ツバメを不安に思う必要はありません

2004年3月25日掲載

身近な場所にやってくる渡り鳥として、ツバメが鳥インフルエンザを運んでくるのではと不安に思われている方もいらっしゃるようです。東南アジアでは犠牲者も出ていますので、ご心配に思われるのももっともでしょう。
しかし、鳥インフルエンザがツバメから人にうつることは考えられません。 小さな体で海を越え数千キロも旅をして日本にやって来るツバメたちを、温かく見守ってあげてください。

ツバメなど野鳥から人への感染例はありません

野外で生活している野鳥から人へ鳥インフルエンザが感染した例はありません。野鳥の中では、カモ類など水鳥が鳥インフルエンザを持っていることがありますが、鳥インフルエンザは高病原性のものであっても人へは感染しないのです。これは、ウイルスへの適合性があるたんぱく質の種類が鳥と人では違うためです。
この冬はアジアの広い地域で鳥インフルエンザが発生しましたが、人が感染したのはタイやベトナムでのごく少数でした。これらの感染例は、飼っていたニワトリの糞の粉塵を吸い込むなど、ウイルスを多量に取り込んでしまった特殊な例と考えられています。
ツバメは人家に営巣しますが、軒先など開放環境に営巣するので、感染の心配はありません。

春から夏にかけて鳥インフルエンザは終息してゆくと思われます

これからは鳥たちの繁殖期です。繁殖期になると、ツバメなど多くの鳥はなわばりを作ってつがいごとの生活となり、鳥同士の接触も減ります。このような中では、もし渡ってきた時にウイルスを持っていた鳥がいたとしても、他の鳥にうつす機会がないまま、体の中に抗体ができて、ウイルスも消滅してゆくと考えられます。
また、インフルエンザのウイルスは、気温が高くなると寿命が短くなりますし、湿度が高くなると、埃が減るので空中を漂うことも少なくなりますので、感染は終息していくと思われます。

気になる方はツバメの巣の下などを清潔に

鳥インフルエンザのウイルスとは関係なく、糞がたまると衛生面でも好ましくないので、時々掃除することをお勧めします。
巣の下に糞を受けるもの(古新聞などで十分です)を置いて、時々取り替えたり掃除をすることで清潔にしておくことができます。

正しく理解しよう 鳥インフルエンザ

最新情報はこちら

2005年5月、中国青海湖で約3000羽のインドガンが高病原性鳥インフルエンザで死亡するという大事件が起こりました。その後、夏から秋にかけて西シベリアからヨーロッパへも拡散して、10月には中国の揚子江流域や、遼寧省でも発生しています。インドネシアやベトナム、タイでは人への感染が続き、人-人感染を起こす新型インフルエンザ発生に備える国際会議が、毎週のように開かれています。
日本野鳥の会は、高病原性鳥インフルエンザの広がりによる混乱を防ぐためには、鳥インフルエンザについての正しい知識が必要と考え、野鳥誌2004年11月号で鳥インフルエンザについて特集しました。この度、広く一般の人にも見ていただけるように、この特集記事をホームページでも掲載することにしました。

(2005年11月)

2004年9月、タイ保健省は同国で高病原性鳥インフルエンザが発生したことを確認しました。これを受け世界保健機構は拡大阻止を目指し、警戒を強めています。日本もこれからインフルエンザのシーズンを迎えます。その前に、高病原性鳥インフルエンザとはどんな病気なのか、整理してみましょう。

鳥インフルエンザと高病原性鳥インフルエンザを区別する

2003年の冬は、鳥インフルエンザ・パニックとでも言える状況が起こりました。野鳥は大丈夫なのかと聞かれた会員の方もいたでしょう。なぜ、パニックと言わざるを得ない状況になってしまったのか。大量にニワトリが死に、防疫処置をする担当者のものものしい姿が報道され、不安感が高まったことが大きな原因です。不十分な報道や思い込みによる偏見もあったでしょう。
鳥インフルエンザについて考える時に重要なことは、普通の鳥インフルエンザと高病原性鳥インフルエンザを、はっきりと区別することです。普通の鳥インフルエンザは低病原性鳥インフルエンザとも言われるように、鳥が感染しても病気にはなりません。これは、鳥インフルエンザがツンドラ地帯で水鳥たちと仲良く共存してきたウイルスだからです。毎冬、多くのカモやハクチョウたちがウイルスを運んで日本にやって来ますが、これが家畜に移って問題になることはありませんでした。鳥インフルエンザは自然界に組み込まれている、安全なウイルスなのです。
一方の高病原性鳥インフルエンザは、自然界では無害なウイルスが、人間が作った“養鶏場”という高密度で家畜を飼育する状態で、急速に感染を繰り返すうち変異して凶暴化した特別なウイルスです。ウイルスを持っているのは家畜で、感染もほとんどが家畜や肉の流通、養鶏場やアヒル農場間の人やクルマの移動を通して起こっていると考えられています。特にアヒルは、ニワトリに比べ抵抗力があり発症しにくく、感染が広まっていても気づかないことがあります。韓国では、アヒルの移動で感染が広まったとされていますし、過去には中国から輸入された冷凍アヒル肉から高病原性鳥インフルエンザ・ウイルスが見つかったこともあります。このように感染が繰り返された結果、中国南部から東南アジアでは、家畜飼育の間で高病原性鳥インフルエンザが常在化していると考えられています。

