーリズム等):実施者(NPO団体)
内容:NPOクッチャロ湖・エコワーカーズが、カヌー等のエコツアーを実施。 - その他
標識調査(浜頓別町)
植樹、炭素繊維による水質浄化(クッチャロ湖保全対策協議会)
※サイト情報の詳細版はこちら(PDF 412KB)
リンク
JP003 サロベツ原野(さろべつげんや)
北海道:稚内市、豊富町、幌延町、天塩町
| 位置 | N 45°06′ E 141°41′ |
| 面積 | 15,000ha |
環境構成【湿地、湖沼、砂丘林、湿原(低層・中間層・高層)】

写真:水上勝夫
サロベツ原野は、サロベツ川の流域にあり、開拓初期の湿原は東西5~8km,南北27kmにわたって広がり、面積はおよそ20,000haあり、その70%の14,600haが泥炭地となっている。ペンケ沼、パンケ沼、兜沼をはじめ、いくつもの湖沼が点在しておりこれらの湖沼では水鳥たちの渡りの中継地となっている。
サロベツにおいて湿原は、低層湿原~中間湿原~高層湿原と分布しており湿原の成り立ちが自然観察遊歩道を歩くだけで体感できる。また、低地において高層湿原の植物等を観察できるのもサロベツの特徴であり、現在においても自然景観を維持している。
近年、地下水位の低下により湿原の乾燥化が懸念され、秋にはササ刈りを実施している。
選定理由
| A4i | ヒシクイ |
保護指定
サイトの全域(90%以上)に法的な担保がある
<保護指定の内容>
国指定鳥獣保護区(サロベツ)、国立公園(利尻礼文サロベツ)、自然環境保全地域、保護林
<その他>
ラムサール条約湿地
保全への脅威
- 湿原の乾燥化による湿原性植物の植生変化と鳥類への影響
- 風力発電施設建設による渡りの時期のワシ類の激突死等の鳥類への影響
- パンケ沼及びペンケ沼等湖沼の水質低下と自然環境の変化
保全活動
- 利尻礼文サロベツパークボランティア幌延部会:自然観察会
- NPO法人サロベツ・エコ・ネットワーク:自然観察会、砂丘林再生
- 日本野鳥の会道北:ヒシクイ探鳥会
※サイト情報の詳細版はこちら(PDF 632KB)
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JP002 声問大沼(こえといおおぬま)
北海道:稚内市
| 位置 | N 45°22′ E 141°45′ |
| 面積 | 830ha |
環境構成【湖沼、森林、湿地、牧草地】

写真:疋田英子
稚内市の東に位置する声問大沼は、周囲12kmで、最大水深2.2mの湖沼である。アイヌ語ではシュプントウ(ウグイの沼の意)と言われていた。1958年治水工事で声問川を直線化し、海とつながっている。淡水系、汽水系の魚介類、生きものが棲息している。多くの野鳥が繁殖し、春と秋のコハクチョウやカモ類の渡りの拠点ともなっている。沼の周辺には草花が多く、見る人を楽しませてくれる。湖畔周辺には、野鳥観察施設の「バードハウス」があり、双眼鏡貸出しもしており、市民や観光客などのハクチョウとのふれあいの場や観察教育の場ともなっている。道立宗谷ふれあい公園(キャンプ場あり)と隣接し、大型バスも止められる駐車場がある。道指定の鳥獣保護区ではあるが普通地域の指定のみである。
選定理由
| A4i | コハクチョウ |
保護指定
法的な担保がない、もしくはわずか(10パーセント未満)である
保全への脅威
- ハクチョウへの給餌による沼の富栄養化
保全活動
- 野鳥観察施設、双眼鏡の貸し出し(バードハウス)
- 隣接しており、キャンプ施設、駐車場等がある(道立宗谷ふれあい公園)
※サイト情報の詳細版はこちら(PDF 440KB)
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JP001 利尻島(りしりとう)
北海道:利尻富士町、利尻町
| 位置 | N 45°10′ E 141°14′ |
| 面積 | 175,44ha |
環境構成【島嶼/草原/海岸/森林(広葉樹林)】

