プレスリリース 2010.04.09

伊豆諸島域におけるカンムリウミスズメの初の洋上一斉調査の結果

2010.04.09

日本野鳥の会が、国の天然記念物で絶滅危惧種の海鳥「カンムリウミスズメ」の洋上一斉調査を、伊豆諸島海域において初めて実施。計441羽の生息を同時に確認した。


(財)日本野鳥の会(本部:東京、会長:柳生博、会員・サポーター数5万人)は、2009年に創立75周年を迎え、これを機に世界的な絶滅危惧種であり日本近海にしか生息していない海鳥、カンムリウミスズメの保護に着手しています。今回、カンムリウミスズメが伊豆諸島海域にどのくらい生息しているのかを調べるため、三宅島をはじめとした伊豆諸島北部の4島(三宅島、御蔵島、神津島、新島)周辺及び伊豆半島の神子元島(みこもとじま)周辺海域で同時に5隻の調査船を使い、洋上における一斉調査を行ないました。海鳥の洋上における分布を複数海域で同時に調査するのは国内では大変珍しい試みで、カンムリウミスズメの調査としては初めてのことです。

 この結果、洋上で計441羽のカンムリウミスズメを確認することができ、少なくともこれだけの個体数が伊豆諸島北部の海域に生息していることが分かりました。個体数が判明している繁殖地としては、宮崎県の枇榔島(びろうじま)に次いで世界で2番目に個体数の多い繁殖地域であることが確認でき、カンムリウミスズメの保全上非常に貴重な地域であることが分かりました。

 日本野鳥の会は今後も伊豆諸島海域における調査を継続し、当該海域における大凡の生息個体数、重要な生息海域、各島における繁殖状況、減少原因等の把握をし、海の生物多様性のバロメーターでもあるカンムリウミスズメを守るための対策を立案、提言していきたいと考えています。

今回の調査内容

洋上一斉調査は4月6日の9時から16時の間に行いました。各調査海域において地元の漁船や遊漁船5隻をチャーターし、各船に当会職員が数名ずつ乗船。調査海域内を巡航しながら、発見したカンムリウミスズメを数えました。巡航コースは、鳥を重複して数えないように設定しました。
調査に加わった人員は、当会職員17名、学生ボランティア2名、記録映像担当のカメラマン2名の計21名でした。調査した海域と各海域での確認数は以下のとおりです。

伊豆諸島 三宅島 32羽
御蔵島 6羽
神津島 34羽
新島 335羽
神子元島 34羽

<本件に関する問い合わせ先>
(財)日本野鳥の会
TEL:03-5436-2632 FAX:03-5436-2635 カンムリウミスズメPJ担当 安藤・小林・景山・高馬
〒141-0031東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館
〒100-1211 東京都三宅島三宅村坪田4188
TEL:04994-6-0410 FAX:04994-6-0458

カンムリウミスズメの概要

生息数と危機状況

カンムリウミスズメは、世界でも日本近海のみに分布が限定されている海鳥で、推定個体数は5千~1万羽と極めて少なく、環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)にあげられ、国の天然記念物に指定されています。日本近海にしかいないため、我が国が保護活動を行なわなければ絶滅する恐れがあり、具体的な保護対策が急務な種類です。
減少要因としては、繁殖地に入り込んだネズミ類による捕食、釣人が放置するゴミやまき餌に誘引されたカラス類による捕食、漁網による混獲や油汚染による死亡などがあります。

分布

日本で繁殖するウミスズメ科の鳥は7種類です。このうち6種類は北日本の亜寒帯を主な分布域としており、カンムリウミスズメだけが黒潮や対馬海流がある暖帯海域に生息しています。知られている繁殖地の北限は、石川県の七ツ島、南限は東京都の鳥島。最大の繁殖地は宮崎県の枇椰島(びろうじま)で、約3千羽と推定されています。今回調査を行なった伊豆諸島以外の繁殖地としては、福岡県の筑前沖ノ島の小屋島(こやしま)、三重県の耳穴島(みみあなじま)、高知県の幸島(こうしま)などが知られており、国外では韓国南部の島において繁殖が確認されていますが、枇榔島以外での生息数は、これまでのところはっきり分かっていません。

繁殖

繁殖地は、無人島の崖や岩の隙間、草木の根元などです。繁殖地となる島の周辺海域に12月~1月には姿を見せはじめ、3月中~下旬にニワトリよりも少し小さな卵を1~2個生み、雌雄交代で約1か月抱卵します。ヒナは孵化後1~2日のうちに親鳥の声に導かれて海へ向かい、そのまま洋上生活をします。親鳥からの給餌も洋上で、次に陸へ上がるのは繁殖に戻った時と考えられています。枇榔島や伊豆諸島では5月下旬には周辺海域から姿を消し、繁殖期以外をどの海域で過ごすのか、まだあまり分かっていません。

日本野鳥の会のカンムリウミスズメにかかるこれまでの取り組み

2005年~08年

当会では、1995年から東京都三宅村の施設で当会が業務を受託している「三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館」を拠点に、大野原島を含む三宅島南西部の海域において、チャーターした漁船による集中的な洋上調査を継続して実施しており、1995年から2000年までの6年間に27回の調査を行いました。また1994年と1995年には三宅島の属島、大野原島に上陸し、繁殖確認調査も行なっています。
2000年夏の噴火で三宅島は全島避難となり、三宅島から出船しての調査は行なえなくなりました。このため翌2001年から2004年の期間には約40km離れた神津島や式根島から年に1回、調査船を出して調査を継続しました。1995年から2008年までの通算調査回数は計35回に及んでいます。
この間、2003年5月6日に式根島~三宅島往復の洋上調査で、当時、過去最大の237羽を記録しました。三宅島海域では1995年5月11日に205羽を記録したのが最大でした。

2009年

創立75周年を迎えた2009年には、カンムリウミスズメの保護に重点的に取り組むことになりました。洋上調査は海域、回数ともに増え、三宅島海域で9回、神津島海域で2回、八丈島海域で1回、伊豆半島海域で2回と4海域計14回行ないました。記録した個体数も、三宅島海域で5月12日に383羽と過去最大を更新しました。上陸調査も三宅島の属島である大野原島、神津島の属島である祇苗島(ただなえじま)、八丈小島の属島である小池根(こじね)の3島に上陸し、大野原島では15年ぶり、祇苗島では9年ぶりに繁殖確認をすることができました。

調査の協力者など

調査の資金

この調査の資金は、日本財団、学生バードソン、バードライフアジアからの助成金、日本野鳥の会の会員・サポーターからの会費、寄付及び一般からの寄付によって賄われています。

調査の協力者

今回の調査では、以下の団体と船にご協力いただきました。

○フィールド・アシスタント・ネットワーク
○三宅島 北洋丸、大和丸
○神津島 萬作丸
○新島 浜庄丸
○下田 喜久丸(伊豆下田フィッシング)


国の天然記念物で絶滅危惧種の海鳥「カンムリウミスズメ」