プレスリリース 2006.12.21

日本野鳥の会が「タンチョウ」の生息地を協定と購入により別海町と厚岸町に新たに4ヶ所野鳥保護区を設置
協定締結による野鳥保護区設置は13年ぶり、3ヶ所にこれまでに設置した野鳥保護区は合計22ヶ所約1700.3ヘクタール。

2006.12.21

 (財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博 会員・サポーター数約5万2千人)は、2006年12月20日までに北海道野付郡別海町在住の永野孝浩氏と厚岸郡厚岸町在住の石澤元勝氏と協定を結び、タンチョウの生息する湿原を野鳥保護区とした。協定者のお名前を冠した「永野野鳥保護区飛雁川(とびかりがわ)」、「石澤野鳥保護区尾幌川(おぼろがわ)」とし、保全に努める。また、同時に当会会員の渡邊玲子氏(わたなべれいこ・兵庫県)からの寄付金をもとに、タンチョウの生息する北海道野付郡別海町と厚岸郡厚岸町の湿原を購入した。現地は、寄付者のお名前を冠した「渡邊野鳥保護区飛雁川」、「渡邊野鳥保護区尾幌川」とし、恒久的に保全する。今回の保護区を含め、当会が野鳥保護のために設置した保護区は合計22ヶ所、面積は1700.3ha。このうちタンチョウを対象としたものは、16ヶ所、1662.1haとなった。

■野鳥保護区を設置した別海町の土地について
別海町飛雁川河口の写真

別海町内を流れ、野付湾に流れ込む飛雁川河口に広がる湿原。協定による保護区面積15.6ha(155,919m2)、買い取りによる保護区面積15.3ha(152,652m2)。この土地は、1970年代よりタンチョウの生息が確認されており、この周辺で1つがいが繁殖している。 
なお、今回の購入した土地は、国指定鳥獣保護区特別保護地区およびラムサール条約登録地に近接しているが、法的な指定はなされていない場所である。



■野鳥保護区を設置した厚岸町の土地について
厚岸町尾幌川河口に広がる湿原の写真

厚岸町を流れる別寒辺牛川の支流である尾幌川河口に広がる湿原。協定による保護区面積5.0ha(50,137m2)、買い取りによる保護区面積6.1ha(60,607m2)。この土地は、タンチョウの生息が確認されており、この周辺で1つがいが繁殖している。
なお、今回の購入した土地は、国指定鳥獣保護区特別保護地区およびラムサール条約登録地、条約登録地に含まれる「早瀬野鳥保護区別寒辺牛湿原」に近接し、国指定鳥獣保護区に隣接しているが、法的な指定はなされていない場所である。
この湿原は、1960年代後半まで、厚岸町太田の酪農家たちが、秋にヨシやスゲを刈り、におにして積んで置き、尾幌川が凍る1月頃に馬そりなどで運び出し、牛馬の餌や敷き藁として利用していた。人が湿原をうまく利用し、農業を行っていた場所である。



■協定について

 当会では、1993年に鶴居村の「古山野鳥保護区温根内」12.9haを古山正勝氏と協定を結んだ。今回はそれ以来13年ぶりの協定締結である。現在、合計3ヶ所 33.5haを協定による野鳥保護区として保全している。

■「永野野鳥保護区飛雁川」協定者のプロフィール

 永野孝浩氏は、北海道野付郡別海町在住。酪農経営。46歳。

■永野孝浩氏のコメント

 「この土地は、先代の父が受継いだ地で乳牛や農耕馬の飼料の供給地として利用していました。その当時は、湿地のため牛馬の事故などがともない大変苦労をしたそうです。酪農の規模拡大とともに20年ほど前から私の父の趣味であった馬の放牧地となり、観光客の人たちが車を止め、馬やツルの写真を撮る姿がよく見られました。今は、馬もいなくなり、今後の利用を考えていたところ、日本野鳥の会との話を進めることができ喜んでいるところです。」

■「石澤野鳥保護区尾幌川」協定者のプロフィール

 石澤元勝氏は、北海道厚岸郡厚岸町在住。酪農経営。57歳。
「厚岸自然を守る会」会長(会員20名、1992年3月設立)。今までに別寒辺牛川のカヌー乗降場設置問題、釧路ラムサール会議への参加、大黒島ヘリポート問題などに取り組んできた。

■石澤元勝氏のコメント

 「この湿原は思い出深い土地で、1960年代後半まで、祖父たちが牛馬の餌のために草を取っていた場所、その後使われなくなっていたが、自然を大切にする時代になってもう一度この湿原に光が当たり、うれしく思います。」

