(仮称)三瀬矢引風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

(仮称)三瀬矢引風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

令和2年7月16日 提出

項 目 記入欄
氏 名 ①日本野鳥の会山形県支部 支部長 簗川 堅治
②公益財団法人 日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一 (公印省略)
住 所 ①〒994-0081 山形県天童市南小畑4-8-33
②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
計画段階配慮書についての環境の保全の見地からの意見

この度、貴社が作成された(仮称)三瀬矢引風力発電事業に係る計画段階環境配慮書について、下記の通り意見を提出します。

(1)現在、貴社(ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社)が計画段階環境配慮書(以下、配慮書という)を縦覧している(仮称)三瀬矢引風力発電事業について、事業実施想定区域(以下、計画地という)に風力発電施設(以下、風車という)を建設した場合、環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類であり山形県の絶滅のおそれのある野生動植物にも指定されているクマタカの生息地と計画地が重なることになる。計画地の尾根や稜線を利用するクマタカが風車に衝突死するバードストライクが発生する危険性が高いと判断される。実際に、風車とクマタカとのバードストライクが発生した事例が国内で確認されている(武田 2013)。計画地に風車を建設した場合、バードストライクが起こる可能性は相当高いと判断される。そのため、クマタカの行動圏や高度利用息の推定などを含む生息状況の確認等の調査について、質、量ともに十分なものを求める。

(2)計画地はサシバやハチクマなど希少猛禽類の渡りルートの一部になっている可能性があることから、風車の建設によりバードストライクが生じ、また、障壁影響により渡りルートの変更および生息地の放棄といった影響を及ぼすことが懸念される。そのため、希少猛禽類の渡りに対するこれらの影響の回避または低減策を計画の初期段階から検討すべきである。

(3)配慮書では、「重要な動物及び注目すべき生息地への影響についての予測結果を基にした評価結果では、生息環境が変化すると予測される重要な種(鳥類60種など)と、注目すべき生息地のうち、「三瀬葉山ニッポンユビナガコウモリの群棲地」「気比台の池」「希少猛禽類の渡り経路」「ガン類、ハクチョウ類の集結地」について、生息、利用状況や改変区域との重複状況によっては、地形改変及び施設の存在並びに施設の稼働による影響を受ける可能性がある。今後の環境影響評価手続きにおいて、重要な動物の生息状況や注目すべき生息地の利用状況を把握した上で、その結果を踏まえて、風車の配置計画や改変区域等を検討することにより、重大な環境影響は回避、低減されるものと評価する。」としている。
配慮書では計画地から約5km離れた「大山上池・下池」については風車の建設による鳥類への影響がないとしているが、しかし、ここはガン・カモ・ハクチョウ類の貴重な越冬地となっている。そして、計画地周辺の山地や水田地帯は「大山上池・下池」で越冬する野鳥たちが集結し採餌する区域となっている。そのため、鳥類がこの採餌区域を風車の建設による生息地放棄で利用できなくなることは、ラムサール条約登録湿地の「大山上池・下池」の野鳥の生息状況に大きな影響を与えるものである。そのため、計画地の土地改変による影響と「大山上池・下池」の生息状況を関連付けて調査する必要があることから、その点について留意して調査計画を立てることを求める。

(4)専門家へのヒアリングの結果について、鳥類の有識者が「渡りの時期の小鳥類の動きにも着目するとよい。これについては、春季と秋季にセンサス調査や定点調査をすることも考えられる。」としている。計画地は小鳥たちが移動するルートにもなっているため、渡りの時期である春と秋に適切な調査をすることで、重要な種の移動や渡りの状況を正確に把握し、小鳥類の渡りに影響を及ぼさないよう適切な対応を求める。

(5)計画地から1.7km離れた場所に、「(仮称)鶴岡八森山風力発電事業」として5基の風車を建設する計画が進められている。本件の計画地に計画通り7基の風車が建設された場合、併せて12基の風車が同じ地域の中で稼働することとなるが、ここを生息地とするクマタカをはじめとする猛禽類や渡りルートとして利用しているサシバやハチクマなどの猛禽類および小鳥類、そして計画地周辺を採餌場所としているガン・カモ・ハクチョウ類にバードストライクや障壁影響による渡り経路の変更および生息地の放棄といった多大な影響を及ぼす可能性がある。そのため、「(仮称)鶴岡八森山風力発電事業」との累積的影響について調査および評価した結果を公表するなどして、本件事業単独ではなく、複数事業が地域の鳥類の生息に及ぼす影響を評価していただきたい。

以上、計画地およびその周辺において、いわゆる発電所アセスのガイドラインにあるような一般的な環境影響評価よりも、利害関係者や専門家とも協議したうえで、さらに詳しい調査の実施を求めるところである。
 貴社においても、風車の建設にあたって、鳥類の生息状況を的確に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとることを強く求める。

以上