(仮称)秋田県由利本荘市沖洋上風力発電事業に対する要望書を提出しました

日野鳥発第2018-085号
平成31年 2月25日

株式会社レノバ
代表取締役社長CEO 木南陽介 殿

由利本荘市野鳥を愛する会
代表 佐々木 正美
秋田県由利本荘市一番堰106-10

日本野鳥の会秋田県支部
支部長 佐藤 公生
秋田県潟上市天王追分86-15

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
(公印省略)

(仮称)秋田県由利本荘市沖洋上風力発電事業に対する要望書

貴社が計画されている(仮称)秋田県由利本荘市沖洋上風力発電事業に際して、対象事業実施区域およびその周辺の豊かな自然環境と事業規模にふさわしい適切な環境影響評価を実施し、その結果を鑑みて、環境影響評価準備書作成以前の段階で、風車の設置予定位置を地元団体等とともに協議しながら再検討してくださいますよう、以下の5項目について要望いたします。なお、要望の背景となっている鳥類等の状況および詳細な要望内容については、添付資料をご覧ください。

1.風力発電用風車の設置位置について
対象事業実施区域に設定されている海域(以下、当該海域という)は本来、海鳥の保護の観点から考えて、計画段階環境配慮書を作成する以前に事業実施想定区域から除外されるべき海域であった。マリーンIBAの指定海域であるという観点および地元団体の普段の調査・観察結果に加えて、貴社の鳥類調査の結果も鑑みながら、当該海域の鳥類の生息に影響がないよう、準備書作成以前の段階で、風車の設置位置を地元団体や鳥類および風力発電の専門家とともに協議しながら、総合的に検討していただきたい。

2.生態系に対する影響について
 生態系保護の観点からも当該海域は本来、計画段階環境配慮書を作成する以前に事業実施想定区域から除外されるべき海域であった。これらの観点および地元団体の普段の調査・観察結果に加えて、貴社の鳥類調査の結果も鑑みながら、当該海域の生態系保護に資するよう、準備書作成以前の段階で、風車の設置位置を地元団体や鳥類および風力発電の専門家とともに協議しながら、総合的に検討していただきたい。

3.ミサゴに対する影響について
準絶滅危惧種ミサゴの保護の観点からも当該海域は本来、計画段階配慮書を作成する以前に事業実施想定区域から除外されるべき海域であった。これらの観点および地元団体の普段の調査・観察結果に加えて、貴社の鳥類調査の結果も鑑みながら、当該海域のミサゴの保護に資するよう、準備書作成以前の段階で、風車の設置位置を地元団体や鳥類および風力発電の専門家とともに協議しながら、総合的に検討していただきたい。

4.貴社が実施する環境影響評価の実施内容について
調査期間について、生態系の影響を評価するにあたって、調査期間が約1年、および予測評価にかける時間が3か月というのは、時間が不十分である。国内でもこれまでにない事業規模の大きさに見合った調査・予測評価期間を確保するべきである。
また、予測評価については、主に鳥の衝突率が問題視されているが、採餌環境の変化が与える長期間の影響についても入念な予測評価を行うべきである。また、底質に砂が多いとされる当該地では、建設後の海流の変化による砂の移動で底生生物や魚類の生息状況が劇的に変化する可能性があるが、当該海域に実証研究施設が1つもない状態でそれらの予測評価をどのように行うのか疑問である。本事業の規模を考えれば、風車様の擬似的な構造物や観測用タワーなど複数の実証研究用の観測装置を設置し、影響の発生程度等を観測しながら、全体の設置計画を進めていくべきである。

5.協議会の開催について
 上記で述べた調査の結果から得られたデータを地元団体や鳥類保護関係者および鳥類や風力発電の専門家等と共有し、準備書作成以前の段階で、風車の設置位置を決定するための公開の協議会を設けることを求める。

本事業は世界でも類を見ないほど大規模な洋上風力発電施設の建設計画であり、自然環境および野生動物の生息に与える影響は計り知れない。しかも、本対象事業実施区域は、添付資料およびこれまでに述べた通り、渡り鳥の渡り経路および中継地、希少猛禽類の繁殖地、海鳥等の採餌場所としてかけがえのない海域であり、風車の配置をどのように工夫しても、生息環境への影響をゼロにすることはできないと、我々は考えている。それにも関わらず事業を実施しようとするならば、既存のマニュアル等に拠らず、地元団体や鳥類および風力発電の専門家等と協議した内容をもって詳細な環境影響評価を長期間行い、鳥類等への生息環境への影響が限りなく低いことを、誰もが納得できる形で示してほしい。

自然に優しいはずの風力発電がその建設・供用さらには撤去時において自然に対して大きな影響を与える場合には、その存在意義が根底から否定されてしまうことになる。環境に貢献することを理念と掲げる貴社であるからこそ、この事実を真摯に受け止め、本計画の実施が由利本荘の海洋生態系に影響を与えないよう、本事業に取り組んでほしい。

本要望に対し真摯に検討し、3月20日までに貴社による検討結果を由利本荘市野鳥を愛する会、日本野鳥の会秋田県支部、および公益財団法人日本野鳥の会に回答することを求める。

以上