(仮称)福島北風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

令和2年6月19日

日立サステナブルエナジー株式会社
取締役社長 石田 桂 様

日本野鳥の会ふくしま
代表 志賀 裕悦
福島市八木田字井戸上82-2(事務局)

公益財団法人日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル

「(仮称)福島北風力発電事業 計画段階環境配慮書」 に対する意見書

日本野鳥の会ふくしまは、貴社が計画する(仮称)福島北風力発電事業 環境影響評価配慮書に対し、鳥類の保護の見地から下記の意見を提出する。

  • 事業実施想定区域(以下、計画地と言う)及びその周辺において、国内希少野生動植物種および福島県のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に指定されているクマタカの生息を毎年確認しており、今年度においても当会員がその姿を確認している。繁殖期には雌雄つがいでのディスプレイ飛翔を何度も確認していることから、計画地周辺で繁殖している可能性が高い。また茂庭ダム及び藤倉ダムの周辺でも当会員が毎年クマタカの姿を確認している。藤倉ダムでは巣立ちして間もない幼鳥を撮影できた年もあり、営巣木は藤倉ダム周辺にあるものと考えられる。計画地及びその周辺では推定2つがい以上のクマタカが生息しているものと考えられる。これらのことから、今回の開発により狩場の減少、繁殖地の放棄、最悪の場合には生息地自体の消失が大いに懸念されるため、その様なことが起きないよう対策を講じることを貴社に対し求めるものである。
  • 絶滅危惧Ⅱ類のハヤブサ、準絶滅危惧類のオオタカ、ミサゴ、ハチクマ、ツミ、サシバ、カッコウ、サンショウクイなども計画地及びその周辺で生息していることが確認されている。また、通過個体数こそ多くないが、上記の種が渡りのルートとして計画地を利用することが福島県のレッドリストで確認されている。他にも普通種のヒヨドリやツグミなどは渡りルートとして計画定地及びその周辺を多く通過している。風車が設置されれば上記の種のうち留鳥だけでなく、渡り鳥のバードストライクが発生する危険性が排除できない。そのため、貴社はバードストライクの発生を回避するためにどのような対策を講じるのか、その方法を明確に示し、計画地における鳥類の生息状況によっては風車の設置基数の削減を求める。
  • 福島県のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されているホオアカも県内の山地で繁殖していることが確認されている。福島市周辺の標高のやや高い地域で確認されているが、近年の開発行為等による草地の減少や荒れ地化などで福島市周辺のホオアカの確認が減少しているので、現地調査を行う場合にはその点に十分留意して頂きたい。
  • レッドリストに掲載されている種のみの保全だけではなく、その種の生息に不可欠な動植物の健全な生態系のバランスが維持できるような対策が必要であることから、貴社がそのような対策を講じるようお願いする。
  • 調査時期、調査期間など福島県及び計画地周辺の生態系が把握できる調査を求める。調査方法に関して、他社の風力発電事業計画地で、調査のために設定する定点の数は多いものの、調査日に殆どの地点に調査員が配備されていない状況で調査が実施されたという話を聞いている。これは、調査計画上では地点数を多く設定することで視野図上では死角がないように見えるが、実際には鳥類が飛翔していても調査員が配備されていない定点周辺については、見落としが生じていることになる。そのため、現地調査を実施する際は、全地点に調査員を配備するか、それができない場合はエリアごとに調査を連続4日以上実施するものを一回とし、繁殖期には月に2回、非繁殖期には月に1回は調査を実施し、見落としがないように観察に努めるべきである。特に猛禽類の調査には、計画地周辺では隔年で繁殖する傾向のあるクマタカも含まれるため、環境省の猛禽類の保護の進め方に準拠し、最低2年以上の調査が必要である。調査期間の設定については十分に注意し、適切に現地の鳥類の生息状況を把握できる調査になるようお願いしたい。
  • 福島県レッドリストで準絶滅危惧種に指定されるマミジロ、アカハラ、アカショウビン、ノジコ、クロツグミ、コサメビタキ、オオアカゲラ、ヨタカ、ヤマシギなどが計画周辺で生息していることを確認しているので、貴社が行う現地調査では、これらの生息について見落としが無いようお願いしたい。
  • 資料にはコアジサシをリスト種として掲載しているが、県内では沿岸部で確認はあるが、内陸部では極めて確認の可能性が低く開発予定地のリスト種からは除外してよい。

以上