(仮称)白石越河風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書を提出しました

(仮称)白石越河風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

平成30年 7月 9日 提出

項目 記入欄
氏名 ①日本野鳥の会宮城県支部 支部長 竹丸 勝朗
②公益財団法人日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一
住所 ①〒982-0811 宮城県仙台市太白区ひより台20-7
②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
計画段階配慮書についての環境の保全の見地からの意見

 この度、貴社が作成された(仮称)七ヶ宿長老風力発電事業に係る計画段階環境配慮書について、次のとおり意見を提出します。

 この度、貴社が作成された(仮称)白石越河風力発電事業に係る計画段階環境配慮書について、次のとおり意見を提出します。

 現在、貴社が計画段階環境配慮書(以下、配慮書と言う)を縦覧している(仮称)白石越河風力発電事業について、事業実施想定区域(以下、計画地と言う)に風力発電施設を建設した場合、環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠB類で宮城県の絶滅のおそれのある野生動植物 RED DATA BOOK MIYAGI 2016(以下宮城RDBと言う)にも掲載されているクマタカの生息地と計画地が重なることが予想され、衝突死(以下、バードストライクと言う)または生息地放棄が発生する可能性が高い。また、サシバやハチクマなど希少猛禽類の渡り経路に対しても障壁影響等が発生することが懸念される。
 配慮書は専門家へのヒアリングを行って影響を評価しているが、日本野鳥の会会員の情報でも計画地の鉢森山周辺から雨塚山周辺にかけての白石市小原の広範囲においてクマタカの生息を確認しており、また、計画地全域周辺でも同種の生息の可能性が高いことから、影響評価に係る現地調査ではクマタカが繁殖しているものとして、慎重を期して計画地を選定すべきである。
 また、サシバの渡りルートは花房山の南山麓やコツカタ山を通り、南に飛翔する。このコースはサシバばかりでなくハチクマの南下飛翔も観察されている。このように計画地周辺は希少猛禽類にとって主要な渡りコースにもなっている。
 国内ではクマタカが過去に風力発電施設(以下、風車と言う)によるバードストライクに遭った事例があることから、計画地に風車を建設した場合、バードストライクが起こる可能性が高いと考える。そのため、クマタカの生息状況の確認および猛禽類の渡りに係る調査について、質、量とも十分なものを求める。

理由

(1)配慮書によると、クマタカについては、風力発電施設の設置エリアに生息環境が存在し、影響を受ける可能性があると予測されている。貴社は、稼働の影響については方法書以降において予想・評価するとしているが、調査結果を待つことなく、バードストライク等の影響が発生することが懸念される。
 当会会員の情報によると計画地に隣接する鉢森山(標高561㍍)の南1㌔にある四保山(標高550㍍)および小原中北地区の上空だけでなく、北西3㌔のコツカタ山(標高387㍍)でもクマタカを確認しており、計画区域周辺に複数つがいが生息している可能性が高い。クマタカは行動範囲が広く、なわばり範囲が重なる場合があるため、風車建設により複数個体のクマタカでバードストライクが発生する危険性が高い。
(2)配慮書によると、第4、3-9表(1)鳥類の重要な種への影響の予測結果があるが、これには国内でバードストライクが多数発生しているオジロワシが入っていない。オジロワシも計画区域およびその周辺に生息している希少鳥類であり、実際に当会会員により冬期に観察されている。風車の建設は飛翔移動する、オジロワシを含む猛禽類にとってバードストライクまたは障壁影響による渡り経路の変更といった影響を及ぼす可能性が高い。
(3)配慮書によると、鳥類の重要種としてイヌワシ(宮城県RDB絶滅危惧Ⅰ種)など20種の鳥類をあげているが、これら以外で夏鳥のノジコ(要注目種)などがあがっていない。
 それらのことから、計画地での風車の建設は、これら希少な鳥類の生息に対しても少なからず影響を及ぼすものと考える。
(4)評価結果について、『改変による生息環境の変化に伴う影響が生じる可能性がある。なお、留意事項に留意することにより、直接改変による重大な影響を回避又は低減できる可能性が高いと評価する』、と述べている。配慮書では、風力発電機稼働による影響の可能性は方法書以降において予想・評価するとしているが、鳥類への影響は直接改変だけでない。さらに事業想定区域上空を利用すること鳥類についてはバードストライクだけでなく、「渡り経路の変更」および「生息地の放棄(事実上の生息地からの追い出し)」といった影響についても、影響の回避または低減策を計画初期の段階から検討すべきである。
 以上の理由から、計画地およびその周辺において、いわゆる発電所アセスのガイドラインにあるような一般的な環境影響評価よりも、利害関係者や専門家とも協議したうえで、さらに詳しい調査の実施を求めるところである。
 貴社においても、風車の建設にあたっては、野鳥の生息状況等を的確に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとることを強く求める。