代表的な海鳥の紹介

コアホウドリ Phoebastria immutabilis

コアホウドリの写真
写真:石田光史

ミズナギドリ目
アホウドリ科
全長 81㎝
翼開長 200㎝
推定個体数 160万羽(BirdLife Data zoneより)
IUCNレッドリスト NT(準絶滅危惧)
環境省レッドリスト EN(絶滅危惧IB類)

 背と翼の上面、目のまわりは黒く、くちばしと足はピンク色、ほかは白い。海面付近でイカや魚などを食べる。ハワイ諸島やメキシコ西岸の島嶼、小笠原諸島聟島で繁殖する。11月に卵を1個産み、抱卵期間はおよそ65日。孵化したヒナは、6月下旬から7月にかけて巣立つ。繁殖期以外は海上で生活し、北緯20~60度の北太平洋、ベーリング海に分布する。かつては北太平洋の中央部および西部の島嶼で広く繁殖していたが、羽毛採取のための乱獲などにより、多くの繁殖地が消失した。
 最も大きな脅威は、延縄漁などの漁業による混獲で、年間1万羽弱が死亡していると推定される。


クロアシアホウドリ Phoebastria nigripes

クロアシアホウドリの写真
写真:石田光史

ミズナギドリ目
アホウドリ科
全長 78.5cm
翼開長 200cm
推定個体数 12万9,000羽
IUCNレッドリスト NT(準絶滅危惧)

 全身が黒褐色で、くちばし、足ともに黒く、くちばしの基部と目の下は白い。腹部や頭部は淡い褐色の個体もいる。通年北太平洋に広く分布し、冬季は中~低緯度の温暖な島々に渡って繁殖する。
 主要な繁殖地はハワイ諸島で、日本では、伊豆諸島鳥島、小笠原群島(聟島列島、母島列島)、および尖閣諸島で繁殖する。主に海面に漂う魚類や頭足類の死骸や卵、甲殻類などを拾って食べる。繁殖期は10月下旬~6月で、卵を1個産む。約65日抱卵し、およそ140日の育雛期間を経て巣立つ。
 はえ縄漁による混獲は、大きな脅威である。また、営巣地に釣り人が上陸する影響や、プラスチックゴミの飲み込みなどの脅威がある。


アホウドリ Phoebastria albatrus

アホウドリの写真
写真:石田光史

ミズナギドリ目
アホウドリ科
全長 91.5㎝
翼開長 240㎝
推定個体数 3500羽
IUCNレッドリスト VU(危急)
環境省レッドリスト VU(絶滅危惧Ⅱ類)

 全身白色で、後頭部は黄色っぽく、ピンク色のくちばしをしている。海面付近で魚やイカなどを捕らえて食べる。主な繁殖地は、伊豆諸島の鳥島や、尖閣諸島。一夫一妻制で、毎年10~11月頃に卵を1個産む。抱卵期間はおよそ65日、孵化後のヒナには親鳥が4カ月余り給餌する。繁殖期以外は海上で生活し、北太平洋のアリューシャン列島からアラスカ湾、アメリカ西海岸まで広く移動する。かつては北太平洋西部の島を中心に数多く見られたが、羽毛採取のための乱獲や、営巣場所の破壊などにより激減した。現在、地道な保護活動により、個体数は回復しつつあるが、延縄漁による混獲は、大きな脅威となっている。


オオミズナギドリ Calonectris leucomelas

オオミズナギドリの写真
写真:石田光史

ミズナギドリ目
ミズナギドリ科
全長 48㎝
翼開長 120㎝
推定個体数 300万羽
IUCNレッドリスト NT(準絶滅危惧)

 体の上面は黒褐色で、下面は白い。海面近くを飛びながら、カタクチイワシやトビウオ、サンマ、イカ類などを食べる。日本や韓国、中国周辺の島で繁殖し、伊豆諸島の御蔵島は、世界最大級の繁殖地である。6月下旬~7月下旬ごろ、地面に穴を掘って卵を1個産む。抱卵期間は45~58日、孵化後のヒナには約82日間親鳥が給餌する。繁殖期間中は、親鳥は採餌のために繁殖地から数百~数千キロ離れた海域まで出かけていく。繁殖期を過ぎると、パプアニューギニア北方海域、アラフラ海、南シナ海の海域に渡る。繁殖地でのノネコやイタチ、ドブネズミによる捕食が脅威となっている。アホウドリと同じく、延縄漁により混獲される恐れがある。


カツオドリ Sula leucogaster

カツオドリの写真
写真:石田光史

ペリカン目
カツオドリ科
全長 70㎝
翼開長 145㎝
推定個体数 20万羽
IUCNレッドリスト LC(低懸念)