このように、普通の鳥インフルエンザと高病原性鳥インフルエンザは、病原性が違うだけでなく、存在する場所も、野鳥との関係もまったく違うので、区別して考える必要があります。また、高病原性鳥インフルエンザは、ニワトリ以外の鳥にも病気を起こす可能性があります。人間界から自然界にウイルスの放出が起これば、多くの野鳥が被害者となるかもしれません。発生農場からは、排水により近くの水系がウイルスに汚染されたり、堆肥置き場に集まる鳥が感染するなどが考えられます。それが数少ない希少種であったら、その影響は極めて大きくなるわけです。

ツンドラでの低病原性鳥インフルエンザの動きと地域の図ツンドラでの低病原性鳥インフルエンザの動きと地域の図南方での低病原性から高病原性鳥インフルエンザに変異する流れの図

高病原性鳥インフルエンザはどこから来たの?
高病原性鳥インフルエンザは、アジアの広い地域で発生しました。タイ、ベトナム、日本、韓国のウイルスの遺伝子を比較した結果、日本には韓国か、韓国と共通の発生源からやってきたようです。
上の地図で冬鳥の日本への渡りルートと高病原性鳥インフルエンザの発生分布を見比べてみましょう。中国南部や東南アジアで発生したならば、冬鳥が日本に運ぶことはないでしょう。冬鳥の渡りルート上では、韓国および中国東北部吉林省白城で発生しています。これらの地域以北で発生した場合に注意が必要です。
ところで、環境省などが行った調査では野鳥から高病原性鳥インフルエンザは確認されませんでした。また、ウイルスを運んだ証拠もありません。しかし農林水産省は、西日本への渡りルートである韓国で発生したこと、調査した種や数が少ないことから、野鳥がウイルスを運んだ可能性がある、と報告しました。これは病気予防という観点から、野鳥が運んだ可能性は否定できないので予防対策はとらなければ、ということなのです。

鳥から人へはほとんど感染しません

ウイルスの感染経路のイラスト

鳥インフルエンザは、その名の通り鳥に特有の病気です。これは、普通はウイルスが鳥の細胞にしか侵入できないからです。ウイルスは、遺伝子情報を含んだRNA鎖が蛋白質の殻で包まれただけの生物です。増殖するには、ウイルスが宿主となる生物の細胞に侵入し、細胞の持つ増殖機能を借りなければなりません。鳥インフルエンザ・ウイルスは鳥の細胞表面の糖質を通してしか侵入できず、人間の細胞からは弾かれてしまうため感染することはできないのです。これは高病原性鳥インフルエンザも同様です。確かにタイやベトナムでは人も感染して死者も出ましたが、これは感染したニワトリの糞を含んだ塵を吸い込みウイルスを大量に摂取してしまったなどの特殊な事例と考えられています。
したがって、人が鳥インフルエンザに感染することに対しては神経質になる必要はありません。

予防には、人間による衛生対策の徹底が必要です

衛生対策をする養鶏場の写真

鳥インフルエンザが問題となるのは、養鶏場で感染が起こった場合に産業被害が起こるためです。また、ブタなどの家畜や人への感染が繰り返されると、人に感染するウイルスに変異する恐れもあります。
農林水産省の高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チームの報告書では、日本国内へ野鳥が高病原性のウイルスを運んできた可能性があること、水場や飼料、鶏糞堆肥置き場など、養鶏場での野鳥との接点について、総合的な侵入対策を行うことが指摘されたのです。
自然界には高病原性鳥インフルエンザ・ウイルスはありません。野鳥がウイルスを持っているとしたら、京都府のカラスのように発生養鶏場から流出したウイルスに感染したということになります。ですから、養鶏場への感染予防とともに、発生時の自然界へのウイルス流出を阻止することが重要なのです。
さらに検討会報告書では予防について次のように提言しています。
第一は、国際協力。高病原性鳥インフルエンザ・ウイルスは中国から東南アジアに常在化しています。この地域の最新情報を常に入手し、防疫の技術協力を行い、高病原性鳥インフルエンザ・ウイルスを撲滅することが必要です。
そして、もっとも多くの項目を費やしていることに養鶏場の衛生対策の徹底があります。発生のあった養鶏場では、給水管理やネズミ、スズメの侵入対策の不備や衛生意識の低さなど、衛生対策に問題が認められたことが指摘されています。
今回の発生では、野鳥が高病原性ウイルスを運んできた可能性を指摘されながらも、確認はされませんでした。そして、渡り鳥の行動は人間がコントロールできるものではありませんし、するべきでもありません。人間界での病気の広がりは、人や物流を第一に注意すべきなのです。

基本を守って楽しみましょう

自然界にはバクテリアやウイルスが多数存在します。だから野生の生き物は、病原体となりうる細菌やウイルスを持っているものです。野生動物との接触では、常に病原体への感染の可能性があることを認識しなければなりません。
そのため野生動物との不必要な接触は避け、娯楽や愛玩のために野生動物を捕獲したり、飼育することは行うべきではありません。庭やベランダに餌台を置く場合では、食べ残しや糞がたまらないように、清潔に管理するよう気をつけましょう。また傷病鳥を見つけ保護する場合は、できるだけ素手で扱わないようにしましょう。そして素手で扱わなくても後で手を洗うよう心がけましょう。
日本国内にウイルスが持ち込まれることがあっても、これらの衛生対策をすることで、被害を抑えることができるのです。

素手で扱わない餌台の周りは清潔に野鳥の捕獲・飼育はしない

西ナイル熱にも冷静な対応を!