写真:小杉和樹
利尻島は北海道北部の日本海に、礼文島とともにある島嶼である。島内の中心には標高1721mの利尻山があり、その山頂から稜線が四方へ広がり、豊かな裾野は海岸となって周囲60㎞程の丸い形を作りあげている。大きさは石垣島よりやや小さく、面積約182km2であるが、北方領土を除くと北海道では一番大きな島である。環境も、海岸、草原、湖沼、森林、高山といった多種多様で極めて自然度の高いことが特徴である。植物ではリシリヒナゲシやリシリアザミといった固有種が知られ、昆虫でも固有亜種の多いことが知られている。
選定理由
| A3 | – |
| A4i | ウミネコ |
保護指定
サイトの全域(90%以上)に法的な担保がある
<保護指定の内容>
国立公園(利尻礼文サロベツ)、道立自然公園、北海道自然環境保全地域、保護林
保全への脅威
- 選定基準種であるウミネコのコロニーがハシブトガラスの捕食圧により移動、並びに縮小している状況にある。
- ハシブトガラスによる海鳥のヒナや卵の捕食
- 公共工事等による外来植物の繁茂による植生変化
- 空港での有害鳥獣駆除(ウミネコ・オオセグロカモメ)
- 利尻、礼文、稚内間のフェリーでの観光客の餌付けの影響
保全活動
- モニタリング調査:実施者(鳥類研究者、野鳥の会道北支部)
詳細:ウミネコのコロニーの形成状況を年に一度モニタリング。 - 各季節の定期探鳥会(利尻町立博物館)
※サイト情報の詳細版はこちら(PDF 412KB)
※利尻島の周辺海域は、マリーンIBA(Marine Important Bird and Biodiversity Areas:海鳥の重要生息地)に選定されている。 詳しくはこちら
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北海道のIBA

サイト名をクリックすると、各サイトのページにリンクします。
| IBAコード | サイト名 |
| 1 | 利尻島 |
| 2 | 声問大沼 |
| 3 | サロベツ原野 |
| 4 | クッチャロ湖 |
| 5 | 枝幸、目梨泊 |
| 6 | 天売島 |
| 7 | コムケ湖、シブノツナイ湖 |
| 8 | 能取湖、網走湖 |
| 9 | 濤沸湖 |
| 10 | 知床半島、斜里岳 |
| 11 | 野付、尾岱沼 |
| 12 | 風蓮湖、温根沼 |
| 13 | トモシリ、チトモシリ島 |
| 14 | ユルリ、モユルリ島 |
| 15 | 霧多布湿原、琵琶瀬湾 |
| 16 | 厚岸湖、別寒辺牛湿原 |
| 17 | 大黒島 |
| 18 | 釧路湿原 |
| 19 | 十勝川下流域 |
| 20 | 十勝海岸湖沼群 |
| 21 | 阿寒、屈斜路 |
| 22 | 大雪山 |
| 23 | 日高山脈 |
| 24 | 石狩川流域湖沼群 |
| 25 | 旧長都沼 |
| 26 | ウトナイ湖、勇払原野 |
| 27 | 鵡川 |
| 28 | 支笏、洞爺 |
| 29 | 八雲 |
| 30 | 亀田半島南岸、函館湾 |
| 31 | 松前小島 |
IBAs in Japan (English)

