(仮称)七ヶ宿長老風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書を提出しました

日 野 鳥 発 第2018-009 号

(仮称)七ヶ宿長老風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

平成30年 5月11日 提出

項目 記入欄
氏名 ①日本野鳥の会宮城県支部 支部長 竹丸 勝朗
②公益財団法人日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一
住所 ①〒982-0811 宮城県仙台市太白区ひより台20-7
②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
計画段階配慮書についての環境の保全の見地からの意見

 この度、貴社が作成された(仮称)七ヶ宿長老風力発電事業に係る計画段階環境配慮書について、次のとおり意見を提出します。

 現在、貴社が計画段階環境配慮書(以下、配慮書と言う)を縦覧している(仮称)七ヶ宿長老風力発電事業について、事業実施想定区域(以下、計画地と言う)に風力発電施設を建設した場合、環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠB類で宮城県の絶滅のおそれのある野生動植物 RED DATA BOOK MIYAGI 2016(以下宮城RDBと言う)にも掲載されているクマタカの生息地と重なることが予想され、衝突死(以下、バードストライクと言う)が発生する危険性が高い。また、サシバやハチクマなど希少猛禽類の渡り経路に対しても障壁影響等が発生することが懸念される。
 配慮書は専門家へのヒアリングを行って影響を評価しているが、日本野鳥の会会員の情報でも計画地の花房山周辺や白石市小原の広範囲においてクマタカの生息を確認しており、また、計画地全域周辺でも同種の生息の可能性が高いことから、影響評価に係る現地調査ではクマタカが繁殖しているものとして、慎重を期してもらいたい。
 また、サシバの渡りルートは花房山の南山麓やコツカタ山を通り、南に飛翔する。このコースはサシバばかりでなくハチクマの飛翔南下も観察されている。このように計画地周辺は希少猛禽類の渡りコースにもなっている。
 国内ではクマタカが過去に風力発電施設(以下、風車と言う)によるバードストライクに遭った事例があることから、計画地に風車を建設した場合、バードストライクの起こる可能性が高いと考える。そのため、クマタカの生息状況の確認および猛禽類の渡りに係る調査について、質、量とも十分なものを求める。

理由

(1)配慮書によると、クマタカについては、風力発電機の設置エリアに生息環境が存在し、影響を受ける可能性があると予測されている。また、バードストライクの影響も示唆している。
 会員の情報によると計画地の花房山(標高819㍍)から東へ2kmのコツカタ山(標高387㍍)周辺、花房山から東南東5.7㌔の鉢森山(標高561㍍)や同南南東6㌔の小原中北の上空でもクマタカを確認しており、計画区域周辺に複数個体が生息している可能性が高い。クマタカは行動範囲も広いだけに風車によるバードストライクの危険性が高い。
(2)配慮書によると、第4、3-2表(2)鳥類の重要な種への影響の予測結果があるが、これにはハチクマが入っていない。ハチクマも計画区域およびその周辺に生息している希少鳥類であり、移動の時期にはこの区域を南下する複数個体が観察されている。風車の建設は移動する猛禽類にとってバードストライクまたは障壁影響による渡り経路の変更といった影響を及ぼす可能性が高い。
(3)配慮書によると、鳥類の重要種としてイヌワシ(宮城県RDB絶滅危惧Ⅰ種)など16種の鳥類をあげている。これ以外で冬鳥のオジロワシ(同絶滅危惧Ⅱ類)や夏鳥のアカショウビン(要注目種)などがあがっていない。
 これらのことから、計画地での風車の建設は、これら希少な鳥類の生息に対しても少なからず影響を及ぼすものと考える。
(4)評価結果について、『生息環境の一部改変及び風力発電機稼働による影響の可能性が予測された。今後の環境影響評価の現地調査において生息状況を把握し、「方法書以降の手続き等において留意する事項」に留意することにより、重大な影響を回避又は低減できる可能性が高いと評価する』、と述べているが、バードストライクだけでなく、「渡り経路の変更」および「生息地の放棄(事実上の生息地からの追い出し)」といった影響についても、影響の回避または低減策を検討すべきである。
 以上の理由から、計画地およびその周辺において、いわゆる発電所アセスのガイドラインにあるような一般的な環境影響評価よりも、利害関係者や専門家とも協議したうえで、さらに詳しい調査の実施を求めるところである。
 貴社においても、風車の建設にあたっては、野鳥の生息状況等を的確に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとることを強く求める。