西ナイル熱の感染経路

鳥インフルエンザと一緒に取り上げられる病気に、西ナイル熱があります。西ナイル熱はやはり鳥の病気ですが、鳥インフルエンザと異なり人や馬にも感染するため、問題になるわけです。元々は北アフリカ地域の病気ですが、感染した愛玩鳥の持ち込みなど人為的要因で2000年に北アメリカ東海岸にウイルスが侵入したと考えられています。アフリカでは深刻な病気ではなかったのですが、アメリカでは鳥も人もウイルスに対する抵抗力がなかったため、西へ向かって感染が広がり、2004年9月3日現在、西海岸のカリフォルニア州だけで327人の感染者がありました。
西ナイル熱は鳥から鳥へ、蚊を媒介してうつります。鳥から人に直接感染することはありませんが、ウイルスをもった蚊に刺されると、人も感染します。人は感染しても普通は病気にはなりませんが、2割くらいの人は頭痛がしたり熱が出たりします。高齢者や幼児は、重症化して後遺症が残ったり、死ぬこともありますので油断はできません。
日本では、飛行機にもぐりこんだ蚊や渡り鳥を介してウイルスが侵入することを警戒しています。国際空港周辺では蚊を捕獲してウイルスの有無を調査しています。カラス類の死亡率が高いことが知られていますが、他にも多くの鳥が感染するので希少種など野鳥へも深刻な影響があると考えられます。
高病原性鳥インフルエンザも西ナイル熱も、人為的な要因で問題化した病気です。野鳥にしわ寄せが行かないよう、人間側が注意を払うべきなのです。

『野鳥』誌2004年11月号特集より抜粋
普及室(特集企画)/金井裕(執筆)/長嶋浩巳(まとめ)/岩田壮夫(イラスト)

野鳥は運ぶか? 鳥インフルエンザ

(財)日本野鳥の会 主任研究員 金井裕
2006年2月6日掲載

またまたアジアを中心としたユーラシア大陸各地で、強毒の鳥インフルエンザが猛威をふるっている。タイでは数百羽のスキハシコウというコウノトリの仲間が、そして今年は5月に中国の青海湖でインドガンが、数千羽死亡し、野鳥にとっても大きな脅威となりつつある。世間一般では、洋の東西を問わずこの凶悪ウイルスを渡り鳥が運んでいるのではないかと、疑われている。ヨーロッパへの侵入でも、中国国内の発生でもニュース報道や政府発表ではまず渡り鳥が上げられて来た。しかし、野鳥の生態を考えると渡り鳥が運んだのではおかしいことがたくさんある。インドガンは渡り鳥だが、この鳥を含めて青海湖のメインの渡りルートは鳥インフルエンザの発生していないインド方面から来た鳥である。西シベリアからヨーロッパへの西進は、まだ渡りが始まる前の夏の間だし、西シベリアからの主要な渡り先であるパキスタンやインドでは発生していない。中国では、内モンゴル自治区の首都フフホト、西域の交易路の主要都市、ウルムチ、ホータン、トルファンとなぜか大都市の近くで発生が多かったり、渡り鳥が既に南へ去った後の11月の内モンゴル北東部で発生したりと、妙なことがたくさんあるのだ。野鳥、特に水鳥と称されるガン類やカモ類は、鳥インフルエンザのウイルスは普通に持っている。しかし、これは今問題になっている強毒の高病原性鳥インフルエンザウイルスではない。強毒のウイルスは、家きんの間で感染を繰り返すうちに突然変異で生じた、半ば人為的に作られたウイルスであり、野鳥は長く保持しないであろうということが、2004年の日本国内の発生でわかっている。この時は、全国で死体が拾われるなどで1万羽以上の野鳥でウイルスの検出調査が行われたが、京都の養鶏場で感染して死んだニワトリを食べたと考えられるハシブトガラスからしかウイルスがみつからず、カラス間の感染も起こらなかった。この時は隣接する韓国で大規模に発生していたことも考えると、そうそう野鳥が感染してウイルスが広まることはないことが示される。とはいえ、元々鳥の病気であるため、野鳥が運び手となる可能性はまったくないとは言えないので、農水省も野鳥対策が必要であるとした。養鶏場で野鳥対策をしっかりしてもらうことは野鳥にも益がある。養鶏場で強毒鳥インフルエンザが発生した場合に、ニワトリから野鳥にウイルスがうつされる恐れが減るからだ。

