小樽の銭函海岸における風力発電について計画中止の要望書を提出

2011.01.13

日本野鳥の会小樽支部(事務局:小樽、支部長:梅木賢俊)、日本野鳥の会札幌支部(事務局:札幌、支部長:山田三夫)と財団法人 日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博、会員・サポーター数約5万1千人)は1月13日、北海道小樽市銭函の海岸における風力発電施設建設計画について、絶滅のおそれのある鳥類の生息に対する悪影響を回避するため、事業者である日本風力開発(株)、銭函風力開発(株)に対して、計画の中止を求める要望書を提出しました。また本件について北海道庁、環境省北海道地方環境事務所、小樽市に対しても、文書で適切な対応を求めました。

この風力発電事業の計画地である小樽市の銭函4~5丁目の海岸部は、近年その個体数の減少が著しいシマアオジ(環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠA類)、アカモズ(同ⅠB類)が繁殖、ミサゴ(同準絶滅危惧)が生息しており、道内でも風車への衝突事故が多いオジロワシ(国の天然記念物、国内希少野生動植物種、絶滅危惧ⅠB類)、マガン(国の天然記念物、準絶滅危惧)の越冬や渡りも確認されています。この場所に大規模風力発電施設を建設すれば、これらの鳥類への繁殖阻害や生息地消失、衝突死などの悪影響が避けられないと考えられます。そのため、北海道、北海道地方環境事務所、小樽市に対しては、行政による適切な対処をとっていただけるよう、事業者に対しては、計画を中止していただけるよう要望したものです。

なお日本風力開発(株)は従来、風力発電の建設過程において、地元の自然保護関係者とのていねいなコミュニケーションをとり、計画基数を減らす、事故発生時に原因解明まで風車の稼動を停止することを約束する等の対応を行なってきました。しかし、今回の計画では、自主的な環境影響評価を実施しているものの、自然保護団体からの意見に対して十分に応答しないといった、ていねいさを欠く対応となっており、このことに関して小会らは改善していただくことが必要と考えています。

要望書提出先

日本風力開発(株)、銭函風力開発(株)、北海道庁、環境省北海道地方環境事務所、小樽市

本件へのお問い合わせ

  • 日本野鳥の会小樽支部 梅木賢俊(TEL 0134-22-0185)
  • 日本野鳥の会札幌支部 山田三夫・住友順子(TEL 011-613-7973:平日10~18時のみ)
  • (財)日本野鳥の会自然保護室:(TEL 03-5436-2633:平日のみ) 担当:浦 達也

記者発表先

北海道庁 道政記者クラブ、環境省記者クラブ

添付資料

  1. 国内バードストライク事例
  2. シマアオジ、アカモズ、オジロワシについて

日野鳥発第 65 号
平成23年1月12日

日本風力開発株式会社
代表取締役社長 塚脇 正幸 様

日本野鳥の会小樽支部
支部長 梅木賢俊
北海道小樽市富岡1-13-10

日本野鳥の会札幌支部
支部長 山田三夫
北海道札幌市中央区大通西17丁目1

財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

銭函海岸に生息する希少鳥類の保全に関する要望書
(銭函風力開発建設事業に際して)

 日ごろ、当会の自然環境保全事業について、ご理解をいただき深く感謝申し上げます。
 さて、ご承知のとおり、銭函海岸は北海道が策定した「北海道自然環境保全指針」に基づき選定された「すぐれた自然地域」として、保全を図るべき自然地域に位置づけされており、また、希少な野生動植物の重要な生息地となっています。
 特に鳥類では、オジロワシやハヤブサなど種の保存法の国内希少野生動植物種、マガンなど国の天然記念物、シマアオジやアカモズなど環境省によるレッドリスト指定種の鳥類の生息が確認されています。先般、貴社から公開された環境影響評価書案への意見書においても述べたところですが、銭函海岸に貴社が計画されている風力発電施設が建設された場合、これらの鳥類の生息地は喪失し繁殖が阻害される、飛行経路が変更される、衝突事故が発生するなどの影響が危惧されます。
 ついては、銭函海岸の野生生物保全のため、下記のとおり要望します。