©Jun Chishima

©Jun Chishima
The selection of Important Bird and Biodiversity Areas (IBAs) is a project which BirdLife International (an international organization for the conservation of birds) has been conducting along with the cooperation of affiliated organizations from more than 100 nations worldwide, including the Wild Bird Society of Japan (WBSJ). This project is aimed at selecting ““important natural habitats using birds as indicator species”based on international criteria (IBAs criteria), conserving not only individual habitats but networks of habitats, globally. The project intends to promote the conservation of individual habitats through supporting the activities of local groups and organizations.
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IBA Criteria
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IBAの選定基準
IBAは4つの世界共通の基準から選ばれる
IBAは、国際的な鳥類保護組織であるバードライフインターナショナル(BirdLife International)の定めた世界共通の基準により選定されます。日本国内については、これまでに日本野鳥の会の全国の支部・会員の皆さまのご協力により進めてきた「鳥の生息環境モニタリング調査」、「鳥類生息分布調査」などのデータを利用し、以下の4つの基準に基づいて選定しました。
基準A1-世界的に絶滅が危惧される種
世界的に絶滅が危惧される種、または全世界で保護の必要がある種が、定期的・恒常的に多数生息している生息地
バードライフインターナショナルの発行しているアジア版レッドデータブックに準拠した、絶滅危惧 I A 類(Critical)、絶滅危惧 I B 類(Endangered)、絶滅危惧 II 類(Vulnerable)、保護依存種(Conservation Dependent), 情報不足種(Data Deficient)に該当する種の相当数(6~10個体)が、定期的、恒常的に生息しているか、生息している可能性がある生息地を選定した。また、シマフクロウなど生息地の公表によって種の生息に不利益が生じると考えられるものについては、一部を除き記載していない。
日本に生息するアジア版RDB対象種の一覧
| 和名 | アジアRDBのカテゴリ | 和名 | アジアRDBのカテゴリ |
| ノグチゲラ | Critical | オオワシ | Vulnerable |
| オオトラツグミ | Critical | ナベヅル | Vulnerable |
| ミゾゴイ | Endangered | マナヅル | Vulnerable |
| コウノトリ | Endangered | シマクイナ | Vulnerable |
| クロツラヘラサギ | Endangered | ヘラシギ | Vulnerable |
| トキ | Endangered | アマミヤマシギ | Vulnerable |
