野鳥が森をつくるとは? ~野鳥と植物の意外な関係~

 野鳥が森をつくるとは、いったいどういうことなのでしょうか? 野鳥が木々に止まっている姿を目にする方は多いと思いますが、まさか野鳥がせっせと地面に苗を植える姿を目撃した方はいないでしょう。
 多くの野鳥は、木の実を丸呑みにして消化し、栄養をとっています。しかし硬いタネ(種子)は消化できないので、フンと一緒に排出されます。野鳥は飛んで移動するので、フンを色々な場所に落とします。フンと一緒に地面へ落ちたタネは、やがて芽を出します。このようにして種子散布されるものを「周食型散布」と呼んでいます。植物の中には、鳥に食べられ消化管を通ることで芽が出やすくなる種類も確認されています。
 また、ヤマガラやカケスなどの一部の野鳥は、エサの少ない冬を乗り切るため、リスやネズミたちと同じようにドングリなどの木の実を土の中や木の隙間に埋めて、隠しておきます。これらのうち食べ残されたり、忘れられたりしたタネから芽が出て、生長していきます。このようにして種子散布されるものを「貯食型散布」と呼んでいます。
 このように野鳥たちは、タネの散布を通じて森を育てるのにとても役立っています。
 庭などに植えた覚えのない木が生えているのは、公園の植え込みから違う種類の木が生えている、よく鳥が止まる木や柵の下から木の芽がたくさん生えているなどは、もしかしたら野鳥による種子散布のおかげかもしれません。

木の実の構造

種子散布に貢献する多くの鳥は、実の果肉部分を食べ、タネをフンなどで外へ運ぶ役割を担っています。

野鳥が食べて広がる仕組み


 種子散布への貢献度がもっとも高いといえるのがこのタイプです。野鳥は、小さめの木の実を丸呑みし、果肉部分のみを消化し、硬いタネは消化されずにフンとして排出します。そして、排出(散布)されたタネは、新しい地で芽を出すというしくみです。

野鳥が食べ残したり、忘れたりして広がる仕組み


 カケスやヤマガラなど一部の野鳥は木の実を食べる以外に、木の実を土の中などに隠す行動(貯食行動 )をよくすることで知られています。多くの木の実は、冬場に掘り出して食べてしまいますが、中には食べ残したり、隠し場所を忘れてしまったりすることもあるため、埋めておいた場所から芽を出し森づくりに貢献するというしくみです。