(株)農林出版社発行 週刊農林第1939号(2005年12月25日)
特集・世界を震撼させる鳥インフルエンザの予防と対策 より許可をいただいて転載
農林出版社ホームページ:http://nourin.vis.ne.jp/

中国青海省での2006年発生情報

2006年5月15日発表

(財)日本野鳥の会 主任研究員 金井裕

昨年ヨーロッパ・アフリカへ拡大し、今も震撼させている鳥インフルエンザ発生の端緒となった中国青海湖で、今年も鳥インフルエンザ感染が報告されています。まだ大きなニュースになっていませんが、昨年とは違い、青海湖より南でも発生しているようですので、注意が必要です。得られている情報は限られていますが、現時点での感染情報と感染経路についての情報と所見をお知らせします。
中国国内からの情報は非常に限られていますので、ここでお伝えすることが感染状況の全容を表してるかどうかは不明です。またこの限られた情報に基づく所見ですので、不確かな部分があることも予めご了解の上、お読みください。

感染情報

インターネットのニュースサイトなどで、下記の感染情報が報じられている。いずれも中国農業部(日本の農林水産省に当たる)からの情報とされるもので、これまでのところ家禽類への感染は確認されてないとされている。

2006年4月23日
青海省剛察県 青海湖鳥島保護区 インドガン1羽死亡
発見時の状況など不明
同日
同省玉樹県の湿地 インドガン123羽死亡 放牧民が発見
玉樹県はチベット自治区のラサと青海湖のほぼ中間にあたる

青海省での感染状況

青海省では2005年5月、青海湖でインドガンを含む野鳥など1,000羽以上が鳥インフルエンザで死亡したとの報告がある。この時も、家禽類への感染は確認されてないとされている。

インドガンについて

越冬地
チベット南部からインド北部
繁殖地
チベット高原(チベット自治区・青海省)
渡り
当会も協力した、インド・ケオラディオ保護区からの衛星追跡結果(2000年)では
3月23日インド・ケオラディオ保護区発
3月25日チベット・パルヤン近傍(中継地)
4月3日チベット・タロソ湖(繁殖地)
(ケオラディオ保護区:デリーの南東約200kmに位置する)
全般
インド(越冬地)を3月下旬から4月上旬に出発
チベット南部へ4月上旬から4月中旬に到着
(チベット南部は越冬地・中継地・高地は繁殖地でもある)
チベット北部・青海省(繁殖地)には4月中旬から4月下旬に到着
鳥インフルエンザの感受性
これまでの死亡数の報告から感受性は高く、致死性も高いと思われる

越冬地・渡りルート上での発生状況

越冬地
インドでは、西部で家禽での発生が確認されている。
インドガンを含む野鳥での発生は確認されていない。
中継地
中国チベット自治区ラサでは、2004年2月および2005年8月に家禽で鳥インフルエンザ発生があったとの報告がある。

総合所見

インドガンは、鳥インフルエンザへの感受性、致死性ともに高いと考えられるため、生息密度が高く、生息地周囲に人口も多い越冬地域で感染が起こっていれば容易に感染が発見されると考えられる。インドでの鳥インフルエンザ発生は西部で、インドガンほか野鳥感染は見られない。したがって、越冬地で感染が起こったとは考えにくい。
今回の中国青海省での発生は、剛察県、玉樹県ともに4月23日に死体が発見され、玉樹県の方が発見数が多い。これは、越冬地もしくは中継地から青海湖へ向かう同時に移動した群れで感染が起こり、大部分は渡り途中で発症し、一部が青海湖まで渡ってから発症したと解釈できる。
感染後発症までの潜伏期間を1週間から10日とすると、感染時期は4月上旬となる。人工衛星による追跡結果からすると、この時期はチベット南部の中継地に滞在している期間と重なる。青海湖と玉樹県の延長線上には、鳥インフルエンザ発生歴があるラサが位置する。
これらの情報をあわせると、渡り移動途中の群れがラサ周辺の何らかの感染源に触れて感染し、移動中に発症したと考えるのが合理的である。
感染源としては、放し飼いの感染していても発症していないアヒル・ガチョウの糞との接触、畑に撒かれたウイルスを含んだ鶏糞肥料との接触など考えられる。チベットから青海省ではインドガンの人工養殖も各地で行なわれている。
これらのインドガンに不十分なワクチン接種があった場合、感染していても発症していない個体が存在する可能性がある。また、場所によっては野外で冬季に凍結保存されていたウイルスもあるかもしれない。
これは一つの仮説でしかありません。しかし、安易に、野生のインドガンにウイルスが定着していると決め付けるべきではないことは、わかってもらえるたらうれしいです。

2007年1月に発生した鳥インフルエンザへの対応

2007年1月26日発表

宮崎県で発生した強毒の高病原性鳥インフルエンザにより、現地の養鶏業者はじめ多くの関係者が多大な損害を被られていることにお見舞い申し上げます。また世界的に人命までもが失われていることを深く憂慮しています。
日本野鳥の会としても関係各機関と協力して、この病気の拡大を防ぐために努力しております。これは、養鶏業への被害だけでなく、野鳥にとっても脅威となる病気であるためです。
高病原性鳥インフルエンザに対処するにあたって、これから述べることを基本に活動を行っていきます。日本において野鳥がすこやかにすごすことができるように、バードウォッチャーのみなさんや、野鳥に関心を持つ方々もご協力をお願いします。