 次の理由より、銭函海岸における風力発電施設の建設計画は、野生生物の生息に多大なる影響を及ぼすと考えられますので、この計画を中止してください。

  1. 猛禽類について
     貴社で作成した環境影響評価書案(以下、評価書案)の中にある準絶滅危惧のミサゴ、絶滅危惧ⅠB類/国内希少野生動植物種/国の天然記念物であるオジロワシの予測結果では、「風車への衝突については留意する必要がある」と記されております。また、別添の「資料編(種類別猛禽類確認結果)」にあるオジロワシ、およびミサゴの確認位置をみると、あきらかに飛行コースの障害となり、また飛行高度から、衝突の危険性が非常に高いと考えられます。
     そのため、オジロワシとミサゴの飛翔コースにあたる1~8号機の建設は不適当です。
  2. 絶滅危惧ⅠA類シマアオジについて
     評価書案の129ページの図によれば、6月3日~6日の調査において、シマアオジの成鳥オスが確認されています。また、日本野鳥の会札幌支部の会員により、銭函5丁目の草原において、2009年8月13日にシマアオジの幼鳥が確認されています。6月初旬はシマアオジの繁殖前期にあたり、さらにほぼ同じ行動圏において、前年には繁殖した幼鳥が確認されていることから、この地域でシマアオジが繁殖活動を行っていることは確実です。風車の建設予定地は、シマアオジの行動圏(40,000~70,000㎡)と重なっており、風車建設による環境悪化や生息地の改変などがシマアオジの繁殖に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
    そのため、シマアオジが確認された場所から周囲400m~700mにあたる3~8号機の建設は不適当です。
  3. 絶滅危惧ⅠB類アカモズについて
     評価書案129ページの図によれば、アカモズが12か所で計16羽の生息が確認されており、親鳥の給餌や餌運び行動、さらには繁殖した幼鳥と共に行動しているところも確認されています。また、2009年に日本野鳥の会札幌支部の会員により、2つがいのアカモズの繁殖を確認しています。アカモズはここ数年急速に生息数が大きく減少していますが、北海道内でこれほど多数のアカモズが広範囲に繁殖する場所は今のところ、当該計画地以外にはありません。ここに風車を建設すれば、工事車両や関係者の出入り、環境悪化や生息地の改変により、生息地が壊滅的な打撃を受けるおそれがあります。
     そのため、アカモズの行動圏テリトリー(150~200m)にあたる1~3号機、7~8号機および10~15号機の建設は不適当です。
  4. 国の天然記念物マガンについて
     評価書案129ページの図によれば、マガンの群が2度にわたり、石狩湾新港内の海側から1号機および2号機の風車建設予定位置の上空を通過し、東方向に飛翔しています。マガンの飛翔高度は、美唄市宮島沼の観察や福井県あわら市における(財)日本野鳥の会による調査結果などによれば、高度30mから150mの範囲の飛行が一般的です。
     そのため、マガンの飛翔コースと重なる位置にあたる1~2号機を建設した場合、マガンが衝突死する可能性があるので、1~2号機の建設は不適当です。
  5. 鳥類の主要な移動ルートとなっている海岸沿いの範囲について
    評価書案8ページおよび12ページの地図をみると、1~8号機の建設位置から南側500mに、連続して工場の建物が立ち並んでいます。このため、海岸沿いを南下する鳥類の群や猛禽類などの大型鳥類のほとんどは工場の高い建物の上空を通過するのを避け、飛行コースを建設予定地のある海岸寄りにとっています。144~152ページにある猛禽類の行動範囲も、ほとんどは工場の建物のある場所を避け、建設予定地となっている狭い海岸沿いの範囲内を飛行せざるを得ない状況となっています。
    以上のことから、1~8号機の風車建設予定地は大型の鳥類の飛行コース上にあり、風車建設によりそれらが衝突死する可能性が極めて大きいため、1~8号機の建設は不適当です。
  6. 草原性鳥類、森林性鳥類に及ぼすバードストライク以外の影響
     風車建設によって直接失われる面積は8.7haと算定されていますが、一つ一つの風車がもたらす影響は、単に施工改変された土地やバードストライクだけにとどまるものではありません。
    鳥類に関する影響については、ここ数年、日本鳥学会会員による風車建設後の調査が行われており、風車建設がもたらす影響が明らかにされてきています。
    武田恵世(2010 日本鳥学会2010年度大会講演要旨集:84)によると、三重県における風車建設後の森林と対照区の森林で繁殖期の調査をおこない比較検討した結果、「(前略)生息密度は約1/22であった。すなわち、建設後少なくとも11年では年月と共に鳥類が増えていることはなく、風力発電機の影響を受けない、あるいは順応している個体は非常に少ないままであると考えられる。野鳥は騒音を発生する人工建造物にある程度順応性があり、鉄道や高速道路、空港周辺に野鳥が多い場所があることはよく知られている。しかし、風力発電機には順応していない理由は、稼働の日変動、年変動が極めて大きく、稼働中も風波と呼ばれる風向、風速の変動による変化が大きいこと、また、特殊な騒音、特に低周波音の影響や、ストロボ効果の影響などが考えられる。風力発電機の鳥類の生息への影響は極めて大きく、風力発電所の立地には慎重な検討が必要であると考えられる。」と述べています。
     風車の建設計画がない六線浜周辺とその北東及び南西に連なる砂丘列の草地(風車建設地)や低木疎林は一連の環境であり、ノビタキ、ホオアカなどが生息するとともに、アカモズが生息、繁殖しています。第3項でも述べているとおり、六線浜の北東部及び南西部の区域で風車建設が行われた場合、現在、急速に個体数が減少しているアカモズにとって、その影響は極めて大きいと考えられます。
     砂丘草地を採餌環境とする絶滅危惧ⅠB類チュウヒ、ハイイロチュウヒやノスリなどの猛禽類にとっても影響は大きいと予測されます。
     また、砂丘列の後背林であるカシワ林には、森林性鳥類が生息していますが、風車建設によって、鳥類の生息密度が低下し、やがては森林生態系に大きな影響を及ぼすと考えられます。
     銭函海岸の生物多様性を保全し貴重な砂丘生態系をこの地域の財産として残してゆくために、勇気あるご決断をいただきますよう、心からお願い申し上げます。

以上

 

日野鳥発第 66 号
平成23年1月12日

北海道地方環境事務所
所長 吉井雅彦 様

日本野鳥の会小樽支部
支部長 梅木賢俊
北海道小樽市富岡1-13-10

日本野鳥の会札幌支部
支部長 山田三夫
北海道札幌市中央区大通西17丁目1

財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

銭函海岸に生息する希少鳥類の保全に関する要望書
(銭函風力開発建設事業に際して)