■寄付者のプロフィール

 渡邊玲子さん(75歳)は兵庫県在住。当会の会員歴27年。また、鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリの活動を支援する賛助会第I期「タンチョウ383人の会」および同第II期「タンチョウふぁんクラブ」のメンバーとして、1987年よりタンチョウ保護のために資金面での協力をしていただいていた。これまで同氏からのご寄付をもとに、6ヶ所の野鳥保護区を設置している。
※なお、直接の取材はご本人の希望により固くお断りいたします。

■渡邊玲子さんのコメント

 「大型の動物を守りたい、大型の動物がすむ環境を守れば、そこに関わる他の動植物も守ることができるとの想いから、これまでもタンチョウの保護に力を入れてきました。今回は、既存保護区周辺の拡大と新たな地域のタンチョウ生息地保護にかかわることができ、とてもうれしく思います。これからももっと野鳥保護区が増えることを願うとともに、応援して行きたいと考えています。」

■購入費について

 渡邊玲子氏より、ご寄付をいただき購入した。
なお、金額は今後の購入にも関わるので、伏せさせていただきます。

■日本野鳥の会保護区事業

 野鳥の生息地の保全を目的として、当会では、1986年から「野鳥保護区」を拡大しています。これまでに北海道東部のタンチョウの営巣地を中心に22ヶ所、1700.3haを買い取り等により確保してきました。また、タンチョウ営巣地の買い取りで一定の成果が得られたため、2004年からタンチョウに続き、シマフクロウの生息地の買い取りもはじめました。現在、野鳥保護区の総面積は、東京ディズニーランドが33個入る大きさで、国内の自然保護団体が設置した保護区としては最大の面積です。
買い取り後は、当会職員が、調査や管理、巡回監視に当たっていきます。
なお、土地の買い取りについては会員の方をはじめとする方々からの寄付を財源としています。

(財)日本野鳥の会のタンチョウ保護活動

■概要

 タンチョウは、かつて江戸時代までは道内全域に生息していたと言われているが、明治時代の乱獲と生息地である湿原の開発により激減し、一時は絶滅したと考えられていた。大正時代末期に釧路湿原で再発見されて以来、地元農家の冬期給餌などの保護活動が実り、個体数は1000羽を超えるまでになった。国の特別天然記念物にも指定されているが、分布は北海道東部に偏在し、冬期の人為的な給餌に依存している。また生息地である湿原の面積は減少する一方で、残されている湿原も営巣地の約半分は法律による保護指定がなされておらず、いつ開発されてもおかしくないのが現状である。
(財)日本野鳥の会は1987年に全国からの募金をもとに、タンチョウの越冬地である阿寒郡鶴居村の給餌人、伊藤良孝氏(故人)のご理解とご協力を得て「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」を開設した。そこでは日本野鳥の会のレンジャーが常駐し、タンチョウ保護のために生態調査や自然解説などを行う現地拠点となっている。また繁殖地の保護状況調査をもとに、タンチョウの営巣地でありながら法律で保護指定されていない湿原を購入、あるいは地主と協定を結ぶ等で、野鳥保護区を設置する活動を行っている。土地の購入費用は会員をはじめ、趣旨に賛同する個人、団体からのご寄付が充てられている。

■財団法人日本野鳥の会について(詳しくはホームページ http://www.wbsj.org

自然と人間が共存する豊かな社会の実現を目指し、野鳥や自然のすばらしさを伝えながら、自然保護を進めている民間団体です。全国5万2千人の会員・サポーターの方が、自然を楽しみつつ、自然を守る活動を支えています。

・創設:1934年  ・創設者:中西悟堂  ・支部:全国89支部

<野鳥や自然を大切に思う心を伝える>

全国12ヶ所のサンクチュアリやバードプラザを訪れる年間約30万人の方に、野鳥や自然のすばらしさを伝えています。
東京バードフェスティバルなどの大規模イベントへの参加や野鳥図鑑などの発行を通して、バードウォッチングの楽しさを伝えています。
バードウォッチングの指導・案内のできる人材の育成を進めています。

<野鳥や自然を守る>

北海道東部のタンチョウの営巣地を中心に、土地の買い取りや協定により野鳥保護区として保全しています。現在、保護区の面積は、22ヶ所、1700.3haで、自然保護団体としては国内最大級です。
鳥類の生息地として、保全が急がれる場所を明確にするため、国際的に重要な鳥類等を指標にした重要度の基準(IBA基準)を満たした野鳥の重要な生息地の選定、リストの公表を行い、保全の推進、ネットワーク化を行っています。

<特定公益増進法人です>

日本野鳥の会は、特定公益増進法人に認定されておりますので、個人や法人が支出した寄付金に対して所得控除や損金算入が設定されています

同時発表先

環境省記者クラブ、根室記者クラブ

<本件についての問合せ先>
財団法人日本野鳥の会 野鳥保護区事業所
Tel 0153-25-8911
担当:富岡辰先、山口桂賜、有田茂生


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