 黒褐色の体で、腹部と翼の下面の一部は白い。オスは目の周りが青色、メスは黄白色をしている。インド洋、太平洋、大西洋、カリブ海などの熱帯・亜熱帯の海洋に分布し、国内では伊豆諸島、小笠原諸島、南西諸島、八重山諸島、尖閣諸島、トカラ列島、硫黄列島、草垣諸島などで繁殖する。海岸の崖や岩棚に営巣し、枯草や枝などで皿状の巣をつくる。卵は2個産むが、通常、ヒナは1羽しか育たない。飛びながら急降下して海中に飛び込み、魚やエビ、イカなどを捕らえて食べる。繁殖地でのネズミ類による捕食や、釣り人の立ち入りが脅威となっている。


ヒメウ Phalacrocorax pelagicus

ヒメウの写真
写真:石田光史

ペリカン目
ウ科
全長 73㎝
推定個体数 不明
IUCNレッドリスト LC(低懸念)
環境省レッドリスト EN(絶滅危惧ⅠB類)

 ウミウよりも小さく、光沢のある緑がかった黒色をしている。繁殖期には、くちばしの付け根が赤くなり、頭頂と後頭には冠羽、足の付け根に白色斑が生じる。北太平洋の寒冷な沿岸を中心に分布し、北海道天売島などで繁殖する。5月初旬、海岸の岩棚に卵を1~5個産む。抱卵期間はおよそ31日で、孵化したヒナは3~4週間で巣立つ。繁殖期には、営巣地周辺の沿岸で魚などを食べる。非繁殖期は、日本各地の沿岸で見られる。潜水して魚を捕らえて食べるため、刺し網漁などの漁業による混獲の懸念がある。


ウミウ Phalacrocorax capillatus

ウミウの写真
写真:石田光史

ペリカン目
ウ科
全長 84㎝
推定個体数 2万5,000~10万羽(BirdLife Data Zoneより)
IUCNレッドリスト LC(低懸念)

 光沢のある、緑がかった黒色をしている。繁殖期には、顔と足の付け根に白色斑が見られる。太平洋沿岸に分布し、ロシア東南部の沿岸から南北朝鮮、千島列島南部、日本で繁殖する。国内では、北日本から九州にかけて局地的に繁殖する。3~5月に、海岸の崖や岩に集団で営巣する。非繁殖期は中国東海岸沖から南は台湾まで見られ、日本では全国の外海に面した海岸で見られる。潜水して魚を捕らえて食べるため、刺し網漁などの漁業による混獲の懸念がある。


ウミガラス Uria aalge

ウミガラスの写真
写真:石田光史

チドリ目
ウミスズメ科
全長 43㎝
推定個体数 1,800万羽
IUCNレッドリスト LC(低懸念)
環境省レッドリスト CR(絶滅危惧IA類)

 夏羽では、頭部から体の背面にかけて黒く、次列風切羽の先は白く、胸と腹が白い。冬羽では、のどと首から目の後ろにかけて白くなり、目から後ろに黒い線がある。北太平洋、北大西洋の亜寒帯を中心に分布し、国内では、かつては松前小島や天売島、ユルリ・モユルリ島、根室市落石岬で繁殖していたが、現在は天売島でのみ、繁殖が確認されている。
 離島や海岸の断崖に集団で繁殖し、5月下旬~6月頃、岩棚に卵を一個産む。抱卵期間は32~33日間、ヒナは孵化後2~3週間ほどで巣立つ。
 繁殖地での、カモメやカラスによる卵やヒナの捕食が脅威となっている。また、潜水してイワシやニシンなどの魚類やイカなどを採るため、刺し網漁による混獲も大きな脅威である。


ケイマフリ Cepphus carbo

ケイマフリの写真
写真:石田光史

チドリ目
ウミスズメ科
全長 37㎝
推定個体数 14万~14万8,000羽
IUCNレッドリスト LC(低懸念)
環境省レッドリスト VU(絶滅危惧Ⅱ類)

 夏羽では全身が黒く、目の周りが白い。くちばしの付け根に、小さな白色斑がある。冬羽では、首から腹にかけて、白くなる。鮮やかな赤い足が特徴で、アイヌ語の「ケマフレ(赤い足)」が名前の由来。
 オホーツク海沿岸、ロシア、北朝鮮、韓国の日本海沿岸域に分布し、国内では北海道と東北地方の一部で繁殖していたが、近年、東北地方では一部を除き確認されなくなった。北海道でも減少傾向にある。国内最大の繁殖地は天売島。
 5~7月に、海に面した断崖の岩のあいだに、卵を2個産む。抱卵期間は27日、その後43日の育雛期間を経て巣立つ。
 潜水してイカナゴなどの小魚を捕らえて食べるため、刺し網漁による混獲が脅威となっている。


ウミスズメ Synthliboramphus antiquus

ウミスズメの写真
写真:石田光史

チドリ目
ウミスズメ科
全長 25.5㎝
推定個体数 100万~200万羽(BirdLife Data Zoneより)
IUCNレッドリスト LC(低懸念)
環境省レッドリスト CR(絶滅危惧IA類)