 日ごろ、当会の自然環境保全事業について、ご理解をいただき深く感謝申し上げます。
 さて、銭函海岸は北海道が策定した「北海道自然環境保全指針」に基づき選定された「すぐれた自然地域」として、保全を図るべき自然地域に位置づけされており、また、希少な野生動植物の重要な生息地となっています。
 特に鳥類では、オジロワシやハヤブサなど種の保存法の国内希少野生動植物種、マガンなど国の天然記念物、シマアオジやアカモズなどレッドリスト絶滅危惧Ⅰ類の鳥類の生息が確認されています。銭函海岸に風力発電施設が建設された場合、これらの鳥類の生息地は喪失し、繁殖が阻害される、飛行経路が変更される、衝突による死傷事故が発生するなどの影響が危惧されます。
 ついては、銭函海岸の野生生物保全のため、下記のとおり要望します。

 銭函海岸における風力発電施設の建設により、北海道が保全を図るべき自然地域として選定した同海岸の自然環境、とりわけ絶滅危惧種および国内希少野生動植物種や天然記念物に指定される希少鳥類が影響を受けないよう、環境省として適切な対応をとっていただきたく要望します。
 理由はつぎのとおりです。

  1. オジロワシとミサゴの生息に悪影響を与えるおそれがあります
     銭函風力開発株式会社が作成した環境影響評価書案(以下、評価書案)の中にある準絶滅危惧であるミサゴ、絶滅危惧ⅠB類/国内希少野生動植物種/国の天然記念物であるオジロワシの予測結果では、「風車への衝突については留意する必要がある」と記されております。また、別添の「資料編(種類別猛禽類確認結果)」にあるオジロワシ、およびミサゴの確認位置をみると、あきらかに飛行コースの障害となり、また飛行高度から、衝突の危険性が非常に高いと考えられます。
     そのため、オジロワシとミサゴの飛翔コースにあたる1~8号機について、風車の建設計画を見直す必要があります。
  2. 絶滅危惧ⅠA類シマアオジの生息に悪影響を与えるおそれがあります
     評価書案の129ページの図によれば、6月3日~6日の調査において、シマアオジの成鳥オスが確認されています。また、日本野鳥の会札幌支部の会員により、銭函5丁目の草原において、2009年8月13日にシマアオジの幼鳥メスが確認されています。6月初旬はシマアオジの繁殖前期にあたり、さらにほぼ同じ行動圏において、前年に繁殖個体の幼鳥が確認されていることから、この地域でシマアオジが繁殖活動を行っていることは間違いありません。風車の建設予定地は、シマアオジの行動圏(40,000~70,000㎡)と重なっており、風車建設による環境悪化や生息地の改変などがシマアオジの繁殖に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
     そのため、シマアオジが確認された場所から周囲400m~700mにある3~8号機について、風車の建設計画を見直す必要があります。
  3. 絶滅危惧ⅠB類アカモズの生息に悪影響を与えるおそれがあります
     評価書案129ページの図によれば、アカモズが12か所で計16羽の生息が確認されており、親鳥の給餌や餌運び行動、さらには繁殖した幼鳥とともにに行動しているところも確認されています。また、2009年に日本野鳥の会札幌支部の会員により、2つがいのアカモズの繁殖を確認しています。アカモズはここ数年急速に生息数が大きく減少していますが、北海道内でこれほど多数のアカモズが広範囲に繁殖する場所は今のところ、この計画地以外にはありません。ここに風車を建設すれば、工事車両や関係者の出入りを含め、環境悪化や生息地の改変により、生息地が壊滅的な打撃を受けるおそれがあります。
     そのため、アカモズの行動圏テリトリー(150~200m)にあたる1~3号機、7~8号機および10~15号機について、風車の建設計画を見直す必要があります。
  4. マガンについて
     評価書案129ページの図によれば、国の天然記念物マガンの群が2度にわたり、石狩湾新港内の海側から1号機および2号機の風車建設予定位置の上空を通過し、東方向に飛翔しています。マガンの飛翔高度は、美唄市宮島沼の観察や福井県あわら市における(財)日本野鳥の会による調査結果などによれば、高度30mから150mの範囲の飛行が一般的です。そのため、マガンの飛翔コースと重なる位置にあたる1~2号機を建設した場合、マガンが衝突死する可能性があるので、1~2号機について風車の建設計画を見直す必要があります。
  5. 鳥類の主要な移動ルートとなっている海岸沿いの範囲について
     評価書案8ページおよび12ページの地図をみると、1~8号機の建設位置から南側500mに、連続して工場の建物が立ち並んでいます。このため、海岸沿いを南下する鳥類の群や猛禽類などの大型鳥類のほとんどは工場の高い建物の上空を通過するのを避け、飛行コースを建設予定地のある海岸寄りにとっています。144~152ページにある猛禽類の行動範囲も、ほとんどは工場の建物のある場所を避け、建設予定地となっている狭い海岸沿いの範囲内を飛行せざるを得ない状況となっています。
     以上のことから、1~ 8号機の風車建設予定地は大型の鳥類の飛行コース上にあり、風車建設によりそれらが衝突死する可能性が極めて大きいため、1~8号機について風車の建設計画を見直す必要があります。
  6. 草原性鳥類、森林性鳥類に及ぼすバードストライク以外の影響
     風車建設によって直接失われる面積は8.7haと算定されていますが、一つ一つの風車がもたらす影響は、単に施工改変された土地やバードストライクだけにとどまるものではありません。
     鳥類に関する影響については、ここ数年、日本鳥学会会員による風車建設後の調査が行われており、風車建設がもたらす影響が明らかにされてきています。
     武田恵世(2010 日本鳥学会2010年度大会講演要旨集:84)によると、三重県における風車建設後の森林と対照区の森林で繁殖期の調査をおこない比較検討した結果、「(前略)生息密度は約1/22であった。すなわち、建設後少なくとも11年では年月と共に鳥類が増えていることはなく、風力発電機の影響を受けない、あるいは順応している個体は非常に少ないままであると考えられる。野鳥は騒音を発生する人工建造物にある程度順応性があり、鉄道や高速道路、空港周辺に野鳥が多い場所があることはよく知られている。しかし、風力発電機には順応していない理由は、稼働の日変動、年変動が極めて大きく、稼働中も風波と呼ばれる風向、風速の変動による変化が大きいこと、また、特殊な騒音、特に低周波音の影響や、ストロボ効果の影響などが考えられる。風力発電機の鳥類の生息への影響は極めて大きく、風力発電所の立地には慎重な検討が必要であると考えられる。」と述べています。
     風車の建設計画がない六線浜周辺とその北東及び南西に連なる砂丘列の草地(風車建設地)や低木疎林は一連の環境であり、ノビタキ、ホオアカなどが生息するとともに、アカモズが生息、繁殖しています。第3項でも述べているとおり、六線浜の北東部及び南西部の区域で風車建設が行われた場合、現在、急速に個体数が減少しているアカモズにとって、その影響は極めて大きいと考えられます。
     砂丘草地を採餌環境とする絶滅危惧ⅠB類チュウヒ、ハイイロチュウヒやノスリなどの猛禽類にとっても影響は大きいと予測されます。
     また、砂丘列の後背林であるカシワ林には、森林性鳥類が生息していますが、風車建設によって、鳥類の生息密度が低下し、やがては森林生態系に大きな影響を及ぼすと考えられます。
     上記の場所における風車建設は、砂丘生態系全体に重大な影響を及ぼすことが予測されるものであることから、計画を見直す必要があります。