国内の感染発生の状況

2007年1月11日に宮崎県清武町の養鶏場から大量にニワトリが死んでいる報告があり、強毒の高病原性鳥インフルエンザと判明しました。死亡数が増え始めたのは1月7日からです。この養鶏場では防疫処置も終わり、周辺の養鶏場でも個人が飼育しているニワトリにも感染がなかったことが確認された後の1月23日に、同じく宮崎県の日向市東郷町でニワトリの大量死が報告され、これも強毒の高病原性鳥インフルエンザであると確認されました。

野鳥と強毒の鳥インフルエンザ

野鳥、特に水鳥と称されるガン類やカモ類は、鳥インフルエンザのウイルスを普通に持っています。しかしこれは、今回宮崎で発生したり、世界で人の命を奪っている強毒の高病原性鳥インフルエンザウイルスではありません。強毒のウイルスは、ニワトリやアヒルなど家禽の間で感染を繰り返すうちに突然変異で生じたものです。
2005年から2006年の初めにかけては、中国の青海湖でインドガンが大量に死んだのを始め、ロシアやヨーロッパでも野鳥での強毒鳥インフルエンザ感染が確認されていますが、これは家禽の感染で増殖したウイルスが自然界に流出したため感染が起こったと考えられます。

ウイルス運搬者と渡り鳥

日本、特に西日本への渡り経路上である韓国で、2006年11月下旬から2007年1月19日まで合計5例の強毒鳥インフルエンザ感染が発生し、12月下旬には野外のカモ類の糞からもウイルスが検出されました。また感染の発生はないものの中国北部にもこのウイルスの存在が疑われています。ロシアや中国などから冬の渡り鳥が日本に渡来するのは、11月から12月上旬がピークです。韓国での発生がこの期間にあたったため、環境省は九州や中国地方のカモ類の大規模生息地18か所において、糞を拾ってウイルス検査を行いましたが、すべて陰性でした。したがって、冬鳥として渡ってくるカモ類の間にウイルスが蔓延しているというようなことは無いと考えられます。12月中旬から1月にかけての時期は、渡り鳥の飛来が少ない時期に当たり、新たな飛来があるとすれば、朝鮮半島に寒波が来て積雪や結氷がひどくなった場合にだけです。野鳥がウイルスを運んだ可能性があるとしても、みなさんの周囲にいる野鳥がウイルスを持っているおそれは非常に低いと言えますので、むやみに野鳥を恐れるようなことにならないようにしてください。

野鳥以外の可能性にも注意を払ってください

私たちは、ウイルスの運搬者として注意が野鳥ばかりに向き、その他の可能性への考慮が低くなることを懸念しています。中国や韓国と日本とは、人や物の移動が多くなっています。九州は近いこともあり、韓国からの観光客やゴルフ客も増加しています。野鳥以外にも国内にウイルスが入る可能性もあることを前提に、防疫の強化をさらに進めていくことが必要と考えます。

養鶏場での野鳥対策の重要性

農水省は、養鶏舎への野鳥の侵入対策の実施を指導しています。なんらかの原因で病気が発生した場合、養鶏場の野鳥対策に不備があると周辺の野鳥に感染が広がってしまうおそれがあるからです。そうなると、養鶏場間でさらに感染が拡大するおそれがあるだけでなく、野鳥が発症した場合には野鳥の大量死を引き起こすかもしれません。養鶏場での野鳥対策は、野鳥の保護のためにも重要です。

野鳥の追い払いも危険

野鳥が感染していたとしても、そのままそっとしておけば、鳥の体内に抗体ができてウイルスは消滅していきます。野鳥の間にウイルスが存在するのは、他の個体に感染が続くためです。群れで生活するカモ類でも、群れのすべての個体が感染すればそこで終わりになります。野鳥がウイルスも持っている可能性があるからといって、あちこちで追い払いが行なわれるようなことがあると、仮に野鳥が感染していた場合には、ウイルスを持ったまま他の場所に行って感染を拡大させてしまうおそれがあります。感染を拡大させないためには、無用な撹乱を起こさないことが重要です。

最後に
ツル類の世界的な大規模越冬地である鹿児島県の出水市では、ツル類にウイルスが感染することがないように、観光客も含めて消毒などの防疫体制を整えています。家禽にも野鳥にも感染が拡大することがないように、みなさまのご協力をいただきたいと思います。

3月調査でも野鳥感染確認されず。“環境省調査結果”

    2007年4月17日掲載

    環境省は4月9日、3月に実施した野鳥の高病原性鳥インフルエンザウイルス保有状況調査の結果を発表しました。
    この発表によりますと、近畿地方以西の22府県でカモ類など野鳥の糞便の高病原性鳥インフルエンザウイルス保有状況を調査したが、ウイルス感染は確認されなかったとのことです。

    発表の詳細は、以下のURLからご覧ください。環境省のホームページにリンクしています。
    http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8256