 夏羽では頭から喉にかけて黒く、目の後ろに白線が入る。体の上面は黒っぽく、下面は白い。冬羽は、白線が無く、喉が白くなる。ユーラシア東部の海岸と千島列島、アリューシャン列島、北アメリカ北西部で繁殖する。国内で繁殖が確認されているのは、北海道天売島のみ。3月下旬~6月下旬ごろ、崖穴や岩の割れ目などに営巣し、卵を2個産む。抱卵期間はおよそ30日、孵化後のヒナはすぐに巣を離れ、会場で親鳥から給餌を受ける。非繁殖期は、沿岸や外洋で見られる。潜水してイカナゴなどの魚類を食べるため、刺し網漁などの漁業による混獲の影響が心配される。また、繁殖地でのネズミやカラスによる捕食、油汚染なども脅威となっている。


カンムリウミスズメ Synthliboramphus wumizusume

カンムリウミスズメの写真
写真:石田光史

チドリ目
ウミスズメ科
全長 24㎝
推定個体数 1万羽以下
IUCNレッドリスト VU(危急)
環境省レッドリスト VU(絶滅危惧Ⅱ類)

 額、頬、冠羽は黒色で、後頭部、腹部は白色。日本近海と韓国南部、日本海北西部に分布し、日本近海と韓国南部の離島や岩礁でのみ繁殖する。主な繁殖地は、宮崎県の枇榔島、次いで伊豆諸島である。繁殖期は2月~5月で、岩と岩の隙間に卵を1~2個産む。抱卵期間はおよそ30日で、孵化後のヒナはすぐに海上に出て親鳥から給餌を受ける。繁殖地でのカラスやネズミによる捕食が脅威となっている。また、潜水して小魚や甲殻類などを食べるため、刺し網漁による混獲の影響も懸念される。

カンムリウミスズメ保護の取り組み


ウトウ Cerorhinca monocerata

ウトウの写真
写真:石田光史

チドリ目
ウミスズメ科
全長 37.5㎝
推定個体数 130万羽
IUCNレッドリスト LC(低懸念)

 体の上面は黒色で、下面は淡色、くちばしはオレンジ色をしている。夏羽では目の後方とくちばしの後方に白い飾り羽が生え、くちばしの基部には突起がある。北太平洋の亜寒帯から温帯にかけて分布し、国内では天売島、大黒島、ユルリ島、モユルリ島、松前小島、椿島、陸前江ノ島等で繁殖する。中でも、天売島は世界最大の繁殖地となっている。
 斜面の草地に穴を掘って営巣し、4月中旬に卵を1個産む。孵化したヒナは、7月頃に巣立つ。天売島のウトウは、繁殖期を終えるとオホーツク海を北上し、その後日本海を南下する。繁殖地でのカラスやノネコによる捕食が脅威となっている。また、潜水してカタクチイワシやイカナゴなどを採るため、繁殖地周辺海域での刺し網漁による混獲も大きな脅威である。


エトピリカ Fratercula cirrhata

エトピリカの写真
写真:石田光史

チドリ目
ウミスズメ科
全長 39㎝
推定個体数 350万羽
IUCNレッドリスト LC(低懸念)
環境省レッドリスト CR(絶滅危惧IA類)

 縦に平たいオレンジ色の大きなくちばしを持ち、顔は白く、頭部に飾り羽がある。非繁殖期は飾り羽がなく、全体的に地味な姿になる。北太平洋の亜寒帯域に広く生息し、オホーツク海とベーリング海の沿岸、千島列島、北太平洋のカリフォルニア沿岸からアラスカ湾などの島嶼で繁殖する。5~6月、海に面した断崖に穴を掘り、卵を1個産む。岩のすきまを利用することもある。約45日抱卵し、孵化したヒナは40~55日で巣立つ。
 日本では北海道の限られた島で繁殖するが、その数は激減している。潜水してイカや小魚を捕るため、刺し網漁による混獲は大きな脅威である。この他に、カモメ類によるヒナの捕食、食物の横取りも脅威となっている。

日本野鳥の会は、プラスチックに頼らない持続可能な社会をめざして、関係団体とともに政策提言や普及啓発活動を行なっています。

その他の海鳥に関するリンク

南半球アホウドリ物語
当会もパートナーになっているバードライフ・インターナショナル(BirdLife International)は、現地で繁殖する4種類のアホウドリ(ワタリアホウドリ、ハイガシラアホウドリ、マユグロアホウドリ、ハイイロアホウドリ)の情報をホームページやFacebook、Instagram、Twitterで紹介しています。
世界アルバトロスデー
ACAP(The Agreement on the Conservation of Albatrosses and Petrels:ミズナギドリ目鳥類の保全に関する国際協定)では、 この国際協定の調印日である6月19日を「世界アルバトロスデー」と定め、世界のミズナギドリ目鳥類が直面している状況と保全活動の緊急性を世界の人々に呼びかけています。

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