以上

 

日野鳥発第 67 号
平成23年1月12日

北海道知事 高橋はるみ 様

日本野鳥の会小樽支部
支部長 梅木賢俊
北海道小樽市富岡1-13-10

日本野鳥の会札幌支部
支部長 山田三夫
北海道札幌市中央区大通西17丁目1

財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

銭函海岸に生息する希少鳥類の保全に関する要望書
(銭函風力開発建設事業に際して)

 日ごろ、当会の自然環境保全事業について、ご理解をいただき深く感謝申し上げます。
 さて、銭函海岸はご承知のとおり、北海道が策定した「北海道自然環境保全指針」に基づき選定された「すぐれた自然地域」として、保全を図るべき自然地域に位置づけされており、また、希少な野生動植物の重要な生息地となっています。
 特に鳥類では、オジロワシやハヤブサなど種の保存法の国内希少野生動植物種、マガンなど国の天然記念物、シマアオジやアカモズなど環境省による絶滅危惧Ⅰ類の鳥類の生息が確認されています。銭函海岸に風力発電施設が建設された場合、これらの鳥類の生息地は喪失し繁殖が阻害される、飛行経路が変更される、衝突による死傷事故が発生するなどの影響が危惧されます。
 ついては、希少鳥類の生息する銭函海岸の野生生物保全のため、下記のとおり要望します。
 なお、風車建設予定地は国有海浜地であり、施設建設にあたっては海岸法に基づく許可申請が必要となることから、海岸法第1条の「この法律は、津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護するとともに、海岸環境の整備と保全及び公衆の海岸の適正な利用を図り、もって国土の保全に資することを目的とする。」理念に立脚して、厳正に審査、処理されることを要望します。

 銭函海岸における風力発電施設の建設により、北海道が保全を図るべき自然地域として選定した同海岸の自然環境、とりわけ北海道レッドデータブックや天然記念物に指定されている次のような希少鳥類が影響を受けないよう、北海道として適切な対応をとっていただきたく強く要望します。
 理由は次のとおりです。