    2006年12月からの調査結果一覧は、当会のホームページでご覧いただけます。
    http://www.wbsj.org/activity/conservation/infection/influenza/infl20070320

    9月8日 公式見解「環境保全と両立するオリンピックの開催を求めて」発表

    環境保全と両立するオリンピックの開催を求めて

    2013年9月8日

    日本野鳥の会東京 代表 川沢 祥三

    公益財団法人日本野鳥の会 理事長 佐藤 仁志

    1.はじめに

    このたび2020オリンピック開催地として東京が選ばれたことに関して、私たちは環境保全とスポーツの祭典が両立することを心から望んでいます。このような立場から、私たちはこれまで東京招致自体に反対する行動は取らず、葛西臨海公園の豊かな自然環境を破壊するカヌー競技場建設計画の見直しを求めて運動を続けてまいりました。これからは葛西臨海公園の自然を守る取組みを一層強めていく決意です。

    2.既往の環境影響評価書の公表と、より精密な環境影響評価の実施を!

    私たちは2012年8月23日に東京都オリンピック招致委員会事務局(以下「都事務局」という)と都知事あてに要望書を提出して以来、都事務局と数回の交渉を持ち、私たちの見解と思いを伝えてまいりました。その中で観覧席が常設から仮設に変更されるなどの修正はあったものの、国際オリンピック委員会(以下IOCという)に立候補ファイルと共に提出された環境影響評価書(葛西臨海公園に関する部分)について都事務局は公表を拒み、「野鳥の会と対立関係にはなりたくない」と言いつつも計画の見直しには一切言及がありませんでした。
    開催地が東京に決まった今こそ都事務局は提出済みの環境影響評価書を公表すべきであり、計画の中身を知らない地元住民や多くの都民に知らせる義務があると考えます。また、IOCが2013年6月に示した各立候補都市に関する評価書においてadditional commentsとして指摘したように、葛西臨海公園及びその周辺に関するより精密な環境影響評価を実施する必要があると考えます。

    3.代替候補地の選定とそれに関する環境影響評価の実施を強く求めます

    葛西臨海公園の見過ごすことのできない環境破壊を避ける抜本的な方法として、代替候補地数カ所の選定及び代替候補地に関する環境影響評価を速やかに実施し、新たな計画地の検討に着手することが何よりも重要であると私たちは考えます。
    以上の様な立場で今後の交渉に臨みますが、都事務局の適切な対応が見られない場合には、再度IOCへの要請・要望等も行いたいと思います。

    4.全ての住民や関係者が歓迎するオリンピック実現を!

    今、私たちの運動に支持を寄せてくださる団体が120を超えました(9/6現在)。地元江戸川区の住民の皆さんや今回の問題に関心を寄せてくださった環境保護団体・市民団体の皆さんに心から感謝すると共に、都心に残る数少ない貴重な緑のオアシスを次世代に残すべく、要望が実現するまでさまざまな対応を協議し実践して参ります。東京オリンピックがすべての関係者から歓迎されるイベントとして開催されますように、今後とも多くの国民の皆様・マスメディア・関係各位のご理解とご協力を切にお願い致します。

    熊本県相良村周辺での野鳥感染確認されず。“環境省調査結果”

    2007年4月17日掲載

    環境省は4月6日、熊本県相良村周辺で実施した野鳥の高病原性鳥インフルエンザウイルス保有状況調査の結果を発表しました。相良村は、2007年1月に高病原性鳥インフルエンザに感染したクマタカが発見されたところです。
    この発表によりますと、クマタカを保護収容した地点から概ね半径10kmの範囲で捕獲した野鳥100羽とカモ類の糞便120個の高病原性鳥インフルエンザウイルス保有状況を調査したが、ウイルス感染は確認されなかったとのことです。

    この発表の詳細は、以下のURLからご覧ください。
    http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8255

    クマタカからのウイルス検出の発表はこちらからご覧ください。
    http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8171
    (どちらも環境省のホームページにリンクしています)

    野鳥を怖がる必要はありません(2007年5月版)

    2007年5月22日掲載

    国内の高病原性鳥インフルエンザは終息

    2007年1月から2月にかけて宮崎県と岡山県で発生した高病原性鳥インフルエンザについて、農林水産省は5月8日付で日本が清浄国となったことを発表しました。
    これは、今回の一連の発生への対応・措置がすべて迅速に完了し、かつその後も広まることがないのを継続して確認し、今なお新たな発生がなかったことから、日本が加盟する国際獣疫事務局(OIE)*が定める規定に従って判断、発表されたものです。
    これにより、今回の高病原性鳥インフルエンザは終息したといえます。

    *国際獣疫事務局(OIE=Office International des Epizooties):主に国際協力が必要な家畜伝染病の病理やその予防に関する実験や研究、情報提供を行う。世界貿易機関(WTO)の諮問機関のひとつで、160カ国以上が加盟。輸出入に関する動物検疫の安全基準を決める国際機関。

