(仮称)山形遊佐町沖洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

(仮称)山形遊佐町沖洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

令和2年11月27日 提出

項 目 記入欄
氏 名
  1. 日本野鳥の会山形県支部 支部長 簗川 堅治
  2. 公益財団法人 日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一
住 所
  1. 〒994-0081 山形県天童市南小畑4-8-33
  2. 〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
計画段階配慮書についての環境の保全の見地からの意見

この度、貴社(インベナジー・ウインド合同会社)が作成された(仮称)山形遊佐町沖洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書について、下記の通り意見を提出します。

(1)現在、貴社が計画段階環境配慮書(以下、配慮書という)を縦覧している(仮称)山形遊佐町沖洋上風力発電事業について、事業実施想定区域(以下、計画地という)周辺で既に計画が進められている洋上風力発電事業が4事業あり、また、2020年11月に貴社と同様の事業計画を発表した事業者が2社ある。そのため、貴社が事業を進めるにあたっては、他の事業者6社と協議・調整を図ったうえで、調査方法の統一をするなどして不足しがちな海鳥のデータの収集を行うこと、また陸上においては鳥類およびその生息地に調査圧が過大になることを避けつつ、適切な環境影響評価を実施していただきたい。

(2)計画地東部の海岸沿いでは複数の風力発電施設(以下、風車という)が稼働していることから、貴社はこれらの風車との複合的な影響(累積的影響)も評価する必要がある。方法書の作成に進む前に、累積的影響について先行事業のアセス図書を含む既存の情報等を用いて評価した結果を方法書に記載するなどして、本件事業単独ではなく、複数事業が計画地周辺の鳥類の生息に及ぼす影響を評価していただきたい。

(3)計画地周辺の海鳥の生息状況を確認にあたり、質・量ともに十分な調査をすべきであるが、陸生鳥類と違い分布や生態の調査が非常に困難なことから、どのような方法で調査を実施、影響の予測・評価、保全措置を講じるのか、方法書において具体的に提示すべきである。特に海鳥の飛来が多い春秋の渡りの時期および冬季については十分な調査・予測・評価を行うべきである。

(4)洋上風車によるバードストライクの発生確率等を調査・予測・評価するのは難しいため、貴社のこの事業計画においては、経済産業省による発電所に係る環境影響評価の手引き等に示されている方法よりも綿密な調査を実施するよう求める。特に計画地周辺では渡り鳥が重要な調査対象となるが、1シーズンだけでは影響を予測、評価するための情報が不足するため、複数年にわたる調査が必要である。
また、カモ類が夜間に渡りを行うことはよく知られているが、オオミズナギドリやアビ類、ウミスズメ類も夜間に渡りを行うと推測されている。そのため、日中のみならず夜間にもバードストライクが発生することを念頭に置いた調査が必要であり、特に、鳥類の飛翔の確認が難しい夜間については、レーダ等の観測機器を用いるなどして十分な調査・予測・評価を行っていただきたい。

(5)計画地はオオミズナギドリやアビ類、ウミスズメ類などの渡りの時期および冬季の生息域となっている。また、ハチクマ、ハイタカ、サシバなど希少猛禽類の渡りルートの一部にもなっており、ヒシクイ、ハクガン、シジュウカラガンなどのガン類やハクチョウ類にとって主要な越冬地である八郎潟(秋田県)と福島潟(新潟県)との間の渡りの中継地にもなっている。そのため、計画地での風車の建設および稼働によりこれらの鳥類でバードストライクが発生し、また、障壁影響により生息域および渡りルートを変更させるといった影響を及ぼすことが懸念される。そのため、海鳥および希少猛禽類などの鳥類の渡りと生息域に対するこれらの影響を回避または低減するための保全策を計画の初期段階から検討すべきである。

(6)計画地周辺ではオジロワシおよびチュウヒといった国内希少野生動植物種の生息が確認されていることから、そのことを念頭に置いて情報収集等の綿密な調査を方法書作成前の段階で実施し、バードストライクまたは障壁影響を含む生息地放棄等の影響が発生することが予測された場合は、影響を回避または低減するための保全策を計画の初期段階から検討すべきである。

以上、計画地およびその周辺で環境影響評価を実施するにあたっては、利害関係者や専門家とも協議したうえで、経済産業省による発電所に係る環境影響評価の手引きにあるような一般的な環境影響評価よりも、詳しい調査の実施を求めるところである。

貴社においても、風車の建設にあたって、鳥類の生息状況を的確に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとることを強く求める。

以上