  1. 国の天然記念物オジロワシとミサゴの生息に悪影響を与えるおそれがあります
     日本風力開発株式会社が作成した環境影響評価書案(以下、評価書案)の中にある環境省レッドリスト準絶滅危惧および北海道レッドリストの絶滅危急種であるミサゴ、環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠB類/国内希少野生動植物種/国の天然記念物および北海道レッドリストの絶滅危惧種であるオジロワシの予測結果では、「風車への衝突については留意する必要がある」と記されております。また、別添の「資料編(種類別猛禽類確認結果)」にあるオジロワシ、およびミサゴの確認位置をみると、あきらかに飛行コースの障害となり、また飛行高度から、衝突の危険性が非常に高いと考えられます。
     そのため、オジロワシとミサゴの飛翔コースにあたる1~8号機について、風車の建設計画を見直す必要があります。
  2. シマアオジの生息に悪影響を与えるおそれがあります
     評価書案の129ページの図によれば、6月3日~6日の調査において、環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠA類で北海道レッドリストの希少種でもあるシマアオジの成鳥オスが確認されています。また、日本野鳥の会札幌支部の会員により、銭函5丁目の草原において、2009年8月13日にシマアオジの幼鳥が確認されています。6月初旬はシマアオジの繁殖前期にあたり、さらにほぼ同じ行動圏において、前年には繁殖した幼鳥が確認されていることから、この地域でシマアオジが繁殖活動を行っていることは確実です。風車の建設予定地は、シマアオジの行動圏(40,000~70,000㎡)と重なっており、風車建設による環境悪化や生息地の改変などがシマアオジの繁殖に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
     そのため、シマアオジが確認された場所から周囲400m~700mにあたる3~8号機について、風車の建設計画を見直す必要があります。
  3. アカモズの生息に悪影響を与えるおそれがあります
     評価書案129ページの図によれば、絶滅危惧ⅠB類で北海道レッドリストの希少種でもあるアカモズが12か所で計16羽の生息が確認されており、親鳥の給餌や餌運び行動、さらには繁殖した幼鳥とともに行動しているところも確認されています。また、2009年に日本野鳥の会札幌支部の会員により、2つがいのアカモズの繁殖を確認しています。アカモズはここ数年急速に生息数が大きく減少していますが、北海道内でこれほど多数のアカモズが広範囲に繁殖する場所は今のところ、この計画地以外にはありません。ここに風車を建設すれば、工事車両や関係者の出入りを含め、環境悪化や生息地の改変により、生息地が壊滅的な打撃を受けるおそれがあります。
     そのため、アカモズの行動圏テリトリー(150~200m)にあたる1~3号機、7~8号機および10~15号機について、風車の建設計画を見直す必要があります。
  4. 国の天然記念物マガンについて
     評価書案129ページの図によれば、マガンの群が2度にわたり、石狩湾新港内の海側から1号機および2号機の風車建設予定位置の上空を通過し、東方向に飛翔しています。マガンの飛翔高度は、美唄市宮島沼の観察や福井県あわら市における(財)日本野鳥の会による調査結果などによれば、高度30mから150mの範囲の飛行が一般的です。
     そのため、マガンの飛翔コースと重なる位置にあたる1~2号機を建設した場合、マガンが衝突死する可能性があるので、1~2号機について風車の建設計画を見直す必要があります。
  5. 鳥類の主要な移動ルートとなっている海岸沿いの範囲について
     評価書案8ページおよび12ページの地図をみると、1~8号機の建設位置から南側500mに、連続して工場の建物が立ち並んでいます。このため、海岸沿いを南下する鳥類の群や猛禽類などの大型鳥類のほとんどは工場の高い建物の上空を通過するのを避け、飛行コースを建設予定地のある海岸寄りにとっています。144~152ページにある猛禽類の行動範囲も、ほとんどは工場の建物のある場所を避け、建設予定地となっている狭い海岸沿いの範囲内を飛行せざるを得ない状況となっています。
     以上のことから、1~8号機の風車建設予定地は大型の鳥類の飛行コース上にあり、風車建設によりそれらが衝突死する可能性が極めて大きいため、1~8号機について風車の建設計画を見直す必要があります。
  6. 草原性鳥類、森林性鳥類に及ぼすバードストライク以外の影響
     風車建設によって直接失われる面積は8.7haと算定されていますが、一つ一つの風車がもたらす影響は、単に施工改変された土地やバードストライクだけにとどまるものではありません。
     鳥類に関する影響については、ここ数年、日本鳥学会会員による風車建設後の調査が行われており、風車建設がもたらす影響が明らかにされてきています。
     武田恵世(2010 日本鳥学会2010年度大会講演要旨集:84)によると、三重県における風車建設後の森林と対照区の森林で繁殖期の調査をおこない比較検討した結果、「(前略)生息密度は約1/22であった。すなわち、建設後少なくとも11年では年月と共に鳥類が増えていることはなく、風力発電機の影響を受けない、あるいは順応している個体は非常に少ないままであると考えられる。野鳥は騒音を発生する人工建造物にある程度順応性があり、鉄道や高速道路、空港周辺に野鳥が多い場所があることはよく知られている。しかし、風力発電機には順応していない理由は、稼働の日変動、年変動が極めて大きく、稼働中も風波と呼ばれる風向、風速の変動による変化が大きいこと、また、特殊な騒音、特に低周波音の影響や、ストロボ効果の影響などが考えられる。風力発電機の鳥類の生息への影響は極めて大きく、風力発電所の立地には慎重な検討が必要であると考えられる。」と述べています。
     風車の建設計画がない六線浜周辺とその北東及び南西に連なる砂丘列の草地(風車建設地)や低木疎林は一連の環境であり、ノビタキ、ホオアカなどが生息するとともに、アカモズが生息、繁殖しています。第3項でも述べているとおり、六線浜の北東部及び南西部の区域で風車建設が行われた場合、現在、急速に個体数が減少しているアカモズにとって、その影響は極めて大きいと考えられます。
     砂丘草地を採餌環境とする絶滅危惧ⅠB類チュウヒ、ハイイロチュウヒやノスリなどの猛禽類にとっても影響は大きいと予測されます。
     また、砂丘列の後背林であるカシワ林には、森林性鳥類が生息していますが、風車建設によって、鳥類の生息密度が低下し、やがては森林生態系に大きな影響を及ぼすと考えられます。
     上記の場所における風車建設は、砂丘生態系全体に重大な影響を及ぼすことが予測されるものであることから、計画を見直す必要があります。