| サカツラガン | Endangered | ズグロカモメ | Vulnerable |
| タンチョウ | Endangered | カンムリウミスズメ | Vulnerable |
| ヤンバルクイナ | Endangered | ヤイロチョウ | Vulnerable |
| カラフトアオアシシギ | Endangered | アカコッコ | Vulnerable |
| シマフクロウ | Endangered | オオセッカ | Vulnerable |
| アホウドリ | Vulnerable | ウチヤマセンニュウ | Vulnerable |
| クロアシアホウドリ | Vulnerable | イイジマムシクイ | Vulnerable |
| カラシラサギ | Vulnerable | メグロ | Vulnerable |
| カリガネ | Vulnerable | ノジコ | Vulnerable |
| トモエガモ | Vulnerable | ルリカケス | Vulnerable |
| アカハジロ | Vulnerable | クロウミツバメ | Data Deficient |
| コウライアイサ | Vulnerable |
基準A2 - 生息地域限定種
生息地域限定種(Restricted-range species)が相当数生息するか、生息している可能性がある生息地
バードライフインターナショナルの発行している「Endemic Bird Areas of the World」(以下EBA)に準拠した、生息地域限定種(Restricted-range species)が相当数生息するか、生息している可能性がある生息地。
生息地域限定種とはバードライフインターナショナルの定義する固有性の高い種の事であり、世界的な繁殖分布域が50,000㎢未満の種のことである。
「Endemic Bird Areas of the World」では、生息地域限定種(以下RR種)の主要な分布域を網羅するようにEBAまたはSA【注1】を設定しているため、IBAにおいてはこの分布域内に存在するRR種の個々の生息地を選定した。また、RR種が定期的、恒常的に生息するサイトを選定し、生息情報があるものの、一時的な記録の可能性がある場合は採用していない。
【注1】
EBA(Endemic Bird Area)は、生息地域限定種の重要な生息地域としてバードライフインターナショナルが選定した地域で、世界で218箇所が指定され、日本では伊豆諸島、小笠原諸島、南西諸島がEBAとなっている。また、SA(Secondary Area)はEBAに準ずる地域で、日本に関するものとしては本州中部低地林、本州中部山岳林、硫黄列島、及び日本・韓国の離島が指定されている。
日本に生息する生息地域限定種(Restricted-range species)の一覧
| 種名 | EBAもしくはSA |
| ミゾゴイ | 本州中部低地林 |
| ヤンバルクイナ | 南西諸島 |
| アマミヤマシギ | 南西諸島 |
| カラスバト | 伊豆・小笠原・南西諸島及び硫黄列島、日本・韓国の離島 |
| ズアカアオバト | 南西諸島 |
| リュウキュウコノハズク | 南西諸島 |
| ノグチゲラ | 南西諸島 |
| リュウキュウサンショウクイ | 南西諸島 |
| オオトラツグミ | 南西諸島 |
| アカコッコ | 伊豆・南西諸島 |
| アカヒゲ | 南西諸島 |
| イイジマムシクイ | 伊豆・南西諸島 |
| メグロ | 小笠原諸島 |
| ノジコ | 本州中部山岳林 |
| ルリカケス | 南西諸島 |
基準A3 - バイオーム限定種
ある1種の鳥類の分布域すべてもしくは大半が1つのバイオームに含まれている場合で、そのような特徴をもつ鳥類複数種が混在して生息する生息地、もしくはその可能性がある生息地
アジアは15のバイオームに区分され、日本はバイオーム02(高緯度森林地帯)、及びバイオーム03(北東アジア温帯林)に属する。よってこれらのバイオームに特徴的な種と、それらの生息に必要な場所が適切に選ばれるよう選定した。