    野鳥がウイルスを運んだと断定するのは間違い

    2007年4月に、農林水産省による高病原性鳥インフルエンザの感染経路究明についての「中間とりまとめ」の発表が行われました(詳しい解説は当会ホームページをご覧くださいhttp://www.wbsj.org/activity/conservation/infection/influenza/infl20070509)。
    この発表では“現時点で感染経路を特定することは困難”とされていたのですが、この発表を元にした一部の報道は、野鳥がウイルスを持ち込んだと断定的に受け取れる、誤った見出しになっていました。
    またマスコミ報道では、感染経路として野鳥のことばかりが目立つようです。しかし、感染経路として一番始めに考えるべきは、発生地と関係する人や物の動きです。これを調べるのが疫学調査で、これには大きな労力と時間がかけられています。ところがこの調査では、誰がいつどこへ行ったとか、どの養鶏場ではどこからどれだけの飼料を仕入れているといった個人情報や企業情報が対象になるため、具体的な発表がなかなか行われません。一方で野鳥の感染調査は、疫学調査に比べてかなり小規模に行われているのですが、個人情報や企業情報が含まれませんので発表には制約がありません。そのため疫学調査についての報道はほとんどなく、野鳥調査の報道は比較的多いということが起こります。

    野鳥が感染を広げた報告は世界的にない

    国境を自由に越える野鳥(渡り鳥)が、鳥インフルエンザを運んでいるのかどうかを明らかにすべく、世界各地で広範囲な調査と研究が進められています。こうした活動により、渡り鳥がウイルスを遠い地域まで運ぶ可能性があることは分かってきました。しかし、実際に渡り鳥が通る経路に沿って、鳥インフルエンザで犠牲となった野鳥が発見されたことは世界的にありません。
    http://www.wbsj.org/nature/kyozon/influenza/060314.html
    国内でもガンやカモなどの渡り鳥がたくさん渡来する場所ははっきり分かっており、毎年定期的に環境省や当会の会員などが渡来数の調査を行っています。今回の鳥インフルエンザの発生時にも環境省によって渡り鳥渡来地での感染調査が行われています。しかしこれまでのところ、このような渡来地で野鳥の大量死などは確認されていませんし、また渡来地の近くの養鶏場でも鳥インフルエンザは発生していません。(環境省の調査結果については当会ホームページをご覧下さい。
    http://www.wbsj.org/activity/conservation/infection/influenza/infl20070320
    国内に冬の渡り鳥が渡来するのは9~12月にかけてで、一般的に12月中旬には渡来のピークを過ぎ、1月はほとんど渡らず、2月にはもうロシアや中国方面に向かって戻り始めると考えられています。しかし鳥インフルエンザの発生は、2004年は1月中旬に山口県で発生し、その後2月中旬に大分県、下旬に京都府となっています。2007年でも1月中旬に宮崎県で発生し、続いて岡山県で発生しています。いずれも渡り鳥の渡来が少ない時期か、あるいは帰り始める時期となっています。

    野鳥が持っているのは「低病原性」

    野鳥、特に水鳥と称されるガン類やカモ類は、鳥インフルエンザのウイルスを普通に持っています。ただしインフルエンザにはいくつもの型があり、野鳥が持っているものは「低病原性」タイプで、感染しても重症な病気にはなりません。これまで国内各地でニワトリの死亡を引き起こしたり、外国でまれに人に感染して死亡例のあるものは「強毒の高病原性」タイプで、これは「低病原性」タイプと別のものです。「強毒の高病原性」タイプは、「低病原性」タイプのうちの特定の型(H5型またはH7型)が、家禽(ニワトリなど)の間で感染を繰り返すうちに突然変異で生じてしまうと考えられています。
    国内では2004年3月に京都で「強毒の高病原性」タイプによるニワトリの死亡が起きた際に、このウイルスに感染したハシブトガラスが確認されたほか、2007年1月に熊本県で衰弱死したクマタカから「強毒の高病原性」タイプのウイルスが検出されました。また、世界的には中国や韓国、ロシア、ヨーロッパでも野鳥への「強毒の高病原性」タイプ感染が確認されています。しかしこれらは、家禽の間で増殖したウイルスが、家禽の死体やフンなどを通じて野鳥に感染したものと思われています。
    詳しくはこちらをご覧ください。http://www.wbsj.org/activity/conservation/infection/influenza/infl20051109

    野鳥から人への感染例もない

    世界的に見ても、野鳥から人へ鳥インフルエンザが感染した例はこれまでにありません。鳥インフルエンザは、「強毒の高病原性」であっても人へ簡単には感染しないのです。これは、ウイルスへの適合性があるたんぱく質の種類が鳥と人では違うためです。
    アジアでは、鳥インフルエンザがニワトリから人へ感染して尊い人命が失われています。これらの感染例は、飼っていたニワトリのフンの粉塵を吸い込んだり、食用に処理する時に鳥の血液がかかるなどして、ウイルスを大量に取り込んでしまった特殊な例と考えられています。
    川や池のカモ、ベランダのハト、庭の餌台に来る小鳥、ゴミ置き場のカラスなど野鳥は身近にいますが、普通に人と野鳥が接している限り、感染につながる大量のウイルスの取り込みはまず考えられません。そのため世界的にも野鳥から人への感染は発生していないのです。
    軒先に巣をかけるツバメが鳥インフルエンザを運んでくるのではと不安に思われている方もいらっしゃるようです。しかし、鳥インフルエンザがツバメから人にうつることは考えられません。小さな体で海を越え数千キロも旅をして日本にやって来るツバメたちを、温かく見守ってください。