以上

 

日野鳥発第 68 号
平成23年1月12日

小樽市長 山田勝麿 様

日本野鳥の会小樽支部
支部長 梅木賢俊
北海道小樽市富岡1-13-10

日本野鳥の会札幌支部
支部長 山田三夫
北海道札幌市中央区大通西17丁目1

財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

銭函海岸に生息する希少鳥類の保全に関する要望書
(銭函風力開発建設事業に際して)

日ごろ、当会の自然環境保全事業について、ご理解をいただき深く感謝申し上げます。
 さて、小樽市民にとって宝である銭函海岸はご承知のとおり、北海道が策定した「北海道自然環境保全指針」に基づき選定された「すぐれた自然地域」として、保全を図るべき自然地域に位置づけされており、また、希少な野生動植物の重要な生息地となっています。
 特に鳥類では、オジロワシやハヤブサなど種の保存法の国内希少野生動植物種、マガンなど国の天然記念物、シマアオジやアカモズなど環境省によるレッドリスト絶滅危惧Ⅰ類の鳥類の生息が確認されています。銭函海岸に風力発電施設が建設された場合、これらの鳥類の生息地は喪失し繁殖が阻害される、飛行経路が変更される、衝突による死傷事故が発生するなどの影響が危惧されます。
 ついては、希少鳥類の生息する銭函海岸の野生生物保全のため、下記のとおり要望します。

 銭函海岸における風力発電施設の建設により、小樽市民の宝であり北海道が保全を図るべき自然地域として選定した同海岸の自然環境、とりわけ種の保存法、環境省レッドリストや天然記念物に指定されている次のような希少鳥類やその生息地が影響を受けないよう、小樽市として適切な対応をとっていただきたく強く要望します。
 理由は次のとおりです。

  1. オジロワシとミサゴの生息に悪影響を与えるおそれがあります
     銭函風力開発株式会社が作成した環境影響評価書案(以下、評価書案)の中にある準絶滅危惧であるミサゴ、環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠB類/国内希少野生動植物種/国の天然記念物であるオジロワシの予測結果では、「風車への衝突については留意する必要がある」と記されております。また、別添の「資料編(種類別猛禽類確認結果)」にあるオジロワシ、およびミサゴの確認位置をみると、あきらかに飛行コースの障害となり、また飛行高度から、衝突の危険性が非常に高いと考えられます。
     そのため、オジロワシとミサゴの飛翔コースにあたる1~8号機について、風車の建設計画を見直す必要があります。
  2. 環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠA類シマアオジの生息に悪影響を与えるおそれがあります
     評価書案の129ページの図によれば、6月3日~6日の調査において、シマアオジの成鳥オスが確認されています。また、日本野鳥の会札幌支部の会員により、銭函5丁目の草原において、2009年8月13日にシマアオジの幼鳥が確認されています。6月初旬はシマアオジの繁殖前期にあたり、さらにほぼ同じ行動圏において、前年に繁殖個体の幼鳥が確認されていることから、この地域でシマアオジが繁殖活動を行っていることは間違いありません。風車の建設予定地は、シマアオジの行動圏(40,000~70,000㎡)と重なっており、風車建設による環境悪化や生息地の改変などがシマアオジの繁殖に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
     そのため、シマアオジが確認された場所から周囲400m~700mにあたる3~8号機について、風車の建設計画を見直す必要があります。
  3. 環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠB類アカモズの生息に悪影響を与えるおそれがあります
     評価書案129ページの図によれば、アカモズが12か所で計16羽の生息が確認されており、親鳥の給餌や餌運び行動、さらには繁殖した幼鳥と共に行動しているところも確認されています。また、2009年に日本野鳥の会札幌支部の会員により、2つがいのアカモズの繁殖を確認しています。アカモズはここ数年急速に生息数が大きく減少していますが、北海道内でこれほど多数のアカモズが広範囲に繁殖する場所は今のところ、この計画地以外にはありません。ここに風車を建設すれば、工事車両や関係者の出入りを含め、環境悪化や生息地の改変により、生息地が壊滅的な打撃を受けるおそれがあります。
     そのため、アカモズの行動圏テリトリー(150~200m)にあたる1~3号機、7~8号機および10~15号機について、風車の建設計画を見直す必要があります。
  4. 国の天然記念物マガンについて
     評価書案129ページの図によれば、マガンの群が2度にわたり、石狩湾新港内の海側から1号機および2号機の風車建設予定位置の上空を通過し、東方向に飛翔しています。マガンの飛翔高度は、美唄市宮島沼の観察や福井県あわら市における(財)日本野鳥の会による調査結果などによれば、高度30mから150mの範囲の飛行が一般的です。
     そのため、マガンの飛翔コースと重なる位置にあたる1~2号機を建設した場合、マガンが衝突死する可能性があるので、1~2号機について風車の建設計画を見直す必要があります。
  5. 鳥類の主要な移動ルートとなっている海岸沿いの範囲について
     評価書案8ページおよび12ページの地図をみると、1~8号機の建設位置から南側500mに、連続して工場の建物が立ち並んでいます。このため、海岸沿いを南下する鳥類の群や猛禽類などの大型鳥類のほとんどは工場の高い建物の上空を通過するのを避け、飛行コースを建設予定地のある海岸寄りにとっています。144~152ページにある猛禽類の行動範囲も、ほとんどは工場の建物のある場所を避け、建設予定地となっている狭い海岸沿いの範囲内を飛行せざるを得ない状況となっています。
     以上のことから、1~8号機の風車建設予定地は大型の鳥類の飛行コース上にあり、風車建設によりそれらが衝突死する可能性が極めて大きいため、1~8号機について風車の建設計画を見直す必要があります。
  6. 草原性鳥類、森林性鳥類に及ぼすバードストライク以外の影響
     風車建設によって直接失われる面積は8.7haと算定されていますが、一つ一つの風車がもたらす影響は、単に施工改変された土地やバードストライクだけにとどまるものではありません。
     鳥類に関する影響については、ここ数年、日本鳥学会会員による風車建設後の調査が行われており、風車建設がもたらす影響が明らかにされてきています。
    武田恵世(2010 日本鳥学会2010年度大会講演要旨集:84)によると、三重県における風車建設後の森林と対照区の森林で繁殖期の調査をおこない比較検討した結果、「(前略)生息密度は約1/22であった。すなわち、建設後少なくとも11年では年月と共に鳥類が増えていることはなく、風力発電機の影響を受けない、あるいは順応している個体は非常に少ないままであると考えられる。野鳥は騒音を発生する人工建造物にある程度順応性があり、鉄道や高速道路、空港周辺に野鳥が多い場所があることはよく知られている。しかし、風力発電機には順応していない理由は、稼働の日変動、年変動が極めて大きく、稼働中も風波と呼ばれる風向、風速の変動による変化が大きいこと、また、特殊な騒音、特に低周波音の影響や、ストロボ効果の影響などが考えられる。風力発電機の鳥類の生息への影響は極めて大きく、風力発電所の立地には慎重な検討が必要であると考えられる。」と述べています。
     風車の建設計画がない六線浜周辺とその北東及び南西に連なる砂丘列の草地(風車建設地)や低木疎林は一連の環境であり、ノビタキ、ホオアカなどが生息するとともに、アカモズが生息、繁殖しています。第3項でも述べているとおり、六線浜の北東部及び南西部の区域で風車建設が行われた場合、現在、急速に個体数が減少しているアカモズにとって、その影響は極めて大きいと考えられます。
    砂丘草地を採餌環境とする絶滅危惧ⅠB類チュウヒ、ハイイロチュウヒやノスリなどの猛禽類にとっても影響は大きいと予測されます。
    また、砂丘列の後背林であるカシワ林には、森林性鳥類が生息していますが、風車建設によって、鳥類の生息密度が低下し、やがては森林生態系に大きな影響を及ぼすと考えられます。
     上記の場所における風車建設は、砂丘生態系全体に重大な影響を及ぼすことが予測されるものであることから、計画を見直す必要があります。