この基準は、他のA1、A2及びA4ほど明確な基準ではないが、IBAが世界の全ての鳥類の生息を保証するために設定された基準であることを考えれば、重要な選定基準のひとつである。しかしながら、日本に適用されるバイオーム種のリストはごく普通に観察される種を数多く含んでおり、選定には慎重を要する。
今回の選定は以下のような方法で行った。
1.環境省の植生分類で植生自然度(全10段階で10が最も自然度の高いもの)が8以上の植生が、1万ha以上存在するサイトを抽出した。
2.環境との結びつきが強い繁殖期に着目し、日本に適用されるバイオーム種のうち、その種の全世界の繁殖分布域の10%程度以上を日本が占める種で、かつ日本全国の分布域が20%未満(島嶼域を除く)の種を抽出した。(日本における分布域の割合を算出するにあたっては、全国鳥類繁殖分布調査のデータを使用した。)
3.1で選定したサイトのうち、2で選定された種が相当数分布するサイトを、A3基準を満たすサイトとして選定した。
また、A1、A2、A4を満たすサイトのうち、バイオーム種が相当数生息するサイトについても、A3基準を満たすサイトとして選定し、この場合のみ種名を記した。
採用したバイオーム限定種の一覧
| BIOME | 種名 | BIOME | 種名 |
| 高緯度森林地帯 | シマセンニュウ | 北東アジア温帯林 | オシドリ、カヤクグリ、サシバ、コマドリ、ヤマドリ、サンコウチョウ、イカルチドリ、クロジ、ケリ、コジュリン、オオジシギ、コムクドリ、サンショウクイ |
基準A4 - 群れをつくる種
水鳥類の一定基準値以上の群れが定期的に渡来・生息するか、その可能性があるところ。渡りの経路上で地理的要因により、一定基準値を超える鳥が集中するところ(ボトルネック)も含む。さらにⅰ~ⅳに区分される。
- A4 i
- 群れを作る水鳥の生物地理的個体群の1%以上が定期的に生息するか、または生息すると考えられるサイト
- A4 ii
- 群れを作る海鳥または陸鳥の世界の個体数の1%以上が定期的に生息するか、または生息すると考えられるサイト
- A4 iii
- 1種以上で2万羽以上の水鳥、または1万つがい以上の海鳥が定期的に生息するか、または生息すると考えられるサイト。
- A4 iv
- 渡りの隘路にあたる場所で、定められた閾値を超える渡り鳥が定期的に利用するボトルネックサイト
- A4 i
- この基準はWetland International (2002)で示された水鳥の種について適用した。閾値はアジアのフライウエイ個体群を合算して定めた。個体数が不明な種についてはアジアの生物地理的な個体数の1%推定値を閾値に用いた。
シギ・チドリについては、その多くの種が旅鳥であるため、1%基準及び、渡りの期間中については(中継地で個体数推定値の0.25%に達する記録があれば、渡りの期間中に1%相当の個体が利用すると推定して用いられている)0.25%基準を適用した。
基準を満たす種の判断に関しては、過去5年の間に3回以上基準値を上回っている種について採用。またはこれに準ずるような種、例えば、過去5年の間に基準値を1回しか上回っていないが、基準値に近い記録がほぼ毎年確認されている場合も採用した。 - A4 ii
- バードライフインターナショナルの推定した世界の海鳥個体数推定値を使用した。個体数が不明な種については、全世界の個体数の1%推定値を閾値に使用した。
特に離島については生息数に関するデータが少ないものが多かった為、データが古いものについても過去20年程度以内に基準を満たす記録があり、これまでに個体数の減少に関する情報がないものについては採用した。 - A4 iii
- これはラムサール条約で用いられる基準と同じである。
- A4 iv
- 閾値は、地域ごとか地域間で適切なものを選ぶ。ここでは2万羽を採用した。
IBAとは?
重要な自然環境を選定し、その法的な保護目標を示す

