(仮称)日南風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書を提出しました

日 野 鳥 発 第2016-004 号

(仮称)日南風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

平成28年4月25日 提出

項目 記入欄
氏名 ①日本野鳥の会宮崎県支部 支部長 前田 幹雄
②公益財団法人日本野鳥の会 理事長 佐藤 仁志
住所 ①〒889-1605 宮崎県宮崎市清武町加納乙62‐90
②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
計画段階配慮書についての環境の保全の見地からの意見

この度、貴社が作成された(仮称)日南風力発電事業に係る計画段階環境配慮書について、次のとおり意見を提出します。

 現在、貴社が計画段階環境配慮書(以下、配慮書と言う)を縦覧している日南風力発電事業について、環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠB類で宮崎県レッドリストにも掲載されているクマタカ、サシバの生息が予想される事業実施想定区域(以下、計画地と言う)に風力発電施設(以下、風車と言う)を建設した場合、衝突死(以下、バードストライクと言う)が発生する危険性が高い。また、サシバやハイタカなど希少猛禽類の渡り経路に対しても障壁効果等の影響を与えることが懸念される。
 特に、国内ではクマタカが過去に風車によるバードストライクに遭った事例があることから、計画地に風車を建設した場合、クマタカでバードストライクの起こる可能性が高いと考える。そのため、クマタカの生息状況の確認および猛禽類の渡りに係る調査について、質、量とも十分なものを求める。

理由

(1)配慮書によると、クマタカについては、専門家の意見聴取で平坦部や市街地以外の広い場所にいるとしている。つまり、計画地周辺でも生息している可能性が高いことを示唆している。
 会員の情報によると建設予定地の舞之山から西側3㌔の黒山(標高691㍍)や同西側5.6㌔の小松山(標高989㍍)でもクマタカを確認していることから、舞之山周辺でも多く生息している可能性が高く、行動圏内に建設された風車によるバードストライクの危険性が高い。

(2)配慮書によると、第4、3-2表(2)鳥類の重要な種への影響の予測結果があるが、これにはサシバより後に南下するハイタカ、ツミ、チョウゲンボウ、チゴハヤブサ、ハチクマが入っていない。こうした猛禽類もサシバと同じコースを南下しており、実際に日本野鳥の会宮崎県支部が別の調査中に、計画地の東側にある北郷町で秋の渡り時期にサシバやハチクマ等を記録している。風車の建設は南下する猛禽類にとってバードストライクまたは障壁効果による渡り経路の変更といった影響をこれらの鳥類に及ぼす可能性が高い。

(3)鳥類の重要種としてミゾゴイ(宮崎県レッドリスト絶滅危惧ⅠB種)など24種の鳥類をあげている。配慮書では、計画地内でアオバズク(宮崎県レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類)、ツツドリ(同準絶滅危惧種)、オオルリ(同準絶滅危惧種)など14種が生息する可能性をあげている。一方、これら以外であっても県鳥であるコシジロヤマドリ(同準絶滅危惧種)や秋の渡りに記録されているハイタカ、ツミなどの希少猛禽類、夏鳥のコノハズク(同絶滅危惧Ⅱ類)、ヤイロチョウ(同絶滅危惧ⅠB類)などは重要種としてあげられていない。
 計画地での風車の建設は、配慮書で重要種として挙げられている以外の希少な鳥類の生息に対しても少なからず影響を及ぼすと考える。

(4)評価結果について「調査、予測及び評価の結果、バードストライク及びバットストライクの重大な環境が避けられないとの結論に至った場合には、風力発電機の配置等の検討を行うことにより、実現可能な範囲で対策に努めることにする」と述べているが、バードストライクだけでなく、「渡り経路の変更」および「生息地の放棄(事実上の生息地からの追い出し)」といった影響についても、影響の回避または低減策を検討すべきである。

 以上の理由から、計画地およびその周辺において、一般的な環境影響評価よりもさらに詳しい調査を求めるところである。
 貴社においても、風車の建設にあたっては、野鳥の生息状況等を的確に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとることを強く求める。