以上

 

日野鳥発第 70 号
平成23年1月12日

銭函風力開発株式会社
代表取締役社長 松島 聡 様

日本野鳥の会小樽支部
支部長 梅木賢俊
北海道小樽市富岡1-13-10

日本野鳥の会札幌支部
支部長 山田三夫
北海道札幌市中央区大通西17丁目1

財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

銭函海岸に生息する希少鳥類の保全に関する要望書
(銭函風力開発建設事業に際して)

 日ごろ、当会の自然環境保全事業について、ご理解をいただき深く感謝申し上げます。
さて、ご承知のとおり、銭函海岸は北海道が策定した「北海道自然環境保全指針」に基づき選定された「すぐれた自然地域」として、保全を図るべき自然地域に位置づけされており、また、希少な野生動植物の重要な生息地となっています。
特に鳥類では、オジロワシやハヤブサなど種の保存法の国内希少野生動植物種、マガンなど国の天然記念物、シマアオジやアカモズなど環境省によるレッドリスト指定種の鳥類の生息が確認されています。先般、貴社から公開された環境影響評価書案への意見書においても述べたところですが、銭函海岸に貴社が計画されている風力発電施設が建設された場合、これらの鳥類の生息地は喪失し繁殖が阻害される、飛行経路が変更される、衝突事故が発生するなどの影響が危惧されます。
ついては、銭函海岸の野生生物保全のため、下記のとおり要望します。