奥入瀬渓流(十和田) 写真:高橋雅雄
現在、湿地についてはラムサール条約という国際的な枠組みがあり、重要な湿地をリストアップするための基準が示されています。しかし、湿地以外の環境(森林・草原・島嶼・崖地など)について、国際的な重要度を示す基準はIBA基準以外にありません。
ヨーロッパでは「特別保護区(SPA)」を指定するときには、IBA基準生息地リストをもとに指定するよう、EU議会が加盟国に義務付けています。これは、IBA基準生息地リストが、生態系の上位にある鳥類を指標とすることで、重要な自然環境を保全するためによい指針となっているからです。
このように野生生物の保全を考えると、その重要性を反映した数値基準に基づいて、重要な場所のリストを作り、法的指定等の保全目標を定めて、進めていく事がとても大切です。
野鳥の生息に重要な自然環境

新堤・北上川 写真:高橋知明

大雪山 写真:柳田弘子

仏沼 写真:宮彰男
島嶼・崖地:日本沿岸には5目97種の海鳥が生息していて、その多くが1年を海上で過ごしますが、繁殖期だけは上陸します。このため海辺の崖地や島は海鳥類の繁殖地として非常に重要な環境です。
干潟・潟湖:長距離を渡る多くのシギ・チドリ類は、渡り途中に羽を休め食物を採り、次の渡りに備えます。干潟はこの中継地として利用されている、重要な環境です。
淡水性湿地(水田):冬には北から渡ってきて越冬するガン・カモ類やツル類の餌場として、繁殖期には内陸性のシギ・チドリ類の繁殖地として、また春・秋には渡り鳥の中継地としても重要な環境です。
森林:春から夏には南から渡ってくる夏鳥が繁殖する場所として、冬には北から渡ってくる冬鳥の越冬地として、また猛禽類の繁殖地として重要な環境です。
河川:上流域は森林に生息する鳥類の水場として、下流域ではサギ類や淡水性カモ類、カワウなどの餌場としてなど、その流域全体が多くの鳥類にとって重要な環境です。
浅海域:海の水深の浅い場所は海の生物が生産・成長する場所であり、生物量が多いため海上に生息する海ガモ類や海鳥の餌場として、非常に重要な環境です。
草地(放棄地):川岸の裸地や草丈の短い草の生える場所は、シギ・チドリ類やアジサシ類の繁殖地として重要な環境です。
湖沼:ガン・カモ類にとっての餌場として、また外敵に襲われない安全なねぐらとして、重要な環境です。
砂浜:砂浜は砂地で繁殖するシギ・チドリ類やアジサシ類の繁殖地として、また長距離を渡るシギ・チドリ類などの渡りの中継地として重要な環境です。
歴史
IBAプログラムは、バードライフインターナショナル(BirdLife International)の加盟団体が中心となって進めている国際的な事業です。
IBAプログラムが始まった背景は、1979年にヨーロッパでベルン条約(欧州の野生生物と自然の生息地・生息地の保全に関する条約)が結ばれたことにあります。この結果、EU加盟国では鳥類を含む動植物の重要な生息地に対して「特別保護区(SPA)」を定めることになりました。そのときに選定基準として作られたのが、現在のIBAの選定基準の原型です。
そして1989年に、ヨーロッパで最初のIBAリストが発行されました。
当時のリストにはヨーロッパの39ヶ国が含まれており、ヨーロッパ全域において鳥類がどのように分布し、どの場所がその生息地として重要で、またそれぞれがどのような繋がりを持っているのかを指し示す、初めての貴重な資料でありました。
その後、リストは新たな情報に基づいた見直しが行われ、ヨーロッパ各国の保全活動家、鳥類専門家、政策決定機関等に、保全活動計画作成の際のツールとして利用されたり、欧州裁判所においても「野鳥保全に関する重要な参考資料」として認められるなど、その重要性が認識されています。
世界のIBA
IBA基準生息地の選定は、ヨーロッパに続いて中東地域で行われました。ここでは14ヶ国391ヶ所が選定され1994年に目録が出版されました。現在、各国のパートナー団体が協力し、IBAの情報更新を進めています。
南北アメリカ大陸では、1995年にカナダで調査が始まったのを皮切りに各国で選定が進められ、現在では57か国2345カ所がIBAに選定されています。これに並行するように進められていたアフリカ大陸では、現在59か国1250以上のサイトがIBAに選定されています。
アジアのIBA基準生息地の選定は、1997年に始まり2004年3月にそのリストが公開されました。現在、アジア全体では2381カ所のIBAが選定されています。これらのIBAの82%は、絶滅の危機にある鳥類の生息情報をもとに選定されました。アジアのIBAの43%は、国の保護区などに指定されていますが、14%はその一部しか保護区に含まれておらず、半数近くは法的な規制が無い状態です。日本野鳥の会は、バードライフインターナショナルや、アジア各国のパートナー団体と共に、これらIBAの保全に努めていきます。
これまでに選定された世界各地のIBAを合わせると、12000カ所以上になります。そのうち、法的に守られているIBAは約40%です。バードライフインターナショナルでは、IBAの中でも特に生息環境の破壊の危険性が高い地域を“IBAs in Danger”とし、優先的に保護活動を行っています。
IBA(バードライフインターナショナル東京のホームページへ)
IBA(バードライフインターナショナルのホームページへ 英文)
日本のIBA基準生息地の選定