    人や物の行き来、野鳥以外の野生動物にも注意が必要

    野鳥がウイルスを運ぶ可能性はありますが、注意が野鳥ばかりに向き、その他の可能性を軽視することは大変危険なことです。前述のとおり感染経路を特定するため最も努力が払われているのは、人や物の行き来を調べる疫学調査です。鳥インフルエンザが人に感染するのは極めて希ですが、人の持ち物や海外からの貨物などに付着、混入して運び込まれる可能性はあります。野鳥以外にも国内にウイルスが入る可能性もあることを前提に、人や物の行き来に対する防疫の強化をさらに進めていくことも必要と考えます。2005年の茨城県と埼玉県での発生の際には、感染が広がった主要な原因は、農場間のニワトリの移動と、人や物の出入りであったとされています。(農林水産省高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チーム報告書
    http://www.maff.go.jp/tori/kentoukai/report2005.pdf103~104ページ)
    また、今回の農林水産省感染経路究明チームの「中間とりまとめ」では、鶏舎へのウイルスの侵入経路として、防鳥ネットや金網に隙間や破損が確認されたこと、鶏舎内外に野生生物が存在したこと、鶏舎内でネズミの糞や野鳥の死体が確認されたことなどから、野鳥だけでなく、ネズミなど多くの野生動物がウイルスの伝播に関わる可能性が想定されるとしています。

    死んでいる野鳥を見つけたときは

    野鳥は、食物にありつけなかったり、悪天候というような環境の変化でも死んでしまいます。これは自然の中で起こる普通のことですから、野鳥の死体を発見したからといって、鳥インフルエンザを疑う必要はありません。
    しかし、野鳥が一所でたくさん死んでいたら、それは何か特別な原因の可能性があります。国内でもこれまでに、農薬などの薬物によるものや汚れた餌や水による食中毒のようなケースが知られています。
    もしたくさんの野鳥が死んでいるのを見つけたときは、死体は触らないで、お近くの警察、家畜保健衛生所、保健所に連絡してください。

    2008年4月の韓国での発生と日本などへの渡り鳥

    2008年4月11日掲載

    2008年4月の韓国での発生

    韓国からの報道によると、4月1日に全羅北道の養鶏場で強毒の高病原性鳥インフルエンザの届出が出されたとのことです(H5N1亜型確認は4月2日)。続いて3日には同道の「カモ飼育農場」(編注:アヒルの飼育場と思われる)でも届出が出されています(5日に感染確認)。発生地付近では、韓国の当局により防疫措置が実施されています。
    韓国では、2003年12月に初めて強毒高病原性鳥インフルエンザ感染が報告され、2006年11月-2007年3月にも発生していますが、冬以外の季節に発見されたのは今回が初めてです。

    この時期の日本・韓国への渡り鳥

    春はツバメやカッコウなど国外から日本や韓国に来る渡り鳥が多い時期です。しかしその経路は、東南アジアなど南の越冬地から日本や韓国、さらに北のシベリアなどへ向かう、南から北への移動が主流です。朝鮮半島から日本へ、北から南へ向かう移動を行う渡り鳥はほとんどいません。また、南から北へ向かう渡り鳥の動きも、3月から4月前半は時期的に早く、飛来がまだあまりない時期です。

    渡り鳥が感染を広げた報告はありません

    野鳥への感染事例から、野鳥がウイルスを遠い地域まで運ぶ可能性があることは分かってきました。そのため渡り鳥が鳥インフルエンザを運んでいるのかどうかを明らかにすべく、世界各地で渡り鳥のウイルス保有調査などの広範囲な調査と研究が進められています。しかし、これまでの調査では、世界的に見ても、渡りの経路に沿って野鳥がウイルスを伝播した証拠は発見されていません。
    http://www.wbsj.org/nature/hogo/kyozon/influenza060314.html

    野鳥から人への感染例はありません

    野鳥から人へ鳥インフルエンザが感染した例は、世界でもありません。ウイルスは鳥の細胞表面のたんぱく質に適合していますが、鳥と人ではたんぱく質の種類が違うので、高病原性でも鳥インフルエンザは人へ感染しないのです。
    アジアでは、鳥インフルエンザで尊い人命が失われています。これらは、飼っているニワトリのフンの粉塵を吸い込んだり、食用に処理する時に鳥の血液がかかるなどして、ウイルスを多量に取り込んでしまった特殊な例と考えられています。

    軒先のツバメ、庭のスズメ、ゴミ置き場のカラスなど野鳥は身近にいますが、普通に人と野鳥が接している限り、感染につながる大量のウイルスの取り込みはまず考えられません。そのため世界的にも野鳥から人への感染は発生していないのです。

    身近にいる野鳥から、あるいは鶏卵、鶏肉を食べることにより、鳥インフルエンザウイルスが人に感染することは世界的にも報告されていません。