 次の理由より、銭函海岸における貴社の風力発電施設の建設計画は、野生生物の生息に多大なる影響を及ぼすと考えられますので、この計画を中止してください。

  1. 猛禽類について
     貴社で作成した環境影響評価書案(以下、評価書案)の中にある準絶滅危惧のミサゴ、絶滅危惧ⅠB類/国内希少野生動植物種/国の天然記念物であるオジロワシの予測結果では、「風車への衝突については留意する必要がある」と記されております。また、別添の「資料編(種類別猛禽類確認結果)」にあるオジロワシ、およびミサゴの確認位置をみると、あきらかに飛行コースの障害となり、また飛行高度から、衝突の危険性が非常に高いと考えられます。
     そのため、オジロワシとミサゴの飛翔コースにあたる1~8号機の建設は不適当です。
  2. 絶滅危惧ⅠA類シマアオジについて
     評価書案の129ページの図によれば、6月3日~6日の調査において、シマアオジの成鳥オスが確認されています。また、日本野鳥の会札幌支部の会員により、銭函5丁目の草原において、2009年8月13日にシマアオジの幼鳥が確認されています。6月初旬はシマアオジの繁殖前期にあたり、さらにほぼ同じ行動圏において、前年には繁殖した幼鳥が確認されていることから、この地域でシマアオジが繁殖活動を行っていることは確実です。風車の建設予定地は、シマアオジの行動圏(40,000~70,000㎡)と重なっており、風車建設による環境悪化や生息地の改変などがシマアオジの繁殖に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
     そのため、シマアオジが確認された場所から周囲400m~700mにあたる3~8号機の建設は不適当です。
  3. 絶滅危惧ⅠB類アカモズについて
     評価書案129ページの図によれば、アカモズが12か所で計16羽の生息が確認されており、親鳥の給餌や餌運び行動、さらには繁殖した幼鳥と共に行動しているところも確認されています。また、2009年に日本野鳥の会札幌支部の会員により、2つがいのアカモズの繁殖を確認しています。アカモズはここ数年急速に生息数が大きく減少していますが、北海道内でこれほど多数のアカモズが広範囲に繁殖する場所は今のところ、当該計画地以外にはありません。ここに風車を建設すれば、工事車両や関係者の出入り、環境悪化や生息地の改変により、生息地が壊滅的な打撃を受けるおそれがあります。
     そのため、アカモズの行動圏テリトリー(150~200m)にあたる1~3号機、7~8号機および10~15号機の建設は不適当です。
  4. 国の天然記念物マガンについて
     評価書案129ページの図によれば、マガンの群が2度にわたり、石狩湾新港内の海側から1号機および2号機の風車建設予定位置の上空を通過し、東方向に飛翔しています。マガンの飛翔高度は、美唄市宮島沼の観察や福井県あわら市における(財)日本野鳥の会による調査結果などによれば、高度30mから150mの範囲の飛行が一般的です。
     そのため、マガンの飛翔コースと重なる位置にあたる1~2号機を建設した場合、マガンが衝突死する可能性があるので、1~2号機の建設は不適当です。
  5. 鳥類の主要な移動ルートとなっている海岸沿いの範囲について
     評価書案8ページおよび12ページの地図をみると、1~8号機の建設位置から南側500mに、連続して工場の建物が立ち並んでいます。このため、海岸沿いを南下する鳥類の群や猛禽類などの大型鳥類のほとんどは工場の高い建物の上空を通過するのを避け、飛行コースを建設予定地のある海岸寄りにとっています。144~152ページにある猛禽類の行動範囲も、ほとんどは工場の建物のある場所を避け、建設予定地となっている狭い海岸沿いの範囲内を飛行せざるを得ない状況となっています。
     以上のことから、1~ 8号機の風車建設予定地は大型の鳥類の飛行コース上にあり、風車建設によりそれらが衝突死する可能性が極めて大きいため、1~8号機の建設は不適当です。
  6. 草原性鳥類、森林性鳥類に及ぼすバードストライク以外の影響
     風車建設によって直接失われる面積は8.7haと算定されていますが、一つ一つの風車がもたらす影響は、単に施工改変された土地やバードストライクだけにとどまるものではありません。
     鳥類に関する影響については、ここ数年、日本鳥学会会員による風車建設後の調査が行われており、風車建設がもたらす影響が明らかにされてきています。
    武田恵世(2010 日本鳥学会2010年度大会講演要旨集:84)によると、三重県における風車建設後の森林と対照区の森林で繁殖期の調査をおこない比較検討した結果、「(前略)生息密度は約1/22であった。すなわち、建設後少なくとも11年では年月と共に鳥類が増えていることはなく、風力発電機の影響を受けない、あるいは順応している個体は非常に少ないままであると考えられる。野鳥は騒音を発生する人工建造物にある程度順応性があり、鉄道や高速道路、空港周辺に野鳥が多い場所があることはよく知られている。しかし、風力発電機には順応していない理由は、稼働の日変動、年変動が極めて大きく、稼働中も風波と呼ばれる風向、風速の変動による変化が大きいこと、また、特殊な騒音、特に低周波音の影響や、ストロボ効果の影響などが考えられる。風力発電機の鳥類の生息への影響は極めて大きく、風力発電所の立地には慎重な検討が必要であると考えられる。」と述べています。
     風車の建設計画がない六線浜周辺とその北東及び南西に連なる砂丘列の草地(風車建設地)や低木疎林は一連の環境であり、ノビタキ、ホオアカなどが生息するとともに、アカモズが生息、繁殖しています。第3項でも述べているとおり、六線浜の北東部及び南西部の区域で風車建設が行われた場合、現在、急速に個体数が減少しているアカモズにとって、その影響は極めて大きいと考えられます。
     砂丘草地を採餌環境とする絶滅危惧ⅠB類チュウヒ、ハイイロチュウヒやノスリなどの猛禽類にとっても影響は大きいと予測されます。
    また、砂丘列の後背林であるカシワ林には、森林性鳥類が生息していますが、風車建設によって、鳥類の生息密度が低下し、やがては森林生態系に大きな影響を及ぼすと考えられます。
     銭函海岸の生物多様性を保全し貴重な砂丘生態系をこの地域の財産として残してゆくために、勇気あるご決断をいただきますよう、心からお願い申し上げます。

以上