(仮称)女川石巻風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

(仮称)女川石巻風力発電事業 計画段階環境配慮書に対する意見書

令和2年8月23日 提出

項 目 記入欄
氏 名 ①日本野鳥の会宮城県支部 支部長 竹丸 勝朗
②公益財団法人日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一 (公印省略)
住 所 ①〒982-0811 宮城県仙台市太白区ひより台20-7
②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
計画段階配慮書についての環境の保全の見地からの意見

この度、貴社が作成された(仮称)女川石巻風力発電事業 計画段階環境配慮書について、次のとおり意見を提出します。

現在、貴社が計画段階環境配慮書(以下、配慮書と言う)を縦覧している(仮称)女川石巻風力発電事業について、事業実施想定区域(以下、計画地と言う)に風力発電施設(以下、風車と言う)を建設した場合、環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠB類で宮城県の絶滅のおそれのある野生動植物 RED DATA BOOK MIYAGI 2016にも掲載されているクマタカの生息地と計画地が重なることが予想され、風車へのバードストライクまたは生息地放棄が発生する可能性が高い。
日本野鳥の会会員の情報でも計画地において、繁殖期にクマタカの生息を確認していることから、これら希少猛禽類の保護の観点から繁殖地を避けるよう計画地の位置を見直すべきである。このため、影響評価に係る現地調査ではクマタカや他の猛禽類も繁殖しているものとして適切な調査を十分に行い、これらの猛禽類の生息や繁殖に影響が無いよう、慎重を期して計画地を選定すべきである。
女川湾は冬期、オオワシやオジロワシの生息地となっており、周辺の雄勝湾、万石浦、北上川との往来時に計画地を通過すると考えられる。国内ではオジロワシ、オオワシが過去に風車によるバードストライクに遭った事例があることから、計画地に風車を建設した場合、バードストライクが起こる可能性が高いと考える。
また、ハチクマの渡りルートについても、南北に延びる計画地を通過することが予想され、計画地周辺は希少猛禽類にとって主要な渡りコースにもなっているものとして、猛禽類の渡りに係る調査についても質、量とも十分なものを求める。

  1. 配慮書では、計画地にクマタカ等の主な生息環境が存在し、その一部が改変される可能性があることから、生息環境の変化に伴う影響が生じる可能性があると予測している。また、計画地上空を利用する可能性がある種については、風車の稼働に伴いバードストライクが生じる可能性があると予測している。しかし、事業実施想定区域を可能な限り絞り込むことで重大な影響を実行可能な範囲内でできる限り回避又は低減されると評価し、方法書以降の手続きにおいて生息状況は現地調査等により把握し、影響の程度を適切に予測するとしている。
    計画地内での風車建設により、方法書以降の調査結果を待つまでもなく、バードストライク等の影響が発生することが予見される。当会会員の観察によると、クマタカは計画地周辺に複数つがいが生息している可能性が高く、また、クマタカのバードストライクが国内ですでに起きているからである。クマタカは行動範囲が広く、なわばり範囲が重なる場合があり、風車建設により複数個体のバードストライクが発生する危険性が非常に高い。また、計画地周辺に冬期生息するオオワシやオジロワシのバードストライクは全国で多数報告されており、このような大型猛禽類の生息地での風車の建設は避けるべきである。
  2. 鳥類への影響は、バードストライクだけでなく、障壁影響による「渡り経路の変更」および「生息地の放棄」(事実上の生息地からの追い出し)といった影響についても、発生を回避または低減できる対策を計画の初期段階から検討すべきである。

以上の理由から、計画地およびその周辺において、いわゆる発電所アセスのガイドラインにあるような「猛禽類保護の進め方」に準拠した調査方法を用いた一般的な環境影響評価よりも、利害関係者や専門家とも協議したうえで、さらに詳しい調査の実施を求めるところである。

貴社においても、風車の建設計画にあたっては、猛禽類をはじめ野鳥の生息状況等を的確に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとることを強く求める。