タンチョウ 写真:千嶋淳

十勝海岸湖沼群 写真:千嶋淳
IBA基準生息地の選定は、バードライフインターナショナルの定めた全世界共通の基準により進められています。この基準はバードライフインターナショナルの発行しているアジア版レッドデータブックや世界の固有種生息地リスト、およびウェットランドインターナショナルの発行している水鳥個体数推定値、ラムサール登録湿地に指定される為の基準5および基準6などを元にして定められたもので、おおまかには以下の4点をIBA基準としています。
A1 世界的に絶滅の危機にある種が生息
A2 限定された地域に生息する種、または固有種が生息
A3 あるバイオームに特徴的な種の相当数が生息
A4 多くの渡り鳥が利用/生息
しかしながらこの選定基準は世界共通で利用できる基準として設定してある為、個々の国においてはその国の状況に応じた解釈が必要となってきます。よって日本国内においては、環境条件や生息する鳥類種などから、この基準の解釈をある程度独自に判断する必要がありました。これらの解釈を含めた基準の詳細については選定基準のページをご参照ください。
IBAの選定基準
日本のIBA

日本国内のIBA基準生息地選定作業は1995年に始まり、2003年に国内167地点のIBA基準生息地が選定されました。(2018年現在、110旧浅井新田養魚場が消失し、166地点となっています)
選定された生息地の環境構成は図に見られるように26%の森林と、21%干潟、20%の島嶼および岩礁、約23%の淡水性水域環境でした。これは、すべての日本産鳥類が利用する、環境の割合にほぼ一致することからも、日本に生息および渡来するすべての鳥類の生息地を保全する上で、妥当な選定となっています。今後、日本に渡来するすべての鳥類をバランスよく保全して行くには、このIBA基準で選定されたすべての生息地を保全していくことが重要です。
マリーンIBA
これまでのIBAの選定は、陸域を対象として進められてきましたが、海鳥を指標に、海域を対象とした野鳥の重要生息地マリーンIBA(Marine Important Bird and Biodiversity Areas)の選定が進められています。詳細はマリーンIBA のサイトをご覧ください。
マリーンIBA選定事業ホームページ
KBA(Key Biodiversity Areas)
KBA(Key Biodiversity Areas)とは、生物多様性の保全に世界的に重要な地域のことです。IBAの考え方を鳥類以外の分類群に広げたもので、現在日本では鳥類、哺乳類、爬虫類、両生類、魚類、トンボ類から約100種以上の対象種が生息する232カ所が選ばれています。国内のIBAは、すべてKBAに含まれます。現在選定されているKBAの約半分は保護指定がないため、今後、保護地域にしていくための働きかけが重要となります。
KBAは国際基準により選ばれており、IUCN(国際自然保護連合)の種の保存委員会と、世界保護地域委員会により、選定のガイドラインが発表されています。
KBAの詳細はこちら
KBAのガイドライン
IBAの保護指定状況

国内のIBA166カ所の保護指定状況について、土地の改変を伴う行為が制限される、以下の4つに該当するエリアを「法的担保がある」ものとして、各サイトに占める割合を算出しました。
1)鳥獣保護法(鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律)の鳥獣保護区の「特別保護区」
2)自然公園法の国立公園、国定公園および都道府県立自然公園の「特別保護地区」および「第1種~第3種特別地域」
3)自然環境保全法の「自然環境保全地域」
4)国有林野管理経営規程による「保護林制度(森林生態系保全地域等)」
この結果、「全域(90%以上)に法的な担保がある」サイトは計80箇所(48.19%)でした。
「サイトの大部分(50~90%)に法的な担保がある」サイトは10箇所(6.02%)でした。
「サイトの一部(10~49%)に法的な担保がある」サイトは14箇所(8.43%)でした。
「法的な担保がない、もしくはわずか(10パーセント未満)である」サイトは、62箇所(37.35%)でした。
全体の約半数にあたる80サイトで、サイトの全域(90%以上)に法的な担保がある一方で、法的な担保がない、わずか(10%未満)であるサイトも3割以上を占めています。今後、法的担保がされていないサイト、不十分なサイトに保護指定を拡大していくような働きかけが必要であると考えております。
なお、
・文化財保護法の天然記念物および特別天然記念物
・ラムサール条約湿地
・東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ参加地
については、保護指定としては扱いませんでしたが、該当するサイトのページの「その他」の項に記載しました。
保護指定状況一覧(PDF 257KB)












